投稿元:
レビューを見る
本書の「獅子心王リチャードと第三次十字軍」がすべての十字軍の中での最大の白眉だと感じた。まさに「花の第三次」だ。当時30代の「イギリス王リチャード」と50代の「スルタン サラディン」の戦いは、統一されたキリスト教勢力と統一されたイスラム教勢力が、がっぷり四つに組んだ戦いを展開していく。その相互の戦略と戦術、双方の文化の違いとそれによるせめぎあいの詳細な経過。双方の指導者「「リチャードもサラディン」もキャラが立っていると感じた。そして、その戦いをどのように双方が「終戦?」に持ち込んでいったのかを読むと、二人の並々ならぬ力量がわかったように思えた。
この二人の指導者の戦いを読むと、現在の世界にこのようなすごい指導者がいるのだろうかという思いをもった。まさにすごい指導者は時代を選ばないで出現する。これは「英雄の時代」の物語だ。
高度な政治判断で終結した第三次十字軍のあとも第八次まで十字軍は続くが、他のどの指導者もリチャードとサラディンに比べれば、みな小粒に思えた。
1099年から1291年の192年間のキリスト教勢力とイスラム教勢力の壮大な戦いが終わり、その結論は、カトリック・キリスト教徒がシリア・パレスチナ全域から一掃されるという結果に終わる。この200年近くの本書での戦いの物語を読むと、人間の愚かさと素晴らしさを同時に知った思いがした。
本書を高く評価したい。読後感は「おもしろかった」だ。
投稿元:
レビューを見る
かくも長編なのに、すらすらと読めてしまう相変わらずの文章力。
複雑でこちらは馴染みがないのに、まるでつぶさに見てきたかのような臨場感。
いずれもいつもながら見事だ。
直接原資料に当たることにより、自分なりの解釈を作り出しているんだろうな。
これが本当の歴史小説家の姿勢。
だから、話に厚みが出る。
とは言うもののこの話は、ローマ人の物語にあった、ハンニバルやスキピオ、カエサルといった、血沸き肉踊るような戦略戦術家がいないので、物足りないものがある。
それは作者のせいというより、出てくる人物のスケールが小さいからだろう。
一番絵になるリチャード獅子心王でも、上記には及ばない。
私が一番気になったのは癩王ボードワン4世だな。
いつか書いてみたいと思う。
投稿元:
レビューを見る
読んでいて本当に歴史に引き込まれるこの文章の感じ。教科書を読んでいるのとは別の感覚に陥ります。
日本人だと十字軍は身近に感じませんが、この本で十字軍がなんぞやをほぼ理解できるのでは?(もちろん3巻とおして)
塩野節だいすきだーー
投稿元:
レビューを見る
イギリス王リチャードとイスラムのスルタン王サラディンの一騎打ちとなった。 中世の騎士道とイスラム教のアッラーの神の献げでの宗教戦争である。 しかし、十字軍の歴史はまだまだ第三次十字軍でこれからも十字軍の遠征が続く。
投稿元:
レビューを見る
花の第三次十字軍から第八次十字軍までを描いた完結巻です。第三次十字軍の『サラディンVS獅子心王リチャード』の戦いは読み応えがありました。やはり「塩野さんが一流と認めた男たち」の戦いの描写は、躍動感があって読んでいておもしろいし、こちらも引き込まれていきます。ですが「十字軍物語」ではそのような武将はあまり輩出されなかった印象。なので今までの塩野さんの本の中では、残念ながらなかなか読み進めづらかったかな。
結局十字軍は第ハ次まで続き、一時期はイェルサレムを奪還するも長続きせず、再びイスラム教勢力下に。そしてイタリア海洋国家の繁栄、フランスの中央集権化、モンゴル軍台頭の中、ローマ法王の権力は失堕へ。中世の時代は終わりを告げ、ルネッサンスの時代へと移って行くこととなる。当たり前だけど、歴史は繋がっているんですね。
