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小澤征爾さんと、音楽について話をする みんなのレビュー

第11回小林秀雄賞 受賞作品

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みんなのレビュー203件

みんなの評価4.5

評価内訳

198 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

僕は、文章を書く方法を音楽から学んだ。

2011/12/29 12:11

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:abraxas - この投稿者のレビュー一覧を見る

考えてみれば、この二人の対談は誰かが思いついてもいいはずであった。村上も自分で書いているが、二人には確かに共通する部分があるからだ。何点かの共通点は、実際に村上の文章で読んでもらうことにして、一つ思い出したのは、どちらも日本で権威があるとされている連中にこっぴどく傷めつけられていながら、ちょうどそれとは反対に海外ではたいそうな評価と好意を得ている点だ。

今の人は知りもしないだろうが、小澤は忘れていない。ちゃんとN響からボイコットを受けたことを口にしている。村上にしても日本文学の権威筋からはかなりバッシングを受けている。はっきりと書いているわけではないが、村上はそうした二人の共通する部分をかなり意識しつつ、このインタビューを持ちかけたにちがいない。

小澤がここまで心を開いて音楽について語ることができたのは、村上に対する信頼があってのことである。たしかにかつてジャズ喫茶のマスターであった村上は自分で言うほど音楽の素人ではない。クラシックにしても、そのレコードコレクションがどれほどのものかは、小澤が驚くほどだ。

ではあるにせよ、演奏家でなく単なる聴き手にすぎない作家相手にずいぶん突っ込んだ話をしているし、最後にはセミナーの会場に同席を許してさえいる。音楽と文学という異なる分野で仕事をしてはいても、互いを理解し合える相手を得たという悦びがインタビューから伝わってくる。音楽について話される内容は勿論のことだが、何よりそういう生き生きした前向きな感動があるのだ。

音楽についてだが、個人的には、大好きなマーラーの交響曲一番第三楽章を聴きながらの対談が素晴らしかった。こちらは本を読んでいるだけなのに、小澤の「とりーら・ヤ・った・たん、とやらなくちゃいけない」というような語り口調がそのままマーラーの曲となって頭の中に響いてくる。音楽について書かれた本を何度も読んだが、こんな経験ははじめてだ。

対談の中で村上が文章を書く方法を音楽から学んだと語っている部分にも感銘を受けた。「文章にリズムがないと、そんなもの誰も読まない」「でも多くの文芸批評家は、僕の見るところ、そういう部分にあまり目をやりません。文章の精緻さとか、言葉の新しさとか、物語の方向とか、テーマの質とか、手法の面白さなんかを主に取り上げます」。このあたり、かなり手厳しい日本の文芸批評に対する反論になっている。村上はきっと音楽を聴くように自分の作品を読んでくれる批評家を待っているんだ。そう思った。

でも、日本にも村上の良さを分かる批評家はいる。例えば、清水徹が粕谷一希を相手にこう語っている。「普通に書いているようでいて、突然予想外な発展をしていくし、それから文体に魅力というものがある」(『<座談>書物への愛』)。これなど、村上の「しっかりとリズムを作っておいて、そこにコードを載っけて、そこからインプロヴィゼーションを始めるんです。自由に即興をしていくわけです。音楽を作るのと同じ要領で文章を書いていきます」という発言の言い換えのように読める。

村上には小澤の音楽についての話を書き残しておきたいという思いがあったのだろうが、常々作家としての自分の仕事について誰かに心おきなく話しておきたいという気持ちも無意識の裡にあったのではないだろうか。それが、小澤という願ってもない相手と向き合ううちに期せずして顕れ出たのが、このインタビューであったような気がする。まさに、運命の出会いというべきだが、これが小澤の癌を契機として果たされた点が感慨深い。まさに「どんな暗雲の裏も日に輝いている」という英語の表現通りである。

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紙の本

予想以上に深みのある芸術論

2012/02/10 11:40

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:田舎のバッハファン - この投稿者のレビュー一覧を見る

本書を読んでまず驚かされるのは、その方面では良く知られたレコードマニアの顔を持つ村上氏が単なる音マニアでなく、かなりの耳を持った音楽評論の才能もあるということが伝わってきたことである。いわゆるクラシックを聴くだけのマニアは、オーディオ再生装置の音の良さを競い合い、レコードのレアものを持っていることを自慢するばかりで、その中身をきちんと聴き取っているとは思えず、本書の村上氏もそれと同類項であると私は思いこんでいた。それでも、マエストロ小澤の考え方が垣間見られるであろうと、あまり期待はせずに本書を読むことにした。しかし、随所でマエストロ小澤が聴衆側の考え方として傾聴せざるを得ないことを村上氏が語っており、それに対する小澤氏の対応が非常にすばらしかった。

