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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
新型コロナの前の時代の出版ですが、感染症との向き合い方がよくわかり、よかったです。共生の必要を感じました。
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第二次世界大戦が初めて、感染症での死者が下回った・・・という話。暗黒大陸とアフリカが言われた由縁。百日咳の菌が現在、アメリカとロシアにあるということ。何もかも新鮮な情報ばかりでおもしろかった。
共生という考え方にも共感しました。
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ある時点における理想的な適応が、次の不適応を用意するという話です。それによって生物も感染症も栄枯盛衰を繰り返す。つまり、この世に理想的な適応はなく、理想的な適応と見えるものは、あくまで一時的なものにすぎない。それは、文明や社会や国にもあてはまるのかもしれません。不思議な魅力をもった本です。
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感染症との闘いは人類に勝利をもたらすのだろうか。防疫対策による封じ込めは、大きな悲劇の準備にすぎないのかもしれない。共生の道はあるのか。感染症と人類の関係を文明発祥にさかのぼって考察し、社会が作り上げてきた流行の諸相を描き出す。共生とは理想的な均衡ではなく、心地よいとはいえない妥協の産物ではないか。
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informative book--->should read again
infectious diseases continue to change in response to human interventions such as antibiotics and vaccines.
we may need to aim at living with pathogenic organisms instead of eradicating them.
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歴史の本が好きで読むことが多いのですが、 強大な力を持っていた帝国が衰退する原因は何だったのかについて思うことがあります。
経済的な面から解説されるものが多い中で、気候の悪化(寒冷化して食糧危機に至る)を挙げていて、興味を持ったことを覚えていますが、この本では、衰退原因の一つとして感染症がもたらした人口減少についてもその可能性があると解説しています。
戦争で死亡する兵士の原因は、銃撃等による負傷によると思いがちですが、主要原因は、栄養失調や感染症によるものが断然に多かったこと(p126)をこの本を読んで知りました。
感染症の克服が文明の衰退に深く関連していることを知ることができた本でした。最後の部分で述べられているように、感染症を克服することだけが解決法ではなく、いかに上手に共存していかについても指摘してある点は注意を惹かれる点でした。
また、アメリカ南部で台風による被害が大きくなっている原因(p193)も、著者は敢えて明言していませんが、理解できたような気がしました。
以下は気になったポイントです。
・フェロー諸島の流行においては、最終的に約6900人が感染し、流行が約60日で終息したが、感染している人の割合は、流行のどの時点をとっても全人口の13を超えることは無かった(p4)
・1951年のグリーンランドでの麻疹の流行を最後に、人口動態に影響を与えるほどの大規模な麻疹の流行は地上から姿を消した、航空機の発達によりすべての人が集団としての免疫を獲得したから(p7)
・麻疹が社会に定着するためには、最低でも数十万人規模の人口が必要、それ以下では単発的なものにとどまり、恒常的に流行しない(p8)
・アフリカ・トリパノソーマ症が存在しなかったとすれば、食物連鎖の最上位に位置した初期人類は、草原を蹂躙して、大型野生動物をすべて絶滅に追いやった可能性がある(p22)
・有史以前の人口は、土地の人口支持力から逆算することで推定可能、新人類が出アフリカをあたした当時(5~7万年程度前)の人口は100万人程度で、そのうちの一部(多くて2000人)が世界へ広がっていった(p30)
・野生動物の家畜化は人間社会を変えた、1)家畜の糞はよい肥料、2)耕作可能面積を広げた、3)余剰作物の貯蔵庫として機能した(p31)
・イースター島は、西暦500年ころは巨大椰子(ヤシ)がなる緑豊かな島だったが、遅くとも10世紀から始まった石造り像は17世紀に突然終わりを告げた、森林抜粋による環境破壊が原因(p33)
・野生動物の家畜化により、動物に起源をもつウイルス感染症を人社会に持ち込んだ、麻疹は犬、インフルエンザはアヒル、百日咳は豚や犬、天然痘は牛(p35)
・メソポタミア文明が誕生したのは、この地が、麦(農耕)と羊(家畜化)の原産地だったことを関連している、肥沃な土地を巡ってシュメール、バビロニア、ヒッタイト、アッシリア、ペルシ興亡を繰り返した(p44)
