紙の本
現代社会を成り立たせているのは数学。数学がなぜ必要なのかを懇切丁寧に説明した本
2011/03/09 15:42
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サトケン - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、コンピュータのなにがどう人間から仕事を奪っていくのかを、法学部出身の情報科学者にして数学者が、かんでふくめるように懇切丁寧に解説してくれる本だ。現代社会が数学抜きには成り立ち得ないことを、著者はグーグルやアマゾンの例を取りながら、いやというほどわからせてくれる。
世の中の現実を、数式で論理的に表現すること、すなわちモデル化が進むことによって、特定のイシュー(=問題)については、アルゴリズムを組めば、膨大な演算を高速度に行う事で容易に解が得られるようになったのだ。アルゴリズムとコンピューターは演算処理のスピードが相乗的に働くことによって、さまざまな課題が解決されるようになってきた。
数学者である著者は、本書の記述をとおして、コンピュータの本質が「計算機」であることをあらためて思い起こしてくれる。かつて導入期において「電子計算機」と日本語で表現されたコンピュータは、現在では中国語から転用された「電脳」という表現にとって替わられてしまったが、英語では文字通り計算機を意味するコンピュータから用語の言い換えが行われてはいない。導入期から現在までの半導体の能力の飛躍的な発達によって、コンピュータの演算処理能力が飛躍的に高まっただけだ。「電脳」という感覚的な表現がシックリくるようになっているに過ぎない。
数年前のベストセラーに『フラット化する世界』(トマス・フリードマン、日本経済新聞社出版、2006)というタイトルのノンフィクションがあった。その本で描かれていたのは、地球全体がフラット化することによって、賃金が平準化し、しかも下方へシフトしていくという、すでに始まっている明るくない未来図であった。その典型が、インドのIT産業が米国の職を奪うというきわめて悲観的な内容。そこで全面的に描かれたのは、「グローバル化の負の側面」である。
「コンピュータが苦手で、しかもその能力によって労働の価値に差異が生まれるようなタイプの能力」を身につけよ、というのが著者の結論だ。著者がいうように、「コンピューターは意味は理解できない」ということに尽きる。だからこそ、「脳の働きのうち、論理と言語を駆使して高度に思考し表現する仕事」、「人間の多くにとって容易な、見る、聞く、感じるなどの五感を使った情報処理」、「身体性を必要とするような職業」があげられることになる。これらは、かつて米国の労働長官を務めたことのある経済学者ロバート・ライシュがいう「シンボリック・アナリスト」に該当するのではないだろうか?
タイトルには、やや「脅かし系」のニュアンスを感じるが、内容にそくしていえば「現代社会と数学」といってもいい。おそらく、著者が理学部出身者でも工学部出身者でもなく、社会科学の素養があるので、数学を社会というコンテクストに位置づけて見ることができるため、このような内容になったのだろう。
著者も言うように、日本の数学教育のいちばん大きな問題は、なぜ数学をやらなければならないかの説明がほとんどなされないことだ。これは私自身、つよく感じてきたことだ。本書で著者は、なぜ数学が必要なのかを、現代ビジネスの現場から古代ギリシアまでさかのぼって見ることによって、一般向けにかんでふくめるように懇切丁寧に説明している。
なぜ数学を勉強しなければならないか、自分で納得したい人だけでなく、子どもに説明する立場にある人は親も教師も、ぜひ読んで理解すべき本であるといえよう。
紙の本
高齢者も考える
2020/02/20 09:43
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投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の本を遡って読み進め、AIに関する一連本の端緒ともいえそうなこの本を読んだ。コンピュータと数学の関係、数学の重要性なども子細に述べられている。著者の主張が明確にある。論理的に考え言語化する、できる。後年の本、「AIに負けない子供を育てる」、「AIvs教科書が読めない子どもたち」はAIと人間の強みと弱みを整理して人間の強みを育てる教育方法、そのためのテストの開発、試験実施等一連の流れが納得できる。
この本はコンピュータと関連深い数学の啓蒙書とも言えるし、人間とコンピュータ、AIと共存していくために必要な人間の能力の磨き方が理解できる。
高齢者にも刺激となる。時代に取り残されないように。
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コンピュータの性能向上に伴なって、多くの仕事がコンピュータによって取って替わっており、コンピュータが得意とする仕事は今後なくなるだろう。
よって、コンピュータはどのような領域を得意とし、逆にどのような領域が不得意で、人にしかできないのかを知る必要がある。
このことを具体例を交えながら、わかりやすく解説している良書。
情報系の学部を専攻する学生、またコンピュータを仕事とする人には是非読んで欲しいと思った。
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とりあえずコンピュータの性格を見極め、コンピュータのできないことに積極的に関わること。でも、コンピュータに使われることで生き延びるって手もある。こんな感じかのう
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ソフトウェア技術者としてテーマに興味はあったのだが、ちょっと思っていたのと話の展開が異なっていた。
コンピュータの話とゆうより、主に数学の話で、
よくみてみたら著者が数学者だった。
やはり著者プロフィールぐらいは購入前に見るべきか。
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http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51584549.html
http://d.hatena.ne.jp/next49/20110110/p4
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はじめは数学的な思考について話題で、わかりやすく興味深く読んでいたが、後半は答えの出づらい精神論的な話になっていき、結論はとくに目新しい物ではなかったのが残念。
というかそうならざるを得ない話題は、この本では触れる必要が無かったんじゃないかとも思う。
「コンピュータプログラムを賢くさせるために人間が働かされている」という事実を知ることが出来たのは大きな収穫だった。
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著者が、IT系の研究者の知見をまとめており、その分野の大勢が分かる本。
内容的には、ITとの付き合い方を述べていて、文系出身の知的労働者に勧めたいけど、前提知識が無いと、分かり難いまとめ方をしているので、似た分かり易い本の方がいいかも。
『要約』
■能力の特徴
・コンピュータは、限定領域で、人間をはるかに凌駕する。
・人間は、コンピュータのできない領域を担当できる。
■人間を限定領域で、凌駕するコンピュータに仕事をさせるには?