 村上氏の話はかなり抽象的なものが多く、表面的にしか捉えられなければ一部に出ている村上氏の話が具体性に乏しく自分の見方の押しつけで面白くないという、中央公論などに村上氏が寄せているエッセイと同様の評価もありうると思う。しかし、クラシック音楽を楽器を奏でて実際に演奏したことがあるのでは?(そうであるか否かは私は知らないが)ことすら思わせる、単なる一人の聴衆の視点を超えた所が随所に見れれ、興味深い捉え方が多いと私は思うし、何も読み手が彼の意見をその演奏の唯一絶対の聴き方と考える必要も無い筈である。巷の音楽評論家とはかなり違った視点からクラシック音楽に対するオリジナリティーの高い捉え方が新鮮で面白かったの加え、それに対して、小澤氏が論理的に音楽を解析して応じて行く話とのマッチングも本書の読みどころだと思う。小説を書きながらBGMとして音楽を流し聞きしているのでは、ここまでの評価は無理だと思う。文章にリズムを求め、それが感じられない作家は早晩すたれるという村上氏の言葉はうなずかされるものがある一方、そういう意味では氏の文章は小説によってかなりリズムの違うものが見られ、ことによるとBGMが違うせいにも思えてきた。

 癌の手術後の療養ということで、思わぬ形ながら、これまでの自分の演奏を振り返るチャンスを初めて得ることができた小澤氏が、自分の音楽に対する考えを老年ならではの力量でまとめて行く上で、この対談はかなり役立ったようにも思える。カーネギー・ライブの成功、特にブラームス一番のこれまでにない出来の一端を、この対談で村上氏の疑問に応えて行く過程でで担った可能性も否定出来ないとすら思えてくる。

 1点残念だったのは、一章だけ対談を離れ、村上氏がスイスレマン湖畔のOzawa Schoolに参加した所で、一流の技巧は持っているものの音楽性の面で甘かった若者を、短期間で見違えるような音楽家に育て上げて行く過程を、もっと具体例を添えて書いて欲しかったことである。村上氏の耳とペンの力量をもってすれば、映像以上のことを伝えることができたと思うし、小澤氏が彼を呼んだのは、そこを期待してのことである気がしてならない。 

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紙の本

アジアの音楽快男児の持って生まれた幸運

2012/01/04 13:51

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る

クラシックとジャズに一家言ある作家だからこういう対話集を出してもおかしくはないが、その相手が小澤征爾とはちょっと意外だった。なんでも村上氏の細君と指揮者の娘さんが仲良くなって家族ぐるみの交際をするようになった副産物らしい。

んであんまり期待もしないで読み始めたのだが、これが意外なことにとてもおもしろく、あっという間に読み終えて、新年早々良い音楽を聴いたときのような軽い幸福感を味わうことができた。

対談と言ってもほぼ100%小説家が聞き手です。くだんの音楽家に3回ほど時間をとって比較的素朴な質問を発すると、それに音楽家が一生懸命誠実に答える。そのあとでテープの録音を小説家が丁寧にリライトしたものなのであるが、プライベートな時空間における対話であることと、聞き手の切り口が単純で明快で率直にして巧妙なために従来のインタビューや対談からはとうてい聞き出せなかった音楽家の偽らざる本音が、音楽と生活の両面にまたがってじゃんじゃんとこぼれおちる。私のように小澤の音楽をてんで評価しない冷たい人間にとっても望外の収穫がありました。

特に興味津々なのはレコードやCDなどを視聴しながら2人で感想戦?を戦わせるくだりで、50年代にグールドとバーンスタインやカラヤンが入れたベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番のレコードを聴きながら、今は亡きグールドや現役の内田光子の天才やゼルキン父子の思い出を今ここに流れている音楽に即し、ともにスコアを見ながらあれこれ具体的に語るところはものすごく説得力がある。私も彼らと同じ音源を流しながら彼らの発言を読んだが、小澤本人はもちろんのこと村上春樹の音楽の読みの深さには秘かに舌を巻いた。これあるから小澤も進んでみずからを開いたのだろう。

マーラーやサイトウキネンやウイーン国立歌劇場、スイスのロール(ゴダールの居住地!)で開催されている国際音楽アカデミーのマスタークラスについても知られざる情報がてんこもり。師事したバーンスタインやカラヤンとの生々しいエピソードはもちろんだが、世界中の行く先々でオーマンディーやベーム、クライバー、ルビンシュタイン、ヨーゼフ・クリップス、ポネル、パバロッテイ、フレーニなどの音楽の先輩たちから与えられた数々の無償の好意と友情を授かったアジアの音楽快男児の持って生まれた幸運を思わずにはいられない。

小説家が、「自分は音楽を作曲するようにして毎朝4時から小説を書いている」とふと漏らす言葉も意味深い。そういえば漱石、荷風、潤一郎にしろ春樹、光代、弘美にせよ優れた小説家の文章の芯には、それぞれに固有の音楽が流れているな。

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紙の本

活字の音楽

2014/03/09 10:26

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:破魔ちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

音楽を活字で語るのは難しいが、湧き出すような音が活字を躍る・・・・。小澤さんは知っているけど、イメージが先行。しかしこの人がすごい理由がみえてくるし、村上春樹が尋常でない音楽通であることもわかる。村上さんのすごさに、嫌気がさす部分もあるけど、彼だから小澤征爾のすごさをひきだせたんだろうな、と思う。いっぱい曲が出てきて、違いについての話など、CDを聴きたくなる。そういう人向けにはCDつきもあり、良くできた企画本だ。音楽について活字は難しいけど、視覚×聴覚の相互刺激が心地よい本である。久しぶりにななめ読みではなく読んだわ。

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2012/01/30 23:47

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2011/12/14 00:46

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2013/05/17 11:04

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2011/11/29 01:56

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2012/01/12 15:36

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2011/12/06 20:20

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2013/01/03 19:46

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2012/01/28 10:53

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2012/01/16 00:26

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