紙の本
科学では解明できない心の問題に脳学者が迫る
2021/07/31 23:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:empath - この投稿者のレビュー一覧を見る
臨床心理学者/故河合隼雄氏と脳科学者/茂木健一郎氏の貴重な対談の記録。
脳の研究がどんなに進んでも、心を解明できるわけではない。再現性・普遍性を求める科学の限界は、科学が見落としてきた関係性と生命現象が鍵という。
夢に近い無意識の状態を意図的に作り出し、心の世界に迫ろうとする箱庭は、心理療法でも使われる常套手段。
凝り固まった思考パターンを超え、可能性を引き出す方法として注目されている。最近、ワークショップで箱庭的手法が使われるのも納得。
科学では解明できない事柄にさまざまなヒントを与えてくれる宝庫のような作品。
投稿元:
レビューを見る
2008年の対談集を今本屋で見つけた、ということにもきっと意味があるのだろう。私の中の何かがこの本と呼応したということなのだ。
シンクロニシティというものを若干誤解していたのだが、河合先生がおっしゃるには「非因果的連関」なのだそうだ。シンクロニシティで出てくるものというのは、自分の無意識の中で大事なものなのであると。ものどうしに因果関係はないのだ。
因果関係にとらわれず、文脈の中で感じ取る。関係性というものを重要視する。そのあたりにこれから生きていく心構えのヒントがありそうに思う。
投稿元:
レビューを見る
とても面白かったです。エビデンスだけがすべてではない、分野は違えど臨床に携わる人間にとってこんなに勇気づけられる言葉はない。
投稿元:
レビューを見る
久々に河合隼雄先生関連の本を読んだが、もうこの世にいないことを残念に思う。
先生の言葉にはいつも心が洗われるような気がする。
とかく、ルーチン化してしまいがちな日常を振り返り、
自分の心と脳を整理する切っ掛けになった。
以下、メモ
心の解決は科学である必要がない。
関係性が心の基本、大事。解釈よりも認識。
夢は盲点、無意識にあるものが顕在化したもの。
生きている事自体、無理をしている。
心身が疲れて当たり前。
中心統合ではなく、中空均衡型を
華厳経では、関係の総和が「私」
科学にも倫理観を
シンクロニシティは外にあるものが呼応するのではなく、心にあるものを無意識に捉えている現象。
身体脳と人格脳という捉え方をしたときに、
人格脳を操作することは正しいことなのだろうか?
その人が正常に生活できるようになったとしても、
人格を変えてしまうようなことをやって良いのだろうか?
まっすぐに人と向き合うという事は難しい。
相手の魂と対峙することだから。
河合隼雄先生は、そこが素晴らしい。
夢を分析すれば面白いことになるかもしれない。
無意識の自分を見つけ出せるから。
現代人がストレスを感じるのは死後の世界が分からないから。
生活環境や科学が進んだ結果、誰もが世界のある程度を知り、
だからこそ見えないものに不安を感じている。
投稿元:
レビューを見る
臨床心理学者/故河合隼雄氏と脳科学者/茂木健一郎氏の貴重な対談の記録。
脳の研究がどんなに進んでも、心を解明できるわけではない。再現性・普遍性を求める科学の限界は、科学が見落としてきた関係性と生命現象が鍵という。
夢に近い無意識の状態を意図的に作り出し、心の世界に迫ろうとする箱庭は、心理療法でも使われる常套手段。
凝り固まった思考パターンを超え、可能性を引き出す方法として注目されている。最近、ワークショップで箱庭的手法が使われるのも納得。
科学では解明できない事柄にさまざまなヒントを与えてくれる宝庫のような作品。
投稿元:
レビューを見る
最初のほう、やっぱ頭の良い人たちの会話はわからんわ…と思ったけど、第三章でかわった!すごくわかりやすい。脳科学と、心理学、密接なようでいてやはり、おおもとの心構えが違う。だけど切り離せない…
あとは第二章に出てくるシンクロニシティの話が面白かった。
この手の勉強を始めたばかりの人は、一度読んでみるとおもしろいかも。
河合隼雄さんって、オモロイおっちゃんだったんだね~。
投稿元:
レビューを見る
河合隼雄の柔らかい人柄と茂木健一郎のリベラルな性格がにじみ出た対話。最も興味深かったのは次の2点。
①シンクロニシティ
シンクロニシティとはユングが提唱した概念で「共時性」と訳される。自分の無意識と外界がシンクロすること。
今の時代、知らず知らずのうちに、自然科学的な因果則でものを見ていることが多い。しかし、人との出会い、本との出会いなどは、この因果則では説明しきれないことが多い。これを説明するのがシンクロニシティだ。
②中心をはずさない
河合隼雄がカウンセリングのとき心がけているのは、「中心をはずさない」こと。言い換えれば、「魂をはずさない」ということ。相手の言動ではなく、魂の叫びにじっと耳を傾けるということ。
投稿元:
レビューを見る
しばらく前に読んだんですが、再読しました。河合隼雄先生が持ち出すエピソードは、結構同じものが多いんですが、相手によってその後の展開が変わるのが面白いところです。
僕は茂木健一郎さんが「科学者」を名乗っているのが今ひとつぴんと来なかったのですが、この本を読んで、自分の違和感の大本が理解できました。茂木さんは通常の意味での科学者じゃないんです。河合先生と約束されたという脳の研究だけはしてほしいところですが、どうなったんでしょうね。
いずれにせよ、今が難しい時代なんだということは、わかっている人には何十年も前からわかってたんだということがよくわかりました。
投稿元:
レビューを見る
文章を読んでるのに『この人に話を聞いてもらいたい!』と思ってしまうこの気持ちはなんだろう?
