紙の本
古典を華麗にアレンジ
2012/02/02 20:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BH惺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
素敵なジャケ画に一目ボレして購入。今このような超訳的な古典モノが流行っているんでしょうか? なかなか分かりづらい古典の世界にスムーズに入ることができるのでとてもありがたいなと。
本作、内容もちょっと凝っていてる&洒落ていて一気に読んでしまいました。
新古今和歌集の中から20の歌を元ネタにして、それを現代の短篇にアレンジ。ちゃんと和歌の意とテイストは残しつつ、ガラリと小説に変身させているところが面白かった。
作者サン、自分はまったく知らなかったけれど、かなりお若いらしい。なので必然的に短篇の設定・世界観も若い。登場キャラも下は高学生から上は行っても40代まで。中でも20代前半の若者達の話が多い。和歌に託された恋の想い・詠み手の心情を巧みに切り取って小説にしている手腕はなかなかだと。
中でも印象的だった作品をいくつか。
第二話 願っても桜は散ったし 素性法師
高校1年の女子がメイン。イマイチ高校生活に馴染めなくて、中学時代を懐かしんでいる女子の話。その時はまったく気付いていなかったけれど、失ってみて初めてわかるものの大切さが痛いくらいよくわかる。
第四話 何かが不足している 寂連法師
日記形式で展開する社会人女子の話。仕事も人間関係も可も無く不可も無く無難にこなして毎日を暮らしている。
彼氏も作らず(作れず)、結婚の見通しもない。永遠に続くかと思われるこの虚無的で不毛な日々。将来に対する漠然とした不安に泣く女子の心理描写が巧いと思った。
第十一話 揺らしたら溢れてしまう 式子内親王
姉の彼氏を好きになってしまった妹の複雑な心理。そんな妹の気持ちを知っている姉との微妙で、息詰まるような心理描写が読んでいてハラハラ。
第十四話 遠く深い場所まで 謙徳公
お互いに不倫同士のカップルを描いた作品。ラストのオチになるほどなと。
などなど書ききれないほど良作ばかり。もっとたくさん面白いハナシがあるんですよ!
男女間の微妙な関係・思惑・心理などがさらりと、それでいて深く描かれていて最後まで飽きずに面白く読めた。
作家であり歌人でもあるという、この作者サン。読み応え充分の20作でした。
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古今和歌集の短歌を元に、現代の物語、そして新たな短歌を集めた小説集。
その試みがとても面白かったです。
http://feelingbooks.blog56.fc2.com/blog-entry-878.html
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何百年も前の人と現代の人も考えていることは同じで、いつの世も人を想うのは悲しいなと感じた。
現代訳された短歌はとても素敵だった。
小説がもう少し長いともっと良かった。
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新古今和歌集の短歌にもじった物語と現代短歌の連作短編集。
学生から社会人までの女性(時々男性)のれんあいや仕事、日常を選択した短歌のテーマで短編にしたような。
初加藤千恵。おかざき真里さんが表紙絵を書いてる文庫がよく積みあがってるのが目につきますが、うーん。積読が無くなったら読んでみようかな、位かな。
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新古今和歌集に納められた短歌をモチーフに、それぞれ短い小説と現代短歌が添えられた作品。
まず、このコンセプト自体がとても素敵。
新古今和歌集、800年以上も前のものにも関わらず、人の思いは何一つ変わることはないと改めて思い知らされます。
その短歌のひとつひとつの美しさ、込められた思いに心が震えます。
そして加藤千恵によって付けられた小説と現代短歌が、さらなる奥行と広がりをもって、800年前の人の思いを美しく現代に蘇らせたような感覚。
これまで色々な時代の人が色々な方法でその時代に合わせて表現してきた新古今和歌集。
その伝統と手法が今なお有効であること、それでも色あせない新古今和歌集の魅力にただただ感嘆の思いです。
もう一度、きちんと新古今和歌集を味わいたくなります。
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短歌ってすごい。いい短歌って、風景もあるし、広がりも無数にある。新古今和歌集も加藤千恵も。ただ主人公がどれも同じ年齢に感じるのが残念。
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あんなに賢い彼が、わたしの抱く思いに気づかないのは、わからないのではなく、きっと知ろうとしていないからだ。
幸せなときというのは、過ぎてから気づくものなんだ。
自分の気持ちすらはっきりわからない人間に、相手の気持ちがわかるはずないのは、当然といえば当然だ。彼女のことを考え始めると、最終的にはいつも軽い自己嫌悪に行き着いてしまう。
ずっと、幸せだと思ってもいなかった。当たり前に存在している毎日。いくらでも続いていく日常。その浴びるような贅沢さに気づくのは、どうしたって喪失のときだ。
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ひとつひとつのお話にキュンキュンしまくりです。
昔の人も、貴族も悩むことは同じなんだなぁ。
加藤さんの短歌にも注目して頂きたいです!
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短歌の知識は全くないけど、とても良かった。
人の思いは昔も今も変わらない。
気持ちを歌で表すってすごいなと、今さらながら実感。
テンポのよい短編が、たくさんあり読みやすい。短い中に感情がちりばめらて良かった
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この方の感性にふれると
こんな風に変わるんだ…!
という、新鮮な驚きが。
短い言葉の中に物語が詰まっている歌たちに
改めて尊敬の念を抱ける素敵な本でした。
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新古今和歌集の短歌に作者が物語りと現代風短歌をつけた短編集。
紫式部とか、昔、学校で習ったような歌人も出てくる。
時がたっても人の思いは変わらぬものなのね。
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短歌からうみだされる物語というのが、すごく新鮮でした。
つくられたのは千年も昔のことなのに、その想いは今と変わらない。古文の授業じゃ分からない、うたに込められた想いが、すっと伝わってきます。
短編集なので、とても読みやすいのも◎
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面白かった!
短歌に興味はないけど、こんな風に現代のお話とからめると、読みやすいし、千年も前の事と変わりない事がわかって、短歌にも興味が湧く。短編を読み終わって改めて短歌を読むと、読む前とは違う理解が得られて、読んでいて楽しかった。。第二段も出してほしいな。
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「新古今和歌集」の和歌から生まれた現代のラブストーリー。
短編・オムニバス形式でとても読みやすい。
表紙の絵に惹かれて返却された時に思わず手にとってしまったが、期待を裏切らない内容だった。
西行法師や式子内親王の和歌が、今ドキの若者たちのストーリーとして蘇るのが新鮮で見事としか言いようがない。
切ないけれど共感できる…お勧めの一冊。(ゆ)
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新古今和歌集に収録されている和歌の世界観を
現代に移して物語を紡ぎだすという試みは、
とってもすてきだと思います。
ただ、内容がちょっと軽いかなぁ。
やっぱり長い時を越えて残ったものは偉大だ。
たとえ呪文のように見えたとしても、
和歌に込められた言霊は揺るぎない。
現代人の私たちにはなかなか近づけない何かがある。