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ラテン・アメリカといったら「野生の探偵たち」もおもしろかったけど、古典のこっちもおもしろかった。アンチ・クライマックスの徹底ぶりは、むしろ古典のこっちのほうが上手かもw まるで実験小説っぽくない実験小説みたいな味も心地よい。★がひとつ足りないのは、みずからの勉強不足を恥じての由。
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南米文学の最高峰と評されるこの作品、読了してその評価は間違いないと思った。
ヴォネガットが影響を受けたかのように想像してしまう短い章だてのモノローグ形式。あまり起伏のないストーリーなのに飽きさせない語りロなど魅力たっぷりの構成に脱帽という感じ。
死人による回想録という形をとっているけど、読了後に冒頭に戻り50頁ほど読み返すと感慨一塩という気持ちになります。
おすすめ。
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いわば平凡で誰にでも起こりうる不倫話。
を、超自然的な体験(諸世紀の源流)を経て死後作者となった死者(ブラス)が、
新たな視点から語りなおす。中盤からウマニチズモという思想も加えられ。
常識は疑われ悪しきは良しとされ制度への懐疑が呈される。
それは当時の作者(マシャード)が置かれていた欧米化社会へのアンチでもある。
読んでいる最中よりも思いだしているときのほうが深く感じられる不思議な読後感。
マジックリアリズムとは異なる系譜で、南米にはまだ宝がある。
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初めてのブラジル文学。
巻末の解説が 42 ページもある。
本編を読む前にその解説を読むか読まないかで、
理解度がかなり違うような気がする。
解説後回しでも、結構楽しかったのだが。
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死んだ主人公が自分の一生を回顧するという構造の小説。短い断章の中に描かれる人生は裕福であり人妻を恋をして一生独り身で過ごした、ある意味平凡な一生である。ドラマは何も起きない。だけど端々に現代人も共感出来る人生の悲哀が詰め込まれていて、なんかじんわりと染みる。
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抗心気症の膏薬を開発中に肺炎で亡くなった主人公は、自身の回想録を書くことを思い立つ。そして、「死者になった作者ではなく、作者になった死者であるため」、死を冒頭に置く異色の方法を採る。「あなたは老いを急ぐが、本の歩みはのろのろしている。あなたは直截で栄養満点の文章と、規則的で流麗な文体を愛するのに、わたしの文体は千鳥足」。こううそぶく著者の筆は、典型的な非小説・メタ小説の枠組みを踏襲しながら、奇妙な回想録にふさわしい可笑しなコンテンツで読者を煙に巻きながら物語を進めていく。
ところが、本書の出版が1880年代であることを知った時、本書の持つ意味は急展開する。現代における多くの非小説・メタ小説の緊張感とは無縁の文体でありながら、本書はその背景に、伝統と近代、理想と現実、秩序と非秩序が相克した当時のブラジルという国家を背負っており、そうした視点を持った途端、本書の特徴的な語りの中からは、社会で生じる欺瞞や矛盾、不正・虚偽が否応なしににじみ出してくるからだ。
ブラジル文学、いや世界文学における最高峰の一冊。
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擬人化した文章が面白い。
例えば、
理性は狂気に、自分の家から出て行くように言ったが、狂気は他人の家に愛着を持つのが昔からの悪い癖で〜