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人が最も大切なもの、最愛の人を失い、絶望の淵から甦っていく。
生きる意味とは?
生とは?死とは?
最も心に残った登場人物の言葉→「どんな目標への挑戦でも、いや人生そのものに対しても、絶望というピリオドを打つのは簡単なことだ。しかしそれは闘い抜いての敗北とは意味が違う。絶望は闘いからの逃避だよ。あるいは魂の自殺行為だ」
重い言葉です。
日頃考え、そして、最近ようやく少しだけですが実感している事ですが、マイナスの言葉を吐けば吐くほど、マイナスの方向になっていく。不思議なものです。
上の言葉はしっかり胸に刻んでおこうと思います。
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登山家の自伝ではないので、変な偏りも無いし、サクッと読める。
チャレンジし続ける姿を描くのは、登山小説ではよくあるパターンではあるけど、高齢になってからというのは新しい。
でも2回は読まない
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時代が変われば、山岳小説も変わる。現在では、素人登山家が8000m峰の頂に立つことは、必ずしも不可能ではない。エベレスト、チョー・オユー、ブロードピークといった、そんなに難しくない8000m峰では、素人登山家の夢を叶えてくれる公募登山が行われている。この小説の舞台は、そんな公募登山隊である。でも、主人公である翔平の還るべき場所は──世界で最も困難な山、地球上でいちばん大きなとんがり帽子、K2だ。
公募登山の様子が実にリアルに描かれていて、非常に参考になる。これはもちろんフィクションであるけれども、山頂に至るルートは本物であろう。著者がどのようにして、これだけの情報を収集したのかが知りたい。それから、還暦を過ぎてから山登りを始めた野心的な実業家、神津の台詞が深い。昔も今も、8000m峰の頂に立つことは、人生を賭ける価値のあることなのだ。私も、K2とは言わないまでも、いつかエベレストの頂に立ってみたいものだと思う。でも、その前にまだ、登るべき山がたくさんあるなぁ。
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山に登っている時には街を題材とした小説が読みたくなり、
街に居る時には山を題材とした小説を読みたくなる。
不思議なもんだなといつもそう思います。
今回手にした小説は自分自身は絶対にいけない場所だと思いながらも、
胸をときめかせながら、感動しながら読んだ素晴らしい山岳小説でした。
今日ご紹介するのは笹本稜平さんの「還るべき場所」という一冊。
笹本稜平さんの本は以前「天空の回廊」をご紹介させていただきましたが、
今回の一冊はそれ以上の感動を覚える素晴らしい山岳小説だと思います。
世界第2の高峰、ヒマラヤのK2。
未踏ルートに挑んでいた翔平は登頂寸前の思わぬ事故でパートナーの聖美を失ってしまう。
事故から4年、失意の日々を送っていた翔平は、
アマチュア登山ツアーのガイドとして再びヒマラヤに向き合うことになる。
パーティーに次々起こる困難、交錯する参加者の思い。
(文庫本背表紙からの参照)
物語の舞台K2は中国とパキスタンの境に横たわるカラコラム山脈にある山。
標高はエベレストに次ぐ世界第2位の標高8,611mですが、
麓までのアプローチが非常に長いためエベレストよりも登頂の難しい山だと言われています。
この物語が素晴らしいのは登山以外の要素がふんだんに入っていること。
登山に関する描写が素晴らしいのはもとより、
主人公に関わる周辺の人物たちの生き方が物語の幅を大きい物にしているような気がします。
主人公の翔平とともに若い頃から山に登り、
今は公募登山の会社を営んでいる亮太。
いつもマイペースながらしっかりと芯の通った父親。
ペースメーカーの会社を一代で世界有数の規模まで育て、
自らエベレストや世界の高峰に挑む社長の神津と秘書の竹原。
そういった登場人物たちの物語も平行して描かれていて、
主脈の物語をより一層豊かにする効果をあげています。
そして物語の中心となるのは、
翔平と一緒にK2の頂上を狙いながら滑落した聖美とのこと。
物語が終盤に向かうに連れて意外な方向に進んで行きます。
登山のことだけではなく様々な謎解きや人間模様が描かれたこの小説。
山に登る人にも登らない人にもぜひ読んで欲しい一冊。
お薦めです!
