紙の本
<まともな家>とは幻想なのかも
2015/10/17 18:04
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
お仕事小説のイメージが強い津村氏ですが、子供(この場合、主に中学生)を書いてもいたのですね。ちょっと予想外で読んでみた・・・いろんな意味で、生きづらいのには年齢は関係ない、という感じの話であった。
自分の家のことしか基本的に人はよく知らない・知れないものだけれど、それが普通と思ってしまいがちだけれど、ほんとに“普通の・まともな家”ってどれくらいあるんだろう。
そして自分の家がまともではないと早めに気づけた方が、もしかしたらその後の人生を考えると楽なのだろうか。
子供には人生のどす黒さとかめんどくささとか、薄汚れた感じにはできるだけ成長してから触れてほしいなぁ、と大人の立場としては思ってしまいがちですが、残念ながら子供の社会も相当なことになってますから(自分たちのことを考えたら、確かにそうだったし)、知るなら早い方がいいのかも。
いろんなことを思い出しました。やはり人は嫌なことは忘れるようにできているのかも(思い出すときには、やんわりフィルターがかかっています)。
でも人生にあきらめてほしくない。
登場してきた中学生たちの、健闘を祈りたいと思います。
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家に居るのが厭で図書館で過ごすなんてやるせない。
学校や家には帰りたくないと思たことはないけれど尾崎が大好きなワタシはまともな家の子供やったんやろな。
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中学3年生から見た大人たちを描いた作品。
大人にならないとわからないこともあるさと、少し大人になった私は思った。
この小説を読んで確信したけど、津村記久子の書く小説に出てくる女の子はみんなどこか性格が悪い。
もしくは現実を現実として受け入れようとしなかったりする。
でも、そういう部分がとても愛おしくて好きだ。
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若き労働者たちを多く書いてきた著者が、働かない大人を描いていて、しかも中3生が主人公。新鮮な感じで読んだ。この年代特有の、自ら壁を作ってその中でもがいている様子が懐かしくもあり、家に居場所がなく暑い町をさまよう様子がおかしくもあり。つい大人目線で読んでしまう。同世代で読んだらどう感じるのだろう?
受験生なのに塾の宿題写しに奔走している場合か?とつっこみたくもなった。ユニークな友人が印象的だった。
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何が好きって、津村記久子の本に出てくる女性はいつも
何かに、もやもやいらいらしたり、そしてそれがどこか
諦めに似た達観につながっていく所がある。
今回の主人公は家に居場所がないと思っている、「家族」が
嫌いな中学生。
青春の爽やかさのかけらもない本書に漂う空気感が面白い。
津村記久子は文体で読ませてくれる。
長い一文も回りくどい言い方も悪くない。
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うちの母の口癖・「どんな家にも色々な問題があるんだよ」を思い出してしまった。
このお話の中の“子供”たちは中学三年生。かなりいろんなことがわかるお年頃とは言え、まだまだ子供。そして何より、親の庇護なしでは生きられないのがしんどいよね、と言ってあげたくなるくらい、その親たちが・・・。
親、というか、大人になる、ということは、どんなに一本切れてても、ふらふらと腰が定まらなくても、生きて行くことはできるんだよね、なんて、変なことに感心してしまった。ホント、まともな親がいないんだもの! まぁ、全て子からの目線なので、大人の事情は何も忖度してないし、子には分からない切なさや苦労もあったのだろうけど、だからこそ逆に、私は少なくとも全て自分の責任で右往左往する方の大人でよかったよぉ~なんて思っちゃうのが可笑しかったです。
主人公のセキコのお父さんはしょっちゅう仕事を辞めちゃうし、それに対してお母さんは受け入れるというより現実を見てない感じだし、友だちのナガヨシのお母さんは買い物中毒、そして・・・と、もうキリなくいろんな大人が出てきて、これはまずいでしょう!の連続。(でも、絶望的なタッチじゃないんだよね。子供たちの諦観+たくましさがよかったです。(*^_^*))
夏休みの塾の宿題を誰から写させてもらうか、に四苦八苦する中学生たちには、おいおい、学校じゃなくて塾の宿題なんだったら、出来ないところは出来ないって言ったほうがいいんじゃない?と突っ込みながら、テトリスみたいにブロックが埋まって行く過程も面白かった。
同時収録の「サバイブ」は、表題作に出ていたクールな室井いつみの家庭の問題が中心で、なんか、変な面白さがあって読ませられた。いつみの母の不倫疑惑の真相はどうだったんだろう。大人って上手に物事をうやむやにしちゃうよね、と、これって笑っていいのかな。(*^_^*)
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なんかものすごくリアルに中学生の生活を垣間見た感じ。
それにしてもまともな大人のいないこと(笑)
どの家庭もそんなものかも。
そんな親に育てられても
子どもってなるようになるんだね。
好きだなーこの本。
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父親が仕事をせず家でゲームばかりしている。
母は夫が機嫌を損ねないように、何も言わない。
妹はうまく取り繕っている。
そんな仲良し家族を装っている家庭状況に耐えられないセキコは、家に居場所がなく夏休みは友達の家に行くか、図書館で過ごすかしていた。
図書館では同じ塾の室田さんを見かける。頭のいい室田さんがなぜ家で勉強せず図書館に来ているのかセキコは不思議だった…。
