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なんていうか、わたしはけっこうポストモダン的な、価値相対主義的な考え方をする人間で、だからこそ絶対的なものに対する希求が非常に強い人間で。正しさの消え失せた世界でどう生きていくか、という問いに真摯に向き合っていると感じるのは英語圏の文学が多い。そしてこの小説はそんな問いにとても真摯に向き合っている。だからとても心に響く。これはやっぱり、絶対的なものに対する希求がありつつポストモダンで生きざるを得ない人間の哀しみは、伝統的にキリスト教信仰をベースに持つ国の人々の方が切実なのだということもかもしれない。でも、わたしは日本に生まれて日本に育った人間だけれどもこういう文学に非常に惹かれるし、こういうのは日本人含め様々な人に必要な文学なのだと思う。「わたしを裏切らないでほしい」という主人公の切迫した、しかし諦観を滲ませた望みが、ほんとうに痛いくらいにわかる。
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以前に読んだとき、あまりに面白くてしばらく他の本を読むことが出来ませんでした。ジャネットは不幸なひとではなかったと思う。養母は圧倒的なパワーの持ち主だけど、ジャネットを愛してるし。この本はめちゃくちゃ面白いです。客観的に人生を見つめる周りも見つめるジャネットの姿勢が好き。
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白水の海外小説の誘惑シリーズの面白さたるや、まあ世界中から優れた文学を選んでいるのかもしれないけれども、ほんとうにすごい。この本がいいな、と思ったのは、圧倒的な価値観のゆらぎを多角的な視点からえがいているから。自分の育ってきた環境の中で絶対とされてきたものと、自分の心の中から成長とともに湧き出てきたものが相入れないものだったときのゆらぎが、なんだかとても切実で、でも優しい。どちらが絶対にいい、というわけでもなくて、でもどこにもいけなくて、本当にひとりぼっちで孤独なはずなのに、それを包み込み落とし込む小説的なユーモア。全体的にユーモアが悲劇的な状況を見事に包んでいて、それが面白さと深みに拍車をかけているかんじ。こんなに素敵ながそこらじゅうに散らばっているなんて、まったく海外小説の誘惑シリーズは計り知れない。
にしても、主人公の名前を自分にするっていうのは、ある種かなり危険なコミットメントであることは明白ですが、それをやってのける、いやそれをやらなければならなかったというのは、この本があまりにも切実であった証拠のようにおもう。処女作というのは、こういう切実さがあってわたしはとてもすきだ。
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著者の半自伝的小説。
狂信的家庭のなかで育ったジャネット。
その中にいる間はそれが当然の世界であったのが
成長するにつれ、その壁は崩れていきます。
そして崩れた先にあったのは読んだ通り。
でも最後のクリスマス。
そう簡単には家族のつながりが切れないというラストで終えたのは
著者が自分自身と家族を受け止めることができた証なのでは、
と思いました。
大変な人生を生きていくうえで「物語る」ことの意味を知る作家の、
自分の孤独と苦しみをアイロニーで昇華した、これぞ処女作品。
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半自伝的小説。
主人公はキリスト教一派の熱心すぎる信者である養母に育てられる。信仰の中で育ちそれが絶対であり、進学しても周囲に溶け込めない。
信仰の中は安全であったけれど成長するにつれそれは崩壊して行く。
厳しいなと思う。その中しか知らないということ。それが正しいと思っていたのに。
母親の理想を離れると叩きのめされる。
所々に別の話が紛れ、はじめはこの話は何?と思ったけど、それは主人公がその中に逃避しなんとか折り合いを見つけようとしてるんだなと読み進めるうちに思った。
気の毒な境遇であるのに、笑ってしまうところもあり、そこが余計に微妙な複雑な心持ちになってしまう。
母子関係や子育てにおいて国内の何人かの作家の小説を読んだことがあるが、こういう書き方は絶対にしていない。そこが新鮮でもあり、やや入り込みにくさもあった。
それにしても養父の影が薄いのなんの。そこもポイントだと思う。
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『灯台守の話』の作者の半自伝的小説。
母(ジャネットは孤児院から引き取られた子なので養母)の所謂毒親ぶりがすさまじい。
子どもにとっては母親は世界の中心であり、母親が言うこと・与えてくれるものは真実なのだから、その根幹が揺らぐというのは世界がひっくり返るのと同じことだろう。
