紙の本
日本の問題点を歴史的に見据える
2011/07/02 17:01
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
幕末から明治維新までを第一の敗戦,太平洋戦争を第二の敗戦,そして構造不況から東日本大震災を第三の敗戦と呼んで,第一,第二の敗戦からまなんで第三の敗戦に対処する方法をかんがえている. 第一,第二の敗戦に 2/3 ちかいページ数がさかれているが,そのなかにも第三の敗戦からたちなおるためのヒントがちりばめられている. ただし,話題の中心になっているのは震災以前からある問題点だ.
震災後は理由も不明確なまま日本を賛辞する本がおおいなかで,この本は手きびしい. 日本はいまきびしい状況にあるのだから,元気はださなければならないが,解決するためには問題点をきちんとみすえなければならないということだろう.
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第三の敗戦とはまた大きくでたものだ、と思いつつ最後まで読んでみました。
本著は近現代の歴史を振り返り、震災後の国のあり方を提言。
近現代を経済に主軸をおいて的確な洞察をしておられ、「団塊の世代」の名付け親である著者の面目躍如たるものがありました。
震災後の提言については「規格大量生産工業社会によって繁栄した日本の一時代は終わった」として、国家のグランドデザインを述べておられます。
脱工業化で知価社会を目指そうという、いつもの著者の持論に始まり、道州制導入、TPP賛成開国論、官僚依存廃止などを披瀝されておられます。
言うは易く行なうは難し。
デザインできてもアクションプランがなければ絵に描いた餅ですね。
そのあたりは優秀な官僚に任せるのかな?
総論だけで各論が緻密に組み立ててない理想論は、震災後とくに辟易しています。
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先日起きた東日本大震災が日本にとっての敗戦とは思いたくありませんが、特に震災後の現政府の対応を見ていると、心配になってきます。
この本の著者である堺屋氏から見れば今回の敗戦は、幕末、太平洋戦争に次ぐ、第三の敗戦で20年間の下り坂の末に来たということです。
これから改革すれば日本は再び栄えることができるのでしょうか、数年前に読んだ彼の書いた予測小説(平成30年)を思い出しました。
たしか何もせずに平成30年を迎えてしまった日本に、織田信長のような世直しをする人が現れて大改革をするという話だったと思いますが、今の政治家や将来政治家になる人にも、日本が栄えるための方策を考えて実行に移してもらいたいものです。
以下は気になったポイントです。
・不都合なことに、日本の法規では復旧は国費の援助でできるが、旧施設より良い施設にするとなれば「新たな資産の取得」として予算査定を受ける必要がある(p17)
・2010年には公的資金不足が約40兆円、これに対して企業の資金余剰が約33.6兆円、家計貯蓄が11.5兆円なので、国債発行を国内で消化でき国債が低金利で収まっていた(p22)
・日本では関東と関西でサイクルの差があるので、東西間は100万キロワットしか移送できない、西日本で節電しても東京や東北の電力事情は改善しない、ピークは夏の数日、それも昼間の数時間(p27)
・徳川幕藩体制は、身分社会、鎖国経済、縮み文化の3つで形成されていた、それを支えた正義は「社会的安定」である(p37)
・徳川時代には都市域をでると車両の通行は禁止、大名行列にも車は描かれていない、荷物を運ぶのは人夫か馬背である、道路地盤が軟弱で轍が水たまりになるから(p38)
・日本の幕藩体制が崩壊したのは、武士の文化が信じられなくなったから(p44)
・軍隊であるための条件は、1)断然優越した兵器を保有し、組織的に運用可能、2)集団的軍事行動のできる組織と命令系統の常備、3)その集団ですべての行為ができる自己完結性をもつこと(p44)
・第一次長州戦争では、幕府を恐れた長州藩主が三人の家老を切腹させておさめたが、それを不満とした第二次長州戦争(2年後の1866)では長州藩の民兵に幕府の大軍が負けた(p46)
・幕末のころにイギリスが急いでいたのはインドの支配と中国長江地域の半植民地化であり、日本を領有するほどの意欲はなかった(p50)
・版籍奉還の意味は、武士身分の廃止(1591年の豊臣秀吉による身分に関する条規制定以来)であり、これにより封建的身分社会から近代的職能社会に転換した、武士以外のものを多数官軍に組み入れてしまった結果の「やむを得ない措置」であり、劇的場面が少ない(p55)
・明治10年には1石=5円70銭だった米が、13ンには12.2円になった、元禄時代には4石=1両、幕末には1石=1両であり、200円で50倍になった(p61)
・日本の歴史では、経済文化が下り坂に入ると早々に大災害に見舞われることが多い、1596年伏見大地震、明暦の大火(1657年)、富士山大噴火(1707)、浅間山大噴火(1770頃)、京都大地震(1830)、関東大震災(1923)など(p73)
・1940年までは日本の労働者横転率(同じ職種で転職)は世界一高かった、1企業に勤める平均期間は3年程度(p76)
・海軍艦艇や戦闘機の分野では優れた製品もあったが、使用者の専門軍人と製造工場の技師とのなれ合いで練り上げられた特殊品であり汎用品ではなかった(p82)
・日本の第二の敗戦の敗因は、軍官組織の硬直化、つまり高級軍人や官僚たちの組織と思考の硬直化と、地位の身分化にあった(p89)
・1944年の暮れころから大阪では軍人文化が信じられなくなっていた(p93)
・産業経済の東京1極集中は、経済や技術の流れで自然とできたものではなく、官僚主導によって圧力と費用をかけて強引に行われた、社長が移動するので社長室、次に調査部や資金部、海外事業部ができて最後に営業本部が移動(p131)
・イラク制裁の湾岸戦争において、軍隊を出さなかった日本は同盟国に名を連ねることができなかった、世界は「経済大国・軍事小国を目指す」日本の国家コンセプトの1つを拒否した(p142)
