投稿元:
レビューを見る
ブルーノ・タウト(杉本俊多・訳)『都市の冠』。
タウトというと桂離宮の研究や、ものすごくモダンな家具デザインなんかが最初に思い浮かぶんだけど、
そうか、こういう側面があったのかと深く思い知った。
第一次世界大戦という総力戦のなかで、「都市の完全に破壊しつくす」現代の戦争の現出を目前にし、
自身の死の予感のなかで書かれた黄昏の書。
マヤやアンコールワットからゴシック聖堂まで縦断しながら、
エックハルトさえ引用しつつ、新しい都市像を提示する。
ってとことなんだろうけど、この神秘主義的な、
ほとんど反モダニズムにすら思われるイメージはなんなんだろう。
要するに、モダンと呼ばれるものが戦争と接続して暴力的に現れ、
地上という平面を支配しようとしているそのとき、
それを超えるためには垂直性への志向をも明示されなくてはならぬ、というところだろうか。
垂直性という冠は、永久戦争下の世界では希望となるとタフトは考えていたということか。
さて、では311後のこの国では、この本はあらためてどう読まれねばならないのだろうか。