しかしジャネットの語り口はあくまでウェットになりすぎず、達観したような軽さがあり読みやすかった。
様々な痛みと上手く折り合いを付けられた結果、書かれたお話だからそのように思えたのかも知れない。
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まず目を引くタイトル、開くと旧約聖書からの章立て。何だろうと思って読み始めると、作家自身の半生のようでもあり、寓話であり。
川の向こうの魔術師とのやりとりの寓話、とか、笑える断片をコラージュするあたり、織り交ぜ方が新しく、私にとって読ませる作家である。
ジャネットが、どうやって自分と周囲とに折り合いつけていったかというと、それは物語なんだろう。嘆きと悲しみと絶望が深く深くあったはずなのだ。
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作者の自伝的な小説とのこと。
閉鎖された社会で育ってきた子が、少しずつ「普通の」世界や「新しい」世界を知り、自らの価値観を作り上げていく。
所々抽象的な挿話が入るのはいつも通りの構成。たまに分かりにくくなることもあるけれど、ふと分かったときは、その挿話がとても重要な意味を持つことを知り、なるほど、と思います。
いろんな価値観をどう捉えるのか、そんなことを考えさせてくれる作品だと思います
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10年ほど前に初めて読んだときには結構衝撃を受けた気がする。
作者の自伝的小説。
キリスト教の信仰に極端なまでに熱心な母親。主人公はそういう家庭に育ったため、幼い頃は周りから奇異な目で見られ、疎外される。成長して自分も母親と同じ信仰の道を歩み始めるが、自分がゲイであることに気づき、教会からも母からも責められるようになる、、、
時間が経って再読すると、落ち着いて読めるようになっていた。
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「母という人は、まったく複雑怪奇な頭の持ち主だった」
作者ジャネット・ウィンターソンが彼女の母をそう振り返るさまに、私自身が重なって見えた。
旧約聖書の申命記
不浄の動物や"睾丸の潰れた者"のような下に関することが山のように出てくる
「ここは主にお任せするとして」
学校の創作コンテスト
パイプクリーナーで『欲望のいう名の電車』を作るだけでもスゴイと思うが、折り紙でバベルの塔を作らなかったことを詰られて無理だよと泣き言を言うと「主は水の上を歩かれた」と言う
こだまでしょうか
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狂信的なキリスト教徒の養母、オレンジ、同性愛、自立。
イギリスの作家ジャネット・ウィンターソンの半自伝的作品。
メインのストーリーの合間にアーサー王物語みたいなものや昔話のような不思議な物語が配置されている。これが強烈な個性を持つ母親との生活や、彼女にとってはまったくワケノワカラナイ「外の世界」との折り合いをつけるために必要なものなのかな。
『さくらんぼの性は』の著者。
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パワー系母(狂信的なキリスト教信者)と英才教育を施されて育った娘(のちにレズビアンだと自覚)の物語。
母のキャラクターをオレンジで喩えたりしながら母への愛憎を表現しつつ、自分の哀しみを独特な寓話の挿入で切実に描きつつも、暗すぎたりじめじめしすぎたりせず、皮肉とユーモアが効いている。
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【ジェンダー問題】様々な切り口でジェンダー問題を描く小説を紹介!~名作ゴン攻めあいうえお~
https://youtu.be/wSrWo_-JGWI
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面白かったな~。海外小説久しぶり。
1985年の作品。ユーモアと皮肉にあふれている一方で、自伝的作品ということもあり後半は切実さが増す。
「物語」についての引用は旧約聖書からだそうだ。
ほかの作品も読んでみたい。
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私の読む技量が至ってないだけで、ただただこの小説がすごいということだけはわかる...
5年後とか10年後読み直した時に更なる感動を味わいたい、その一心です。
あと、外国の和訳本は読みづらいけど、いつも あとがきでこの本がいかにすごいかみたいなの説明されたらすごく納得しちゃうし、あとがきの文章表現、熱のこもり具合が好きだから、それも楽しみの1つですな☺️