紙の本
あまり参考にならないが読みやすい
2016/04/20 17:00
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投稿者:よしくん - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮台真司教授の就職活動に関する本。
たいへん読みやすいが、結局「就活で受かりやすいのは男にも女にももてるような人だ」というような記述に尽きるような気がする。
あまりおすすめしない。
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宮台教授が書く「就活原論」!発売前から、「これは確実に世の就活マニュアルとは一線をかす別物だろうな...」って思ってた。マジでそうだった。
本全体を要約すれば、「すぐには役立たない就活マニュアル」だった。
なぜ役に立たないかと、いうと、この本を手にとって今就活に苦しんでいるという時点で、君にはどこか問題があるからだ、というとても体育会系な温かいお言葉が書いてあります(笑)
ではどうすれば手遅れな君が就職できるようになるのかというと、それは「ひとかどの人物」になりなさいという事。
もっと砕くと「社会性を持つ人間=ひとかどの人物」それ以外は就活うんぬん以前に、社会性を身に着けるべき準備段階の人間。というカンジ。
だからそういう人間はちゃんと自覚してこっから努力して、1年就職浪人する事になりえるのを頭に入れて「ひとかどの人物」を目指せと。
大部分で自分には耳の痛い、心の締め付けられる内容だったけど、とても勉強になった。
1章と8章だけ読めば、即効性があるかもしれない。
1章と8章を頭に入れてれば、就活が好転するかも?
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宮台真司の最新作。会社のインターン生に一読を薦めたい本です。
私も以前から指摘していることですが、就活に重要なことは充実した大学生生活を送ることです。きちんと勉強し、研究室やサークル活動等を通して社会性を身につけ、人生の目的をあれこれ考え、恋愛し、充実した学生生活を送っていれば、それなりの結果が得られるでしょう。それが何故なのかはこの本を読むとよく理解できます。
この本の中で気に入った、3.11の原発事故以降、今後の日本が生き延びるために必要な宮台氏のスローガンを紹介します。
1.〈任せて文句を垂れる社会〉から〈引き受けて考える社会〉へ
2.〈空気に縛られる社会〉から〈知識を尊重する社会〉へ
3.〈行政に従って褒美をもらう社会〉から〈善いことをすると儲かる社会〉へ
4.〈国家と市場に依存する社会〉から〈共同体自治で自立する社会〉へ
5.〈便利と快適を追求する社会〉から〈幸福と尊厳を追求する社会〉へ
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OB訪問をして「素敵な人に会いました☆(正確には☆ではなく、キラキラしたのが点滅する)私もこんなふうになりたい☆(正確には以下略)」と書く女子学生、「就活セミナーを主催します」と告知する男子学生etc.etc。
学生時代、就活生のやっているキラキラした(いわゆる意識の高い)就活ブログにぶちあたる度にはらわたを掻きむしりたくなるような気分になった方は、私以外にも多いのではないでしょうか。
大部分がそこに乗っていけない自分への劣等感だということはわかりつつ、一方で「なぜこのゲームに乗ることを自明視するのか?」という疑問もある。『宮台教授の就活原論』は、そんなぐるぐるした気持ちを解決してくれる、初めての就活本です。
◆就活というゲームの仕組みがわかる
日本を代表する社会学者のひとりである宮台真司さんが、産業構造の変化、働くということの変化などから、就活とは何かを社会学的に解き明かします。
◆現代社会で働く時に必要なことがわかる
キーワードは「適応」と「適応力」。グローバル化の進展で市場の流動性が上昇する中、現状に「適応」していては生きていけない。大切なのは「適応力」。これは、今生きていく上で何にでも当てはまることだと思います。さらに、仕事を適応力で乗り切る場合に必要な「ホームベース」の大切さにも言及します。
◆3.11後の世の中を良くするために必要なことがわかる
今の就活に適応した先に待っているのは、<任せて文句垂れる><空気に縛られる><行政に従って褒美を貰う><国家と市場に依存する><便利と快適を追求する>デタラメな社会。この社会を変えるための指針が書かれています。
◆就活に必要なことがわかる
「充実した学生生活を送ること」「ひとかどの人間であること」など、基本的には時間をかけるしかないことが多いですが、「他人に『そんなんじゃだめだ』と言われたら素直に受け止める」というのは、すぐにできることだと思います。
