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紙の本
筋道を立てて思考すること
2011/04/18 17:28
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆうか - この投稿者のレビュー一覧を見る
本当にこの本は、一読の価値がある。まず、科学といっても理系とか
文系ということではなく、何ができるのか、できないのか、何をしたいと
夢見るのか、望むのか、という「科学」の実例をを、現場で実際に活躍している人たちとの対談という形で提示してくれているから。
科学万能の錯覚、それの裏返しの失望や不当なおとしめ。最近
そういうものを多く目にする。この本を読むと、判断を誰かに依存
するのではなくて、自分の頭で考えること、そのためには「科学的
思考」を誰もが、ある程度身につける必要があることが良くわかる。
学者、芸術家、ジャーナリスト、知事、思想家。さまざまな
人たちがその人たちの切り口で科学を語る。介護と科学、マンガと科学、
人々と科学的なものをどう結びつけよう?
できないことはできない。じゃあ、どうしたらできるようになるだろう?
それが出発点であることを教えてくれる。
「科学の横道」、というタイトルだけど、それこそが王道で、科学って
本当にステキな営みなのだ、と読み終わるのがもったいないような本。
紙の本
横道から正道が見つかること
2011/08/05 17:23
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
要するに科学は専門化、セクト化してつまらなくなった。もっと理系と文系を横断的にすりゃ新たな突破口が見つかるかもしれないと。で、いわばジャンルが異なる人と対談という異種格闘技を行い、その端緒を探る。そういう本。編者ならではの懐の広さが成せるわざだ。
本書から気になった箇所の引用と感想を。
○漫画家・浦沢直樹との対談
「佐倉 たしかに、その時代の主流でうまくいっている人は、イノヴェーションをする必要がないから当然です。既存の枠のなかでうまくいっていない人がイノヴェーションをする。科学者でも、ニュートンやアインシュタインは、相当ひねくれものだったらしい。」
技術でもアートでもそれまで積み上げられてきたものに、一段何かを積み上げれば評価されやすい。ところが、突然、どこからともなく現れた、まったく新しい得体の知れないものに対しては、拒否反応を示す。それはその価値判断基準がないからだ。だけど新奇なものとて伝統や主流の学説をたたき台にしている。
○小説家・堀江敏幸との対談
「佐倉 科学者からすれば、それはあくまでもノイズなので、できるだけその影響を小さくするように努めるのがプロの科学者の態度だ、ということになるんだと思います」
「堀江 そこが、たぶん、文系の世界との違いですね。ノイズも音のうち、ノイズもデータだという考え方ですから。ノイズのない音は、音にならないという世界で僕らは仕事をしている。言葉は、ノイズですから」
「ノイズのない音は、音にならない」。この一文を読んでミネラルウォーターと純水を思い浮かべた。科学的にピュアなのは、純水の方だが、飲んでおいしいのは、さまざまなミネラル分が含有されているミネラルウォーターの方だ。
「言葉は、ノイズ」。そう思うと伝わらないのは当然かもしれない。誤解・曲解されるから面白いとも。科学とて失敗や偶然から画期的な発明・発見がされているわけだし。ええとセレンディピティだったっけ。
○理学療法士・三好春樹との対談
「三好 「介護」の介は媒介の介。媒介というのはヘーゲルの言葉(Vermittlung)の訳語で、あるものを通して他のものを存在させるもの、という意味。つまり介護とは、私という存在を媒介として、老人という他の主体を存在させるということです」
「三好 介護は、理科系と文科系の両方を含みます。「老化」と「老い」の両方が入っていますから。老化は理科系で、老いは文科系的」
介護に求められるのは、理系の知と文科系の情、機微ってことなのだろうか。まさしく臨床、現場なわけで。
「介護とは、私という存在を媒介として、老人という他の主体を存在させる」。
これは深い。身体がかなりギクシャクしても頭ははっきりしているぼくの父親がなぜデイケアセンターで一緒にお遊戯などするのを嫌がるのかも、よくわかった。
結びの発言として、ここかな。
「佐倉 科学は文学になりうるか、文学は科学になりうるか。先は長そうですが、それだけぼくらがやるべきことがたくさんあるということですね」
カントは哲学者でもあり、数学者でもあった。
新聞で読んだが、大学の文学部は就職に使えないんで、名前を変える動きがあると。たとえば国際比較リテラチャー学部英語文化学科とか。でも肝心の古教授が、何十年も変わらぬ講義だったりして。単なる小手先で、包装紙のデザインを変えるだけだったりして。
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