・揚子江流域の開発が黄河よりも1000年ほど遅れた��は、風土病の存在による(p47)
・インドのカースト制度の起源に、浄不浄によって社会の構成員の交流を管理し、感染症流行を回避しようとした意図があったという説もある(p51)
・東ローマ帝国皇帝のユスティニアヌス(527-565)は古代ローマ帝国の復活を夢いていたが、ペストの大流行に打ち破られた、西暦0年に3300万人だった地中海ヨーロッパの人口は、600年間で1800人にまで減少した(p58)
・ペストが姿を消した理由として、中世の温暖期(800-1300)が関係しているが、その後の小氷期においては再び流行が繰り返された(p61)
・ペストが欧州社会に与えた影響として、1)労働力の減少による賃金上昇、荘園制の崩壊、2)教会の権威失墜、その代りに国家が台頭、3)既存の制度では登用されない人材の登用による身分制度の解体、である(p67)
・ハイチのタイノ・アラクワ族の絶滅は奴隷貿易の開始を告げた、ハイチに暮らすすべての黒人は20年ですべてが入れ替わった(p84)
・インカ帝国がスペインの攻撃を受けた時、疾病が神の怒りであると両者とも信じていた、天然痘・麻疹・発疹チフスに倒れなかったスペイン人は、一方的に神の恩寵を受けているという事実に慄いて争うことができなかった(p86)
・世界で消費される農作物の80%は、わずか数十種類の植物から供給されている、穀類(小麦、米、大麦、トウモロコシ等)、豆類(大豆など)、根菜類(ジャガイモ、キャッサバ、サツマイモなど)である(p88)
・キニーネによるマラリアの克服が、ヨーロッパにおけるアフリカ植民地化の完成を後押した(p102)
・14世紀後半には西アフリカの大帝国(マリ)を統治していたイスラム帝国が、南アフリカを征服できなかった理由として、疾病(眠り病)の存在がある(p104)
・初期のノーベル生理学・医学賞受賞者を見ると、熱帯地域の医療に関するものが多い(p109)
・第一次世界大戦末期の1918~19年にかけて流行したスペイン風邪は世界で1億人ともいわれる被害であるが、最も大きな被害を受けたのはアフリカやインド、中国(238、1850、400~950万人)であった(p117)
・スペイン風邪の被害をさらに悪化させたのは、植民地からの収奪であった、インドでは穀物生産量が5分の1であったが、輸出はイギリスへされた(p121)
・第二次世界大戦は、感染症による死亡者数が、銃弾による戦死者を下回った初めての戦争であった、第二次世界大戦のアメリカで、ペニシリン大量生産の取り組みはマンハッタン計画と並ぶ国家プロジェクト(p126)
・1979年に二年間の監視期間をおいてから、WHOは天然痘の根絶を宣言した、農耕開始から1万1000年の快挙(p141)
・HIVエイズは発症率は90%を超えて、1度発症すると致死率は95%であり、治療をしない場合、感染から平均10年でエイズ発症ののち、数年で死亡するが、潜伏期間が長くなったら共存も可能かも(p183)
・ミシシッピ川は春になると氾濫するので、アメリカ陸軍工兵隊は堤防を築き始めて、川の封じ込めに乗り出したので洪水は止んだ、しかし、川底には年々沈泥が蓄積するので、堤防もそれにつれて高くなっていて現在も嵩上げは続いている(p193)
2011年9月4日作成
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人類の文明が起きて定住したこと、家畜・農耕の発達、移動距離、
人数が飛躍的に増えたことで感染症は世界に広がり
そのレパートリーを増やした。
人類の歴史で考えればわずか数千年以下の間の事で、
その変化に対応できず流行し、免疫を獲得するまでには
多数の犠牲が出る。
感染症が歴史に大きく影響を与えたことを改めて認識。
異文化の人種が侵入するには感染症との戦いもある。
⇒免疫を全く持っていないため。
第1次世界大戦までは戦争時の死因のトップは病死。
アフリカでは多くの白人が死んだ。
体力低下・密集した不衛生な環境
⇒戦争は感染症の温床になる要素が多数
集団免疫:集団で免疫を持っているものが多数であれば
その感染症は流行しない。90%以上
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文明が発達するにつれ、感染症が発達する。
この流れは文明と健康が比例しないことを示している。
それでも未来の開拓を続ける人類とは
一体なんなんだろうか。
少なくとも健康のためには生きていないようだ。
また、いかな大流行であっても
対象の文化圏のすべての人間に行き渡る前に
収束をもたらす、という免疫のシミュレーションは
他に文化的疫学を考える時の面白いアナロジーでもありうる。
欲望が際限なく刺激されるかのように見えても
現代における表象の洪水もおそらく限度を持つものだろう。
また、この作品は随所に様々なトピックスが
盛り込まれ、著者のサービス精神もうかがわれる
なかなかの良書である。
「心地よいとはいえない」共生、これは
大前提として受け入れるものなのであろう。