などなどのことから考えるに、このもやもやした気持ちを抱える私は「適応してはダメだとなんとなく思っていたけど、適応力はないし別のルールを作る能力もない」……ってつまり頭でっかちな大学生だったってことですね。
これから就活の方も、就活に悩む方も、私のように現在働いている人にもオススメする、色々な読み方ができる「働くこと」の基本書です。
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価値を訴求し、市場を啓発せよ。
* 共同体の空洞化を解決するには、何よりも就業時間を短くすること。→就業時間の短さ(ワークライフバランス)
* 共同体空洞化の歴史をふまえて、善いことをして儲ける。共同体空洞化を食い止め、相互扶助を再生する。
* 人々のニーズに応じてはいけない。ニーズに応じるとマーケットの民度がますます下がる。価値を訴えて新しいニーズをつくり出せ。
* これから生き残るのは社会的に正しい企業だけ/〈よさ〉から〈ただしさ〉へのコミュニケーションシフト/「社会的な正しさ」がカッコイイという訴求
p.34 適応力
自己発見シートを埋めて「自分はこういう人間だから、こういう会社でこういう仕事をして自己実現したい」という就活はナンセンス。「こういう会社」も「こういう仕事」も随時変わり得ると腹を括るべきなのです。
p.44 ポストフォード主義:「仕事での自己実現」が可能な人々と、その競争に敗れた人々。後者を「良き消費者」として養成。
p.51- 「仕事=人生」にはできない/企業はうまく生きる人間を求め始めている
〈システム〉でうまく生きることと、〈生活世界」でまともに生きること。
p.79 「いい学校、いい会社、いい人生」を鵜呑みにして、信頼できる親友や性愛パートナーを作るための修行をないがしろにしてまで勉強に打ち込むならば、皆さんは、仕事での成功も、幸せな人生も、望めなくなります。
p.82 共同体の空洞化を解決するには、何よりも就業時間を短くすること。
p.87 「経済回って社会回らず」は経済を破壊し、「仕事回って家庭回らず」は仕事を破壊するのです。
p.89
〈任せて文句垂れる社会〉から〈引き受けて考える社会へ〉
〈空気に縛られる社会〉から〈知識を尊重する社会〉へ
〈行政に従って褒美をもらう社会〉から〈善いことをすると儲かる社会〉へ
〈国家と市場に依存する社会〉から〈共同体自治で自律する社会〉へ
〈便利と快適を追求する社会〉から〈幸福と尊厳を追求する社会〉へ
p.96 鬱陶しさは包摂と表裏一体です。鬱陶しさだけ切り離して、子供が世話になったりいろんな当番を代わってもらう恩恵だけを享受できません。
p.97 ホームベースの基礎は「我々」
絆を与える近接的な共同体は、多かれ少なかれ、何かをシェアしているという感覚に支えられます。シェアされるものは、血縁的儀礼だったり、宗教的戒律だったり、職場の時間と空間だったりします。シェアしているという感覚が情緒的アタッチメントを与えます。
※帰還場所=出撃基地(ホームベース)
p.98 シェア
一見したところ典型家族とかけ離れていても、長らく近しくあり続ける近接的共同体のうち、とりわけ「成人の感情的回復」機能と「子供の一次的社会化」機能を担うユニットなら、家族と見做すことが大切です。今後は変形家族こそが大切になります。
僕の周りで実際に目立ってきましたが、自分と同じ価値観を持つ人たちが多い地域に移り住んだり、自分と同じ価値観を持つ仲間同士が特定の地域やマンションに集住して、子育���や弱者の介護を相互扶助する、といった動きも、一部で確実に進みつつあります。
まだ子供のいない若者たちが、一軒家を借り切って集住するシェアハウスの動きも、ここ数年進みつつあります。この動きが、趣味の相互扶助集団を超えて、絆の相互扶助集団につながるか否かが、間もなく彼らが子供を持つようになった段階で試されます。
p.100 これからの企業人や職業人はこうした共同体空洞化の歴史に無頓着であるわけには行きません。先に〈善いことをすると儲かる社会〉が大切だと言いました。善いことをして儲けましょう。善いことの主軸は、共同体空洞化を食い止め、相互扶助を再生することです。
場所と人との間の入替可能な関係を食い止めましょう。そのためには、場所が快適で便利であればOKという発想を捨てるべきです。快適で便利な場所はどこにだってあり得る入替可能なものですが、入替不可能な関係なくして幸福と尊厳はあり得ないからです。
就職課が学生を迷わせた。適職幻想。かつては「先輩のコネ」が当たり前だった。情報過多が生んだ「適職幻想スパイラル」。選択肢は多ければ多いほどよいという勘違い。
