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内田樹の前書きが興味深い。村上春樹に限って日本語の原文を読んでいるように、自然にフランス語が読める。「会ったことがない古い友人が、見知らぬ異国から書き送ってきた、読めない言語で書かれた手記」。「村上春樹のほとんどすべての作品は、その神話形式の変奏のように私には思われる」「主人公たちには共通する特徴がある。それはいかなるカオス的状況のうちにあっても、言葉をていねに扱う、直感に従う、ささやかなものであれ何かを達成したら自分に「ごほうび」をあげる、・・・「それでも、もう一日だけ生きてみよう」と思うときに選ぶ自己規範に通じている」
p221村上春樹の言葉「人間の存在というのは二階建ての家だと僕は思っている」地下室の下にはまた別の地下室があって、非常に特殊な扉があってわかりにくく、普通には入れないし、入れないで終わってしまう人もあるそう。…地下2階まで行ってしまうと頭だけでは処理できないそう。なんとなく、わかる。どうしてこの作品で涙が出てくるのかわからない映画や小説に出会うことがある。感動とは違う、何か自分に響くもの。自分の中の何かが反応していると感じる。これはもしかして、地下二階の扉が開いたということなのかもしれない。