紙の本
最高に面白い科学入門
2023/02/04 20:04
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投稿者:大阪の北国ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは「本当に面白い本」だ。
純文系の私が楽しく読んだ鎌田浩毅先生の「世界がわかる理系の名著」のレイチェルカーソンの項で、本書を「理系の科学者にも速く面白く読める本」「作家と科学者が出逢ってできたコラボレーションの傑作」とべた褒めだったのでさっそく手に取った。日本の7人の科学者へのインタビューを通じて、宇宙・鉱物・DNA・スプリングエイト分析・粘菌・遺体科学・肉体をテーマに驚きの科学の姿を紹介してくれる。期待以上の読み応えだったし、鎌田先生のべた褒めがよくわかった。
さすがに小説を書かれる小川先生の文はわかりやすくすらすら読める。しかも小川先生が感じた不思議や驚きが、読み手である私もインタビューに同席しているかの如くガンガン伝わってくる。さすがの筆力に唸らされる。読みながら「へえー」の連続である。
特に面白かったのは、理系の皆さんには普通の知識かも知れないが、
○二乗するとマイナス1になる「虚数」が量子力学の理解には不可欠だとの話(文系の私にはこうなると理解不能であり哲学的観念論に結びつけてしまうが)の堀秀道先生、
○集団として生き残るために個々の生物体(自分)の生存よりも犠牲の精神が優先する粘菌の振舞い(これを利他的行動とよぶのだろうか)を説く竹内郁夫先生、
○動物遺体にこそ生命科学の本質が隠されているが、ゾウなどは大きすぎて煮るための鍋に入らないため、土に埋める土地を貸してくれる人を探すと、初めは嫌がった人が象を埋めるとホウレンソウが妙によくできるために喜んで貸してくれるようになるという遠藤秀紀先生、
の話であった。ページをめくる手がどんどん速くなった。
小川洋子先生の限りない優しさや小さくて頑張っているものに対する慈しみに溢れた珠玉の一冊であった。文系の人に読んでもらって、科学の面白さをぜひ分かち合いたい。
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お話を聞きにいってその内容をまとめた本。
小川がそう科学に強くなさそうで、それでも聞いてきたことをしっかりまとめていて、結果的に話がわかりやすくなっているところがよいですね。
しかも、科学の技術的内容だけじゃなく、話を聴いてきた人の人柄も良く表現されていて、類書との差別化になっているのではないでしょうか。
遺体科学とか、初めて聞いたので大変に興味深かったです。
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科学アレルギーを持っているような人にはちょうどいいガイドになると思う。専門的なことは程々に、分かりやすく書いてある。そして小川洋子さんの感受性が光っている。
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面白かったです。表現に素数とかが出てきた時に『ああ、博士の愛した数式を書いた人なんだな〜』とか思いました(苦笑)
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女性作家にはあまり手を出さない方なんだけど
小川洋子氏の作品の「ひんやり感」は結構好きかもしれない。
んで、その人の対談集だったので読んでみた。
結構ミーハーだ(笑)。
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科学に興味があるのはもちろんなんだけど、著者はやっぱり職業柄、専門家たちの人物像にも無意識に着目してたんだなぁというのが文章に滲み出てる。
あと、それぞれの分野イメージから、めくるめく妄想が広がってしまうという現象も、全章に見られておもしろかった。
資料写真が、本格的な科学本に比べて少ないので、いろいろと文章を頭で理解し想像を巡らせる必要はあるけれど、著者が「科学好きの一般人」という立場だったため、だいぶわかりやすかった。
おかげで、ずっとわくわくした気持ちが持続した状態で、科学を覗くことができた。
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やっぱり一流の仕事をしている人の話はおもしろい。それぞれの分野にそれほど関心があるわけではないが、研究者の熱意が伝わるインタビュー集。個人的には動物の遺体をひたすら収集する遺体科学の研究者の話が特にそそられた。
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本書は「博士の愛した数式」の著者の小川洋子さんが科学分野の専門家を訪ねて書いたエッセイ集です。
天文分野から鉱物、粘菌、プロ野球のトレーニングなどと言った内容が全7章にわたって書かれており、それぞれ小川さんの感性が光るエッセイでした。
科学分野と言っても、巷によくある一般向けに書かれた専門知識の解説本と言う感じではなく、訪ねて言った先で聞いたことや知ったことを小川さんの心で受け止め、表現している文章が綴られています。
例えば、兵庫県にあるSPring-8(スプリングエイト)を取り上げた第4章では、冒頭、スプリングから春をエイトから8を連想した小川さんが綴った文章に思わずくすりとしてしまったなど、終始柔らかい気持ちで読み進められました。
本書に取り上げられた分野全てに精通している人にとって、この本を読んでも新しい知識を得る事など無いでしょう。
しかし、どちらかと言えば、(上記しましたが)本書は取材を通して書かれた科学の解説本ではなく、取材を通して書かれたノンフィクションなのだけどどことなくフィクションな感じがするエッセイ集なので、一つの文学作品として楽しめる本です。
柔らかい気持ちで科学を楽しもう。
そんな気持ちの方にはお勧めです。
