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紙の本
闕所物奉行の最終巻に相応しい大決戦
2012/03/18 20:58
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
上田秀人の闕所物奉行・榊扇太郎シリーズの第6作である。最終決戦と書かれていたので、本書で最終回を迎える。闕所物奉行にも実務を捌く闇の顔役が登場するのだが、この品川の闇の元締の狙いも縄張り争いが目的である。
本シリーズでは、これまでに旗本に関すること、吉原に関することなど社会の事情を反映した事件を例にこの時代の世相が描かれていた。しかし、ここ数回は品川の闇の元締との対立が表に出てきており、それがいよいよ本書で最後を迎えたということである。
闕所物奉行といえば、奉行ではあるが、町奉行や寺社奉行とは格が全くことなる。精精町奉行所の筆頭同心などと同等である。闕所が出た際に、その始末をつけるのが仕事である。闕所は犯罪を犯したものの財産を召し上げることであり、それを闕所物奉行が金子に換えて公共事業に資するために上納することになる。
主人公の地位は低いので、上の引きを持たなければ活躍などできないわけである。ここでは、当初は目付である鳥居耀蔵に引き上げられ、闕所物奉行に収まったが、町奉行を狙う鳥居に裏切られ、老中の水野忠邦の庇護を受けることになった。幕閣の庇護を受けることになれば地位は安泰ではあるが、その分非情に切り捨てられることも覚悟しなければならない。
自分の出世を考える鳥居耀蔵、倹約を旨とする政道を推進する老中、そして将軍である徳川家斉とその子息で後継者である徳川家慶との駆け引きなどが絡み合っていつものように面白く描かれている。
政道を支える幕閣の対立と、幕府の実務を支える御家人の奮闘ぶりが同時並行して描かれており、やや欲張り過ぎだとも思えるのだが、ストーリーに乱れはなく、読んでいても飽きがこない。この闕所物奉行という役回りならば、この時代の世相を反映した事件をさらに扱えるのではないかと思うのだが、ここで終了とは残念である。
上田の時代小説が人気を集めるのは当然で、これほど分かりやすく、読みやすければ人気が出ない方がおかしいくらいである。上田の小説によって時代小説に興味を持つ読者が増えてくれることを願う。
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