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2月14日の日銀による10兆円の国債購入の決定で、ある程度実証された?
2012/03/28 21:19
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
安達氏に関しては、『デフレは終わるのか』(東洋経済新報社)という本を読んだことがある。専門的な内容ながら、とても勉強になった。
一方、この新書は、おそろしくやさしい。円高・円安の意味やデフレのこと、そしてなぜこうしたことが起きるのかを、これ以上ないくらいに分かりやすく説明してくれる。ふだん経済に関心がない人でも、きっと読み通せるし、理解できる。
「円高の正体」という書名は、「デフレの正体」というベストセラーを記録した本をライバル視して、編集部が付けたものだろうか。生産年齢人口が減少するためにデフレが起きているという、「デフレの正体」の主張を、本書は明快に否定している。その意味では、結構挑発的な本だ。しかし、懇切丁寧に説き伏せるあたり、正統派だ。
ドイツやウクライナ、ルーマニアといった国の例をあげながら、生産年齢人口が減ってしまった国であっても、デフレにはないことを著者は言う(p.179)。インフレ率がプラスの国がたくさんあるのだ。なかには、ひどいインフレの国もあるので、生産年齢人口が減少することがデフレに結びつくわけではないことが示されている。「デフレの正体」の著者藻谷浩介氏は、安達氏の主張にどう応えるのだろう。書物で反論すれば、面白い。
安達氏は、いいかげんなエコノミストに我慢ならなくて、本書を出したのだろう。「伝説のカリスマ○○」といった肩書きの人は痛烈に批判している。ただし、実名はあげない。
藻谷浩介氏だけは名前と著書名をあげて、異論を唱えている。つまり、相手の存在を認めた上で、きちんと経済学者として、デフレの正体の議論をただしているのだ。
著者はとにかくデータをきちんとひきながら読者に持論を伝えようとしている。超円安がくるとか、ハイパーインフレがくるといった煽りを繰り返すカリスマ○○とは同じにしないでほしい、と自分のアイデンティティをかけて本書を書いているのが分かる。
著者は、要所で自説を囲み記事にまとめているので、読者が議論から脱落することはない。日本がデフレから脱却し、円安につながり、経済成長が促されるには、市場への通貨供給を増やせばよいと明快に言っている。
日銀がマネタリベースを増やせば、将来のインフレ期待が高まり、好循環が生まれるとする。ちょっと単純化しすぎている感じもあるが、データで、そのつど例証されているので、理路整然として、ここにたどり着く。
インフレが起こるという将来への期待が生まれると、設備投資が増え、景気もよくなるという。日銀はマネタリーベースを増やしてはいるが、その政策の規模が不足しており、成果がでていないとする。2%の経済成長率を達成するためには、28.8兆円の量的緩和が必要とまで言い、金額をはっきり提示する。
米国では量的緩和策(QE1、QE2と呼ばれている)を実施してきたために、市場では円高がすすんだ。ただ、量的緩和後もそれほど景気が回復していない。失業率は8%台にようやく下がってきたが、まだ不十分だ。
これ以上の量的緩和(QE)をしても、効果があるかどうかわからないという声も聞かれる。量的緩和策は、うまくやらないと投機を誘い、バブルをふたたび生む。
日本のデフレは果たして、マネタリーベースを増やせば、克服できるのだろうか。最近、欧米経済が日本の失われた10年に状況が似てきているとも言われる。米国などを手本にした金融政策で、これからの日本経済がうまく運ぶのかどうか、いまひとつ確信がもてない。
さて、28.8兆円の資金供給はデフレが克服できるのなら安いものか。
ただ、きっと日銀関係者は、これだけでは動かないだろう。速水日銀総裁(当時)の主張をひきながら、これをはっきり否定して見せるなど、著者は日銀の手法は支持していない。著者と日銀関係者の溝は大きそうだ。
円安とGDPがきれいにリンクしている図表を多用するなど、データ面が充実しているので、その都度、納得しながら読み進めることができる。
あとは、28.8兆円を試してみるだけの責任を日銀関係者が負うかどうかだろう。
ところで、2月以降に、やや円安にふれているのは、2月14日に日銀が10兆円の国債購入という緩和策を打ち出したからという説明を聞くことがある、だとすれば安達氏の主張はある程度、実証されたことになる。このあとは、どうなるのだろうか、興味深い
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円高が起きる仕組みを基本から教えてくれる本。
2012/04/22 21:30
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る
円高が起きる仕組みを基本から教えてくれる本。
キーワードは「28.8兆円」。
本書では、円高は日本経済にとって悪であること、「よい円高」などは存在しないというところから始まります。そのうえで、為替レートがどのようにして決るのかなど、基本的な部分の解説をしています。
円高や円安が日本経済に及ぼす影響など、ある程度経済を勉強している人なら、常識となっている部分も丁寧に解説してします。
そういう点からいうと、為替の基本を理解するためには、良い本です。
為替の動きをその他の経済指標などを使って解析していますが、著者の基本はマネタリーベースの供給量に最も着目しています。
結論的なところからいうと、日銀による金融緩和がきちんとなされていないために円高が進んでいるということです。もちろん、外国の状況も円高を進める要因のひとつではあるものの、最も大きい原因が通貨供給量という結論なのです。
その答えがキーワードである28.8兆円です。
28.8兆円通貨供給量が少ないために円高になっているとしています。そのうえで円安に反転させるためには、さらに150兆円の供給が必要と試算しています。
新書としては、結論を単純化したほうが読者に理解させやすいという面はありますが、結論が少々粗い感じがするのは私だけでしょうか。
龍.