→「人々のニーズに応じてはいけない。ニーズに応じるとマーケットの民度がますます下がる。価値を訴えて新しいニーズをつくり出せ」(p.112) ※市場の啓発
p.119 最終目的を絶えず思い出すことは、手段的行為が弛緩した繰り返し(ルーティン)になるのを妨げ、その手段的行為をすることが喜びになります。最終目的の達成が大いなる喜びであれば、認知的整合化のメカニズムによって、それに貢献する営みが喜びになります。
(…)
だから、大学生の時間は、最終目的に紐付けられた優先順位(プライオリティ)を手にするための試行錯誤のために使うべきです。就職時点で優先順位がまだ分からないのでは、手段的行為にいそしむ喜びも、手段的行為としての相対化も、利用できないということです。
※ゲストティーチャー、ロールモデル、スゴイ奴、感染(ミメーシス)
→最終目的&優先順位を巡る試行錯誤は、「スゴイ奴」と出会って感染(ミメーシス)しては卒業する経験が、最も効果的です。
p.128 大学生にもなってBtoB企業とBtoC企業の識別もできず、消費者広告に登場するのがBtoCの企業ばかりであることを知らないというのは、頭が悪すぎます。(…)皆さんが就職活動をする際にも、コミュニティバンクの経営方針のように、儲けと同程度かそれ以上に公共性を評価する態度があっても良いでしょう。しかしその際にも、企業の公共的活動がどれだけ持続可能かを評価するには、財務諸表の検討が欠かせません。
※学生に読み解けるのかという問題。会計は恣意的であって経営状態の悪さを隠すもの。
p.130 やはり、企業内部の人の話を聞いてほしいのです。そうすることで、ものづくりやサービス提供についての戦略や同業他社に負けないための狡猾さを、徹底的に観察してほしいのです。アウトプットではなく、インプットにこそ注目して欲しいと思います。
とりわけ重要なのは、木で鼻をくくったような公式見解ではなく、ハイコンテクストな情報あるいはパーソナル情報です。人の言うことは分脈次第で変わるもので��が、分脈次第で言うことがどう変わるかを通じて、それを左右する不変更を探り出すのです。
p.131 どんなコンテンツについても必ず、視座・視点・視野の恣意性があります。恣意性とは、本来別様の可能性があるのに現実にはソレでしかないという状態です。視座・視点・視野の恣意性に気づき、なぜソレが選択されているかを問えば、膨大な情報が得られます。
p.132 中小企業でこそ「自己実現」ができる>「仕事での自己実現」を目指している場合は、こうした「全体性からの疎外」は良くありません。全体性が見える中小企業がおすすめです。
p.138 これから生き残るのは社会的に正しい企業だけ
先進各国が軒並みそうした方向にシフトしつつある以上、遅かれ早かれどのみち日本もシフトします。もし〈善いことをすると儲かる社会〉に変われなければ、日本は遠からず三等国以下に落ちぶれ、自殺や犯罪などで人が死にまくる「終わった社会」になります。
これは、道徳的な問題というよりも構造的な問題です。グローバル化がもたらす構造的変化ゆえに、将来に生き残るのは社会的に正しい企業だけになるのです。社会的に正しい事業に携わることは生き甲斐を与え、親や周囲からの承認にさえ結びつくようになります。
p.138-139 〈よさ〉から〈ただしさ〉へのコミュニケーションシフト
社会システムの持続可能性(サステナビリティ)とは別に、分断された島宇宙同士をブリッジするというコミュニケーション上の要請から、〈ただしさ〉が〈よさ〉に対して持つ比重が高くなってきました。「親や周囲からの承認にさえ結びつく」と言った所以です。
(…)
こうした市場における消費傾向を観察する限り、「社会的な正しさ」を付加価値とするマーケティング戦略は、今後ますます有力になると思われます。これは法令遵守(コンプライアンス)などというケチな話ではなく、積極的に市場に打って出るべき戦略なのです。
p.139-141 「社会的な正しさ」がカッコイイという訴求
小林秀雄は「様々なる意匠」と表現しました。天皇主義も意匠、民主主義も意匠、意匠と戯れる営みは永久に不滅だというわけです。意匠をモードと翻訳するとピッタリきます。日本は「空気に縛られてモードが定まる/変化する社会」つまり〈モードの帝国〉です。
震災後、アーティストなどを中心に「ちゃらちゃらした流行の時代は終わった、これからは倫理の時代だ」などと言われています。これを正しく言い換えると、「ちゃらちゃらした流行が流行する時代」から「倫理が流行する時代」へ、ということになります。
これを否定的に捉えすぎないようにしましょう。日本は〈モードの帝国〉を簡単にやめられません。唯一絶対神の不在という宗教社会学的な構造に結びついているからです。であれば、かつてGHQがそうしたように〈モードの帝国〉を戦略的に利用するべきです。