投稿元:
レビューを見る
花の第3次十字軍から始まります。
リチャード獅子心王VSサラディンはには血が沸き立つような興奮を覚えます。
しかし、その後の十字軍にはリチャード獅子心王ほど面白い人物が居ないせいか、読むスピードが落ちます。
ヴェネチア主導で聖地奪還とは程遠くなってしまった第4次十字軍。
やるだけ無駄だった第5次十字軍。
話し合いでイェルサレム奪還の目的は果たしたものの、戦いをしなかった為に評価されなかった第6次十字軍。
宗教的には理想的だったにもかかわらず、失敗どころが返って十字軍国家の滅亡を早めてしまった第7次・第8次十字軍。
第5次十字軍の章を読んでいるあたりから思いましたが、聖地奪還の為の十字軍の筈が、聖戦のための十字軍という感じに手段が目的化している傾向にあります。特に聖職者にその傾向が強い感じです。
聖地奪還という目的を果たしたのに評価されないフリードリッヒ2世と無残な失敗に終わったのに聖人に列せられたルイ9世。そして宗教的に忠実に聖地を守ってきたテンプル騎士団の運命を見ると、皮肉どころか一種の悲惨さを感じます。
クレメンス5世と美男王は聖地に散った2万人のテンプル騎士団に祟られたんじゃないかと思います。
投稿元:
レビューを見る
非常に、おもしろかった。獅子心王リチャードとサラディンの第三次十字軍、イェルサレムまで、もうちょいだったのに…。ビザンチン帝国を滅ぼした第四次十字軍、キリスト教同士の争いで得したのはヴェネチアだった。法王代理に振り回され、やるだけ無駄だった第五次十字軍。したたかで、親イスラム派?のフリードリッヒに、率いられた第六次十字軍は、講和でイエルサレムを取り戻した。キリスト教の優等生のフランス王ルイは、第七次十字軍で「元奴隷」(マムルーク)の兵士に惨敗した。第八次十字軍では、再びルイが率いたが、遠征先で死亡…。最後はマムルーク朝の攻撃で、キリスト教側は、パレスティーナから一掃される。宗教のためとはいえ、これだけ長い間戦争するとは、いやはやである。
【気になる言葉たち】
・君主は、無思慮で自己抑制に欠けるよりも、思慮分別と中庸に長じているほうがよい。
・当初立てた計画を忠実に実行するだけならば、特別な才能は要しない。だが、想定していなかった事態に直面させられたときでもそれを十二分に活用するには、特別な才能が必要になる。
・勝つたか敗れたか、よりも、どのようにして勝ったのか、また敗れた場合でも、どのように敗れたのか、のほうが重要になるのと同じだ。
・外交上の接触も建物と同じで、最初の基盤造りから慎重に始めないと、途中で崩れてしまうものである。
・情報とは、その重要性を認識した者にしか、正しく伝わらないものである。
・戦争は、指揮系統が一本化していなければ勝てない。なぜなら、その進行中に各部門で、無用なエネルギ―が消費されてしまうからだ。
・外交の担当者には、内政を担当する者以上の賢明さが求められててくる。悪質さ、悪辣、と言ってもよいくらいの知カ(インテリジェンス)ガ求められるのである。
・「現実主義者が誤りを犯すのは、相手も同じように現実的に考えて愚かな行動には出ないだろう、と思いこんだときである。
投稿元:
レビューを見る
十字軍後半戦。リチャード獅子心王はホントに強かったのですな。どうも、少女漫画経由の情報が多くて実像が掴みにくかった。
投稿元:
レビューを見る
塩野七生の十字軍シリーズの最終章。
主役はリチャード獅子心王!