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豊富な図表による解説
2012/02/26 12:12
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pappy - この投稿者のレビュー一覧を見る
経済の門外漢には必ずしも理解しやすい書籍とは言えないが、豊富な図表を駆使して現在の円高・デフレスパイラルの状況と、その発生要因の解説に努めている点が好感を与える。結論は現在の不況は日銀の量的緩和が不十分であることにより、これを十分な規模で行えば不況から脱出できる、としている。おおむねこの考えには賛成であるが、気になるのはインフレになれば国債価格が下落し国債が売れなくなるとしていることだ。現在の日本で国債が売れなくなることは財政危機を招きかねないので、不用意なインフレ策が財政危機の引き金を引くことにはならないのだろうか?
先日の金融緩和策では日銀が国債を購入している。これならば、量的緩和策が空振りになることもないのだろう。さらなる日銀の積極的な介入が望まれる。
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前半はほとんど知ってる内容で読むのに時間がかからなかったが、後半は他の本でも言ってたことを裏付けているようで面白かった。
この本を読んで思ったことは日本は救えるということだ。
日銀が本気を出せば、この国は再び蘇る。そして、この国を救うために動くのは銀行、証券会社(投資銀行)、ヘッジファンド(投資ファンド)、個人投資家だ。
この国が蘇るのはそんなに長い期間はかからない。5年以内に日本経済は反転し復活する。そして、10年後には皆が幸せな世界になっているだろう。
長期間この国を停滞させているのは、怠慢と無知だ。
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「第1章 為替とは何か?」「第2章 円高・円安とは何か?」はきわめて常識的な知識の確認。まったく経済の知識がない人でもわかりやすく読めるかと思う。また第3章はちまたに垂れ流されている俗説を痛烈に批判。「第4章 為替レートはどのように動くのか?」「第5章 為替レートは何が動かすのか?」は為替レートの変動について、修正ソロスチャート、予想インフレ率などのグラフを用いて説得的に持論を展開。そして、最後の「第6章 円高の正体、そしてデフレの“真の”正体」において、日銀のさらなる金融緩和の必要性が示される。
安達氏の切れ味鋭い論法はいつもながらだが、誰もが理解できる平易な文章で読みやすい。万人にオススメしたい。
ところで、昨日、勤務先の組合ニュースが来年の春闘目標として、ベアアップを目指す旨が書かれていた。組合だから、ベアのアップを要求するのは良いとして、その理屈として「賃金が上がれば消費が増え、景気の回復にもつながる」云々の記述があった。……orz
是非、本書を熟読し、正しい理論武装でもって、「敵」は誰かを見定めていただきたいと切に願った次第である。
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円高、デフレについて、著者の見解を非常にわかりやすく解説している良書。最終的には日銀の政策批判となっているが、ここまでズバッと斬っていると、気持ちいい反面、こんな簡単なことに気付いてないということはこの説自体どこか欠陥があるのか?とも思ってしまった。金融の世界は難しい。
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為替に関することをわかりやすく書いてくれている。円高・円安といった為替変動が何故起こるか?ということはこの本で理解できるだろう。
ちょっと気になったのは本書に出てくるグラフ。棒グラフと折れ線グラフを重ねているグラフで、動きが同じであることを強調するために縮尺(?)を合わせているような。増減率が同じだから間違ったグラフではないけど、読んでいる人に対して自分の説の正しさをより強く印象付けるためにやっているんじゃ?と勘繰ってしまう。
概ね納得できるんだけど、何故か腑に落ちない感じ。
因みに最初に出てくる金額の意味は、本文を読まずとも額面を見たらおおよそ想像できる内容。
著者はリフレ論者なのかな?
