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2022/2/24 読了
4つの連作短編集、その人選は
・阿野全成(頼朝の異母弟)
・梶原景時(鎌倉殿の13人の中で最初に退場する人物)
・保子(阿波局とも呼ばれる。義時の妹かつ阿野全成の妻で3代目将軍実朝の乳母)
・北条義時
敗者の視点から頼朝の無情さ、北条政子の苦悶、北条時政の無念など、歴史の勝者と思われている人々の人間性が浮き彫りになる。1965年の直木賞受賞作品、なかなか見事な描写。
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新しい大河ドラマが鎌倉時代、主人公は北条義時、と来れば永井路子さん。43年前(1979年)の大河「草燃える」の原作本の一つにして直木賞受賞作です。時代は頼朝挙兵から承久の乱までの間。義時の他に阿野全成、梶原景時、北条保子にスポットが当てられた連作で、とにかく鉄板の歴史小説。読み易いし面白い、いつまでも色褪せることのない傑作です。次は「北条政子」。
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大河ドラマに出遅れたタイミングで読み始め、ドラマを途中から見つつ読破したが、ドラマのイメージの相乗効果でそれぞれのシーンの解像度が上がった気がする。鎌倉は美味しいお店のある観光地で源頼朝といえば鎌倉幕府を開いた英雄みたいな印象を持ちがちだが、それは何も知らないと同じであの場所はとてつもない人々の怨念や策略が渦巻いていた場所なんだと思う。武士とは潔いみたいなイメージは全くなくて如何に騙して出し抜くかで、情けも感じなかった。4つの話では「いもうと」が一番面白かった。男性の競争社会とは異なる次元で生きる女性があの時代を如何に立ち回ってきたのか。ありそうでなさそうな姉妹の絆や愛憎、親子の情。夫や子の昇進や没落と連動する容赦ない時代だっんだと思った。これからの大河ドラマも楽しみに見ていきたい。
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★3.5のおまけ。
大河に触発されての再読、全然覚えていない。でもこれからの大河進行に向けて格好でした。内容も面白いし、この作家と大河の脚本家の見方の相違がこれからもっと出てくるだろうし。
いやいや、こういうのは読書の愉しみのひとつですわ。
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大河を楽しみにしているので勉強するつもりで呼んでみた。好きなのは幕末なので、鎌倉時代はそこまで興味がないけれど、近代にはない荒々しさというか土っぽさが良かった。大学の先生が、いまでこそ鎌倉幕府を頼朝が立てたのは必然だったように言われるけれど、いろんな偶然と運と時代の流れが関わって武士の世が完成したわけだから、もっと注目されていいと言っていた。確かにそうかも。一人一人が主役のつもりでひしめきあい傷つけあううちに、いつの間にか流れが変えられてゆく、私もそこが歴史のおもしろさだと思っている。個人が個人の理想を追い求めて走り続けた結果、いろんな意思が混ざりあって歴史が生み出されていくんだなあ。おもしろいなあ。
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新鮮。日本史で表面だけ知ってた鎌倉草創期の人間模様。陰湿に政敵が次々と斃される。今年の大河ドラマ観なさそうなので読んだ
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何十年たっても色褪せない、すばらしい作品。いま再び注目を浴びているようで本当に嬉しいです。おすすめですよー。短編だから読みやすいですよー。それなのに、深いんですよ…。ほんとに素敵な作品。
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再読。
大河ドラマの影響で引っ張り出して、久しぶりに読ませていただきました。
相変わらず、『いもうと』のインパクトは強いなぁ。
こういう女性の方が怖いんだよなぁと改めておもったりして( ̄▽ ̄;)
やはり楽しいですね♪
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全成、梶原景時、阿波局、北条義時の四人を取り上げて、それぞれの視点から一つの歴史を描く短編集です。大河ドラマ「草燃える」の総集編を見た直後だったのでスッと読めました。鎌倉草創期に対する著者一流の理解をいいとこ取りで楽しめます。がっつり読みたいなら「つわものの賦」!