行間からにじみ出る河合隼雄先生の雰囲気がたまらなくいい。
しかしその親しみやすさに安心感を抱き、あまりの底しれなさに恐怖を感じる。
河合隼雄先生はまさに心そのものの存在になれる人。
『中心をはずさずにそこにいる』ことも心そのものとなることなのかな?
心とは、面白く恐ろしい。
投稿元:
レビューを見る
心理学者と脳科学者の対話。最終的に話におちがなく進んでいくのだが、そのやり取りが面白い。
人間の心の動きって面白いということを手を変え品を変えいろんな形で言っているのだが その中に色々な面白い言葉がちりばめられている。
投稿元:
レビューを見る
以前、会議の議論がかみあっていないのを感じた瞬間の感覚が、ルネサンスものを歌っていて縦がずれたことに気づいたときの感覚と似ている! と思ったのだけど、この本を読んで、脳科学的に正しい認識のような気がしてきた。
聞き役に回ることが多い私としては、単に聞くだけでも話す人に力を与え得るということも面白かった。まっすぐ聞くこと、魂を聞くこと。できるかな。
因果関係ばかりを追っていたら大切な物を見落としてしまうというのも、よくわかる。無意識、関係性、それ以外にも人間が認識できていないもの、言語化・数値化できていないものはたくさんあるはず。
河合隼雄さん。一度直接お話を聞いてみたかったなぁ。
投稿元:
レビューを見る
とにかくお二人の楽しそうな様子が、書面からも伝わってきて、すぐに引き込まれました。
「話を聞くだけで疲れる人」のシーンは、茂木さんが物凄く同意、感心してたのと同じくらい、納得させられました。
他にも、心理学という個人に深く関係する学問・フィールドに於いても、全てスタンダード化してしまおうとする、昨今の傾向に河合さんが語っているシーンも、凄く納得させられますね。
これだけ多くの著名人・知識人を引きつけた河合先生の魅力が、よく分かる一冊です!
投稿元:
レビューを見る
個はそもそも関係性である。
関係性ありきというのが日本的。
曖昧と確実が同時に存在するというのが印象に残った。
投稿元:
レビューを見る
臨床心理学の大家と脳科学者の対話。
箱庭療法という手法がある、というのがまず新鮮な驚き。
茂木さんが実際に河合さんの前で箱庭をやっている場面は興味がわく。
また、脳科学の研究が進む=心のことがわかる、ではない、と河合さんが強調しているところ、そのほうが自然に感じる。
うつ病等を脳科学で治せると、以前とある人から聞いたことがあるが、その時は説明できない違和感を感じたので、そのへんをもう少し詳しく知りたい。
河合さんが亡くなってしまったので、実現しなかった茂木さんの継続的な箱庭つくり、また、箱庭を見たり、クライアントの話を聞いているときの河合さんの脳の動きを観察する、等々、面白そうな話が実現できなかったことが残念だ、という河合さんの御子息の解説に大いに同感。
投稿元:
レビューを見る
・その人は一生懸命話をされるし、こっちも一生懸命聞いて、それでもその人が話しだすとどうしても僕が眠くなる、という人がいたんです(笑)。疲れていたら眠くなるのは当たり前だけど、疲れてないしね、僕、一生懸命仕事してるのに。
で、とうとう、「もう本当に申し訳ないんだけれど、あなたの話しを聞いていると僕は眠くなってしまう。なにか思い当りますか」といったんです。そしたら、「わかります」といわれた。「いちばん大事なことをいっていません」って。
・「私が部屋に入ってきたとき、先生は、私の顔にも服装にも、全然関心を示されなかった」
というのは、ものすごく美人ですから、服もきれいなのを着ておられるんだけれど、その服も見てないし、顔も見てない。おそらく、二日後に道で会っても絶対わからないだろうと思うぐらい、なにも見ておられなかった、と。
「ああ、そうですか」
「それだけじゃありません。先生は私の話しの内容に、全然、注意しておられませんでした」(笑)
「僕、何をしてましたか」
「何をしておられたかというのは、すごくむずかしいんだけれども、あえていうなら、もし人間に『魂』というものがあるとしたら、そこだけ見ておられました」
…それが、僕がいまいっている、僕がやりたがってることなんですよ。その人を本当に動かしている根本の「魂」―これと僕は勝負している。だから、そぉっと聞いてないとだめなんですよ。言葉で、ワーッと動いていったりしないで。また、相手の言葉に動かされてもいけない。