- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
ある昭和史 自分史の試み 改版 みんなのレビュー
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
3 件中 1 件~ 3 件を表示 |
紙の本
「ある昭和史ー自分史の試みー」
2012/03/23 11:35
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:moriji - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は冒頭で、昭和を生きた庶民を「歴史の急流の中で翻弄されてきた一艘の小舟のような存在」として捉えます。まさに急流であった昭和の歴史の中で、著者を含む庶民は、翻弄され、破壊され、遺棄され、放置され、あるいは弄ばれてきたわけですが、そのような中にあった著者を含めた庶民のありかたを、実に明瞭な形で描き出しています。
それは、ひとえに、著者の言う「自分史」が、単なる個人の歴史ではなく、個人はすべからく時の政治、経済、文化、社会の影響を色濃く受け続けている存在である、という基本的な認識に支えられているためだと思われます。
「庶民生活の五十年」「十五年戦争を生きる」「ある常民の足跡」「昭和史の天皇像」からなるこの著作に一貫して流れているのは、著者のそういった姿勢です。この姿勢を確保するために、著者はあらゆる資料からの引用を試みます。それは例えば時の流行歌の文句であったり、新聞投稿の記事であったり、あるいは「文化住宅」の見取り図であったり、識者の論文であったりするわけですが、そのような具体的なところにあらわれた庶民の生活、そして心情、感性、思想、怒り、悩み、哀しみ、喜び等々を通じて、私たちは昭和史の真っただ中で生きてきた人々の心に迫ることが出来るのです。
大きく捉えれば、「世界に冠たる」軍事大国であった日本帝国の奢りと滅亡、それを唱導、放置あるいは見過ごしてきた政界、軍部、財界、思想界の体制への悲痛な告発、そしていまだに残るかつての「無責任体制」への警告まで、実に幅広い昭和史を書き続けていきます。
ここには、単なる「事項の羅列」にとどまらない、生きた「歴史」がビビッドに息づいていますが、著者は昭和を振り返り、こんな言葉を残しています。
「美しい日本の海は死に絶え、企業によって奇形にされた棄民の呪詛を鋭く背中に受けながら、スモッグに覆われた都会の空をふりあおいで、来し方ゆくすえを考える、かれらの無量の吐息がきこえるようである」
3.11以降の日本に生きる私たちは、常にこの本に戻り、再度昭和史とそこに生きた庶民の「国民的体験」の意味を考える必要があると思います。
紙の本
歴史家・色川大吉氏による「自分史」の先駆けとなった異色の同時代史です!
2020/08/20 10:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『昭和史と天皇』、『NHKこころをよむ : 北村透谷を語る』、『自分史 : その理念と試み』、『わだつみの友へ』、『北村透谷』、『わが聖地放浪 : カイラスに死なず』などの著作で知られる日本近代史、民衆思想史を専門に研究されてきた歴史家・色川大吉氏の作品です。同書は、十五年戦争を主軸に、国民体験の重みをふまえつつ昭和という時代を鋭い視角から描き切り、「自分史」のさきがけとなった異色の同時代史です。毎日出版文化賞を受賞された傑作でもあります。ぜひ、一度は、読んでおきたい一冊です。
3 件中 1 件~ 3 件を表示 |