名著『菊と刀』でルール・ベネディクトが欧米の「罪の文化」に日本の「恥の文化」を対置しました。真意は、日本における「社会的な正しさ」は、イデオロギー(神を気遣う内的確かさ)というよりモード(人目を気遣う外的確かさ)に過ぎないという指摘です。
であれば、単に“人々がまだ気づいていないこんな「社会的正しさ」がある”という訴求だけではなく、“その「社会的な正しさ」は古くてダサイ、これからはこの「社会的な正しさ」がカッコイイ”という訴求を、マーケティング戦略として利用できるはずなのです。
p.141-142 「食の安全」という正しさを商業化した「大地を守る会」
これはブランディングの成功です。「安全・安心なものを追求することがカッコイイ」という方向に市場をオーガナイズ(オルグ!)しました。そう、藤田和芳社長は、大学生の時代に全共闘運動に関わっていらっしゃった。まさに市場をオルグしたわけです。
p.144 内定を取りまくるのは「実績」のある学生
実績に裏打ちされたタフネスと柔軟さ。他者性の欠如。
(1)ビビらずに限界ギリギリまで挑戦でき、(2)限界を知るがゆえに高望みせず、(3)様々な社会的手順に通暁し、(4)コミュニケーションにおいて相手が何を求めているのかを的確に把握して動ける。これらの能力を与える「充実した大学生活」が大切です。→「ひとかどの人間」
逆に、内定が出ないのは、(1)限界を試したことがないのでビビリがちだったり、(2)同じ理由でお門違いの自己実現欲求を抱いていたり、(3)どんなボタンを押すとどんな社会過程が動くのか知らなかったり、(4)他者の構えに鈍感な学生です。→「ひとかどでない人間」
p.166 新入社員の三割が三年で止める、三つの原因
適職志向が強いからこそ会社を辞める。
1.グループワーク能力 →反活動
2.ノイズ耐性 →弟や妹が騒ぐ横で勉強する
3.集団ヒステリー現象 皆が奮闘することで、あり得ない力を発揮する
p.169 就活本の多くは、新卒者が適職を選べず三年で止める傾向を問題視する一方で、雇用問題を扱った本は、雇用の流動性を上げるべきだと提言しています。二つは端的に矛盾します。国際標準の正解は「流動性を上げろ」です。「一生を捧げる適職を見つけろ」は一般に間違いです。
p.175 社会性のある人間は教育で作る
学校教育がグループワークを重視すべき理由や、サークル活動を中心として充実した大学生活を送るべき理由は、さもないと「社会化の不全」すなわち「社会システムが前提とする社会性を欠いた状態」が生じやすいからです。社会性を欠いた人は就職に失敗します。
p.182 企業社会では、グループワーク能力の欠落は、パーソナリティ障害と同様。生育環境次第。社会化の失敗。
つまり、皆さんのグループワーク能力はもともと就活問題を超える問題です。なのに、企業は人事採用においてグループワークを極めて重視します。企業が最大限重視するポイントが、就活問題を超えている。そこに就職活動の成否をめぐる今日の本質的な困難があります。
p.213 自殺のロールプレイに学ぶ文脈コントロール
(1)お前が死んだら俺は悲しい →それだけの人間関係ができていることが前提
(2)おなか空いてないか? 何か食べてからにしよう
p.220 コネ:学生がどんな人間なのかを企業の採用担当が深いところまで把握するには、その学生についての文脈依存的なコミュニケーションが不可欠。「ぶっちゃけ、○○ってどう��う」という質問に、「あいつはああ見えて……云々」と具体的かつ肯定的に証言してくれる人々のネットワークを広く持つこと。だからこそ充実した大学生活を送るべき。
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レビューなし。
ブログは書きました。
⇒ http://ameblo.jp/nakahisashi/entry-11042108726.html
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就活原論という名前ががついているけど、就活の仕方をマニュアル的に説明しているのではなく、今の時代の中、長期的視点で就活をどう見るべきかという姿勢とか心構えの仕方を書いてある本。
就活始める直前に読んでもあんまり役にたたないかも。
高校とか大学に入学したときとかに読んでほしい本。
また、会社の中でどう振舞うべきか、仕事とプライベートの割り切り方、仕事観等についても書かれているので、社会人の方にもお勧めしたい本です。
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店頭平積みでした。
さて就職活動しようとする学生がこれについてこれるかどうか?