第三回十字軍を率い、サラディンを幾度も破った十字軍史上最高のヒーロー、イングランド王リチャード一世の活躍と、それがもたらしたパレスチナ状勢の変動。
そして第四回から第八回までの残りの十字軍の歴史。
ローマ法王の絶頂期を極め、「法王は太陽、皇帝は月」と豪語したインノケンティウス三世。
したたかなヴェネツィア共和国。
第三の騎士団として登場したドイツ騎士団(チュートン騎士団)。
サラディンの甥で、その遺志を継ぐアイユーブ朝スルタン、アル・カミール。
第六次十字軍を率い、名将でありながら戦わずに勝利した神聖ローマ皇帝、フリードリッヒ二世。
二度も十字軍を率いて敗北しながらも、信仰心の篤さで聖者に列せられた聖王ルイ(フランス王ルイ九世)。
制海権を握るイタリア諸都市の海軍。
アッコン陥落(1291年)による十字軍運動の終了と、十字軍が欧州と中東にもたらした影響とは?
「長期にわたって展開された戦争の歴史とは、戦闘の連続のみで成る物語ではない。たびたびの共生の試みと、そのたびに起こる破綻と、それでもなおそこに生きようとした人々の物語でもあるのである。」
ニン、トン♪
投稿元:
レビューを見る
第3回は英国・リチャード獅子心王vsサラディン・アラディール兄弟の闘いと一方での紳士的な対談・そして信頼関係、第4回はヴェネツィア元首ダンドロとフランスの諸侯たちがなぜビザンチン帝国を攻撃したのか、第5回はイスラムのスルタン・アル・カミーユ(アラディールの長男)と聖フランチェスコの出会い、第6回はフリードリッヒ3世など印象に残る場面が多くあります。歴史上は一括して「十字軍が失敗した」と言われますが当然のことながら、各8回毎にドラマがあり、英雄がいます。暗黒の時代ですが、塩野氏は今回も上記の魅力的な英雄たちを描いています。
投稿元:
レビューを見る
いきなり分厚くなった第3巻。いやあ、読み応えがありました。獅子心王リチャードと花の第3次は、さすがに面白い。全巻の中でも白眉か。また、戦闘こそしなかったものの、神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒ率いる第6次も面白い。この2人では、より中世的なのがリチャード、一方のフリードリッヒはぐっと近代的でさえある。いずれも名君の両極にあるといっていいだろう。それに引き換え、なんとも惨めな(当人は気づいていないようだが)フランス王のルイ。聖堂騎士団の最後は、アッコンでは壮絶、帰り着いたフランスではなんとも哀れだ。
投稿元:
レビューを見る
ボロをまとって降りしきる雪の中三日三晩許しを請い続けろ!と思って破門したのに、温泉につかりながら反論してくるとは何事か?!とフリードリヒ二世を二回立て続けに破門したグレゴリウスさんに微笑を禁じ得ませんでした。新刊のフリードリヒ本を読むのが楽しみです。
聖堂騎士団の最後はあんまりだった。塩野さんが「神様はいたんだ」と思うほどに。これからは「イケメンは性格もいい」神話に疑いの目を差し挟んでいきたい。
第四次十字軍がコンスタンティノープルを攻めたことは、人として失ってはいけない「何か」を損ねる行為だったと思えてならない。
投稿元:
レビューを見る
十字軍物語2を読んでから2年以上手をつけなかったのだが、フリードリッヒ2世を読んだのをきっかけにページを開いた。ここのヒーローは、もちろんリチャード獅子心王ですね。政治家として、人間として、フリードリッヒは凄いし天才だが、こと十字軍の指揮官としてはリチャードは双璧をなしますね。ボクにとってLionheartはSMAPではなくリチャードです。
投稿元:
レビューを見る
十字軍の終焉。戦いの始まりは面白いが、終わる時はいつも物悲しい。十字軍騎士団の終わり方にはキリスト教というものに対して否定的な感情しか持てない。
投稿元:
レビューを見る
長かった。約200年かけて8回に渡る十字軍遠征だったが結局はイスラム教のスルタンに破れてしまった。その間、一回目の十字軍遠征で獲得した領地に代々すみ続けたキリスト教徒もいたみたい。今回は勉強になったな。長かったけど。。