紙の本
生きてみて見える風景
2017/02/10 11:19
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雪梅 - この投稿者のレビュー一覧を見る
おだやかな瀬戸内海に浮かぶ長島。この小さな島は国立療養所の任を担っている。
かつてハンセン氏病に罹患した人たちは、故郷を残してここで暮らすことになった。
作者も幼くして親と離れて、きびしい集団生活をこなしつつ治療を受け、やがて結婚して家庭を持つ。
闘病記ではなく、また国の隔離政策に対する批判の書でもない。
あるのは自分を育んだ親の愛への溢れる思い、まぶたの裏から離れないふるさとの自然の美しさ、島での営み、難しい人間関係のなかでそっと花ひらいた友情を、いのちをかけるようにいとおしむ人間のこころの有り様である。
昨年末に亡くなられた渡辺和子さんの本のタイトル、「置かれた場所で咲きなさい」。
その一つの例をこの本に見出すこともできるかもしれない。
最後に。
決して難しい本ではないので、小学校高学年くらいから読むことも可能です。
もし、学校で、集団の中で激しい疎外感に苦しむ子どもがいたら、どうぞ自分の力で読んでみてください。
そのためにも、学校図書室、図書館にも置いてほしい本。
紙の本
心に残り続ける本
2023/09/20 12:38
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かめ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
辰巳芳子先生のご著書から、この本にたどり着きました。本当に素晴らしい本でした。病、故郷と家族との別離、戦争、朋輩の死、人生の苦難そのものを引き受けてなお、著者の人柄と人生の輝きに言葉を失います。多くの人に読んで欲しい本です。
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ハンセン病のため、10歳で故郷を離れ、隔離されて生きた女性の記録。隔離されたとはいえ、親や祖父母が見舞いに来て、差し入れもしてもらえたため、また本来田舎育ちで行動範囲が狭いため、隔離されたことの苦痛はない。むしろ、医療環境は良かったかとすら、作者は考えている。
多くを望まず、忍耐強く生きた世代の人らしく、苦しみつつも、恨みがましい部分はない。が、絶対に生まれ変わりたくない、という言葉に、書かれなかった悲しみと苦しみが想像される。
読後感は、圧倒される感じ。
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なんと、やわらかな風が拡がってゆくような文章なのだろう。
長い間偏見にさらされ、社会都のつながりを閉ざされたハンセン病の世界に繋がれていたとは思えない著者自身の生き方と他者への眼差。
言葉がある、語ることが出来る、描くことが出来る、伝える相手がいる。
それらと書き手の善き心が合わさることができた。
そのことに救いを感じる。
隔離されていたとはいえ、家族が見舞うこともでき、周囲にあたたかな助けを差し伸べる人たちがいたことは、ほんとうに良かったと思う。
何の大病も障害もなく今生きている私たちの周囲はどうであろう。
この著者が受けることが出来た思いやりを、私たちは与え合っているだろうか。
どんな状況でも、忍耐づよく物柔らかでいられるだろうか。
むしろ、読み手の方が、普段身に着けているくだらない鎧を外してもらったような気持ちになる。
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10歳で家を離れ、以来ハンセン病療養所長島愛生園で暮らす著者が、ゆっくりと、淡々と語る幼い頃の日々。
誇張や装飾とは無縁の言葉が、圧倒的に訴えてくる。
知らない土地、自分の故郷でもない場所が、無性に懐かしくいとおしく感じる。その揺るぎなさ。紡ぐ日々とは、こういうことを言うのだろか。「家族のぬくもり」を皮膚に感じられるほどなのだ。
涙を落としながら読み続ける本なんて、そう滅多にあるものではない。しかも、それは悲しみの涙ではなく、生きていること、生かされていることへの感謝の涙。
著者の辿ってきた長い道は、いのちの光り輝く道。
この本に出会えたことにも感謝したい。
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ハンセン病の女性の手記。花の美しさ、鳥の声、人の優しさ。何事も喜べる心の豊かさと強さには心を打たれた。お誕生日のくだりには涙。
幸せとは、与えられるものではなく、自分の中にあるものだと気づかされる。
