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宇喜多能家・直家・秀家を中心に,宇喜多氏興亡の経緯を解説する。
宇喜多直家に対する「梟雄」という評価の再考を一つのテーマとしている。
「梟雄」とされる根拠の一つである,主君たる浦上宗景を裏切ったという点について,そもそも浦上宗景との関係は主従関係ではなく,独立勢力同士の同盟関係であって,その破棄は非難されるものではないとする。
しかし,同盟関係を一方的に破棄していることや,姻族を謀殺していること自体は否定しておらず,戦国時代では珍しいことではない,という程度のフォローに留まる。
同盟破棄や親族・姻族での紛争など当たり前で,江戸時代以降,儒教的観点から後付けで批判されただけであるから,その程度のフォローで十分ではある。
宇喜多秀家については,豊臣政権内での地位の内実とその形成過程に力点を置いた解説がされている。
エピソードの紹介は少ない。
その代わり,宇喜多氏を取り巻く政治情勢の変化や宇喜多氏の経済基盤などに力点が置かれている。
ただし,資料が少ないため,かなりの部分を推論により,結論も慎重であるため,単なる読み物と期待すると,読み進められない。