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紙の本
大奥と吉宗の思惑に挺身する水城聡四郎
2012/06/10 21:35
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつて勘定吟味役に就いていた旗本水城聡四郎が再登場する。主人公をこのように使い回しすることは愛読者に対する大いなるサービスであると思う。別の主人公を持ってきて、新たなシリーズをスタートさせるのも期待感があるのだが、まだそのキャラクターが読者の記憶にあるうちに再登場させるのは気が利いている。
今回は大奥の御広敷用人に就く。御広敷用人は御広敷の事務全体を取り仕切る任務を負っている。時の将軍徳川吉宗の任命に他ならない。吉宗は倹約第一でそのメスを大奥にも入れたのである。勘定吟味役のときも大奥とのかかわりがあったのだが、役目を代わっての二度目の縁である。
吉宗は大奥の大改革に乗り出したのである。大奥には伊賀者の集団がある。しかし、将軍の守護役として活躍していた伊賀者であったが、吉宗は紀州から連れてきた御庭番にその役目を担わせた。伊賀者は当然隅に追いやられることになる。吉宗の肝入りで御広敷に入った水城も伊賀者に狙われることになる。
大奥内部での権力闘争も当然ながらあり、天英院と月光院との争いが熾烈であった。その二派が手を組み、伊賀者を使おうとした。今までのシリーズでも伊賀者が多数登場し、その経緯も繰り返し述べられている。熱心な読者は十分頭に入っているであろう。
上田の時代小説はそろそろパターン化し始めてきた。主人公、将軍、幕閣、大奥、御庭番、伊賀者、妻女、道場主、吉原、寺院勢力などの登場人物が共通している。新たな登場人物がある場合は、その人物の役職などの解説が行われる。読者は江戸時代の幕府統治体制などの知識が身につくわけである。
しかし、これ以上何かの新機軸を出すためには、他の時代も期待したいのである。鎌倉時代などはどうであろうか? 江戸時代より遡れば、当然史実が不明確である。その分、作家の出番が増えるわけであるし、アイデアも活かせるはずである。つまり、ある程度の史実が分かっている時代を描く以上に作家としての才能が問われるし、多くの読者に読まれるかどうかも腕にかかっている。リスクが大きいだけに手を染める作家も少ない。しかし、上田には是非チャレンジしてもらいたいものである。
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