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淡々と進む物語だが、文章に妙な味わいがある。
弦楽四重奏の話と言うことで、先日読んだ「弦と響」と被っているマイナスを補って余りあるくらいの面白さがある。
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クヮルテットの話だけに集中しても良かったんじゃないかと思う。語り手の梶井と、聴き手の野原の話はどうでもよかった。話が散漫になったと思う。それと、なぜわざわざ古い文体を使っているのかもあまり意味がわからなかった。
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クァルテット。それは四重奏のこと。
どうやら四重奏は、
他の何重奏よりも、
オーケストラよりも、
緊密な構造らしい。
不思議なもので、クァルテットの人間関係が複雑になるにつれ、奏でられる音楽は、深く、美しいものになるようだ。
なんと恐ろしく興味深い世界なのか。
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リアルな職業小説。買い求めるのになかなか見つからなかったのは「もちはかり」で検索していたから。正しくは「もちおもり」
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やっと今読んでいます。恥ずかしながら新刊が出たときはスルーしておりました。タイトルの「持ち重りするバラの花」束は、語られる弦楽四重奏団のメンバーが自らをなぞらえているもの。ひいては多分「芸術」ってこと。
長編というより中編ですが(残念)、読み惜しみしながら読んでいます。
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丸谷才一さんの遺作小説になってしまいました・・。これが発表されたのは去年の秋。元々10年に一回くらいのペースで小説を発表されてきた丸谷先生、きっとこれが最後だ、とご自分でも思われてたんでしょうね。
すっごぉ~~く面白かったです。
丸谷さんの老いに伴うあれこれ、なんて素人考えで心配しないで、素直に発表されてすぐに読めばよかった…。
経済界の大物・梶井が、自分(や関係者)の死後に発表するようにと、懇意な記者・野原に語る、弦楽四重奏団の黎明期から現在までの三十年。
若き楽団員の、これから大きな夢が形になっていくぞ、という時期の心弾む横顔から、私生活のトラブル、ちょっとした言葉の齟齬からもたらされるギクシャク、また並行して、梶井や野原の人となり&人生について、どこをどう読んでも面白くて、丸谷先生、これまで楽しませてくれてありがとうございました、と深々と頭を下げて御礼を言いたい気持ちです。
私、弦楽四重奏のあれこれ、なんて何も知らないけど(でも弦楽四重奏にバイオリンが二本入るのは知ってましたよ。(*^_^*))梶井の目線で語られる、4人の奏でる音楽はまるで紙面から立ち上がってくるように気持ちに響くものがありましたし、また、弦楽四重奏曲に関するウンチクもとても楽しく読みました。
帯からそのまま引用すると、
カルテットというのは、四人で薔薇の花束を持つようなものだな。
面倒だぞ、
厄介だぞ、
持ちにくいぞ。
というのがタイトルの由来で、(でもちょっとそこには、その例えでいいのかな、私にはあんまりしっくり来ないんだけど、なんて、大胆にも言ってみたりする。汗)
また、早めにクレームをつけてしまえば、カルテット4人のキャラ設定には頷けるものがあったけど、トラブルが起こる時の発端がちょっと唐突すぎる場合があり(主に男女間の揉め事絡みだけどね)、そこは今一つ・・・だったかな、なんて。
でも、たった4人で一つの音楽の世界を作り上げる楽しさ、困難さ、また、その中での人間臭さの描写には、うん、さすが丸谷さんらしい品のいい“風俗小説”だと思いました。
そして、絶えず美しい弦楽の調べが流れているような小説を読みながら、私ってばなんて俗なヤツなの、と思いつつ、これって、丸谷先生の「微笑み返し」だったんだなぁ、と。
長年の丸谷才一ファンに、というお気持ちだったんでしょう、これまでの長編、中編、エッセイ、その他の匂いを伝えるエピソードがさりげなくはめ込まれていて、その時々の丸谷さんの姿勢や若かった自分、なんてものまで思い出せたのは嬉しいプレゼントでした。(だから、前に述べた“唐突な展開のエピソード”もそのためにやむを得ず挟み込んだもの?なんて、思ったりするのは贔屓の引き倒しすぎるでしょうか?)