・規格大量生産には、1)巨額資金、2)大量に売れる市場、3)大勢の技術者が必要だが、コンピュータ装備の施設、ドル資金の海外垂れ流しにより、アジアの工業化が可能になった(p146)
・大正デモクラシーに似た動きとして、1996-2006年には、1)行政改革、2)規制緩和、3)グローバル化をした(p158)
・新しい街づくりとして、省エネルギーと地域コミュニティの強化を兼ねて「歩いて暮らせる街」を目指すべき(p207)
・農業はカロリー換算による自給率ではなく、「市場価格換算自給率」に変えるべき(p225)
2011/7/17作成
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TOPPOINT2011年8月号より。
著者は堺屋太一氏。
今回の東北大震災を機に今後の国のあり方を考える。
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■復興
1.東日本大震災は単なる天災ではなく、日本という国の「敗戦」とみて日本復興に取り組むべきである。
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堺屋節、健在。
ただ、日本がおかれた明治の開国、太平洋戦争敗戦の流れを踏まえ、現在の状況はよく理解できるが、提言された処方箋の実行度を考えると、何とも虚無感が。
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主張内容自体は、筆者が繰り返し表明してきていることであり、ひとつひとつに目新しさはない。ただ、今回の震災を第三の敗戦と捉え、過去の2度の敗戦の分析・比較を踏まえたうえで方針提起をしており、説得力があるように感じた。
物財の豊かさを求める規格大量生産型の工業社会から満足の大きさを人間の幸せとする知価社会への転換。
目指すのは、省資源、多様なコミュニティ、好き好き開国の知価社会、そして好老文化の幕開く新しい日本。
キーワードは「古い日本に戻さない」「官僚を身分から機能へ」。
主張はよくわかる。規格大量生産型産業の代表のような企業に勤める者として何を考え、どう行動すべきか。これは自分自身の宿題。
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どの本にもある傾向ですけど、前半良し、後半ダレダレ、な本です。
今回の大阪の動きはこの人が付いているので個人的には多分大丈夫だろうと思っています。
にしても、こんな年取ったおっさんがちゃんと未来のことを考えて動いてくれていることに感謝です。
http://uchidashin1.blog117.fc2.com/blog-entry-49.html
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第一を江戸末期外国の圧力による開国、第二を第二次世界大戦の敗戦、そして3.11の震災を第三の敗戦として今後の日本はどうあるべきかが書かれているが、肝心の第三の敗戦後のどうあるべきか論が心に響いてこず。
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東日本大震災の後に、緊急出版された本だが、内容は堺屋太一はぶれていないと思わせるような歴史認識、そのあとを提言している。
第1の敗戦を明治維新前、第2の敗戦を太平洋戦争、第3の敗戦を東日本大震災として、今までの敗戦をどのようにして知恵と運で乗り切ってきたかを歴史から学ぶことによって、これからの世界を考えたいと言うことらしい。
今までのシステムにしがみつかず、ゼロベース思考で国作りを考えるからこそ、大阪市長の橋下氏と共著も出せるのでしょうが。
堺屋太一氏の今までの著作を読んだことがある人には延長上で、読んだことがない人には、堺屋氏らしい歴史観を読むには良いのではないでしょうか?
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正直、堺屋さんの著作にしては物足りなかった。東日本大震災が敗戦並みに大きな出来事として捉えたいのはわかるけど、経済の低迷期に大地震があるというような歴史は繰り返すのようなスタンスだけで捉えているように感じた。
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著者、堺屋太一さんの作品、ブクログ登録は2冊目になります。
どのような方か、ウィキペディアで確認しておきます。
堺屋 太一(さかいや たいち、1935年(昭和10年)7月13日 - 2019年(平成31年)2月8日)は、日本の元通産官僚、小説家、評論家。位階は従三位。勲等は旭日大綬章。
83歳にて亡くなられています。
で、本作の内容は、次のとおり。(コピペです)
これから3年、日本は負け続ける。そして――。
第1の敗戦は幕末、第2の敗戦は太平洋戦争、そして、下り坂20年の末にきた大震災が第3の敗戦である。ここで大改革ができなければ、なお日本は負け続ける。
3.11 東日本大震災から2ヵ月余。
進まない復興、終わらない原発事故の恐怖――。
私たちはどこにいるのか、どこへ行こうとしているのか?!
大きな歴史のうねりを踏まえつつ、日本が今ある現実をはっきりと指し示し、
この混迷の事態を「第三の敗戦」と呼ぶ堺屋太一氏が、渾身の力で書き下ろした、救国の書。
第1章 白地に描かれた「明治日本」
第2章 「戦後日本」の繁栄
第3章 文明の変貌と日本の凋落
第4章 「第三の建国」――新しい日本のコンセプト
本作は、東日本大震災がおきてから間もなくの刊行になります。
この震災での進まない復興等を、現在の日本の現実として捉え、今は、新たな方向に進むチャンスと見ているように思えます。
今年(2022年)は、震災から、11年になります。
当時と比べて、今は、良き方向に進んでいると信じています。