はっきりと宮台カラーの内容となっているので、好き嫌いが分かれるものでしょう。ときに、差別的とも感じられる宮台の発言をスルーしながら、なるほどとうなづいていくにはある程度の社会経験値が必要。
高みを目指す学生と、就職活動に関してオピニオンリーダー的ポジションを得ている人が読んで、言葉を獲得するには有用かとおもいます。
私はすきです。
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別に就職活動するわけじゃないけど、宮台さんの新刊ということで。
やっぱりなんというか、人気のある知識人であることに自覚的というか、スノッブな意識にすごく語りかけてくる話口。
ひごろあれこれふわふわと考えていることを、社会学の概念を用いながら言葉でずばっと言い表して分析してくれるのが宮台さんの本を読む一番の理由なんだろうな。
学術用語と、わかりやすい日常用語を行き来する能力はほんとにすばらしいと思う。
流動性の増した市場において仕事に自己実現を求めるのは危険すぎるから、どこかにしっかり感情のホームベースを構築したうえで、どういう状況にも適応できる力と、人間的なコミュニケーション能力を養うことが重要、だそうです、簡単に言えば。
前半で提示される、仲間と戯れる「内在系」でいくか、それでも限界に挑戦する「超越系」でいくか、という問題、および、後半で提示される、やや圧迫的にでもコミュニケーションの涵養をめざすべきかという「誰か何とかいってやれよ」問題、のふたつは今後もう少し考えなければならない。
労働・教育に関心がある人も、ふつうに就職活動するひとにも、もちろん、読んだほうがいいとすすめられる。
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常日頃からの宮台の言説を、学生向けにわかりやすく書き直したという感じの体裁です。
なので、宮台読みには、既知のことばかりですが、改めて読むと、子供たちにどう生きたら良いかをどう教えたら良いのか、自らの生き方をも悩むという再帰性を悩む親世代にもお勧めの本です。
寧ろ、親世代の常識は成り立たず、これまでの常識を打ち破ることから始めた方が良いくらいです。
周りから信頼される人になることが、仕事をすることに繋がるのだ。遠いように思えるけど、急がば回れですね。
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これから生きていくにあたり、大切なことが書いてあります。就職活動とは生き様の表れ。人生論と思って読むことをオススメします。
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インターン採用のための面接をしていてショックを受けたことが本
書を読むきっかけでした。何にショックを受けたかと言えば、自分
を押し殺し、企業社会の価値観に過剰適応しようとしている学生達
の姿にであり、また、そのように仕向けている就活本や就活セミナ
ー、はたまた企業人事部のあり方にでした。
企業が求めているのは自社の業績に貢献してくれるであろう人材で
す。それは昔も今も変わらない。しかし、バブル崩壊後長引く経済
の停滞とグローバル化の進展の中で、企業が求める人材像は変化し
てきています。本書ではそれを「『適応』から『適応力』へ」とい
う言葉で表現していますが、今の組織や業務に適応できることはも
とより、どんな状況になってもやっていけるタフネスさと柔軟性を
併せ持つことが求められるようになっているのです。大企業ですら
安泰でなくなったこの20年間を踏まえれば、それも当然でしょう。
一方で、学生の側には「仕事を通じた自己実現願望」と、自分にふ
さわしい仕事がどこかにあるはずだという「適職幻想」が広がって
います。その背景には、OB・OGとの人間関係をベースにした就職
活動から、大学の就職課と就職支援企業のサポートを前提とした就
職活動へのシフトがあると著者は指摘します。就職支援企業の提供
する膨大な選択肢を前にして、自分にふさわしい職場、自己実現で
きる職場はどこかと学生達は悩み、就活本や就活セミナーで教えら
れる安易な自己発見、適職発見の手法に洗脳され、自意識を肥大化
させるか、自分を見失うかのどちらかに陥っているのです。
企業は「適応力」を求めているのに、就活本や就活セミナーの言う
ことを真に受けて「過剰適応」した「適応力のない」学生ばかりが
増えていくという逆説。ここには深刻なミスマッチがありますし、
企業の側も学生の側も、こんなことをやっていたらどんどんダメに
なっていくのではないかとそら恐ろしくなります。
ではどうすればいいのか。
学生の側に求められるのは、今の企業社会の価値観に振り回される
ことなく、「ひとかどの人物」になるための経験をできるだけ多く
