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「一命」を読んで滝口康彦を知り、続けて本書を読了。本心をあざむいて偽りの心に生きること。それが侍の道なのか。形にこだわり命を犠牲にする。武士道とはなんと理不尽で残酷なものか。
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こちらに収められている「下野さまの母」という作品がとても好き。
母の愛と身分制度の皮肉がテーマなのかなぁ。
対馬藩の跡継ぎの若様が急死。幕府への届出のしかたでいろいろともめて、亡くなった若様の腹違いの弟2人が一個ずつずれて、一番下の弟が亡くなったこととして届出が為されます。
とりあえず死んだことにされた子の母上はそれ相応に仏門に入らされて、以降、実子とは実の母子として接することが許されません。やがてその実子も病で亡くなるのですが、臨終に際してその母上はやはり実の母として看取ることは許されずに、母子互いに最期までこの茶番を演じきるのです。
その場面が壮絶に悲しいのにあくまでも文体は淡々としています。武家社会の理不尽さと滑稽さと凄みが全部詰まっていて、じんわり泣けてしまう。
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滝口康彦 「 悲運の果て 」 武家社会における 女性の不幸と 敵討ちの不条理をテーマとした短編集。
武士の自己犠牲の先に「生きる」というテーマは感じるが、武士の残酷すぎる生涯の印象の方が強い。武士の家に生まれたら、武士になる以外に生きる手段はないのだろうか。
武士の残酷な生涯
*仕える家の存続のためには、家臣(とその家族)は 本心をあざむいて、偽りの心に生きなければならない不幸。
*父の仇を討ち果たさぬかぎり家督相続も許されず、流浪の果ては野たれ死にするほかない不条理。
その心を知らず
*物語のテーマは 本心を偽って 家の大義を 優先させる 武士の死に方を捨て、本心の通り 人間として生きることを選択した?
悲運の果て
*武士の掟〜父の仇を討ち果たさぬかぎり家督相続も許されず、流浪の果ては野たれ死にするほかない
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時代小説の短編集なのだが、すごくいい。敵討ちに出た者たちが、数十年と諸国を放浪する話とか、ああそうなんだと思ったし、女性を主人公にしたお話も趣があって読み応えがあった。作者の滝口康彦は2007年に亡くなっており、もっと早くに出会いたかったが、そこそこ作品は残っているようなので、おいおい手にできればいいなあ。