紙の本
私たちの生活を豊かにしてくれた彼ら芸術家の生活のなんと悲哀にみちた人生よ
2011/10/23 18:26
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
『怖い絵』シリーズで多くの読者を魅了した著者がデンマークの童話作家アンデルセン、ドイツの音楽家メンデルスゾーン、そしてスウェーデンのオペラ歌手リンドの3人の間の深い関わりについて描いた評伝小説といえる一冊です。
2006年刊の『メンデルスゾーンとアンデルセン』を今年2011年に文庫化するにあたって改題し、図版等の編集を加えたものとのことです。
極貧の中から才能を頼りに這いあがったアンデルセンとリンド。一方経済的にはかなり恵まれていながらユダヤ人ということで不当な扱いを受けたメンデルスゾーン。
そしてまた温かい家族に恵まれたメンデルスゾーン。そのメンデルスゾーンに道ならぬ思いを抱きながら、やがて別の男性と結婚したリンド。そのリンドに報われぬ愛情を抱いたまま一生独身を貫いたアンデルセン。
役者はそろった、という感が強くします。19世紀前半のヨーロッパ大陸に生きる芸術家たちらしく、国籍をやすやすと越えてしまう彼らがたどった人間くさいドラマを著者・中野京子はあの流麗かつ品位ある文章で綴って見せます。
人類の文化史に大きな足跡を残し、私たちの生活を豊かにしてくれた彼ら3人の苦悩を見事に描くこの小説をご賞味あれ。
紙の本
アンデルセンはストーカー?
2016/10/25 20:21
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投稿者:あきちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
これを読むと偉大と思っていたアンデルセンの素顔に驚く。
中野京子氏の語り口は面白いが、画家の話のほうが生きるか。
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メンデルスゾーンの曲も、アンデルセンの童話も、今までそれ程興味はなかったのだけど、俄然きちんと聴いたり読んだりしたくなった。
リンドはその存在さえ知らなかったけど、彼女にもとても興味が湧いた。他の2人と違って、彼女の“作品”を聴く事が出来ないのが本当に残念。
メンデルスゾーンの絵とアンデルセンの切り絵が、どちらもこれが本職でもおかしくないくらい上手くてとても驚いた。
普段余り作品と作者を結び付けて考えないのだけれど、リストの音楽のイメージと、本人の描写が余りにもピッタリで笑った。
作品も本人も、派手過ぎて漫画みたい(褒めてます)。
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合唱サークルでメンデルスゾーンを歌うことになり、その上大好きな中野京子さんということで興味を持ち購入。
無知であり初めはメンデルスゾーンとアンデルセンに接点があったこと、ジェニーリンドという歌手が実在することもしらなかったのでフィクションかと思うくらい、おとぎ話のようだった。
偉大な作曲家と作家が友人同士だったとは!
しかも1人の女性を巡って色々あって、、、。
中野京子さんの読みやすい文体でどんどん読めて、知識量にもいつも驚かされる。美術、音楽、歴史、中野さんが得意とするともが全て私のツボなのでついつい読んでしまう。
メンデルスゾーンの生い立ちも知れたし読んでよかった。
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メンデルスゾーン、アンデルセン、スウェーデンのソプラノ歌手ジェニーの三角関係の物語。
中野京子さんの絵画シリーズはいろいろ読んだけれど、音楽シリーズははじめて。
小説仕立てになっていて読みやすかった。
メンデルスゾーンは軽いサロン音楽ばかりを作っていたイメージだったけど、
中野さんが言うようにもっと評価・研究されてしかるべき人なのかもしれない。
とりあえずメンデルスゾーンの曲を改めて聴いてみたくなった。
幼少期のうそのような可愛らしさにもびっくり。
ジェニーの歌声もいまとなっては楽しめないのが残念。
硬質でリリックでなめらかで、という言葉で想像を膨らませて「歌の翼に」を頭の中で再生してみよう。
そして何といっても一番のインパクトはアンデルセン。
文献やさまざまな人の日記を当たって実際の人物像に肉薄しているとしたら、
アンデルセンの無邪気さ、能天気さ、厚かましさ、無神経さ、鈍さには呆然としてしまう。
ほんとうにこんな人だったんだろうか?
素晴らしい物語を作る想像力はあったのだから、
人の気持ちももっと分かってもいいような気がするけれど。
ジェニーにストーカーの如く付きまとう姿は痛々しくて見ていられない。
ジェニーもいくら口下手だからってもっと早めにはっきり断ればいいのに、と思ったけれど。
でもとにかく面白かった。ほかの音楽シリーズの本も読んでみよう。
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192ページの、互いに何も語らないでいる間は続いた関係が、心の吐露がなされた瞬間、壊れてしまう。分かるな。ジェニーも苦しかったんだろう。
ジェニーがメンデルスゾーンの約束を守ることについて、、
約束した瞬間、義務になる。私のことまで義務と感じていたんだわ。
こういう細かい描写も上手く表現されていた。
恋愛の話がメインかと思ったが、それだけではなく3人それぞれの生き方や人となり、メンデルスゾーンの人生などいろんな面に触れることが出来た。
メンデルスゾーンは、単純に元々好きだったが、さらに聴き込んでもっと好きになれるような気になった1冊。
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スラスラと読み進められました!
名前は聞いたことあるけどよく知らない偉人たち。彼らも自分と同じ悩める人間だったんだなと。
個人的に、アンデルセンの猪突猛進でデリカシーのないところが嫌です笑
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中野さんの文章はとても読みやすいので時々読みたくなります。
今回も面白い切り口の内容かしらと 読みました。
メンデルスゾーンもアンデルセンも
名前も作品も 見聞きしていますが
その人個人については 殆ど記憶にないので へーーって いう感じで読めました。
このお二人が 同じ時代に生きて そして
三角関係?!だったとは。。。。
ヒロインは ジェニー・リンドという歌姫でした。
やはり 芸術や文学は 恋とかがからむと パワーアップするものなのですね~~
と しみじみ 思いました。
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作曲家メンデルスゾーンと童話作家アンデルセン、そしてこの2人の芸術家が恋したオペラ歌手ジェニー・リンド、という3人の出会いと別れの物語。
単行本版(さ・え・ら書房、2006 年)は挿絵入りだったが、集英社文庫版では挿絵はなく、代わりに絵画や楽譜などの図版が加えられた。実話にもとづくストーリーであるだけに、文庫版の方が個人的には好き。アンデルセンの切り絵(p. 41)が美しい。