積むことだと著者は言います。そして、企業の側に求められるのは、
企業の都合ではなく、人材育成に必要な大学の都合を最優先に採用
活動をすること。さらに、子どもが「ひとかどの人物」になるため
に、親や教員が自らの生き方を見直すことも必要になります。「あ
さましい人間は必ずあさましい人間を育てる」からです。
結局、著者が説こうとしているのは、日本人はどうすれば幸せに生
きられるのか、ということです。キーワードは〈引き受けて考える〉
〈知識を尊重する〉〈善いことをして儲ける〉〈共同体自治で自立
する〉〈幸福と尊厳を追求する〉。詳しくは本書に譲りますが、そ
れぞれ今の日本社会のあり方に対するアンチテーゼです。これらを
前提とした生き方が、個人にも、企業にも求められていく。そうい
う「構え」で就活に臨むべ��である。そう著者は主張します。
就活論の名を借りた日本社会論ですから、就活中の学生さんが読ん
でも途方に暮れるだけかもしれません。むしろ、お子さんをお持ち
の方や企業の採用担当者、CSR担当者、経営者にとって刺激的な一
冊となることでしょう。是非、読んでみてください。
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▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)
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「人間関係を台無しにせずに異論を述べる能力」の前提にもなる、
今日最も重大なコミュニケーション能力、それは「相手を理解する
能力」であると断言できます。
これは「相手に同調する能力」でも「相手に迎合する能力」でもあ
りません。むしろ同調や迎合は相手を理解しなくてもできる。とい
うか相手を理解せずにやり過ごすための作法だと言えるほどです。
自己発見シートを埋めて「自分はこういう人間だから、こういう会
社でこういう仕事をして自己実現したい」という就活はナンセンス。
「こういう会社」も「こういう仕事」も随時変わり得ると腹を括る
べきなのです。
「仕事で自己実現する」という考え方自体に問題があります。仕事
で自己実現できる人も稀にいますが、仕事での自己実現は現実には
極めて困難だし、自己実現は必ずしも仕事を通じて果たすべきもの
でもないからです。
70年代には、一方で、「成長の限界=環境の限界+資源の限界」が
露になる動きがあり、他方で、「福祉の限界=財政破綻+共同体空
洞化」が露になる動きがありました。これに対応して、80年代、先
進各国で共同体自立化運動が同時多発します。
これらの運動の共通性は、共同体が、市場に依存しすぎても、国家
(行政官僚制)に依存しすぎても危ないとして、市場や国家からの、
共同体の相対的な自立を目指すところにありました。
言いたいのは「仕事での自己実現」を求めても、まじめにこつこつ
働いても、報われる可能性が低いという事実です。
そんな可能性の低いことに賭けるよりも、勤め先が倒産したり売上
げ減で給料が下ったりして仕事で不本意な目に遭っても、承認から
見放されず尊厳(自己価値)を手放さなくて済むような関係性を―
―つまりは本拠地を――仕事以外の場で構築維持するほうが合理的
です。
難しい言葉で言えば、市場と共同体は両立します。というか、市場
での過酷な戦いでの勝利は、共同体の絆抜きにあり得ない。
高々22年プラスアルファしか生きていない学生に――10年前まで
ランドセルを背負っていた者に――自分のことなど分かるはずもあ
りません。それなのに「自分にはこういう仕事が向いている」なん
て言われても、「自分の何を知ってるっていうんだ」という思いで
す。
この間、東大病院の霊安室で一晩過ごした時、病院の関係者に、こ
の病院で死を迎えた人のうち何割が、葬式を出してもらえずに葬ら
れるのかを尋ねました。何と三割以上です。
村八分という言葉があります。村の誰もが縁を切るとしても、葬式
と火事の時だけは、ちゃんと助けてやるという意味です。つまり、
最低限の尊厳だけは共同体が維持してあげるということです。とこ
ろが、その最後の二分がとうの昔になくなったのです。
「仕事での自己実現」という固定観念は危険です。むしろ仕事がど
うあろうが自分が自分でいられることが大切です。
今の日本は、地域であれ家族であれ、共同体が空洞化しています。
共同体の空洞化を解決するには、何よりも就業時間を短くすること
です。子育てにせよ、介護にせよ、ボランティア活動にせよ、NPO
活動にせよ、就業時間が長すぎれば十分にはできません。
日本社会のデタラメは続くでしょう。
このデタラメに巻き込まれていたら、皆さんに将来はありません。
デタラメに巻き込まれないためには〈引き受けて考える〉〈知識を
尊重する〉〈善いことをして儲ける〉〈共同体自治で自立する〉
