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特捜部Q 1 檻の中の女 みんなのレビュー
- ユッシ・エーズラ・オールスン (著), 吉田 奈保子 (訳)
- 税込価格:2,090円(19pt)
- 出版社:早川書房
- 発売日:2011/06/10
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紙の本
やっぱり海外でも美人の議員というのは騒がれるんですねえ、まさか水着姿のビデオをだすほどの人はいないでしょうが。でも、このお話に限れば、失踪した議員よりもアサドとは何ものか、という謎のほうが大きいかも・・・
2012/02/27 21:54
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
私が2011年に読んだ警察小説のなかでレジナルド・ヒルの『午前零時のフーガ』とトップを競ったのが、このデンマーク発の警察小説シリーズ第一弾『特捜部Q 檻の中の女』です。警察小説とは言い難いのですがヨハン・テオリン『黄昏に眠る秋』を含めた三作が、私の中での海外ミステリ金銀銅メダル受賞です。全て早川ポケットミステリ。装幀が水戸部功に替わってから、内容まで別物の感のあるポケミス、外れナシは凄いです。
ついでに書いておけば、シリーズ第二弾である『特捜部Q―キジ殺し』でも、面白さは増す一方です。いずれ北欧最高峰の「ガラスの鍵」賞を受賞したという第三作も訳出されることでしょうから、ともかく第一巻であるこの作品から読み始めることを勧めておきます。シリーズものでは、人間関係をしっかり把握しておくことは極めて大切なことですし、今なら二冊読めば現時点での全貌がわかるのですから・・・
で、この作品、成功の要因は登場人物にあります。話の内容は最後に回して、個性あふれる面々を紹介しましょう。まず、主人公のカール・マーク警部補がいます。彼のために新たに設けられた特捜部Qの責任者です。もともと優秀な警察官ではありましたが、以前、捜査中に同僚二人が死傷し、友人を見殺しにしたと自分を責め立て精神的に参っています。
そんなカールのために用意されたのが特捜部Q、つまり彼が実務に復帰できるように上部が考え出したリハビリのための部署といっても構いません。雰囲気的に言えば、一昔前のテレビドラマ「ショム2」ですし、身近な小説でいえば堂場瞬一の警視庁失踪課・高城賢吾シリーズが近いとも言えます。ただし、人員はもっと貧弱です。極端に言えば正規の部員はカール一人です。ちなみに、この男、当初は単なる女好きの不満屋にしか思えません。
そして、ハーフェズ・エル・アサドがいます。この小説、アサド抜きでは成り立たないほどにユニークでユーモラスな天才です。映画になれば主人公を喰うこと間違いない男ですが、カールのアシスタントとはいうものの警察官ではありません。ただし、自分から警官と言わないものの相手が思い込むのをいいことに、警察官として平然と行動します。
名前からわかるように、デンマーク人ではありません。シリア人、と言ったりしますが実際は不明、というのもわけありの設定も人を食っています。デンマークに来たのは1998年とありますが、これも怪しいといえばアヤシイ。容貌については書かれていませんが、彼が頼めばどんな女性もすぐに打ち解けてイヤといわないというので、カールを吃驚させます。殺人捜査課副課長ラース・ビャアンの紹介で、今の職についているので怪しいだけの存在ではなさそうです・・・。
次は、カールの家庭について書いておきましょう。ヴィガというのがカールの奥さん、ただし別居しています。男が好きで、カールの元に戻ってくる気もありませんが、離婚をする気も全くないようです。離婚経験あり、ということになっていて、現在付き合っているのが画家です。一応、本人も画家らしく、つねに新しい男とつきあっている、ということは魅力的である、ということでもあるのでしょう。
妻は家を出ていますが、自分の恋愛に邪魔となる子供を連れて出て行ったわけではありません。カールとともに暮らすのがイェスパで、カールにとっては義理の息子になります。浮気症のヴィガのことですから、誰との子かは不明ですが、断りがないので前夫との間にできた子としておきましょう。カールと同居しているものの、いつも自分の部屋で大音響でロックを聴いてばかりいます。
職場にはアサドという不可思議な部下が舞い込んで来ましたが、カールの家にも同様の人間がいます。それがモーデン・ホラン、カールの家の同居人です。家計のためにカールが部屋を貸している33歳の大学生で、頭脳はきわめて優秀です。年齢からもわかるように長く大学生でいるのは、色々な分野のことを学んでいるからで、今度は国家学を履修する予定です。
アサドと違うのは女性とのことが全く描かれないこと。小説を読んだ限りでは容貌については人並み以下らしく、童貞ではないかとカールにみられています。大学に行かないときはレンタルビデオショップで働いているせいか、高めの家賃にも苦情をいったことはありません。フィギュア、というか玩具のコレクターというところはいかにも今どきの若者です。
