紙の本
誉田 哲也、短編でも腕の冴えを見せてくれました。でもなにより嬉しかったのは、あの関西弁を使うセクハラおやじが登場しなかったこと。大阪の人には申し訳ありませんが、関西弁のミステリ、特に刑事ものってなんだか変なんです。それがないだけでお話がこんなにスッキリするなんて、偏見ですよね、絶対・・・
2012/01/26 19:24
8人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
雰囲気のあるカバー写真で、ちょっと映画風だなとは思いますがいいのではないでしょうか。帯を意識してカバー下半分をほとんど色だけにしていますが、裸にしてみてもさほど違和感がありません。文字の入れ方さえ工夫すれば、このまま文庫にも使えそうなデザインかな、なんて思います。このシリーズの泉沢光雄の装幀は安定しています。ちなみに写真提供は(C)MASAO HAYASHI/SEBUN PHOTO/amanaimages、(C)BLOOMimage/amanaimages。
で、今回は姫川玲子シリーズからのスピン・オフ短編集。出版社のHPの内容紹介文は
*
『ストロベリーナイト』のガンテツ。
『シンメトリー』/「過ぎた正義」の倉田。
そして、捜査一課姫川班最若手だった葉山。
捜査一課殺人犯捜査係のガンテツこと勝俣健作が手がけた、
製薬会社サラリーマンの殺人事件。
息子の起こした殺人事件によって刑事の職を追われる直前、
倉田修二がかかわることになった、二人の男女を襲った路上殺傷事件。
姫川玲子班解体直前、
殺人犯捜査第十係に所属していた葉山則之が担当した、
世田谷の老人同士の小競り合い。
事件の規模も様相もさまざまだが、共通している点が、ひとつあった。
それは、被害者の個人情報を、
犯人は何らかの手段で手に入れているらしきこと。
事件の背後には何があるのか!?
*
となっています。各話についても触れていますが、ここはあえて違う角度からそれぞれについて紹介しましょう。もちろん、初出も書いておきます。
・感染遊戯/インフェクションゲイム(「小説宝石」2008年7月号):事件の鍵は15年前に捜査一課殺人犯捜査係のガンテツこと勝俣健作が手がけた、製薬会社サラリーマンの殺人事件。大手製薬会社勤務の25歳の若者の死にまつわる様々な不思議・・・
・連鎖誘導/チェイントラップ(「小説宝石」2010年5月号):息子の起こした殺人事件によって刑事の職を追われる直前、倉田修二がかかわることになった麻布十番で起きた路上殺傷事件。34歳の女性は死亡、45歳の外務省勤務の男は重症、現場から逃げ去る男が目撃され・・・
・沈黙怨嗟/サイレントマーダー(「小説宝石」2010年8月号):仲良く碁を打ち合っていた老人が、相手の「待った」の一言で顔色が変わった。そしてついには傷害事件に。祖父の怪我に驚いた千尋は北沢警察署に行き、刑事課強行犯捜査係の葉山則之が対応して・・・
・推定有罪/プロバブリィギルティ(「小説宝石」2010年10月号~12月号):二係の指名で杉並署の殺人未遂事件を手伝うことになったガンテツ。しかも、被疑者は既に逮捕済み。問題は被疑者の服についていた血の量、とてもその事件だけのものとは思えない・・・
どの話も楽しめます。私としては、姫川の過去を言い立てるガンテツが登場するだけで、興味が半減するところがありますが、お話の出来がいいのでスルーしておきます。おまけに、この短編集には東京生まれながら関西弁で姫川に言い寄っては、肘鉄を喰っているあのオッサン刑事、蒲田署の巡査部長・井岡博満が登場しません。それだけでも心が休まるっていうものです。長編で疲れた頭を短編で癒してみてはいかがでしょう。
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有川浩「県庁おもてなし課」が
地方自治関係機関の公務員向けの提案と意見とするなら、
この作品は中央政権や官僚たちへの警告だと思う。
姫川シリーズ第5段といより、スピンオフという感じ。
短編集のようで、実は・・・という構成。
同作者の「ヒトリシズカ」的な構成で、
内容は「主よ、永遠の休息を」のような現実の事件をモチーフにしている。
いわゆる、「黒の誉田」作品だ。
(姫川シリーズのお楽しみなコメディ要素はない)
姫川の登場シーンはほとんどない。
ガッツリ姫川を短編で楽しみたいのならなら「アシンメトリー」だろう。
「主よ、永遠の休息を」と同様に後味はあまりよろしくないが、
ズンと心に残る。
次こそは、長編で「姫川シリーズ・セカンドステージ」が
開幕することを切に願うものである。
各章のタイトル
■感染遊技・・・「ストロベリーナイト」のガンテツ。
■連鎖誘導・・・「シンメトリー」の倉田。
■沈黙エンサ・・・姫川班の最若手だった葉山。
■推定有罪・・・ガンテツ・倉田・葉山。
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姫川シリーズのスピンオフもの。一見関係ないと思われた事件の裏にはあるつながりがあって・・・
官僚制度に対する批判云々やネットの闇みたいなテーマはアリなんだけれど、イマイチ乗り切れないのはなんでだろう。
微妙に雑っていうか、やっつけっぽい気がした。
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まいったまいった、どことなく尻切れ的に終わったシンメトリーの倉田の物語をここに持ってくるか、そんな先のことを意識して短編をかいていたかと思うと、実に上手い。ただし、シリーズのことを知らなくても十分に背景が描かれているので、単品としても面白く、つながりを知っている読者にはおまけのお楽しみがあるという、実にエンターテイメントに徹した作品となっている。ただし、主題となっている公務員に対する魔女狩り的なストーリーは、少々、あくどい公務員という構図を極端に描きすぎていて、本来、こういったマスコミが無自覚で煽る扇動に対する警鐘をテーマのためだろうとは思うが、短絡的な読者をマスコミと同様に煽ることにならない様にしていただきたかった。もう許してくださいとして自殺する公務員を、さらりとエピソード程度に紹介するのではなく、ここにも意味を残していただきたかった。それにしても、元刑事でその刑事としてのくびきを解かれた倉田は今後も、また、別のスピンオフで登場してくるのだろうなと思われる。無茶苦茶なガンテツでさえ、刑事の範疇でその限界内で刑事として生きているのに対し、倉田は別の道を歩み、自らの罪の贖罪と正義の在り方を刑事とは別の方法でさぐり、自己再生を果たすことになるものと思われる。