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グラフが連動しているというだけで因果関係があるような書き方はちょっと弱いと思いました。
平易な本にするために意図的に端折ったのだと思いますが。
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長く続く円高。これって一体なんで起こってんの?どうなるの?そして、どうすればいいの?等の疑問に対して、端的に見解を述べている一冊。基礎から語っており、非常に分かりやすい。しかしながら、反対意見/別意見への言及が物足りず、どこか独りよがりな議論感が拭いきれない。
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円高は日本にとって有害であると説き、予想インフレ率を引き上げ円安を誘導するために、日銀はより積極的な量的緩和を行うべきと主張する本。
肝心の部分がダメで、その他は可もなく不可もない、というのが率直な感想。
著者は円高を"明確に悪"と断言し、無条件で忌避されるべきものだと言う。しかし、この議論の核となる部分の根拠として出てくるのが、なんと、ドル円レートと名目GDPのグラフ1つのみ。日本の名目GDPが比較的高い2003年~2007年は円が安く、2008年~2011年は円が高い。よって、円高は良くない、と結論づける。
…あえて述べるまでもないが、2007年以前の円安は円キャリー取引、好景気は世界的な金余り、2008年以降の円高はリーマンショックによる円キャリーの手仕舞いと質への逃避、不景気はリーマンショックによる信用危機、で説明できる。
そもそも、2指標間の相関が因果関係の説明にならないことは、大学1年生でも知っている。
まさか、反円高の論拠がこれだけではあるまいな、と思って本書を読み進めたが、なんと本当にこれだけだった。えぇ、そりゃあ盛大にズッコケましたとも。
その後著者は、変動為替相場制の下では、通貨暴落が中長期的には景気回復に繋がること、キャピタルフライトが起きる可能性が低いことを挙げ、円安のデメリットは小さいと説く。
そうして、為替の中長期的挙動は予想インフレ率に従うことを説明し、日銀はアグレッシブな量的緩和により予想インフレ率を引き上げ、円安を誘導すべきだと主張する。
ここでも著者は、"変動相場制では通貨危機は起こらない"と断言したり、詳細な議論が必要な量的緩和の規模に関する部分で、マッカラム・ルールを無邪気にえいやと適用して済ませたり、節々で香ばしさを醸し出している。しかし、歯切れの良さを売りにした200ページ程の新書であることを考えると、ギリギリ許容範囲内ではある。要は、標準的なリフレ派の主張である。
然るに、「で、本当に円安より円高のほうがデメリット大きいの?」という、そもそもの問いに答えていない以上、いくら円安誘導政策の話をしたところで、まるで説得力がない。
議論の核を素通りし、枝葉を深掘りした、実に不思議な本。『最近ズッコケてないなぁ』と、欲求不満気味の人は、手に取ってみると良いかもしれない。
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昔から経済が苦手だ。
というより、大局的に物事を捉えることが全般的に苦手だ。私は根っからのオタク気質なのだろう。私を含め、世の中には細かいことにこだわりすぎて大局を見誤る人が少なくない。
緻密性と大局観は、一見相反する能力のようで実は相互補完的で密接不可分。どちらか一方を鍛えられるものでもない。重要なのはそのバランス感覚。私の場合は緻密性に振れることが多いので、意識して大局観を養わなくてはなぁ~と思う。
人から勧められて読んだ本だったが、読後はそんなことを考えさせられた一冊。
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3/4 読了 一気に読ませてくれた。 以前、
「通貨を知れば世界が読める」 浜矩子
を読んで”1ドル50円時代”の話で、こんなメチャクチャなことを言っている学者もいるのかと呆れました。
「デフレの正体」 藻谷浩介
はベストセラーということで読んだのですが、大きな違和感がありました。
「良い円高 悪い円高」 リチャード・クー
は麻生首相の経済ブレーンでしたよね。
ただ、これらの感想は自分の無知からくるものだろうと思っていたのですが、この本を読んで学者ばかりでなく日銀総裁までが間違っていたという説明に納得がいきました。この20年の日本経済の低迷を見れば一目瞭然です。日銀、経済官僚、政治家の方々に読んで欲しいです。
株式投資にも役立つ内容です。
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前半、鼻提灯できそうなくらい退屈だった。
後半、修正マネタリーベース(修正ソロスチャート)当たりから面白くなったと思ったところで終わった。
(議論を始めると、相手の意見も聞かずに強引に話を終わらせようとする人がいるけど、なんかそんな感じ・・・。)
平易に、シンプルにしすぎて、根拠があまりに曖昧なところが心配になった。
相関関係のあるチャートだけ見せて因果関係があると断じるのは危険なのでは?
コラムの内容も支離滅裂で・・・怖いよー・・・。
勝間和代の『まじめの罠』もそうだったけど「やっつけ仕事」感がすごい!光文社新書クオリティー!
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内藤忍さんのブログで紹介されていたので読んでみました。
著者の主張をざくっとまとめると、
・円高は日本経済にとって間違いなく悪。
・日銀が金融緩和によってマネタリーベースを増やせば、円安、株高、デフレ解消によって日本経済は復活する。
というもの。
日銀の金融緩和以降、短期的には筆者の描いたシナリオ通りの展開になっている。
現状の円安、株高の追い風を受けて、3月決算の各企業の業績が好転するようであれば本格的な回復軌道に乗るんじゃないかと観測している。
ていうかそうなるといいな♪( ´▽`)
内容は割と易しいので、弱い日本の強い円よりさくっと読めるとおもいます。
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円高を理解する入門書として最も薦められる一冊。為替の動きに大きな影響を与える物価との関係を理解できる。以下、ポイント。
・為替はインフレ率の将来予測(期待インフレ率)の影響を大きく受ける。
・日銀の行為から期待インフレ率の動きを読める。
・デフレ・円高からの脱却の成否は日銀の金融政策にかかっている。
なお本著を読了のうえ、同じテーマをよりアカデミックに扱い、かつ金融政策の記載が豊富な岩田規久男『デフレと超円高』へと読み進めると一層理解が深まる。