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有吉文学の傑作!との紹介だったのでとても期待してしまった分、星の数が三つになってしまったか。
もちろん、面白い。構想も良い。最後も有吉らしい。ただ、例えば紀ノ川を読んだ後の充実感、余韻を味わえたかと考えると物足りなさを感じた。それぞれのエピソード(青い壷の所有者)が短編で繋がっていて、色々な人の様々な人生が鮮やかに描かれているのは面白い。でもそれぞれが短か過ぎて「えー、もうっちょっとこの人の事を知りたかったのに」という不満を覚えてしまった。
小説の中の女性達の会話・考え方・老い方があまりにも今と違うのがとても興味深かった。改めて、日本は戦後物凄いスピードで変わって行った事を認識した。
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青い壺がスペインまでいって、巡り巡って、10年ぶりに、作者の目に止まった。青い壺の持ち主に関する短い物語が、それぞれ面白く繋がっていた。
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あえて別タイトルをつけるなら「青い壺は見た」。市原悦子さんが出てきても違和感ありません(笑)一人の陶芸家によって作られた青磁の壺が他人の手に渡り、持ち主が変わる度に、その周辺で繰り広げらる出来事を描いたオムニバスです。テーマは多彩。定年退職・老後、介護、嫁姑問題、遺産相続、教育、戦争、美とその価値づけなどなど。有吉さんらしい設定の仕方。
まず思ったのはこれらの問題が約30年前(初出は昭和55年)から根本的にまったく変わっていないということ。特に、嫁姑・介護問題に関しては人間の進歩のなさに呆れました(笑)また、ひとつの章に割かれるのはせいぜい20〜30ページなので、それ故に長編ものと比べて描写の辛口度が増してる気がする…
そして、なによりも惹かれたのが表紙の美しさ。この潔く青と白で統一された表紙は目にも鮮やかで、カラフルな表紙の本がたくさん並ぶ昨今の書店の本棚でもパッと目立ちます。装丁のスゴさ・重要さを改めて痛感しました。しかも、この“青”、中身のドロドロをまったく予期させません。月日を重ね、様々な環境の変化に耐え、それでも美しさが変わらない。それどころか深みが増しすらする。そういう青磁の超然とした美しさを表しているように思います。
有吉作品初心者にオススメ。
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大きな波がくることもなく、壺を介して人々の日常のワンシーンを粛々と描いている。こういう文章は好きです。本が日常とともにあることの喜びを感じる。
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短編としては成功しているのでしょうが、青い壷という通奏低音のもとでつなぎあわさなくても・・・。
むしろ、青い壷がなくてもそれぞれ短編として楽しめたはず。
通奏低音に期待しすぎて、的をはずされた感じもする。
あえていえば、それぞれの生活などはくだらないものだから。
あるいは、あまりに青い壷の行く末に興味がそそられたから・・・。
とにかく、自分にとっては、有吉佐和子の知的部分をことさら披露しているとしか思えない。
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この世に産み落とされ、その後数奇な運命を辿るのはなにも人間だけの専売特許ではない。「もの」だって同じこと。いや、むしろ自分の意志で移動できないぶん、「もの」の一生のほうがじつははるかにドラマティックといえるかもしれない。
というわけで、これは一個の青磁の経管をめぐる物語である。壷が「主人公」というので、壷がいきなり自分の人生についておしゃべりを始めるのではないかと心配したが、もちろん、そういうことはない。さまざまな偶然が重なり、さまざまな「家」を転々とする青い壷。そうしてその壷は、それぞれの場所で、思いがけずそのときどきの持ち主の心(それは美しい思い出であることもあれば、ときに醜悪な虚栄心だったりもするのだが)をまるごと映し出す鏡になる。最後、一見無関係と思われるエピソードが唐突に挿入されるが、そこから一息に導き出される決意が清々しい読後感をあたえる。
「弓香と律子は手を繋いで部屋を出た」。ごく短いセンテンスだが、50年ぶりに再会した女学校時代の旧友たちの時間を一気に巻き戻してしまうあるエピソードの後ろに置かれるとき、そこに彼女らの歳月が凝縮されて鮮やかに立ち上がる。いまの感覚からすると、それぞれの物語の描き方は往年のホームドラマのように大仰で滑稽な印象を拭えないものの、こういうハッとするような瞬間とたびたび出会えるのが、読んでいてなんとも楽しい一冊だった。
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有吉佐和子の人間描写力はなぜこんなに多様なんだろう
いろんな人間がいて、いろいろな人生が存在する
ただ当たり前の、それだけの話なのに「あの人も」「あの人も」と、まるで皆近くにいるかのような錯覚に陥る
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総じて姑の小言みたいな話ばかりなんだけど、移り変わる壺の持ち主毎に、色々な角度から当時の世相が語られてて面白かった。刊行された年が自分の生まれ年なので、なんだかバアちゃんに諭された気分。
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1個の青磁の壺をめぐる人間模様。連作短編のようになっている。最後に作者のもとに戻ってきた青い壺だが、作者の心境が到達したポイントが、イマイチ唐突な感じがして、ちょっと消化不良。単に、自分が求めているような結末でなかっただけもかもしれないが。
(2014.3)
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「和宮様御留」を読んでから有吉佐和子さんが気になっていた。図書館でなんとなく手にとった本。
名もない陶芸家が作った青い壺が、様々な人の手から手へ。壺がその印象を変え価値を変えていく様子が面白い。それぞれの人のエピソードもかなりバラバラで統一感ないようにも思えるけど、終始ドキドキワクワクしながら読みました。
日頃、長生きしたくないとか甘ちゃんなことを思っているけど、長生きするのも悪くないかもと思った。
なんかぱっと見地味だけど(失礼)、これはかなりお勧めです!