再び警察関係者に戻りましょう。ハーディ・ヘニングスは、カールの元部下で、身長2m7cmの巨漢です。カールと捜査中に銃弾を浴び、半身不随の状態で現在入院中です。意識はあり、会話も交わすこともなんとかできますが、回復のめどは立たず、その辛さゆえに、見舞いにくるカールに「殺してほしい」と漏らします。ちなみに、カールがヘニングスのところにやってくるのは事件の相談もあるので、優秀な部下と言えそうです。
アンカー・ホイヤもカールの元部下ですが、ヘニングスが負傷したとき射殺されました。ちなみに、カールは銃を持っていながら、撃ち帰すことも出来ず、ただ脅えていたと思われていて、彼が精神科医の治療を受けているのも、このときの自身の行動にあります。マークス・ヤコプスンは殺人捜査課課長で、カールの実力を認めながら、彼を地下の新しい特捜部Qの責任者に任命しています。
そしてモーナ・イプスンがいます。カールがみたなかで最も美しい茶色い瞳をもった心理学者で、勿論、美女です。カールのカウンセラーですが、カールはこの美女をどうやって口説いて食事をともにするか、そればかり考えています。彼女のほうはそれに気づいているのかいないのか、患者がそれを口にするチャンスすら与ええようとしません。私などは、事件そっちのけで二人の仲のことを追いかける始末です。
本の構成は、プロローグ、39章の本文、エピローグ、訳者あとがき、からなります。内容紹介はカバー後のものを拝借しておきます。
「特捜部Q」―未解決の重大事
件を専門に扱うコペンハーゲン
警察の新部署である。カール・
マーク警部補は「Q」の統率を
命じられた。しかし、あてがわ
れた部屋は暗い地下室。部下は
デンマーク語すら怪しいシリア
系の変人アサドひとりのみ。上
層部への不審を募らせるカール
だが、仕事ですぐに結果を出さ
ねばならない。自殺と片付けら
れていた女性議員失綜事件の再
調査に着手すると、アサドの奇
行にも助けられ、驚きの新事実
が次々と明らかに――北欧の巨
匠が本邦初登場。デンマーク発
の警察小説シリーズ、第一弾。
ちなみに、失踪している女性議員、ミレーデ・ルンゴーは民主党副党首で、その美貌と明晰な頭脳にはファンもおおく、交際を望む男たちが絶えなかったという美女です。日本でいえば美しすぎる議員として名をはせている八戸市議会議員の藤川ゆりを思えばいいのかもしれません。ミレーデは2002年、殺されたことになっていますが死体は見つかっていません。ミステリ部分は、彼女の生死ということになります。
紙の本
またまた北欧発ミステリーの傑作シリーズ登場、第1作は警察小説の魅力を詰め込んだぜいたくな1冊
2012/08/18 07:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
このところ、北欧発の面白いミステリーがどんどん紹介されている。
かつて、欧米主導の文学世界が閉塞を感じさせた頃、
マジックリアリズムを引っさげた中南米文学が颯爽と登場して斬新なインパクトを与えたということがあるが、
それを連想するといえば言いすぎだろうか。
このデンマーク発『特捜部Q』のシリーズもそんな中の一つ。
まだ1作目を読んだだけだが、とにかく面白い。
たとえばスウェーデンの作家、スティーグ・ラーソンの『ミレニアム』シリーズが
ヒロインの強烈な個性を軸としているのに対して、
こちらは何か一つこれというものはあまり感じさせない。
むしろ逆に、およそ警察小説の魅力はすべて取り込んであるようなぜいたくな感じがウリではないか。
挫折して傷を背負う刑事。
彼とそれを取り巻く人々の人間味、あるいは人間臭さ。
犯罪とその背景にあるものの濃密さ。
ダブルプロット的に、しかも時間をずらして犯罪と捜査とを描く仕掛けの効果。
ひとつひとつ手がかりをつないで謎を崩していく手際の面白さ。
クライマックスにおけるギリギリの緊迫感。
そして事件の解決に伴う喜びと悲しみ。
中でもこの第1作を支えているのは、絶望的な状況に耐えるヒロインの戦いだろう。
戦いといっても完全に受身であることを強いられているわけだが、
そこで極限まで精神と頭脳を駆使して抗うさまは、壮絶と呼ぶしかない。
シリーズは3作めまで訳されているが、原書は当然ながらその先を行っているというし、
この第1作のドラマ化映画化も進んでいるらしい。
何重にも楽しめそうなシリーズの登場に喝采。
紙の本
ナントモ人間臭い(笑)…読み応えたっぷりのミステリー
2016/03/17 16:24
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sin - この投稿者のレビュー一覧を見る
ナントモ人間臭い(笑)凡百の聖人ぶった刑事物の主人公達とは違って、手を抜くこと…女性に色目を使うこと…そういった人間らしい個性を隠さない主人公の人物造形にエールを贈りたい!そして芯の部分に捜査に対するひたむきさを持った彼に与えられた特捜部Qという創作部署の絶妙さにも…いや、それだけではなく主人公以外の登場する人物たち(もちろんアサドを筆頭として)のリアル感にも脱帽である。並行して語られる2つの場面が後半に向けて、読書する自分たちの緊張感を否が応でも盛り上げていく…読み応えたっぷりのミステリー