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宮崎かづゑ『長い道』みすず書房、読了。10歳で隔離政策を受け、長島愛生園で70年の時を過ごした著者の手記。「両親と暮らした10年が人生のすべて。病気に憎しみはないが、肉親を心配させたことが悔い」。恨みはなく創造的な毎日を過ごす。らい予防法廃止から16年。何も終わっていない。
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ハンセン病で70年もの間隔離された島で暮らした作者。
淡々と静かな語り口は、想像もできないほどの身体的な苦痛と、寂しさ、哀しみを通り越して、生きてることの素晴らしさを語りかけてくれる。作者宮崎かづゑ の生き方はできなかったことを呪うのではなくできることを幸せに感じ、学び行動し、喜ぶ生き方である。指のなくなった手で、料理を作り、膝で歩き、長い鬱病の苦しさも、最後にはあれも必要だったんだと思う。本が大好きで一冊を何度も読み込む宮崎かづゑさん。幼少期の記憶の実家の祖父母、父母の描写の豊かなこと。飾りのない素直な文章の伸びやかなこと。心に強く沁み入ってくるようだった。心洗われる一冊。
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片足を切断した。最愛の人と結ばれた。たくさんの本を読んだ。うつ状態になった。死を前にした友人にポタージュをつくった。辛いこともあったけど、楽しいこと、うれしいこともたくさんあった。そんな日々のうしろがわには、お父さんやお母さん、生まれ故郷の村、幼き日々の思い出がいつもきらめいていた。家族のもとで過ごした10年、長島愛生園に入園してからの70年。辿ってきた「長い道」の記憶をゆったりと振り返り、やわらかな言葉で語った一冊。
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柳田邦男さんがその著書の中で紹介されていたので、読みました。やはり、柳田さんが紹介する本に外れはない。読んで良かった。
この本を読んで改めて強く感じたのは、人を支えるのは、幼少期の親や近しい人からの愛情であり、人との交わりであり、愛のつながりということ。
だから、私たちは人との関わりを大切にしていかなくては。近しい人にはしっかりと愛情を注がなくては。
それが巡り巡って、回り回って、幸せの種を蒔いていく。
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長島愛生園で暮らす宮﨑かづゑさんが書かれたもの。
連れ合いの仕事がきっかけでいただいて、手に取ることができた。すごい本だった。
「島の70年」で、毎日いっしょうけんめいだった、でもがんばらなかった、楽しかった、って。
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とても良かった。
こういう本を読むと、自分が下手に何か書くと汚してしまうような気がする。
著者の宮崎かづゑさんの生き方、考え方に、人間って素晴らしいな、生きる意味があるなと思わされる。生きることへの向き合い方を教えてもらったような気がする。
つい最近、映画「PERFECT DAYS」を見て同じことを思ったのだが、毎日を誠実に丁寧に生きていくことがとても大事で、そこに幸せがあると気づかされた。
圧倒的に不幸に見える事でも、その後の生き方、考え方で、いくらでも幸せになれる、それは本人次第なのだと思わせてくれた。ご本人は「頑張りませんでした。楽しかった」と。
きっと元気が出ると思うので、たくさんの人に読んで欲しい。
ちょうど3月から宮崎さんのドキュメンタリーが公開されるようなので、ぜひ見たい。
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著者のドキュメンタリー映画が公開中と知り、本書を手に取りました。
10歳でらい病で親元を離れ、長島愛生園に行かされ、勉強がしたいのに虚弱体質で2年しか通えず、いじめも受けながら本の世界に助けられたり、親友との出会い、20代で結婚、そこで70年以上生活している中で、ワープロを学び綴った作品です。生家を離れるまでの両親や祖父母との思い出がみずみずしく描かれていること、貧しい中での年に数回のご馳走や祖母のうどんの描写は美しかったです。家族との何気ないやり取りと共に、食事の記憶はいつまでも色褪せないのだと、改めて思いました。
親友との死別を綴った作品は涙なくしては読めませんでした。