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殺す理由があるのに、母を殺せない娘と、その幼馴染の、殺す理由がないのに、母を殺した娘の話。
幼い頃、虐待と言って良い程、厳しく、時に理不尽に育てられた、主人公のみずほ。
一方、他人からは異常に思える程、仲の良すぎる、閉ざされた家庭で育てられたチエミ。
ある日突然、チエミが母を刺殺して行方不明になった事件をきっかけに、結婚して疎遠になっていたみずほは、かつての友人達を訪ね、チエミの行方を捜します。
壊れようがない程、異常なまで一体化した母娘だったのに、何故チエミは母を刺したのか。そして、何処へ向かったのか。事件の一ヶ月前、彼女が送ったメールの意味は何だったのか。
一つずつ、幾つもの謎が明かされてゆき、最後には、タイトルに隠された謎も判明します。
ミステリ、なのだけれど、母娘は勿論、女同士の計算や友情(或いはそうと見せかけたもの)、あらゆる人間関係に纏わる感情が具に描き出されていて、一気に読んでしまうのに、ずしっと心に残ります。
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母と娘、女友達、女として人生の目標をどう考えるのかなど自分の中にあるキーワードをなぞるように物語を読んだ。読了後、心がひりひりした。
自分の母のことを考えた。母にとって娘の私は決して及第点すらやれない不完全な存在であったろうし、私にとって厳しい母の愛情はわかりにくい形であった。しかし、もはや母と私の葛藤期は過ぎ、穏やかな日々。生きていてくれるだけでありがたい。あるのは感謝のみ。
作中の彼女たちにもいつかそんな日が訪れて欲しいと願いつつ本を閉じた。
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おそらく、この物語に感動を覚える人のほとんどが女性ではないか。
女性にしか分からない(であろう)面倒な、濃密な、親しげな、格付けのある人間関係。読み進めながら、「自分はみずほ側だ」と思っていたところへの、大地の発言、亜理紗の登場。それは驕りでしかないのか。
母親と娘との関係は、家族であるとともに、女性同士でもある。誰しもが一度はその関係性に悩ませられているに違いない。時に家族以上に親密であり、しかし時に他人のように心が離れる関係。
「お母さん、お母さん」
物語の中で、みずほが、チエが母親を呼ぶとき、自分の母親を思わない訳にはいかない。
「すべての娘は、等しく母親に傷付けられている」
同性からの攻撃は、ひどく堪える。しかし、それが母親であった場合の辛さはいかほどか。女性同士であり、家族でもある母親との、脆い、危うい関係性。誰しもが、これまでの自分と母親との関係を思い返すはずである。
しかし、果たして自分は母親を傷付けないでいたか。
いるはずのない娘を、雑踏の中に探す母親。傷付けられても、それでも娘をかばう母親。タイトルの意味を知る時、「母親」という存在を思わずにはいられない。
決して明るい作品とは言えない。読後感が爽快!とも言えない。
だが、私にとっては間違いなく良作であるし、多くの人が言うように、「母親」という立場になれたら、その時にもう一度読みたい作品である。
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母親殺しの容疑をかけられ、逃走するチエ。
チエの幼なじみであるみずほは、チエを探すために故郷でかつての友人等に会い、チエの行く先の手掛かりを探すが………
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20〜30代の女性の友人観、恋愛観、家族観をうまく切り取り、ありがちな恋愛小説にまとめず、ミステリーに落とし込んだ一冊。
あえて、ミステリーの皮を被せることで女性の心の機微や価値観を描き出すことに成功している。
また、近年20〜30代に増えている「友達母子」を上手くフューチャーしているところも面白い。
女性読者の多くは、この物語に登場する女性、彼女たちの関係性に「共感」できなくとも、「理解」はできるはずだ。
この本には、作り物っぼさのないリアルな女性がいる。
これまでの辻村作品とはかなり毛色が違うので、『ロードムービー』のような爽やかな読後感を期待すると、肩透かしを喰らったように感じるかもしれないが、同年代の女性にはぜひオススメしたい。
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★3.5
辻村さんの本は新刊が出れば確実に買ってしまう好きな作家さんの一人。
毎回のことながら女性のどろどろとした感情を文章にするのが上手いなぁと思う。
辻村さんの作品はいつもそんな風に自分の暗い感情を理解しながら、前を向いていかせてくれる。
作品に多い10代の感情とはまた違った女性の心が表現されていて、自分が理解できるのもまた、いつもの作品よりは少なかった。とゆうよりまだ気づいてないのかもしれない。
後書きにかかれているように、その年齢になってみないと分からない世界があると思う。何年か後にまた読み直したい。
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エグいよね…いろんな意味で。