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山岳小説の傑作。事件は起きないけれど事故は起きる。それでいてある伏線が見事に生かされていて関心させられます。
作者の冒険小説は「心意気に応える」というところがあって感動させられますが、ここでもその期待を裏切らず、気持ちの良い読後感をもたらしてもらえます。
600頁と大部ですが長さを感じません。
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この作品の読後感を的確に言い表すことはできそうにない。身体ごと魂ごと持ってかれたような気持ち…言ってみたけどやっぱり違うような?とにかく読んでよかった。上手く紹介することができないので登場人物のセリフを引用するに留めたいと思う。
『人間は夢を食って生きる動物だ。夢を見る力を失った人生は地獄だ。夢はこの世の不条理を忘れさせてくれる。夢はこの世界が生きるに値するものだと信じさせてくれる。そうやって自分を騙しおおせて死んでいけたら、それで本望だとわたしは思っている。』
神津邦正:心臓にペースメーカーを埋めながらも還暦を過ぎてから登山に魅せられたカリスマ経営者
『お金では買えない貴重なものをこの世界に残しておくのも、僕達に課せられた義務ではないでしょうか。それがなくなったら人は夢を見る機会を永遠に失います。K2の頂はそういうものの一つであるべきだと思うんです。』
矢代翔平:本編の主人公、最愛のパートナーをK2東壁登頂寸前の事故で失う
『山が人を惹きつける理由については、わたしなりに考えたことがあります。しかし答えは得られませんでした。『山がそこにあるから』というマロリーの言葉は、たぶんその答えではなく、それが回答不能な問いであることを示したにすぎないものです。それは言葉ではなく、生きることによってしか表現できないなにかなんです。』
竹原充明:神津の私設秘書であり山におけるパートナー、かつてK2の南南東リブで雪崩によりパーティーの仲間4人を失う
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今まで読んだ山岳小説は四半世紀以上前の時代をテーマにした新田次郎氏のものばかりだったので、近代登山をテーマにした内容は新鮮でした。
(マンガなら「岳」全巻読んでいますがw)
登山の経験や知識は全くないのですが、登山の世界でも道具や技術の進歩ってきっとものすごく大きなものがあるんでしょうね。
しかしそのせいか登山の道具や技術の専門用語でわからないところも多く???と思いながら読んでいました。
ストーリーはとてもわかりやすく、人物設定も勧善懲悪とまでは言いませんが、敵味方がはっきりしている感じ。
また物語の中でかなり大きなウエイトが置かれている登場人物である「企業家・神津」が人としてあまりにも完璧すぎて不自然に感じたかな。
しかし、主人公が恋人を失うところからストーリーが始まる一方で最後はハッピーエンドといっていい終わり方で、手に汗握りつつすっきりと読み終えることができました。
山を舞台にした壮大な情景からも映画化とかに向いていそうです。
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読むものが無くなって家にあった本を手にとってみればヒマラヤを舞台にした山岳小説でした。エベレストばかりがすごいと持て囃される日本の偏った見方とか、公募登山(ガイドロープを設置して酸素を吸いながらガイドを付けて一般の登山者に登らせるビジネス、そんなのがあるんですね。フィクションかもしれないけど)の功罪とかにも触れながら、テーマは生きがいとか人生(命というか生きていくこと)のままならなさとか、そんなようなことが男のロマン的に描かれています。自分ひとりでさえ生還は厳しいという極限状態で周りの人間の技量と心根を信じ全員助かるためのギリギリの努力と挑戦をする、ひとつアクシデントが起き自然と仲間の状況を読み誤ればもはや、、、というときに絶望を遠ざけひたすらに近い目標を立て出来ることをしようという姿勢はリッパ。実情を知らないのでこの設定はそんなに不自然なことではないのかもしれませんが、個人的には3人組の出身をアルゼンチンに、メーカーをスペインにしたのは何故なのか?たまたまなのかそれとも何か作者に意図というか理由付けがあったのか?というストーリーとは関係のないことが読んでいるときからずっと気になりました。
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25歳の時に高校生の時から一緒に山にチャレンジしていた4人組が最難関のK2の東壁ルートからの初登頂にチャレンジする。しかし途中雪崩に合い愛する聖美を失い、4年間祥平は生きた屍的な生活を送っていた。大学を中退しツアー会社を設立し細々とやっている亮太からツアーガイドの依頼を受ける。チャレンジするのはヒマラヤのK2の隣にあるブロードピークであり、亮太はツアー成功の後K2チャレンジを祥平に打診してくる。そのツアーに医療機器メーカーの会長興津とその秘書が申し込んでくる。話は翔太を中心に、亮太、興津、その秘書の人生観、山への思い入れ等々が入り組んで展開されていく。山岳小説として山のさわりをやりつつあるみとしては非常に面白い。
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読み応えがあった。文庫だけど600ページ超え。
さまざまな困難を切り抜けて行くところは、一気に読みたくなる。
登場人物の思いも良く描かれている。
登山用語で理解できないものが何点かあった。
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死に直面したときにどういう行動がとれるだろうか。自分は人のために動けるだろうか。絶望的な境地で、それでも生きようと努力する人々の姿に深く感動した。
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期待しないで手にした一冊だが読み応え充分の作品だった。人間が生きる過程に於いてつきまとう矛盾と不条理をそれぞれの役柄や出来事に投影し、”生きる事の意味”を誠実に求める主人公達との対比によって物語全体で人生そのものを描いており重厚感もある。そしてそれらをより際立たせるように散りばめられている実業家神津の放つ言葉が心に染みる。と言って内容が別に説教臭い訳でもなく一流のアドベンチャー小説としても十分楽しめるのは著者の力量だろう。登山を趣味としている人のみならず山に興味のない方にもお勧め。たぶん山に登りたくなる。
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児玉清さんが、帯でコメントしていたので思わず購入。K2の未踏の東壁アタックでパートナーを喪い、4年間山から遠のく主人公...というところから始まる。あぁ、お決まりの山岳物語だなと思いきや、おもしろい!
