詳細地図で歩きたい町奈良大和路 みんなのレビュー

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投稿者：ドン・キホーテ　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

　ＪＴＢが出版する詳細地図・奈良大和路である。奈良、大和路といえば、かなりの広域にわたる地域である。この中で観光地とおぼしき所をピックアップして地図化している。どのガイドブックにも観光案内と共に地図が付されているのが普通である。本書とそれとの違いは、本書はあくまで地図が中心になっているということであろう。

　よくよく見ると、タイトルには「詳細地図で歩きたい町」と書かれていた。テクテクと歩くための地図である。車で移動する人はどうか本書に書かれている道を通らず、他の広く、大きな道を通行してもらいたいものである。

　よく言われることだが、同じ古都でも奈良は京都と異なり、奈良の観光地、あるいは自社は広い奈良盆地に散在している。したがって、全てを歩いていたのでは何日かかるか分からない。観光地から観光地までは鉄道やバス、タクシーを利用せざるを得ない。

　本書では奈良・大和路を次の地域に分けている。すなわち、奈良公園周辺、柳生・笠置、西ノ京・斑鳩、山之辺・長谷・室生、葛城・当麻、吉野・五條・高野山である。最初の十数頁は、世界遺産となった秘仏を公開している寺院とその秘仏を紹介している。法隆寺の救世観音、唐招提寺の鑑真和上像、薬師寺の薬師三尊像、興福寺の阿修羅像など、著名な仏像が紹介されている。公開されている月順に並べられている。

　それ以降は地図が中心となっている。いずれもお薦めの歩行推奨コースが地図上に示されている。有名な寺では伽藍の配置図も示されているので、大変便利である。最近発掘の成果が目覚しい飛鳥などはとりわけはっきりと示されているので有難い。亀型石造物、酒船石、飛鳥京の苑地遺構などごく近い距離にあるので全てを廻ることが可能である。

　本書が気に入った点の一つは、飲食店、旅館、土産物などの余計な観光情報がないところである。通常便利だからと地図の次の頁にこれらの情報が写真付きでずらりと並べられることが多い。しかし、本書は徹底している。観光名所、つまりこの場合では寺社であるが、それ以外の観光情報を掲載していない。あまり、あれこれと並べられると、便利を通り越して見た目が煩雑ですっきりしない。

　しかし、よく見ると、そうでもなさそうだ。ならまちの地図を見ると、そこにプロットされているのは大方飲食店、旅館、土産物屋であった。しかし、これだけ控え目なら結構である。そういう点で本書はこれだけ持って行けば奈良・大和路のほとんどを走破できそうである。あまり歳を取らないうちにこの地図で山辺の道を歩いてみたいものだ。