ナガヨシや室田さんの家でも、実はそれぞれ家庭に問題を抱えている。
でも中学生のセキコたちには他人の家庭は幸せそうにしか見えず、自分の家と比べては悲嘆する。
タイトルの通り、まともな家の子供なんてそうそういないのだろう。
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タイトル通りまともじゃない大人の下、何とか自我を保つ精神的にたくましい子供達の物語。
彼らの強さあっての暗くない終わり方だけれど、現実ではこんな子たちばかりじゃないだろう、というのが正直な感想です。
けれど相変わらず思考回路の言い回しはとっても面白い。
「話し方がイヤな奴というのは、質問をして答えさせるだけ答えさせておいて、意味深にうなずくということをしがちだ。」
「家にいないのは損だ。終始外に出て、誰かとつるんで、あることないこと喋っている同級生がいるのは知っているけれども、それはそれで疲れないだろうかと思う。そういう子たちに限って、水筒なんて持ち歩かないし、喉が乾いたらお茶を買うのだろう。それはお金がかかるし、人といるだけで金が出ていくなんて、そのうちイライラしてくるに違いない。だから、どうしても外に出て誰かとつるみたがる子たちは、自分に聞かせるような馬鹿でかい声で笑っているのだろう。自分に、自分は満たされていると納得させるために。」
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どんな家庭にも問題はあるもので・・・。それでも家族がいて、家族とのつながりが煩わしいと感じることがあっても、実は幸福なんだよって言ってあげたい。
なんだかんだいっても、ここに出てくる子供たちは乗り越えていくんだろうなぁ、というたくましさがありました。それが絶望的な話にならずに希望があって良かったです。
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中学生の話かぁ〜、なんて乗り気しない感じで読みはじめたのだけど、すごくおもしろかった、よかった、好きだった。40代も後半のわたしが中学生に共感するって自分の精神面に不安が募るけれども、なんだかすごく主人公に共感するというか気持がわかるというか。なにもかもうざったいとか、先が見えない不安とか、すべてむなしい気がするとか。さすがに大人の気持ちとか事情は少しはわかるので(たぶん)、むやみに親や大人に頭にきたりとかはないんだけれども。でも、親や大人に頭にくる気持もわかる。津村さんの作品ではいつも主人公がすごく他人との会話を気にしてる気がするが、そこが好き。たとえば、相手がしゃべらなすぎとかしゃべりすぎとか、お互い黙っててもきまずくないとか、人のことをきくだけで自分のことを話さない、とか。人の言動をすごく細かく観察してて、それについてどう思うかとか、人によってはくどく感じるんだろうなと思うほど書かれているのが好き。いろいろ家庭に問題があったり、さえない感じの中学生たちの話だけど、すごく悲しいこととかは起きなくてほっとしたし(いつも、なにかあるのかもとどきどきしながら読む)、最後に希望を感じて、読後感がよかった。主人公の成長を感じた。えらいと思った。先は見えなくてもとりあえず目の前にあることを受け入れて地道に生きていくしかないんだな、とか。中学生に諭されたような。やっぱり津村さんの書くものは好き。
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ふしぎな題名ですが、内容そのものなのがまた不思議。まともぢゃない家、まともぢゃない子供。でも一概にまともぢゃない家とも言えずそんな家の子供はまともぢゃないようでいて別段まともぢゃないわけでもなく?内容あんま覚えてないけど、同作者の「ポトスライムの舟」は良かったな。
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それぞれがわずかに不幸を抱えているのに、「普通」の生活を送る中学生たちが出てきます。こういう斜に構えた語り口にはちょっと飽きたというか、もうこんなお子ちゃま向けのは読むのやめようと思いながら読んでいたのですが、不思議な引力があります。
大人批判をしたら一丁前なのに、てんで自分のことができていない中学生をあくまで主人公目線で書いているのがいいのかも。自分もこうやって批判ばかりしていただらしない奴だったなあと思い出します。
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ひと言でいえば、すごくよかった。
淡々とストーリーが進んでいくが、
知らないうちにグッと深くはまり込んでいくという感じ。
2つの短編で構成されているが、その並びも絶妙。
私の中では、津村作品ベストといった感じかなと。
印象に残ったフレーズ
「自分のしたことを裏書きされているような感じ、・・・」
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新刊が出るとハードカバーで買う、数少ない作家のひとり。とにかく好き。これまでの作風から、どうしても、サラリーマン女子の乾いた目線のイメージが強く、本作は中学生を主人公に据えているところが変化球。しかし、読み終わってみれば、あまり違和感なかった。というか、全然いつもと一緒(良い意味で)。この人のヒロインはいつも、冷めた諦念に満ちている。社会や周囲に大して厳しい批判的視線を向ける。独自の正義感に溢れ、人知れずナイーブで、どこかで唐突に他人に優しい。それは、思春期のそれとよく似ていて、貧乏OLも、根暗女子大生も一緒。三つ子の魂百までってね。ひねくれた中学生の目を通して、精一杯なのにどうしようもない、普通にだめな大人の姿を見ていると、自分も含めて許してやりたくなる。同時にこんなどーしようもない人間は、自分も含めてどっかに消えてしまえばいいとも思う。人間やっていくのは結構疲れるのだ。だから、中学生はまだ先が長くて気の毒。30年、なんとかやってこられてよかった。