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無名の陶芸家が焼いた、美しい青磁の壺。いろいろな人の手に渡り、その人々の人生を映し出してゆく。
各章で焦点となる人物が移り変わっていくが、壺を通して少しずつ関連している。少し前に読んだ「パレード」と似たような構成だと思った(こちらがオリジナルだが)。
戦後30年くらい、つまり昭和50年前後の日本人の価値観や暮らしぶりがリアルに描かれていて面白い。全体としてはやや盛り上がりに欠け、淡々としている。
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青磁の壺をめぐる人々を描いた短編集。
陶芸家の手を離れた壺が持ち主を変えながら大移動をし、スペインまで行ってしまうので、残りわずかな枚数で陶芸家に戻るのかと心配になったが、無理やりな感じもなくちゃんと戻った上、それぞれの短編の登場人物もよく描けており、最後は皮肉な味わいを残すあたり、上手い。
有吉佐和子と同時代の流行作家で、今読んでも面白い人がどれだけいるかと思うと、この人は本当に才能があったのだなと思う。
専業主婦が当たり前、夫の身の回りのことは(着替えでさえ)妻が面倒みるのが当然、長男は親と同居して老後の世話をする見返りに財産を手にできるという当時の家族の姿が隔世の感あり、昔の東芝日曜劇場や松竹映画を見ているような気持にもなる。
お婆さんの同窓会の話など、長編にした方が面白かったのでは、というものもあるが、戦時下に芋でパリの一流レストランごっこをする夫婦の話、薔薇の花びらを詰めた枕で幸せを感じる掃除婦の話は心に残った。
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ひとつの青磁の花器を巡る短編連作である。ひとつの青磁がいろいろな人の手に渡り、その人々の生活、人生を描いている。そして最後には10年の時を経て、作り手の元に現れる。まるで数奇の運命をはらんだ青磁が生き物のようにも感じられる。
最初に発表されたのは昭和51年、1976年である。40年近く昔の小説であるが全く色あせていない。現在話題になる高齢者問題、夫婦や家族の問題などこの小説を読むと普遍のものなのだと感じる。これは「恍惚の人」「複合汚染」等当時から時代の先を見つめ続けた有吉佐和子だから書けた小説ともいえるだろう。
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初めて読む有吉佐和子作品。
「紀ノ川」とか「不信のとき」とか映像化もされてる有名な作品もたくさんあるけれど、まずこの本を選んだのは、本を紹介する本で見て気になったから。
ひとつの青磁の壺が辿る運命。
ある陶芸家の手から生まれ、色んな人の手に渡って転々とする、13編の短編連作。
贈り物として人から人の手に渡り、時に置き忘れられ、そして盗まれ、海外にも渡る。
そして最後の章で驚きと小さな笑いが。
実際昔から伝わる古美術品なんかは、こんな風にして様々な人の手に渡って今に至るのかもしれない。
持ち主それぞれの人生と、その人の手に渡った理由もみんな違って、でもその品物はひとつも変わらないままただそこに在り続ける。
壊れないでそこまで来た奇跡と軌跡。
年代問わず、家庭の女を描くのがとても巧くて、生きている時代は違えど、こういう会話の感じ解る、という節があちらこちらにあった。
母子、祖母と孫、嫁姑、など。
持ち主として男の人も出てくるのだけど、女性の印象が強い物語だった。
色々書いたけどシンプルにおもしろかったから、他の作品も読んでみたい。
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初めてこの作家を読んだ。未だに「笑っていいとも」ジャック事件の人としか認識してなかったけど、この作品を読んで、いい作品は時間が経っても色あせないんだなあと思わされた