昭和元年生まれの丸谷さんが現役で活動されている、という思いが、実はかなり私にとっての力になっていたんだなぁ、なんて、こんなところでしんみりしたりもして。
どうもありがとうございました。
あなたのおかげで、自分に自信を持つことができ、人生の指針まで時に提示してもらい、また、その余得(弊害とも言う?(*^_^*))としてちょっと意地悪になった読者です。
お疲れ様でした、どうぞ天国でも洒脱で全体主義嫌いな丸谷さんでいてくださいますように、と言わせてもらいたいです。
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テーマがいい。クインテッドだなんて、なかなか気が利いてる。
でもやっぱり芸術家よりビジネスマンのほうが好きだな~。
初めは旧仮名遣いが取っ付きにくいかなと思ってたけど、全然そんなことなくてかえって滑らかで素敵。日本語って美しい。
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音楽を通して全編に匂い立つ、かくも美しく深淵なる日本語。
”日本人男性作家”ならではの性的描写(性への我執?)は華麗にスルー。
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クヮルテットの4人組のドロドロ
”薔薇の花束を4人で持つには持ち重りする”
というのでこの題名
まわりくどい横道逸れ話が多く、
さらっと読んだだけではわかりにくい
けど人生の機微の勉強にはなります
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なんていうか、ウディ・アレンの味わいですかね。コレ。僕は好きです。
丸谷才一さんの長編(中編?)小説。丸谷さんの9篇しかない長編の、遺作に当たりますね。
これまで、丸谷さんの長編の何篇かは読んだことがありました。ただ、どれも10代の頃に、背伸びして読んでたんですね。
なんとなく当時から、「これぁ、俺ちょっと背伸びしてんなぁ」と薄々は思っていました(笑)。なんとなくね、味わいというか面白さがフィルターを通してしか感じられない部分が多かった感じですね。
と、言う訳で、「持ち重りする薔薇の花」。
これ、去年の秋くらいに、衝動的に電子書籍で買ってたんです。
なんですが、ちょこっと読んで何となく後回しになっていました。
何となく再び読み始めたら、面白くて面白くて。どどっと読んでしまいました。あまり長くないし。
内容を備忘録に書くと。
80代くらいと思しき、経済界のかつて偉かった男がいます。
もともとお金持ちの家の出で。海軍下士官(つまりエリート)で終戦。コネで財閥系の商事会社に入って。
仕事も優秀だったみたいで海外歴が長く、社長になり、経団連会長になり、やっと引退。
で、この老人。上記の通り、インテリで洒落ててお金持ちなんですね。
この老人が、旧知の仲である、とあるノンフィクション作家のインタビューに答える。
その語りの内容が、この小説なんです。
で、その内容っていうのは。
その元経団連会長が、商事会社でアメリカにいた時分に、ひょんなことから知り合った、日本人の弦楽四重奏、カルテットの四人組。
まあ、なんとなく20歳くらい年下なんですかね。設定としては。
初対面のときは、ジュリアードの学生だったんですね。その四人は。
その四人と仲良くなって、まあ、パトロンというほどお金も出せないけど、精神的なパトロン、そして兄貴分的な相談相手になるんですね。
で、その「ブルー・フジ・カルテット」は、どんどん世界的に有名な弦楽四重奏団になっていきます。
その足跡を、四人の人生の春秋と、愛情の歳月と、いがみあいと不和の歴史を、その元経団連会長さんは、ずっと見聞していくんですね。
初対面が1980年代だそうなんで、足掛け30年以上ってことですね。この本が2011年ですから。
で、その「ブルー・フジ・カルテット」の30年の歩みを、旧知のノンフィクション作家に語る。
ノンフィクション作家は、元はとある出版社の編集者だったんですね。
これはこれで、ひょんなことから元経団連会長と何十年も前からの友人になっている。
●とある弦楽四重奏団の30年の人生模様。
英才としてジュリアーノで結成、青春の熱い芸術至上時代。
やがて売れ出して、それぞれに女性と愛憎、結婚、離婚、浮気。
仲間内で女の相克、売れる売れない嫉妬に僻み。
反目、喧嘩、脱退離脱に再加入・・・。
●商社マン(後年の経団連会長)と、編集者の、これまた30年くらい?の人生模様。
スポーツジムでの偶然の出会いから、清い付き合い。
やがて互いの、老いた親やら家族やらの事業の失��や、ココロの病。
そして出会いやら親子関係、恋愛についてまで。
が交錯して語られていきます。
タッチとしては。
適度に軽くて明るくてユーモラスでちょっとHでちょっとエロくて、でも卑猥じゃなくて。
英文学者丸谷才一さんですからね。ウィットと皮肉と知的な細部に満ちていて。
クラシック音楽、英語、商社、M&A(企業合併や売買。カルテットのリーダーの奥さんが、その仕事してる)の、蘊蓄が豊かで。
でも、そんな薀蓄は別にわからんちん、で、飛ばし読んでも別に良いんです。なんだかんだ、男女の恋愛とそのもつれ、の話の多いんですが、
そういう人間ドラマ、軽喜劇、と割り切って読んでも楽しいんです。
なんだけど、これ、読む人によっては。
「ブルジョワの老人と世間知らずのお坊ちゃんクラシック音楽家の呑気な日々を、薀蓄自慢しながら語られても、一体全体、なんなのさ?」
という感想も、あると思います。その通りの側面もあります。
でもねえ、これ、良いんですよね。
その軽さっていうか、風俗的な戯れ感というか。確信犯なんですよね。