〈幸福と尊厳を追求する〉といった価値セットの死守が必要です。
これからの企業人や職業人はこうした共同体空洞化の歴史に無頓着
であるわけには行きません。先に〈善いことをすると儲かる社会〉
が大切だと言いました。善いことをして儲けましょう。善いことの
主軸は、共同体空洞化を食い止め、相互扶助を再生することです。
僕は最近、就職支援委員会の席だけでなく、企業へのアドバイスを
含めたあらゆる機会に「人々のニーズに応じてはいけない。ニーズ
に応じるとマーケットの民度がますます下がる。価値を訴えて新し
いニーズを作り出せ」と訴えています。
企業の都合に大学が適応して悪循環の輪を回すのは愚昧です。優秀
な人材を社会的に輩出するために必要な大学の都合に、企業が適応
すべきです。
就職活動が大変なのは、労働市場の状況が悪いからではなく、たい
ていの大学生が大企業を狙うからです。
内定を取りまくるタイプには共通性があります。まず、自分にコレ
が向いているとかアレがやりたいなどと言わず、自分はなんでもや
れますという構えであること。次に、実際自分はなんでもやってき
ました、と実績を示せるということ。
一口で言えば「実績に裏打ちされたタフネスと柔軟さ」に尽きます。
どうすれば内定を取れる学生になれるのかという問いと、どうすれ
ばモテル人間になれるのかとう問いへの答えは、似ています。「ひ
とかどの人物」になれば良い。
「ひとかどの人物」は、自信があるから過剰適応しません。同じ理
由で「ひとかどの人物」は、変化する環境への適応を「仮の姿」と
してこなす。間違っても、自分を改造してまで適応しようとはしま
せん。
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●[2]編集後記
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我が家に新しい命がやってきて、一週間が過ぎました。出産から
は10日。無事に出生届けも出し、ほっと一息ついたところです。
この10日間、お産に立ち会った時の記憶を反芻してきました。お
産はとても美しい行為でした。陣痛に歪む妻の顔には苦しんでい
るのか恍惚としているのかちょっと判別しがたいような不思議な
美しさがありましたし、生まれた瞬間の赤ちゃんの体も光り輝い
ていました。二人ともに崇高な美しさに満ちていました。
小さな産道を通り抜けるために、自ら頭を変形させたり、身体を
回転させたりする胎児。それに合わせて開いていく母体。人間の
身体というものは、とてもダイナミックなデザインになっている
のだということを実感し、身体観も変わりました。
息子は、臍帯(臍の緒)が首と身体に巻き付いたまま出てきまし
た。途中で進めなくなり、苦しそうだったため、最後は押して出
すようなちょっと無理なことをしました。でも、産後にフォロー
してくれた助産師さんによると、本当は臍帯が巻き付いていても、
赤ちゃんはそれをゆっくりと自分でほどいて出てこれるのだそう
です。これには驚きました。
生命というのはたいがいのことに自ら対応できる力を持っている
のですね。だから、時間はかかるかもしれないけれど、外から介
入して技術的に解決する前に、自分で解決することを信じて待っ
てあげる。そういう生命の力に対する信頼を取り戻すことが、今、
一番大切なことなのかもしれません。
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帯に惹かれて神保町の三省堂で衝動買い。就活生ももちろんだけど、就活をする前の大学生と、大学のキャリアセンター職員の皆様に読んでほしい一冊。講談社と某中小出版社の両方に内定した学生に対して著者が行ったアドヴァイス(実話)は、就活の本来の目的に立ち返るという意味でも、非常に示唆に富んでいました。文体は極めて平易なので、移動中に読めました。
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宮台著書を拝読すると、「そうできたらいいのになああああ!」とか「そうなったらいいのになあああ!」と思うことばっかりでいつも悶えます。自分なりに噛み砕いて、あるいはちまちまとでも実践して、でも感染してもらえるほどには自分が至らないのでほんと凹む(笑)
シュウカツ生ではないのですが、ちょうど「年長世代の自明性を打ち破ってなおかつ人間関係を破綻させ」てしまい辞職した時だったので諸々突き刺さりました。処方箋過ぎて困る。。。でもどうやるのかはやっぱり自分で練習していくしかないなとか。それでもビジョンをすっきりはっきりさせて貰えるだけで相当ズルしてるなー申し訳ないなーダメだなーくらいには思います。これも毎度のこと。
著作が、どんどん解り易いものになっていくのに毎度驚くのですが、今回はもう太字サービスが。サービスが。中高生に読ませて一緒に考えていきたいなと思わせる本でした。図書棚に置いて貸し出そうと思います。
