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格差社会と謂われる現代だが、ここに描かれる時代は現代とは比較にならない貧富の格差。貧しいものは「生きるか死ぬか」の貧しさにある。
そんなどん底、どん詰まりで犯罪に手を出してしまう人々の嘆きを慶次郎が、晃之介が、島中賢吾が聴き役になる。
久々に大捕物に気配を感じる「千住の男」しかし、事件は意外な解決を見る。
喰うために「しかたなく」かっぱらいや窃盗を繰り返す老女のあしたの不安の本質を描く「あした」
相手を思いやるばかりに喧嘩がおこる江戸情緒まるままの三角関係を描いた「どんぐり」
まるで「わらしべ貧乏」のような「輪つなぎ」
いつものようにどれも秀逸。
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人生って。。。ずっと続いていくんだね。このシリーズを読むたびに思うことだけど。
みんなそれぞれの思いで日を送っているのに、なんでうまくいかないんだろう・・。
よかれと思って頑張ってきたことが、どこかで掛け違っていたり、そもそも、一所懸命の方向が間違っていたり、うん、考えが甘かったりの場合も。
でも、じゃあそれでもうその人はダメってこと?とはならないのが、この慶次郎日記の優しさなんだよね。慶次郎にも、慶次郎を取り巻く人たちにも、どうしようもないことはあるけれど、それでも少しだけは手を貸してやれるし、それでもしかしたら、この暗い目をした人が少し違った道を歩めるかも・・と思わせられるところがこのシリーズが長く続いている所以なんだと思う。
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L 慶次郎縁側日記13
慶次郎が関わったり関わらなかったりのしっとりしたいつもの短編10編。
女の稼ぎでしか生きられなかった男の改心から惚れた男の先にある顛末やら。
途中、過去のシリーズに出てきた おひで や 年上の女と所帯を持った花ごろもの矢作やらがポンと出てきてニヤけてしまう。どこから読んでも問題ない短編集だけれど、慶次郎が寮番となった経緯や家督を譲った晃之助との関わりやら是非押さえておきたいところ。
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「小説新潮」に掲載された10話(うち2話改題)の単行本化で、シリーズ13作目。
NHKの時代劇ドラマになったので、私の中で森口慶次郎は高橋英樹のイメージがしっかり付いてしまっている。
「仏の旦那」と呼ばれた元南町奉行所常町廻り同心森口慶次郎は、娘を殺され、その許婚を養子にして隠居して、酒問屋の根岸の寮(別荘)の寮番をしているのだが、今でも頼りにする人々からいろいろと厄介ごとの相談を受けては解決に走り回る。
今回は空き巣や泥棒の話が多かったが、いつもながら普通の、もしくは普通の暮らしができない人々の心情をすくい取るのがうまい。
お登世が出てこないのがちょっと寂しいけれど。
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3月14日に死去されたのですね
ご冥福をお祈りいたします
相変わらずの納まりの悪い話もしみじみ
読みます
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北原 亞以子さん「慶次郎縁側日記シリーズ」最後の作品となってしまった。(2013/03/21記入)2013年3月12日75歳で亡くなられた作者北原 亞以子さんに追悼の意を表したい。
慶次郎縁側日記シリーズ第十三弾。恋女房に死なれ大罪を犯した奥州街道の男。お縄覚悟で盗みを繰り返す泥棒長屋の女。誰もみな、昔は想像もしなかった人生を歩んでいる。どこが分れ道だったのか――見えない明日に怯えて震えが止まらない。本当の苦労ってのはそういうものさ。哀歓渦巻く江戸の町で、ひたすらに生きてきた人々の来し方に耳を傾け、明日を指し示す元定町廻り同心・森口慶次郎。