重くも考えられる人生模様だって、軽くかるーく、ちょっとしみじみ、くらいで行っちゃうんですよね。
何のオハナシなの?って言われると。
世俗ってこういうもんだよね、ヒトって男女ってこういうもんだよね、という、肩をすくめた身振りのような。
ちょっと哀しいけど泣いてもしょうがないね、という諦念と苦笑い。
そして、そんなニンゲンが生み出す芸術って、すごいよねえ。素敵だよねえ。というようなため息というか。
いやほんと、そういうことなんだと思うんですよ。
でも、それが、ちゃーんと小説になっている、っていうのがオモシロイんですよね。
小説書くのが上手いんです。
で、こりゃウディ・アレンさんだなあ、と。
語り口が上手いんです。確信犯の軽さなんです。肩の力の抜け具合が腰砕けなまでに、にやっとしちゃう快さ、ココロヨサ。
でも、冗長じゃないし、扇情的じゃないし、テンポよくて、明快で明朗で、なんだけど人生の苦味が山葵のようにツンと来る。アッサリさっぱり、胃もたれしません。
これが、貧しい人が出てこないからって、人生の実相について、欺瞞的にしか描いていないのか、というと、当然ながらそんなことは全くありません。
ソレはソレで、コレはコレ。丸谷さんはこういう物語を語りたかっただけ。でもある種のバブル以降の日本の精神史、の、一部ではありますね。
何しろ、この本出たとき、丸谷さん86歳ですからね。
86ですよ。もう、何書いても良いんですよね(笑)。
戦争も貧しさも内ゲバも繁栄も、特攻も餓死者も安保もバブルもニートも、全て眺めてきた86歳ですからねえ。
しかも、英文学者で翻訳家でジョイス研究ですよ。後鳥羽院も研究して、国語と日本語の博学であり、あらゆる文学賞も総なめして、驚異の読書家で書評家。
それでいて、軽さと明るいエロと、知的なおバカと、英国趣味と日本文化と日本語が大好きで。
重さ、暗さ、お涙頂戴、安易な感動、教養の浅さ、知ったかぶり、ヤンキー的なものが大嫌いで。
と、言うオ��トですから。
ま、言ってみれば、「永遠のゼロ」の真逆というか(笑)。 ※読んでないから、偏見っす。失礼。
だからまあ、好みなんです。
僕は、大好きです。
ただ、好みと片付けてはいけないと思うのは、日本語のキレイさ、洒脱さ、読みやすさ。
そこンとこ、もっと説得力のある褒め方をしたいけど、まあそんなことを考えながら、もやもやするのも読書の愉しみですね。
※言い忘れました。丸谷さんなんで、当然ながら旧仮名使いです。僕は、コレ理屈抜きで好きなんです。
岩波書店版の漱石全集、同じく岩波書店版の芥川全集、谷崎全集、などで親しんだ旧仮名、丸谷さんが現代風俗小説で使うと、
「ぜんぜんコレで21世紀でも使えるよね!」と興奮です。
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丸谷才一さんの最後の長編『持ち重りする薔薇の花』を読了。やはり彼の作品は少しばかりノスタルジーを感じさせ、だが確実に我々の弱い部分、世界とは異なっている日本人の独特な感性や行動の仕方を物語にして見せつけてくれる。俺たちってそういえばどうだよねって言う感じで。日本をきちんと外から見ている人だからかける物語な気がした。品のよい、いい作品です。品のよい小説を読みたい方是非どうぞ。
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丸谷氏最後の小説だというので読んでみました。
軽妙な作品で読み易かったですが、クラッシックに詳しくないと面白さ半減でしょう。(私は半減)
うんちくを読むのも楽しいけど、曲を頭で流しながら、モデルの人物像を思い浮かべながら読めたらなあーという感じでした。
M&Aの話とかは面白かったけどさ。
文学系なら少しはついていけるので、やっぱりそっちをテーマにした本の方が私にはあってるかも知れません。
選択ミスか。
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年に1度くらい、何故か発作的に丸谷氏の旧仮名遣いのヌメッとした文体を読みたくなります。もっとも挫折することも多いのですが、この作品は楽しく読めました。
世界的名声を得た日本人弦楽四重奏団(クヮルテット)が経てきた道のり・人間模様を、彼らの結成時からの支援者であった元経団連会長が、友人の元編集者の求めに応じて語るという形式です。
その中で、片やクラシック音楽(やM&Aなどの経済関係やその他諸々)についての蘊蓄を披露しつつ、もう一方では通俗的なメンバー間の確執(それも女性がらみできわどい描写)も語られます。
つまり高尚と卑俗の混合です。このあたり、読み手が丸谷さんに何を期待するかで評価は割れそうですが、個人的には良い塩梅と思います。ただ全体に達観というか(それが味といえば味なのですが)余りにさらりと語られ過ぎてるように思います。まあ、著者も作品中の語り手もお年寄りですからね。
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丸谷才一氏最後の長編小説。
元経団連会長にして旧財閥系企業の名誉顧問である梶井のもとに、ジャーナリストの野原が訪れる。梶井は、80年代初めのニューヨークで、音楽院に通う日本人学生たち(厨川、西、小山内、鳥海)と知り合った。そして彼らが結成した弦楽四重奏団に「ブルー・フジ・クワルテット」と命名。やがて世界有数のカルテットに成長した四人には様々な軋轢が起こりはじめるが…。
旧仮名遣いで紡がれてはいるが、なめらかな文章は読みやすく、酔える。四人が繰り広げる愛憎劇は、実に人間くさく、芸術とは縁遠いように思える。しかし、確執が深まるほど、奏でられる音楽は一層美しくなるという皮肉。堪らない、けれども読むのをやめられない。