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出身大学で学生向けのセミナーをさせて頂く機会があって、その際に本屋でタイトル買いしたもの。実際にはセミナーまでには読了できずゆっくり読み進めていたのだが、思わぬ名著でした。
就活生ターゲットのタイトルですが、30前の私の胸を打つ「(企業人として)働くこととは」「成長するとは」テーマへの本質的な言及の本でした。今の私が読んでこそ思わず「そう!その通り!」と胸を打たれるような内容で、逆に私が就職活動時に読んで腹落ちしたかどうかは分かりません。
本書を私が人に紹介するとしたら、以下の3つのメッセージに整理します。
1.(大)企業から人材が求められる能力は適応力。何は無くとも適応力を磨け。
2. 生きていくにはホームベースが必要。ホームベースを持っている奴が仕事でも強い。
3. 何かに自信が持てるひとかどの人材になれ。それにはスゴイ奴に出会って成長しろ。
1.の適応力については、もうまさにその通り。言葉を代えれば「コミュニケーション力」です。
何がしたいかではなく、相手が何をしたいのか察し能力を発揮する力。
これはもちろん内定の一瞬のために必要な能力ではなく、企業人(特に大企業人)として必要な力です。と、サラリーマンの私が実感を持って納得できます。
その適応力を大学時代に身につけるためにどうしたらいいか。それには以下のように書かれています。
①ビビらずに限界ぎりぎりまで挑戦でき、②限界を知るがゆえに高望みせず、③様々な社会的手順に通暁し、④コミュニケーションにおいて相手が何を求めているのかを的確に把握して動ける。これらの能力を与える「充実した大学生活」が大切です。 (P145)
さて、この適応力というのは誤解されがちですが、ただただ組織や周囲に適応し続けて終わるための力ではありません。
本書では掘り下げられていませんが、企業には変革力が必要です。
ただ、「自分は変革力があるから適応しない」という人間には変革は(大企業では)なすことができず、変革するにも適応力が必要となってきます。
そのことを本書では鋭く、以下のように書いています。
「年長世代の自明性を破らない能力」ではなく「年長世代の自明性を破る提案を連発しつつ、相対的に人間関係を台無しにしないで済ませる能力」が重要になります。 (P32)
また、適応力(コミュニケーション力)によく私が抱く疑問。
それは「上辺のテクニックに長けてる人材が組織では認められていくのではないか。組織はそれでいいのか」というもやっとした疑問。
そんなひっかかりについて、非常に納得のいく言葉が紹介されています。
TBSラジオの経営企画課の方は「コミュニケーションが大事とは言うが、流暢に話せるかどうかは技術の問題にすぎない。面接でうつむきがちな学生でも、『言いたいことがあるかどうか』はコミュニケーション能力のうちだと考えている」と語っていました。 (P223)
言いたいことがあるかどうかはコミュニケーション能力のうち。
なるほど、MBAのディスカッションや海外のミーティングを想像すると特に納得がしやすいですね。
言葉足らずでも、考えをもって発信しようという想いが強い人は認められる(ような気がする)
2のホームベースについては、分かりやすいのは家族の例。
結婚すると家族がホームベースになるから、より力を発揮しやすくなる、というような。
そのホームベースの欠如の傾向があることを以下のように書いています。
九〇年代に経済がうまく回らなくなってふと見回してみると、感情的安全を確保してくれるがゆえに帰還場所にもなれば出撃基地にもなるような家族親族ユニットは、既に消滅していたというわけです。 かくして、一九九七年から平成不況が深刻化し、財政危機が進行した結果、人口あたり自殺者数がイギリスの四倍、アメリカの二倍に及びヒドイ社会になりました。 (P49)
3については以下が印象的な引用です。
未来への希望より、過去における実績。拳々服膺して下さい。理由は簡単。実績に自信を持つ人は、そうでない人に比べ、ヘタレに見えず、痛い感じがしません。レッドゾーンで活動したことがあるので、自分の限界を知っていて、可能な未来についても適切に語れます。 (P145)
最終目的&優先順位を巡る試行錯誤は、「スゴイ奴」と出会って感染(ミメーシス)しては卒業する経験が、最も効果的です。 (P121)
以上、読んでいて下線だらけになるような本でした。
「こうだったのか?!」という新しい発見ではなく、「そうだ!そうなんだ!」というもやっとしたものを明快に切ってくれたような本。
とはいえ、個人的には本書のターゲットである大学生にいきなり薦めるには早すぎる気がするので、私が学生に薦めるんだったらまずはマンガ銀のアンカーから薦めます。