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第52回直木賞受賞作であり、永井さんが初めて出した本、だそうです。そしてこのタイトルは造語だとのこと。
本書は、鎌倉時代を描いた連作短編集で、4編収録されています。頼朝の異母弟で義経の実兄、阿野全成の「悪禅師」、梶原景時の「黒雪賦」、北条政子の妹で全成の妻、保子(阿波局)の「いもうと」、北条義時の「覇樹」。
先に、永井さんの論考『つわものの賦』と、エッセイ集『源頼朝の世界』を読んでいたせいか、どうも小説としてのおもしろさをあまり感じることができませんでした。小説のはずなのに、なんかずっと説明を読まされているような……。私が読む順番を間違えたのかもしれません。
心が熱くなったシーンもあったんですけどね。中でも、武士とは違った視点で書かれた「いもうと」はおもしろかったです。
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大河ドラマが無かったら読まずにいた本。人々の息遣いが見事に描かれている。もっと早くに手に取るべきだった。
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鎌倉幕府創設期の権力争いが描かれている。1つ1つが短編小説のようで、全て絡み合って時代がつくられていく。自らの謀略により失脚する人もいれば、謀略により無実にも関わらず命を落とす人もおり、フィクションの部分もあるのだろうけど、本当に混沌とした時代だったのだろうなと思わされる。そして2021年の大河ドラマの予習になる。
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「悪禅師」・・頼朝の異母弟、全成(幼名今若)
「黒雪賦」・・梶原景時
「いもうと」・・北條保子(政子の妹で、全成の妻となる)
「覇樹」・・北條義時
4つの題名をつけ、それぞれに主人公を据え、鎌倉幕府の中での消長を描く。いやー、おもしろかったです。大河「鎌倉殿の13人」がおもしろく、図書館の大河コーナーにあったので読んでみましたが、政子の妹保子、アリャー、こんな人でこんな人生を送った人だったのか、けっこう鍵の女ですね。宮沢エマさん、これからどんな風になるのか楽しみです。
梶原景時が石橋山の戦いで敗れた頼朝を岩穴で見つけて見逃す、といった、よく言われている場面も出てきます。ここらへんの景時の心理とか、その後の景時の心理、頼朝に対する感情が微細に描かれています。これから獅童さんがどう演じるのか、楽しみ。
頼朝は主人公になっていませんが頼朝との関係性で描かれるので、頼朝の人間像も浮かび上がっています。
永井さんは「吾妻鏡」とか読んで想像をふくらませたのでしょうか。「覇樹」の章では、頼朝が挙兵だ、といって兵を募る時、やってきた武将に
「今日の忠節、頼朝生涯忘れはせぬぞ」
「頼りになるのは、そなたたちだけなのだ」
「誰にも言っては困るが・・・」
「そなたたちだけ打ち明けるのだが・・」というのを小四郎(義時)が部屋の前で聞いている場面があります。これ、もう放送されましたが、セリフもけっこうこんな感じでした。
それぞれの主人公の心理が微細に描かれ、またそれを俯瞰する感じで、〇〇はこの時そこまで考えていたのかどうか・・ という2重の書き込みで、複雑な人間関係、当時の東国の武者たちの様子が、静かな文面で伝わってきました。
あとがきには、
「近代説話」に発表したもののうち、最後の「覇樹」を加えた四編。それぞれ長編の一章でもなく、独立した短編でもありません。一台の馬車につけられた数頭の馬が、思い思いの方向に車を引張ろうとするように、一人一人が主役のつもりでひしめきあい傷つけあううちに、いつの間にか流れが変えられてゆくーーそうした歴史というものを描くための一つの試みとして、こんな形をとってみました。とある。・・ちょっと米澤穂信氏の「黒籠城」の読み口と似ていた。「炎環」は1964年第52回直木賞。
1978.10.20発行 光風社刊 図書館
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説明的で単調なので少し飽きがくる文章だった。
また漢字や語彙が自分には合ってなかった。難しい部分が多かった。
が、中立的な視点から描かれているのでそれぞれの立場や思惑が読んでとれた。まさにそれぞれの方向に走っていく馬車のよう(解説より)
政子の妹阿波局を描いた「いもうと」
景時を描いた「黒雪賦」
の二つが個人的には面白かった。
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大河鑑賞の副読本として2冊目だが、鎌倉幕府の初期の4人を主役とした連作形式だった。「悪禅師」は阿野全成(源頼朝の異母弟)、「黒雪賦」は梶原景時、「いもうと」の北条政子の妹の保子、そして「覇樹」は北条時宗と北条義時らが主人公。
4編ともそれぞれの視点で面白かったが、特に「黒雪賦」と「いもうと」が印象に残った。読み始めたころ、石橋山の合戦で梶原景時が源頼朝を見つけながら見逃すシーンがオンエアーされていた。景時は大庭に頼朝の首を差し出せば殊勲を立てられたはずなのに、どんなつもりで頼朝の命を救ったのか表情から察することができなく図り兼ねた。しかし本作で、旧知の仲である土肥実平が頼朝を買っていたからとの筋書きになるほどそうかと合点。
歴史書『吾妻鏡』をもとに、小説家がさまざまなフィクションを展開していくのが面白い。小説家の手腕に驚きながら、真実を知りたくなり、また別な本を探して読みたくなるのだ。
「いもうと」の主人公・保子は「悪禅師」で主役だった全成の妻。彼女のおしゃべりは単なる話し好きからではなく、計算された悪意あるおしゃべりだったと匂わせてある。”尼将軍”と呼ばれた政子に隠れ、目立たぬ曲者のよう(笑)。保子は実朝の乳母となり夫の全成と共にのし上がっていく。権力を持つ者同士の姉妹の確執は想像に難くない。
泰時は裏で巧みに北条家を動かしているように感じられて仕方がない。永井路子さんの文体も読みやすく耽読し、鎌倉時代を行きつ戻りつしました。さてさて、三谷幸喜さんはこれからどう描くのだろう? ずっこけるのはほどほどにして下さいな。