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紙の本
有川さんの地元愛たっぷりの作品。地方環境行政に携わる方必見ですよ!有川ファン、ご心配なくちゃ~んと甘いの入ってますw
2011/03/29 08:23
25人中、24人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nyanco - この投稿者のレビュー一覧を見る
高知新聞に連載が始まった頃からずっと気になっていて読みたかった作品。
有川さんの地元・高知愛に溢れた素敵な作品でした。
県庁観光部の中に作られた「おもてなし課」、ネーミングはインパクトがあるものの実態は…
何をやったらいいか解らない4人の職員が手始めに依頼した『観光特使』制度。
県出身の有名人に打診したし快諾してもらったものの、1ヶ月経てどもその後の連絡は梨の礫…
お役所仕事と民間の温度差を感じさせてくれる物語序盤のエピソード。
県出身の作家・吉門が、おもてなし課の若手・掛水の尻を叩きながら、物語が進行していく。
『フリーター家を買う』を書かれてからの有川さん、こうした社会派ネタを取り上げて作品に仕上げていこうという姿勢がとても良いと感じています。
実はこの『観光特使』の依頼は有川さんに依頼された話で、その後、梨の礫…のエピソードも実際にあったお話だと巻末の特別企画の対談に載っていました。
本、資料、そして実際に現地に行かれ、歩き、体験し、多くの方と会った有川さんが綴る地元愛がたっぷり。
作家の私が出来ることは小説を書くことと「おもてなし課」を舞台に小説を書く吉門=有川、読者は、有川マジックによってどんどんと高知に行ってみたくなってくるw
箱物や〇〇博のようなイベントが重視されてきた行政の観光政策だが、何もないことを敢えて売りにする…という中にいると解らないことを一度外に出た作家・吉門と清遠にアドバイスされながら行政の垢にまみれていないバイト・多紀ちゃんをプロジェクトに参加させ、船はやっと動き始める。
何も無いが溢れんばかりの自然を売りにしているニュージーランドがイメージモデルとされたり、田舎のない人の田舎…というコンセプトは地方観光の考え方として実に面白い。
やはりこれは売り方なのでしょう。
馬路村を例としてあげているのも非常に解りやすく興味を惹く。
各地方自治体の観光に関わる方々は、是非、読んでみるべきです!
たぶん、目からウロコでしょう。
ウミガメの産卵?、そんなものは何処ででも見れるが…と言った彼らのように…。
こんなふうに書くと何だか硬そう…と思われてしまいそうですが、いえいえ、有川さんのラブ要素もちゃ~~んと入ってます。
掛水くんと多紀ちゃんのじれったい恋愛進行具合にイライラさせられたり、馬路村のオヤスミのシーンは身悶えしてしまうことでしょう。
かわいい多紀ちゃんと、ネコ科肉食獣・佐和さんの対比も実に面白く、シアターの鉄血総裁を彷彿させてくれる吉門の「バカか、あんたらは」ぶりもファンには楽しい。
有川さんらしい巻末のあとがきやインタビューから、あの「パンダ招致案」をぶちあげた清遠のモデルが有川さんのお父様だったとは…w
キャラクターが生き生きと動き回る有川作品ですが、本作には清遠、掛水、リアル多紀ちゃんと実在の方々がモデルとして登場しているので、いつもよりも更にキャラが生き生きと動きまわり、小説とリアルの両方を楽しめたように感じます。
キャラが楽しい有川さん、この作品、ただひとつだけ残念だったのは楽しみにしていた新聞連載時に挿絵を描いていた大矢正和さんのイラストが見られなかったこと。
ウチダヒロコさんのカラフルな装丁もとてもキュートだけど、シアターでもタッグをくんだ大矢さんによるキャラの絵が見られないのが哀しかった…
地方新聞購読の有川ファンの方々、切り抜きをして綴っていたりするんだろうな~、全く羨ましい限りです。
地方を応援したいという気持ちで書いた作品だからこそ、『県庁おもてなし課』で発生するすべての印税を東北地方太平洋沖地震の被災地に寄付することにされたと ご自身のブログ「有川日記」に書いていらっしゃいました。
私もこの思いに賛同させていただきたく思い、いち早く購入させていただきました。
有川さんの思いが多くの人の心を動かし、この波紋が更に大きく広がり、被災地に届きますように…
紙の本
公務員にイライラさせられるワケがわかった
2011/04/18 16:44
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
高知県庁の「おもてなし課」は
「観光立県を目指し、県外観光客を文字通り
『おもてなし」する心で県の観光を盛り立て』る部署。
そこに配属された入庁3年目の掛水史貴と
アルバイトで、アシスタントの明神多紀を中心に
硬直化したお役所ルールと公務員の思考を変え
地元を盛り上げるためのノウハウを身につける、
いわばお仕事小説であり、地方応援小説です。
まず「おもてなし課」は他県でもやっている、
有名人による観光大使に高知県の観光地をアピールすべく
名刺を配ってもらう――という手あかのついた手法をとります。
掛水が担当した観光大使の中に
県出身の人気作家・吉門喬介がおり
彼が掛水にさまざまなダメ出しをし
観光立国のためのアイデアを提言しはじめます。
掛水がグダグダで、吉門ならずとも
本当に公務員にはイライラさせられます。
巻末で有川浩と高知県の「おもてなし課」の対談が
あるのですが(本当に「おもてなし課」がある!)http://www.pref.kochi.lg.jp/~omotenashi/
それが実話だというから、再び驚き。
必要最低限、公務員には近づきたくないくらい
ダメダメです。
伏線として、20年前に「パンダ誘致論」をとなえた
ある職員が、閑職に左遷され、退職に追い込まれたという、
県庁にとっては後ろ暗い事件があります。
また、実際に掛水らがノリにノッて動き始めるのですが
観光立国を目指し、柔軟性と独創性を求めながら
いざ、新しいことを始めようとすると
「待った」をかける古い体質にもイライラ。
特に「民間感覚」という役所がお題目で唱える言葉を
全く彼らが理解していないことを明らかにしたのが
すばらしい。
また外部の人間で、学歴は無関係で、気のきく若い女性
という条件で採用された明神の働きがいい。
こういう「いいアルバイト」っているいる!
