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投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
東京で暮らしていた「私」が、三重県の志摩半島に居を移す。その最初の一年を、古くからの住人、あるいは同じように新しく移住してきた人々との交流を中心に描く。著者自身、愛知県の津島に生まれ育ち、上京したのち志摩半島に終の棲家を求めた人だけに、本書は私小説ともいえるし、文体がやや硬いながらエッセイとも受け取れる。一年間の季節の移ろいを、二十四節季に合わせて描くアイデアは面白いが、温暖化の昨今、志摩半島といえど、実際の季節とのズレは踏まえるべきだろう。
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川端康成文学賞を受賞した「海松」(新潮社、2009年)の続編とでも言うべき内容。作品の中で取り上げられていた、孤独な志摩半島での別荘生活が、ほぼ一年に亘る四季折々の自然描写と共に、よりリアルな形で表現されている。老境の入り口に立った一人の女性・「私」が、物書きとしての生活の場でもあり、長く暮らしてきた東京のマンションを離れ、これまでも時折り訪れていた海辺の小さな別荘で暮らすことを決意する。こうして、自然と向き合う孤独な生活がほぼ一年に亘って語られる。相棒は猫一匹だけ。志摩半島の濃い自然に囲まれて、次第に猫も野生を取り戻す。社会とのしがらみを断ったつもりでも、孤独な夜には死者の幻も現われ出て、過去のよしなしごとを思い出す日々だ。
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人生の中の、ひと時の休養・・・志摩半島での一年の暮らしぶりを四季の六倍のグラデーションで表現する暦、二十四節気に准えながら書かれた小説です。初老の扉の前に立ちながら志摩半島の自然の中で人生の侘び寂びと共に綴られていきます。人生の甘い辛いも噛み分け山谷も知る 主人公の 『私』 が異なりて遠からぬ近隣の住人と半島の森や海、自然に触れながら生きていくことの悲喜交々を語っていきます。近い将来その季節(齢)をむかえる読者(私)の心の中にも深く染み渡りました。
私小説とも随想とも物語とも思われる語り口は読む者の心を癒し志摩の、おおらかな自然の中で共感を得ることができました。
読後感=半島にて・・海の小道、森の小道を随想と共に歩き・・・・
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四季の移ろいをたんたんと描写している。都会では味わえない自然との出会い,人との出会い。ゆっくりとした時間を味わうことのできる作品。あまり深読みはできませんでしたが。
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海松の続編といえる作品。
年を取るとともに価値観が変わり、居を移す。
その場所で自分らしく生きていけるなら素晴らしい。
自分のこれから先がどう変わっていくか、
考えてみると興味深い。
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前作の「海松」もそうだったが、もう少し年齢を重ねてから読んだほうが、その良さが分かるのではないか、と思いながら、淡々と読んでいた。
終盤にさしかかり、主人公の女性(おそらく作者)が、人気のない海岸で、一人海水浴を楽しむあたり、力をいれなくても、浮力だけで人は生きていける、ただじっとしていればどこかに運ばれていくのだというくだりに、最近水泳を始めた私はとても共感できた。
地に足をつけて歩いている間は、なにやら肩に力が入っていたり、思い通りにことが進まないとイライラしたりといったことがあるが、大海原に浮かべば人はとてもちっぽけな存在だ。そして、体の力を抜いてゆったりと浮かんでいるのはとても気持ちよく、確かにこの世に生まれる前、母の胎内でもこんな場所にいたのだろうかと思わされる。
最後に作者が大きな決断をしていることが分かる。ゆったりと体の力を抜くこともあれば、次のステップに向けて自分で舵を取ることも必要。そのバランスがうまく描かれているように思う。
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どこか艶っぽい稲葉さんの文章で表される半島の様子。
「年取ると花鳥風月に惹かれる」とか「自然の元気をもらう」とか
そういう手垢のついた言葉とは無縁な、もっと突き動かされる感じが、