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感染症は駆逐し撲滅されるのが本当にいいことなのかを、感染症の歴史を紐解くことで検証している。ある一定数まで感染が広まると、集団免疫ができること。人と感染症が共生することで、新しい感染症への抵抗力となるという主張は興味深い。また、この本は著者の問いを抜きにして歴史として読んでも非常に面白い。感染症がいかに当時の政治戦略と支配に大きな要素になっていたことがうかがえ、大航海時代以降の歴史が立体的に浮き上がってきて興味深かった。歴史を読み解くためには、感染症という視点を組み入れないといけないのではないかと思うぐらいだった。ただ、全体のまとめ方が非常に読みづらい。
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中々考えさせられる内容であった。結局イタチごっこに近い面があり、本当の意味での感染症に人類が勝利することはないのかもしれない。
ただ、多くの地域で寿命が延びているのも事実だし、根絶された感染症もある。本書を読むまで、なんとなく人類は病に対して勝利を収めつつあるのかと思っていたが、そんなに単純なものでもないのを初めて知った。
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「共生とは、理想的な適応ではなく、決して心地よいとはいえない妥協の産物なのかもしれない」
感染症は、被感染者の母数が少数では感染を維持できない。文明(農耕牧畜、定住社会)は、感染症のゆりかご。天然痘は牛から、麻疹は犬から、インフルエンザは水禽から、百日咳は豚もしくは犬から人に感染した。(なお、人から他の動物への感染も当然ある)
感染症の存在は歴史に大きな影響を残す。例えば、アフリカ・トリパノソーマ症の存在により、人が住めない土地が存在し、逆に、大型獣の楽園のようになっている。揚子江流域が黄河流域より農耕には適していたにもかかわらず開発が遅れたのは、風土病が存在したからかもしれない。アフリカが白人を寄せ付けない暗黒大陸と呼ばれたのは、マラリアなどの風土病の存在も大きい。キニーネがマラリアを予防することがわかったことも、白人のアフリカ支配に寄与した。社会的集団として特定の感染症に免疫があるのは、生物学的な障壁となった。例えば、白人が北南米をいとも簡単に征服できたのは、北南米の原住民が、白人の持つ感染症に耐性が全くなかったことが大きくかかわっていたとかんがえられる。戦争でも、第2次世界大戦までは感染死が最も大きな死因だった。米西戦争では、米兵の実に3分の1が黄熱で死んだ。
戦争や交通インフラ整備による人口移動は大きく感染症の動態に影響を与えた。例えば、5000万から1億人の被害を及ぼした1919年頃のスペイン風邪流行には、第一次世界大戦による人口移動が大きく寄与した。
結核菌の発見、ペニシリンの実用化などが結核の死亡率を低下させたと考えがちだが、近代医学導入前から死亡率は低下しており、その理由はまだよくわかっていない。
集団免疫。集団の中に免疫者が増えることで、感染症が増えにくくなり、免疫を持たない人が感染する機会も減る。
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子の病気から感染症についての基本知識を得ようと、中公新書「感染症」「細菌の逆襲」と続いて3冊目に読んだ。歴史と経緯が流れるように簡潔に書かれており、物語のようにも感じられるが決して幼稚ではなく、スイスイと一気に読んでしまった。文明という題がついてはいるが、感染症というものがどういうものかをまず知りたいという方におすすめする。
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「疫病と世界史」の副読本第二弾として読んだが、
わかりやすかった。
「疫病と…」と同じく歴史の流れに沿った章立てであること、
具体例が丁度良い数とボリュームなことが、
その理由と思われる。
もちろん、
大著である「疫病と…」に比べると物足りない感はあるが、
副読本としては最適。
一番印象的だったのは、
1875年のフィジー諸島での麻疹の流行。
オーストラリア公式訪問で感染したにもかかわらず、フィジーの王と王子は各地の族長と帰国を祝い、
その族長たちが10日間の祝いの席から帰郷したことにより、
フィジー諸島全体に全域に麻疹が広がることになった。
その致死率25%、太平洋最大の悲劇だそうだ。
しかし、この種の本をあまりに立て続けに読んだせいか、
血を吸って赤く光るノミが、
無数に部屋にいる夢を見たのには閉口した。
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感染症の歴史と、文明に与える影響について記述した一冊。
これまでの歴史書の中で、感染症について細かく記述したものはなかったので、非常に勉強になった。
そして最後の「共生とは、理想的な適応ではなく、決して心地よいとはいえない妥協の産物なのかもしれない」という一文が、とても印象に残った。
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新書だから、と軽く読み始めたら思いがけず内容が濃くて、読むのに時間がかかってしまった。古代から現代までの感染症の歴史と、今後人類は感染症とともにどう生きるべきか、という壮大なテーマ。
狩猟採集から農耕へという暮らし方の転換から始まり、領土拡大や戦争、交易、そして開発といったような「人が大量に移動すること(しなくなること)と」感染症の関係の深さ、ウィルスの「適応」機能が高度でかつ洗練されていることが印象に残る。