彼女のモデルとなった高知県「おもてなし課」の女性が
いるのは救われますね。
さっきの「公務員には近づきたくない」発言取り消し。
高知の魅力もふんだんに語られ
全く縁もゆかりもないですが
そういえば馬路村は一年に一度、浅草で物産展を開くので
なにか買うな~と思いだし、次の機会が楽しみになってきました。
こういうところで「読んでほしい」と書くのは不遜なので
なるべく書きたくないのですが
本書は全公務員に読んでほしいですね。
紙の本
ひかりはすぐそばにある
2011/04/15 20:59
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はぴえだ - この投稿者のレビュー一覧を見る
有川さんの作品というのは、健全で、まっすぐで、ひたすら正しいことが描かれている。
そういうのって、読んでいて、とても共感しやすい。
誰しもが分かるなぁ~と思うだろうし、そうありたいと願うだろうし、自分と重ね合わせてふがいなさに情けなくなる時があるだろう。
これがほどよいバランスの時は、素直に自分もがんばらなきゃ!という気持ちになれ、有り難い教訓となってくれるのだが、一歩間違うとバランスが崩れてしまい、おしつけがましく感じ、説教は結構だよ!という気分になる。
ここ最近、いろんなことが教訓めいていて、ちょっと一歩引いた感じになってしまっていたのだが、今回はまっすぐのめりこんで、とてもおもしろく読んだ。
今、こういう時期で、日本全体が元気がなくなっている。
この作品、今この時にとてもぴったりで、言い方は良くないが、タイムリーだったなと感じるのだ。
内容とかが、今、この現実にリンクしているわけではないのだが、観光を通して地元を元気にしようと悪戦苦闘している姿は見習うべき点が多いと思うし、観光だけに限らず、これから長い時をかけて日本全体にとって、必要なことだと思うのだ。
それ以外にも個人の仕事に対する姿勢や、取り組み方、人との付き合い方。
ほとんどが当たり前のことだが、忘れがちになってしまうことがちょこちょこと出てくる。
ためになる、と書いてしまうと、難く思われかねませんが、やさしい言葉で読者が受け取りやすく、吸収しやすいように語りかけられているので、とても参考になる。
観光と、お仕事だけでは、少々物足りなさを感じるのだが、有川さんらしい少しの胸キュンがスパイスとしてふりかけられている。
おとなでも、こういう甘酸っぱさは、心をやわらかくしてくれて、いいな!って思う。
楽しくて、おもしろくて、元気をたくさんもらった。
心の糧になってくれる作品。
たくさんの人に読んでいただいて、ぜひ笑顔になってもらいたい。
紙の本
見えてくる別の視点
2011/07/07 20:22
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
県庁おもてなし課。高知県の観光発展のため独創性と積極性をもって自由に企画立案するための部署…なのだが、非常に残念なことに県庁職員の成分にはその2つは入っていない。とりあえずよそもやっているからということで、高知出身の有名人に観光特使になってもらうことにした。
おもてなし課の掛水史貴が担当するのは作家・吉門喬介。観光特使といってもただ名刺をばらまいたりしてもらうだけだし、簡単に受けてもらえるだろうと考えていた掛水だが、その吉門から観光特使の実効性について様々な質問をされ、全く答えられない自分に気づく。それはそうだろう、全く考えていなかったのだから。
課員の中には苦言を呈する吉門を嫌う人々もいたが、彼の言うことには一理も二理もあるということを実感した掛水は、彼にアドバイスを依頼する。しかし本業もある吉門は、代わりに「パンダ誘致論」という謎のワードを残し、彼に調べてみるよう告げる。
パンダ誘致論とは、二十年以上前に高知観光立県化を掲げ、前例無視で様々な実現案をまとめながら、それを嫌った上層部により放逐された県職員・清遠和政の掲げた政策だったのだ。
清遠の存在を調べてくれたバイトの明神多紀をアシスタントとして、清遠和政を口説き落とすためにアプローチをする掛水だったが、彼にたどり着くまでには、県庁に恨みを持つ彼の娘・佐和が障害として立ちふさがるのだった。
民間の視点から見たときにどれだけ県庁職員の考え方が特殊かということを詳らかにしながら、実際に高知というフィールドを生かして魅力ある観光資源を掘り起こすアイデアをベースに、そんな県庁職員たちがどんどん成長していく姿を描いている。
そしてその裏面に、掛水と多紀、清遠家と吉門の恋愛模様、人間模様を織り交ぜている。
地元の人には珍しくないものでも、観光客には珍しいものなんだ、それが観光資源になるんだ、という様な、視点の切替がきらりと光る。もしかすると、故郷を活性化するために尽力してみたくなったりするかもしれない。
個人的には、もし掛水くんが県庁を辞める時が来たら、多紀ちゃんがどういう反応をするかが気になる。
ちなみに、作者は本書の印税を東北地方太平洋沖地震の被災地に全額寄付するそうだ。