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女の子を殺さないために 解読「濃縮還元100パーセントの恋愛小説」 みんなのレビュー
- 川田 宇一郎 (著)
- 税込価格:2,090円(19pt)
- 出版社:講談社
- 取扱開始日:2012/03/29
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紙の本
女子は下がり、男子は上がる
2012/04/03 17:37
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜ「恋愛小説では女子を大量に殺すのか」。その「解読」なのだが、読んでいてかなり面白かった。重箱の隅を突くようなサブカル批評じゃなくて、きちんと自分の頭で考えられていて、なんともはやチャーミング。
作者は恋愛小説をラブコメ、ラノベ→村上春樹→庄司薫、柴田翔(サリンジャーの『ライ麦畑~』もか)からなんと川端康成に溯上できるとしている。サリンジャーの場合、野崎孝の翻訳体が与えた影響の方が大かもしれない。
「ラブコメとは、セックスしそうで、セックスできぬ気持ちよさを、コメディ化した不条理により連続発生させる装置」「今では女の子をあっさり殺す物語が新鮮なほど、繁栄を極めています」
名言じゃないか。「しそうで、できない」-英語でいうところのティーズか。いきなり裸じゃなくて、一枚一枚じらせながら、衣装を音楽に合わせて脱いでいく。そこが、たまらん。ちゅーわけで。
「男のやらしい視線の伝染によって、やらしく見られることを意識した女が形成される考え方です。しかし、関係とは常に一方的でなく、コミュニケーションです」
ジェンダー系の女性に叱責を受けそうな一文だが、うなずけてしまえる。これもティーズだよね。
「男の子が成長しながら強くなっていきお父さんと闘って、倒したりするような物語は60年代末以降、もはや終わった物語である」
エディプスコンプレックスは、もはや時代遅れか。『巨人の星』とか、『スター・ウォーズ』とか。
「物語の最大の課題になったのは、決して倒せない「ママ」である。この「ママ」の包囲網を抜け出さない限り「砂漠」へ行くことはできない」
息子を溺愛するママは厄介だが、娘に自分の果たせなかった夢を刷り込ませようとするママの存在もまたナンギだ。居心地のいいママのライ麦畑からエクソダスできた子どもにとって「砂漠」は楽園に思えるのだろう。何もないが。
「女の子は下降、男の子は上昇」
男の子は「レベルアップ」、わかりやすくいうと成りあがりが、よしとされているようだ。いい大学を出て官僚になるか、IT企業を立ち上げてIPOして人生あがり、とか。立身出世や金持ちになることを軽蔑している男の子とて金の変わりに知識、金持ちならぬ知識持ちになって文化人になりたい。「上昇」という意味では、同価だ。
一方、
「女の子は落ちることによりママから抜ける」
あえて落ちる。男の子は成りあがるか、逃げるか、だけど、女の子は落ちる。東京ディズニーシーの「タワー・オブ・テラー」並み。ふと『千と千尋の神隠し』で千尋が湯屋を一気に下っていくシーンを思い浮べてしまった。
「女の子を殺す方向…小説を物語にする、と同時に、女の子を殺さない方向…小説を物語にしない、という二つの両方のベクトルのせめぎ合いにより、小説は本当に「いやなもの」になります。」
この引用の前に柴田翔の『されどわれらが日々』が取り上げられているが、中学んとき、隣のクラスの文学少年から借りて読んだ。彼は純粋ゆえ、いたく感激していたが、そうは思えなかった。「いやなもの」-そうかもしれないな。いやよいやよも好きのうちっていうけど。
日比谷高校同級生の庄司薫と古井由吉は、ポジとネガの関係とか。気がつかなかった。庄司薫、再読してみよう。
ホラー映画でもそうだが、やはり女の子が殺されたほうが、死んだほうが絵になるし。ま、美少年でもいいんだけど。
オッサンインテリ批評家が、村上春樹を目の敵にするのは、文学的にどーこーというよりも端的に売れていること、世界標準であることへの嫉妬、男のやきもちだと思うのだが。
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