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一見ばらばらなストーリーかと思いきや、最後に繋がってきてびっくり。
姫川さんはチョイ役(笑)でしたが面白くて一気に読んでしましました。
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内容(「BOOK」データベースより)
捜査一課殺人犯捜査係のガンテツこと勝俣健作が手がけた、製薬会社サラリーマンの殺人事件。息子の起こした殺人事件によって刑事の職を追われる直前、倉田修二がかかわることになった、二人の男女を襲った路上殺傷事件。姫川玲子班解体直前、殺人犯捜査第十係に所属していた葉山則之が担当した、世田谷の老人同士の小競り合い。事件の規模も様相もさまざまだが、共通している点が、ひとつあった。それは、被害者の個人情報を、犯人は何らかの手段で手に入れているらしきこと。事件の背後には何があるのか!?―。
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姫川シリーズ待望の新作長編は、ちょっとヒネリのある
スピンオフ的な作品。ここまで姫川シリーズに登場した
人物達をメインに事件が展開されていく。姫川はチョイ役w。
今作のシリーズは違法捜査も厭わない、ヤサグレ度マックスの
一匹狼「ガンテツ」が主人公。まったく感情移入出来ないその
図々しさと傍若無人っぷりは、一周して痛快。
一見関係のなさそうな序盤の各パートが、進むにつれ、
各事件の裏に潜むリンクが浮かび上がってきて、その意図が
浮き彫りになってくるのは圧巻で...面白いです!
敢えてこういった人物達で構成したのも凄く上手い気がします。
今作はただの絵空事という訳でもなく、このクニの情けない現実を
極端ではありますが危機感を持って書かれていて、この事件の
裏に潜む本質に対して、感情を揺さぶられる。個人的には
誉田作品で久々のヒット!
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人は人を殺すか殺さないかの境界線は、どこなんだろうかと問われているようだ。 読み終わって日常の不気味さを味わう。自分の知らないところで自分の情報が晒されているかもしれないという不気味さ。
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読み進むにつれて各章の内容が結びつきスッキリ。小説家って前もって色々調べてストリーを考えると思うんだけど、この本の内容がノンフィクション的な部分も多くある様に思えてなりません。昨今、ネットを通じての些細な書き込みでも極力注意しないと問題になる。
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姫川シリーズのスピンオフ作品。3人の刑事が関わった事件が後半1つにまとまっていく展開は面白い。ネットと官僚社会をうまく絡めた物語も納得。ガンテツはいいキァラですね…次回は姫川の長編で来年とか、待ち遠しい!
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前作で解散した姫川班なんですが早くも捜査一課に戻ってきてたんですね。所轄での姫川の物語も読みたかったなぁ~っと、それはさておき今作はスピンオフ的な連作短編が繋がって大きなテーマが見えてくるって趣向です。
主役は姫川の天敵ガンテツで倉田と葉山が助演で姫川はちょい役で映画で言えば友情出演。
倉田ってシンメトリーの短編だけではもったいないキャラだったので再登場にはにやっとしてしまう。
官僚システムに警鐘を鳴らす深いメッセージが潜んでる割にはちょいと軽い感じですがまずまず楽しめました。タイトルのつけ方もうまいですね。
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大好きな姫川シリーズ最新刊。
いつもは脇役なガンテツやノリを中心に描かれている作品。
姫川玲子が主役の時はガンテツ大っきらい!
ノリって何考えてるんかわからん・・・。って思ってたけど。
ガンテツって結構アツイ奴なんやな。
ノリっていいヤツやん。
って読み終わってころには思ってるから不思議☆
姫川シリーズを読むといつも思うのは
終わり方がすごい好きってこと。
ホラー作家なだけに殺人や遺体の描写が結構エグイ誉田哲也さん。
だけどまたすぐ読みたくなるのは
くすっと笑える終わり方を用意してるから。
最後まで読めばきっとみんな虜になるはず。
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普段はあまり手にしない分野なので、新鮮ではあったかな。短編集かと思ったら、ちゃんとつながって、最後はすっきりしました。殺意を覚える点って意外と単純なとこなのかも・・・怖い気がするけど。
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短編集だと思って読み始めたので、最初の一作の終わり方にガッカリ。そこで止めなくて良かった。ニヤッとしてしまうラストまで、一気に読めました。
ガンテツは絶対に武田さんじゃないんだけど、どうしても頭のなかで動いてしまう映像化も良し悪しですね。
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姫川班復活まであと少し、って感じですが、お役所の汚いヤツらはやられて当然と思っている人が結構多い気もします。姫川班が復活したらこれどころでない大事件でガンテツとぶつかりそうで楽しみです。連作短編というよりも、一つの長編として良い出来だと思います。