女とオンナの関係と、その間にある感情がリアル。
チエミを非難する亜里紗の気持ちも、チエミを庇うみずほの気持ちも解るんだよな…
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女の人のハナシ。
深月さんのハナシは私はほとんど泣いてしまうのですか、今回のは泣かずに考えさせられた作品でした。
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これまでの作品とは一味違う感じの小説。
無邪気で素直なチエと、密着したその家族に一緒にイライラしながらも、追いかけてしまう気持ちが分かるような。
ラストの「お母さん」は何とも切ない。
チエの家庭だからこそ、起きた悲劇という。
相変わらず、限られたコミュニティの中の女性同士のやりとりの表現がうまいなぁと思う。読んでいると、自分の学生時代の苦い思い出とかが思い出される。
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結構重くてドロドロしている筈だけれど
そう感じさせない文体はさすが。
タイトルの意味がわかったとき
翠ちゃんの気持ちがわかったとき
チエのお母さんの気持ちがわかったとき
なんか来るものがあります。
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みずほの幼馴染チエミ。
彼女が母親を殺して逃げ、その行方をみずほが追います。
第一章では、チエミを追う中で、古い友人や彼女との関係者と会い、チエミの姿と事件の真実を追うみずきの視点で。
第二章では、逃亡中のチエミの視点で書かれています。
テーマは「女子」の「格差」だそうで、「女子」ならではの価値観や行動がてんこ盛り。
ぞくっとしたり、うんうんと頷いたり、
これを読んだ「女子」はきっと一人くらい、自分に当てはまる人がいるのではないでしょうか―。
読み終わると、中身を読まなくても、「本」そのものを見るだけで胸にくるものがあります。
「嗚呼、こんなところに在ったんだ―」と、切なくもどこかほっとした気持ちになりました。
今回はミステリっぽさのある「やられた」ではなくて、胸にある栓をぽんっと抜かれたような「やられた」でした。
読み進めて行くにつれ、嫌な予感しかしなくて、真実を知るのが怖かったです。
でも、みずほが何とか俺をひっぱってくれた感じ。
みずほが強い人で良かった。
自分にとって当たり前のことが、誰かにとっても当たり前とは限らない。
その事実を分かっていたはずなのに、改めてまた痛感させられた気がします。
そのことで、誰かには自分の姿が滑稽に、哀れに見えているのではないかと、少し自分が怖くなりました。
でも、俺は俺らしくいようと思います。
この物語を読んで、「女って怖い」とか、「女って面倒くさい」、「女ってよく分からない」と思う人もいると思います。
でも、そんな女だからこそ、時に強く、たくましく、潔く、勇ましく、そして優しくいられるのだと思います。
いろんな価値観が在る中で、沢山の「変わる強さ、変わらぬ思い」を感じた作品でした。
いつか自分がもう少し歳をとって、今とは少し違った生き方をするようになった時、
もう一度、この作品を読みたいと思います。
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★3.5かな。
とにかく女が描かれている本。
痛いとこつくなぁ。あー私の気持ち、これだ!そうだ!となる。女の人なら絶対どこかには共感して、うわぁってなるのではなかろうか。
そして楽しみにしていた、タイトルの衝撃。私は全然気付けなかった。だからこそ読後鳥肌が立った。ものすごい。
やはり辻村さんの書く話は面白い。
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やっぱり好きな作家
イントロと細かい心理描写が好き。
女性の読者は好き嫌い分かれそうだ。
でも…ミステリ要素入れつつで一気に読める
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うざったくて、見ないようにしてきた価値観を、延々と分析して羅列されるのにはちょっと辟易。
で、結局何をいいたかったのか。友情?
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母と娘の共依存の恐さ。そして考えられないこと、想像したくないことを突きつけられたときに出る『もう知らない』という拒否。ただそう言いながらも母は娘を見捨てないし、娘も母を切れない。
この作品はそれを切り取ってるだけで、だから何だというのまでは踏み込まない。
女は比較するし、順位を決める生き物だから、もうそれありきでの友情なのだから…と苦々しくもあり、潔くもあるのですよ。
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母を殺してしまった娘と母との確執を抱える娘。母娘の関係、友人、同僚など女性通しの関係の心理描写がすごく上手だなぁと思いました。自分と母、また娘との関係を考えるきっかけにもなりました。