山岳ツアーの会社を設立した山仲間の友人からブロードピークへの公募登山ツアーの手伝いを頼まれる。
そこに参加した、還暦を過ぎた実業家。その秘書。
それぞれの思いが、8千mの山肌で絡み合い、深みを増す。主人公を含め登場人物のキャラクターがしっかり描かれていて思わず感情移入。
とにかく場所が場所だけにヒヤヒヤドキドキ。それに空気は薄いし寒いし、危険だし。アルパインスタイル?オーバーハング??ぐったり疲れたけれど満足。
山岳、登山用語を調べながら、山の稜線の名前がでてくるたびに、これも調べながら楽しんで読み終わりました。
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ヒマラヤ最高峰の山K2を目指す人達の話。
4年前に恋人をK2で亡くした者、同じくK2で同じ隊の仲間を亡くし山から遠ざかった者、壮年になり山に取り憑かれた者。
山を愛してやまない人達が出てきます。
大筋としてはそれぞれが色々な想いや事情をかかえながらK2を目指す、という話なのだけど話の大半はアマチュア登山家達が公募登山でブロードピークを登る話。
話の中に山の専門用語がわんさか出てきます。
私は多分一般の方よりは登山に興味がある方だと思うのだけど、それでもクライミングの専門用語が説明もなくこれだけ出て来るとなかなか話に集中する事が出来なかったです。これを読んだ他の人達は大丈夫だったのかな?
アンザイレンとかトラバースとかビレイとか分かるのかな?
私はそのおかげで話に入れ込む事が出来なかったです。
あと最後のエリスの話はいったのかな、とか。
そんな感じで気になる事はいっぱいあったのですが、すごく面白かったです。
話に出て来た山をネットで検索をし、画像や動画を観て想像を膨らませながら話を読む日々は楽しかったです。
読み終わった後は旅行から帰って来た後の様に少し寂しかった。
山という自然に魅せられた人達の話はとてもさわやか。
山が好きな人は楽しめるのではないでしょうか。
*追記
読了後数日たってぼーっと考えていたのですがこの本の帯に「ミステリー小説!」とあおりがはいってるんですね。
これを読み始めの時に読んで
「なるほど。聖美さんの死の全貌が明らかになる話なんだな」と一人合点させてしまったんですよね。
そのせいで、聖美さんの話があまり書かれていなかった事に納得がいかなかったのかも。
ペースメーカー、トラウマ、聖美さん、公募登山のあり方、他のパーティーとの確執、アルゼンチンのグループ等々風呂敷を広げまくったのに、包み切れてない感はしました。
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文句なしの★5つ。
600頁超のボリュームながら、その内容の面白さに(ほぼ)イッキ読みしてしまった。
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K2(8,611m)
・カラコルム山脈にある山。その標高は世界第2位。
・不安定な天候、急な傾斜により登頂の難しさでは、エベレストより上と言われている。
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主人公は、K2東壁ルートからの初登頂を目前に、最愛のパートナー聖美を失ってしまう。
4年間、その悪夢から抜け出せないでいた主人公は、かつての山仲間からの誘いで、半ば強引に、ふたたびカラコルムの地を踏む。
商業登山のスタッフの一員として…
というのが話の大筋?なんだけど。
第二の主人公ともいうべき「神津」
この神津の生き方、言葉、そのひとつひとつが、とにかく響く。
人と折衝、人の中で生きてゆくこと。
そのことに不器用な主人公が、徐々にその自分の性格と折り合いをつけてゆく様。
・聖美とイクバルの話。
・神津と竹原の信頼関係。
とにかく読ませてくれる。
そしてなんといってもブロードピーク(標高8,047m。世界で12番目に高い山)への商業登山アタック。
翔平はスタッフとしての参加となるので、参加者の安全を確保しながら、いろいろな困難に対処してゆくことになるのだが。
とにかく先が気になってしまい、つい頁をめくるスピードが速くなってしまうほど。
わたしは山をやるのだけど、この本を読んで、私なんてまだまだ「お気楽・趣味ハイカー」の域であることを再認識。一般の人よりは専門用語への馴染みもあるかもしれないけど。
ピッケルやハーネスを使うようなハードな登山はほんとごく一部のエキスパート達の領域。
外壁や雪山の用語には知らない言葉も多かった。それでも全然問題なく、ほんと面白く読めた。
オススメの一冊。
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・山を題材にした本。
・児玉清の解説(この人の解説本に、わたし弱いんです)
上記2点から、昨日買ったばかりの本。
ビブリアの2冊目に行く前に、この本を挟もうかと。