1.: モデルを作る。(アルゴリズム等の発見)
2.: 現実世界にモデルを当てはめる。(設計書の作成)
3.: 2.をコンピュータが分かるようにする(プログラミング)
■著者の主張
効率化を求めている現代では、働き方は、三つに分かれるのではと。
・コンピュータの人間を凌駕する能力を発揮させるための下働き
・コンピュータのできない領域を担当する仕事
・コンピュータに仕事をさせるための仕組みの作成
ホワイトワーカーにとって、三つ目の、コンピュータに仕事をさせるための仕組みの作成には、数学が大事であるということを主張している。
『気になった部分』
■セマンティックギャップ
・データとそのデータの持つ意味の乖離
・Alipr.com
まとめとしては、大学の内容の復習にもなったけど、論文的なまとめ方には苦労した。苦労したけど、抽象的に理解していたことを、具体的に言葉に起こすという意味では、読んでよかったと。
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図書館で借りた。
コンピュータができる仕事、できるようになっていくであろうと考えられる仕事はなにか、また仕組みの上でできないことは何かを説明している。
犬と猫を見分ける、という仕事をコンピュータにやらせる場合、事前にこの写真は犬、これは猫、と人間が判断した大量の写真を用意し、それをコンピュータに学習させる。次にまだ使っていない写真をコンピュータに渡して判断させ、結果を人が評価する。
大量の写真を用意すればこの程度の仕事はできるらしい。ただ、写真が豚の場合は、必ず犬か猫に分けてしまうため、見分けられないとのこと。
大量の写真を事前に人間が判断するのは時間も人も大勢使うが、今はクラウドソーシングという、外注を利用できる。単純労働なので1件判断した金額が数セントと安い。
何ができるのかを具体的に言ったあと、その限界を説明するため読みやすく分かりやすい。
コンピュータは数学で表現できることしか実行できないため、実行する内容が高度になればなるほど数学の知識が必要になってくる、とも書いてあった。
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フラット化する世界で海外に仕事を奪われ、こんどはコンピュータに仕事を奪われる
先進国の中の、高付加価値の仕事が出来ない人間はどうしたらいいのか
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人工知能の研究史に関する読み物です。世の中と学問のつながりを理解する上で、工学系の学生さんにオススメ。
おおよそ以下のようなことが書かれており、人の仕事が奪われるという社会的な側面の話はほとんど出てきません。マーケティングの都合でつけたのでしょうか?
・人工知能研究の初期では、人間の思考をコンピュータで実現する(あるいは、模倣する)ことを目標としてたが、それが不可能だと分かった。
(例)別の時期に撮影した同じ人の写真を見比べる場合、髪型や肌つやなどが変わってしまっても、人は同一人物だと認識できるが、コンピュータは認識が難しい。
・しかし、途中で研究者は路線変更して、コンピュータにとって得意なやり方で、外から見れば人の思考とそっくりに見えるように模倣する戦略を取った。
(例)Facebook上の写真に映る人の写真に人名をタグ付けしてもらい、その人物の画像のパターンを大量に収拾し、統計的に人を認識できるようにするとか。
大量のデータをコンピュータで分析して、帰納的に経営の意思決定をするということは、アメリカではさんざんやられているようです。
もしかしたら、将来的には、よほど高度な分析能力がなければ、大部分のホワイトカラーの仕事がコンピュータに奪われる時代が来るかもしれません。
ただし、どれだけ研究が進んでもコンピュータには出来ない分野は必ず残ります。どういう分野かは本書をごらんあれ。
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タイトルの印象に反して、内容は、アカデミックな数学の話。出てくるエピソードが面白く楽しんで読めました。数学の面白さを再認識しました。
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タイトルはセンセーショナルですが,文系タイプの人が知っておくべき数学やコンピュータの知識がちりばめられ,なぜそれを学ぶべきかがきちんと論じられています。大人向けの数学入門書としてもお勧め。
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人工知能についてわかりやすく書かれた本
専門的な内容にはほとんど言及せず,
基本的なことから人工知能を説明してくれている.
特に,題名にもなっている人工知能が社会生活に及ぼす影響は,
多くの人が知っていても良い内容だと思われる.
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途中飛ばして読みました・・・・予想以上に数学の基礎知識がないw
ただ、コンピュータの出来ること・出来ないこと、また関わり方を学ぶにはいいきっかけになった気が。
・メカニカルタルク(コンピュータの下働きする人間)の出現。
・イノベーションが起こる原点となるのが、パスカルが行ってような「誰もが暗黙のうちに知っているけれども言語化されていない何か」を言語化する作業。