淡々としみじみと、でも押し付けがましくなく伝わってきてよかった。
海松も読んでみたい。
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東京暮らしから田舎暮らしへと移っていく主人公が
他人事でない感じがして。。
「農業に使うカレンダー」をわたしも歳を取ったら使ってみたいと思う。
10年後とかにまた読み返したい本。
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真っ白の装丁に風景の写真の帯があまりにも素敵で手にした本。
最近、装丁買いばかりのような気もするけど、また、静かな素敵な文章を書く方を知り、うれしい。
最近は、一気にものすごいスピードで本を読んでしまうことが多いのだけれど、この本は本当にゆっくりゆっくり読んだ。
気負うことなく、日々を淡々と過ごす中で、自分の身体と心をチューニングしていく姿にほっとさせられた。私が山に夢中になる理由と重なる気がして。ざわつく心をしずめられる、そんなお話。
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東京から志摩半島(三重県)へ行き田舎暮らしするおばさんの話。
自然の描写が下手。
登場人物に魅力がない。
主人公が下品。世話してた沼地をとられたら嫌だから借金して土地を買ったとか、仕事が眠くて面倒くさい、結婚式にも三回忌にも出席せずとか、ただのわがまま。友達が自殺したとか、森に死体があったとか、引きずって何度もほじくり返すわりに心理描写が雑。
小出しにする自然の情報も、こんなの読書をするひとなら知らないひと居ないだろうというような軽い情報ばかり。
上京したときの、東京の便利さ(本屋には新刊がたくさん並び、CDは何でも手に入る)だけ同意した。2行。
読む価値なし。
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田舎から東京に出てきて、田舎(伊勢地方)の半島に住むことになる独身女性の話。
軽い感じだが、比喩表現が多く、引き込まれるように3時間程度で読み終わった。
東京の喧騒は若いうちはいい。昼も夜も刺激があり、日本の中心だ。
しかし、終の棲家のなる地なのだろうか?
地方のあり方についても考えさせられる。
心休まる地として、地方も捨てたものではない。
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地味で地道で静か。
言語化するとそれらしい景色や状況をつくることができる。実際はもっと美しかったり、残酷だったり、寂しかったり、たのしかったり、寒かったり、暑かったり、煩わしかったり、おもしろかったり、切なかったり、苦しかったり、あたたかかったりするであろう半島の暮らし。そこでの暮らしもまた「いいことばかりではない」という佳世子さんの言葉も沁みる。そういうことも、もちろん踏まえてそこを住処にするのであろう著者。そこの暮らしからいろんなおもいが時間を超えて交差する。過去から現在へ、今から未来へ。現れては散っていく小さな物語の数々。誰にとってではない彼女のための住処を見つけたんだ。
そういう場所を見つけたい。
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ん~ここ最近、割とメリハリのある小説を読んでいたこと、そういった話が好きなことが相まって、この本は辛かったです。
自然あふれる半島に移り住んできた女性の日常を淡々と書かれています。
こういったお話も好きなはずなんですが、今回はチョッとダメでしたね~
特に半島を賛美するに当たり、東京との対比を頻繁に行うんですが、ちょっとしつこいかなぁと。
(東京も別に嫌いじゃないって書かれていますが、そうは読み取れない……)
ものを褒める時に、何かとの比較はあんまり良くないんだなぁってことを学びました。
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だいぶ以前に読んだ作品だが、心に残る。三重県の海の先の辺鄙な土地に家を建て、時折都会から逃げるようにやってくる作家。少しづつ庭を整備し、周りの人々と付き合い、老いた母の心配をしながら、ここで暮らすひととき。小さな世界かもしれないが、終の棲家はこんなところが良いなあ、と思わせる作品。
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梨木香歩が好きな人は好きそう。中年の女性の伊勢半島での十二ヶ月を描いた本。落ち着いた穏やかな空気が流れていて、読んでいるとほっと一息つける。