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科学とは本当に面白くて奥が深いものだなあと思う。ひとつの分野の研究に打ち込む人たちのなんと清々しいことだろう。
「浮世離れ」とはまさしくこういうことをいうのだね。
どの話も大変興味深かったのだが、宇宙の成り立ちや鉱物の奇跡、遺伝子の精巧さなどが特に心に残った。
「一度誕生した物質は無にはならないのです」すべての物質はつながりあい、関係しあっているのだ。
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特に一番最初の天文学の先生の話なんかは、一般常識レベルのことを無理矢理文学的な表現にしようとして頑張り過ぎなんじゃないの?というイメージ。もう少し深い話を期待してたんですけどね、数学者の藤原さんとの対談のときのように。
数学以外のジャンルについては、小川さんの文学的表現も空回りな印象。
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小川洋子さんが科学者に会いに行き、お話を聞いている。なので、最先端の科学を紹介すると言うよりも、科学者たちの人となりを綴っているという感じ。主に、人物や施設に焦点が当てられ、小川さん独特の温かい冷静さを持ったタッチで仕上げている。読み物として面白い。
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夏の文庫フェア1冊目。
作家が科学者をインタビューする、
「科学の世界への招待」本。
宇宙の始まりの話や、エニシング・グレートの話、
ちょっと聞いたことあったけど、実際どうだったけを再確認できる
話題もあれば(逆に言えば知ってたよその話、とも言える)、
おぉーこんな学問が(遺体学はいちばん面白かった)と、
思わず感嘆が漏れてしまうような内容もある。
ただ、「最新科学の紹介を作家を介してわかりやすく」
のコンセプトはすばらしいのだが、どうしても
最新科学の説明にはついていけない部分があったのも事実。
おそらくある程度勉強していないと理解できない内容が含まれています。
本書に含まれている7つの科学の扉、
どれか一つでも気になったものがあるならばきっと著者の勝ち。
ノックだけではなく、その奥に入ってみましょうと言われてる気がする。
もう少し色々調べて勉強してみる。
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まず、最初に思ったこと。
紙、白っ!!
自分の中の文庫本なり本のイメージというのは、ちょっと古びた茶色っぽくてちょっと薄い紙に文字が印刷されているものだった。
とにかく白い、ただそれだけで何故か安っぽく感じてしまい、実際、流し読みした程度です。(もちろん自分の記憶にないだけで、このような白い本に出会っているのかもしれないが、読書記録を意識し始めてからは初めて。)
博士の愛した数式を、読書感想文の課題図書で読んでいたので小川さんは思い出に残る作家さんの一人です。
今回はそれぞれの分野の科学者との対談とのストーリーということで、先に読んだ「科学の横道」のような対談のようなお話の、言い方が悪いかもしれませんが“文系視点ver”のようなものと思っていました。
実際はなんの前触れもなく渡部さんのお話から始まり、科学を深くというよりは、ちょっと軽く学ぼうというような、小川さんの知的好奇心に基づいたものでした。
知的好奇心に基づくもののためか、読んでいて小川さんの科学観が今イチよく分からない。
あとがきから、“文学とかけ離れた科学の専門家とお会いするのは…”とあり、ここで「文系」「理系」の壁を作ってしまっていらっしゃるんだな、と思いました。
もとより、本の内容と自分の求めていた内容と、ベクトルがずれていたためあまり興味を持って読めなかったです。
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新しい世界を知ることができた。科学にはうとい私にもわかりやすく、素直にすごいな~と感じさせてくれる。なんといっても小川さんの描写がとても魅力的。そういう目で見てみれば、科学はどんどん楽しくなっていきそう。
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夏の文庫フェア8冊目。
冒頭の、祖父から「きれいなお月様が出ているから、外に出て見なさい」と誘われる場面から、すうと惹きこまれます。
どの章からも、著者が科学に並々ならぬ愛情を抱いていることが伝わってきます。
そして、科学者たちの研究にかける情熱と、「その人らしさ」がありありと描かれています。
よく知る分野についてはすっと頭に入ってきましたが、疎い分野については、わかりやすく話してくれているんでしょうが、まだ難しく感じました。
著者は科学が大好きで、当然その分野に明るいので、お会いする科学者たちに投げかける質問も、私ほど無知な人間のものではありません。
興味を惹かれる分野がいくつかあったので、それについては改めて入門書を手に取りたいです。
特に面白かったエピソードは、2章堀秀道氏の「日常、ルーペは5秒以内で取り出せる」というところ。
”まさに西部劇に出てくるガンマンの、早撃ちのようなものである。武士に刀、鉱物家にルーペ、というほどの必需品なのだ。”(p45)
堀氏が、いかに滑らかに、素早くルーペを取り出すのかが、この描写によって目に見えるように伝わってきます。
そして、自分で採ったトパーズを奥様の婚約指輪に贈ったという話。
”こんなにもロマンティックな婚約指輪の贈り方は、他にないだろう”(p59)
まさにその通り。
文庫本のあとがきに、”自分が本当に伝えたいのは、その研究に打ち込む人間の姿なのだと気づきました。題材が何であれ、作家はやはり人間を書くのが仕事です”とあるように、研究する分野そのもののみならず、科学者のひととなりが、柔らかみを帯びて伝わってきます。
このような最先端分野も、研究しているのはひとりひとり人間なのだと、改めて気づかされました。
巻末にある写真の、著者のやわらかな笑顔が印象的でした。