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何年かに一冊出合う感覚の本。自分で何かしら書くようになって気がついたが、この本のような鋭さと孤独感と異郷の感じのある本はめったにない。目立たないタイトルだし、地味な話でもあるが、知性的で個人的で、こんな風に語れたらいいのにと思う書。
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「崖の上に斜めに突き刺さって建つ家」という設定によって最初の数ページで物語の不思議な世界に入り込まされる。
風が吹いたり匂いを感じたりするような丁寧な、しかし装飾的ではない文章は美しい。
物語は詩的で余白がある。
取り留めのない、捕らえ所のない本だが心に残るイメージがある。
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ジキルとハイドだけではなく
宗教的な牧師さんという存在とダーウィン
(土木技師?と作家も?、シルバーとダークという名前も?)
といった対照的なもの
を絡めて一つの統合された意識にまとめたくなる
多様な世界・自分に悩む人と自然に受け入れている人を通して
帯に書いてある「響きあい、交差する、二つの孤独な魂の遍歴」
「孤独」というところ、そのままの印象。
ピユーというどの時代にも存在するキャラクターを通じて
物語は一つになっているが、現在と過去、人を行き来していて
文章は詩を読んでいるような感じ。
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崖の上に斜めに突き刺さって建っている家に生まれた、シルバーのお話。時間や場所や、自我までもがひとつに固定してなくて、ぽん、ぽん、と語られることにより、ひとつの世代で完結しない魂が物語として生まれてくる。
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灯台が人生の道しるべ、灯台守はひかりの世話をし、物語を語る。
孤児の女の子と二面性のある牧師。
それぞれの数奇な人生は、物語ることで苦しさを半減させるのかも。
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“お話して、ピュー。”
盲目の灯台守の男に物語をねだっていた孤児の少女が、いつしか自らの物語を語り始める。
“お話して、シルバー。”
これは自らの人生を物語ることで、自らを見つけ出す物語。
盲目の灯台守の男が物語るのは、愛を求めて破滅的な二重生活を送った牧師の物語。光と闇の間に揺れる男の話を経て、少女シルバーが愛を見つけ出す物語。
とても好きなお話だった。
どこがいい、と言われると言いにくいけれど、言葉の感覚や端々に出てくる何気ない一文が胸に刺さった。
私が自分の人生を物語るとしたら、何が灯台のように残り、何が波間に消えていくのだろう。そんなことを考えたりした。
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翻訳物が好きだ。
脳からそのまま出力されたのではない言葉は、
事象に対して多分に真摯だ。
出だしの文にやられた。
「母さんはわたしをシルバーと名づけた。わたしの体は銀と海賊とでできている」
なんて素敵な表現なんだろう。
こんな素敵な文章が随所にある。
それを眺めるだけでもとっても幸せだった。
最初、少し勘違いをしていた。
ピューとシルバーを起点として、流転していく物語かと思っていた。
なんと言ったらいいか、わからない。
でもいつの間にか愛について私は読んでいた。
私だって救いようのないロマンチストだし、愛こそがもっとも価値のあるものだと思っている。(その解釈が物語りや他の人と同一である確証はないけれど)
恋は近年の発明だ。
子どももそう遠くはない昔に見出された。
それに伴って母性愛も。
さらに新しく父性愛も。
それらに較べたら愛の歴史ははるかに長い。
だが、自然のものではない。
ダーウィンの進化論のように、起源をもとめて物語りは彷徨う。
見つけて、見失って、結局それが本質なのかもしれない。
ひとつだけかわらないのは、物語であり言葉だった。
灯台守、彼らが護る灯火そのもの。
だから、灯台守の話、なのだ。
岸本さんの翻訳が素晴しいと思った。
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今にも崖からおちそうな家で、命綱をしながら暮らしていた少女シルバー。母親がなくなったことで、孤児となり灯台守ピューとともに暮らすことになる。
ピューが彼女に教えたのは灯台の「灯を世話すること」、そしてそれ以上に大切な、「物語る」こと。
それは人生という航路の中で、ときに道に迷う私たちを、導いてくれるものだから。
美しい海辺の描写の中、重層的に語られていく静謐な愛の物語。
こういうお話が私は好きだ。
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ふたつの人格に翻弄されるダークと、いくつもの記憶を受け継ぐピュー。その対比にのめり込んで読んだ気がする。
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3度目くらいの再読。『オレンジだけが果物じゃない』の方が好き。バベル・ダークとピューの語る物語のなかに、他の物語が差し込まれる。この感じは『オレンジだけが果物じゃない』と同じ。でも、『灯台守の話』は断片的で、何度も何度も色んな形の愛を語る。まるで波のようだ。シルバーは死んでしまった母親にも、引き取ってくれたピューにも愛されていたのに、物凄く愛に飢えている。シルバーなのか作者なのかこの目線の先にあるひとは、女性ばかりなのも面白い。
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全編を通して感じたのは、海と海風と、回転する光を放つ灯台。
基本的に訳書は苦手だが、この本は気にならずに読む事ができた。
訳者あとがきにある「〈物語ること〉で人は救われる」という一文。
表現する事で、一時的にでも、また後々見返した時にでも、助けられる事は確かにあると思う。
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好きな題材。文体がそのときの自分に合わなかったのか、単に期限が来て他にやることがあって返したのかどっちだっけ。今は読んでみたい。詩に向き合ってる今は。好きになるのか、やっぱりこれは自分にとっては違うと思うかどっちかな。
■備忘録…Twitterのフォロワーさんの感想
@clove_mix: ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』、すごく好きだった!全編が詩のように深い言葉で綴られているのに、不思議なほどに推進力がある。物語ることの力を信じさせてくれる本。
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いい本だった。静かで、力強い。
漆黒と、灯台が照らす光の波が交互に打ち寄せるように、重層的に語られる物語。
訳者あとがきに、
「すべてのものが闇に浸され、物を食べれば闇の味まで一緒に味わうような灯台の暮らしのくだりなどは、永遠にここばかり訳していたいと思ったほどだった」とあり、読者としてもそこばかり読んでいたい!と思ったほど。
不思議な文体だけど、原文はどうなっているんだろう。気になる。
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洋書翻訳ものは苦手だ。なかなか読み進めなくて苦痛だった。
内容も再読しないとよく理解できてない。ピューは一体何者?
他の人の評価が高くて驚く。
西加奈子かオススメしていたので読んだけど私が手に取るべき本ではなかった。
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ジョン・アーヴィングの「神秘大通り」に出てきた作家で、興味本意で手に取った一冊。
これが当たりで面白かったです。
ひょんなことから孤児になった主人公とその子の養父となる灯台守、それから200年ほど遡った時代に生きた二人の女性の間で二重生活を送る牧師、二つの物語が灯台を中心に交錯して一つの太い物語になっていきます。
初めて読んだ作家ですが、久しぶりに著作を集めてみようと思いました。