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短編集らしい構成ながら、鎌倉幕府とその権謀術数を浮き彫りにして読み応え十分。直木賞受賞作にして永井路子歴史小説の原点。
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4つのストーリーが絡み合って語られる鎌倉時代。文章からまるで大河ドラマが流れ出すように楽しめました。古さを感じさせない直木賞受賞作品です。
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大好きな永井路子の大好きな代表作にして直木賞受賞作。
もう何度読んだかもわからないほどですが、久しぶりにまた読み返しました。
まず、新装版になって文字も大きめ行間も広め、きれいで読みやすくなりました。それだけでも買い直す価値はあります。
本作は、鎌倉時代の草創期を舞台にした四編の連作小説。
源頼朝や義経、北条政子といった「主役」級の人物ではなく、彼らの周囲にいた「脇役」的な(歴史的には若干マイナーな)人物の視点から、頼朝の旗揚げ~承久の乱を描いています。
ほぼ同時代に生きた人たちなので、語られる出来事が一部で重複していたりもするのですが、そこが「藪の中」的で非常におもしろい。どこかミステリ、サスペンスに通じる面白さがあります。
頼朝の異母弟(義経の同母兄)の全成(ぜんじょう)法師。梶原景時。北条政子の妹の保子(全成の妻)。そして北条四郎義時。(前言を覆すようでアレですが、日本史的にいえば景時や義時を「脇役」扱いは気の毒かも。)
彼らの目から見た頼朝や政子、時政や頼家、実朝、公暁の人物像が鮮やかに浮かび上がります。エゴも恐怖も、プライドも人情も・・・そういった感情の揺れの描写が見事。
ここにさらに三浦義村や和田義盛、比企一族、新田、畠山、上総広常など、大勢の人間がそれぞれ必死で生き、戦い、守り、愛し憎みつつひしめいている。その結果が、それが歴史になるのだと実感させられます。
今回、再読して感嘆したのは、永井路子の小説のおそるべきモダンさ。
なにしろこの作品が直木賞を受賞したのは、昭和39年なのです。ほぼ50年前。古い時代小説というのは、文章も作者の視点(史観)もいかにも古色蒼然、センスが古くさくて現代の目で見るとどこか抹香くさい気がすることが多いのですが、永井作品はちがう。ごく最近の作品だと言われてもわからないくらい、感覚が現代的なのですね。これはすごいことです。
(かといって、最近のなんちゃってライト感覚時代小説と比べると雲泥の・・・いやいや、それは永井路子にあまりにも失礼でしょう。)
時間を超越して、すごいものはすごい。偉大な作家は偉大。永井路子の長年のファンという身びいきはありますが(笑)、それを差し引いても「炎環」が名作であることに変わりはない、と断言します。
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源頼朝を軸に周囲の人たちのことが物語られる。
ステップアップ2豊田講師でのブクブク交換でで入手。荒井さんオススメの本
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四篇の連作で、ひとつの『炎環』という作品をなしている。
四篇とは、
『悪禅師』
『黒雪賦』
『いもうと』
『覇樹』
であり、それぞれ、全成、梶原景時、阿波局、北条義時が
主役に据えられている。
あとがきに、
「一人一人が主役のつもりでひしめきあい傷つけあううちに、
いつの間にか流れが変えられてゆく――
そうした歴史というものを描くための一つの試みとして、
こんな形をとってみました。」
とある。
まさに、その試みが成功し、
多面的に鎌倉時代の幕開けを描くことができている。
私は『黒雪賦』が一番好きだった。
梶原景時が、義経の側から見ると讒言者のように見られることもあるが、
彼は彼なりに頼朝の意を汲んで自分の役回りを全うしたという見方が、
新鮮で面白かった。
永井路子さんの作品の中でも特に面白い一冊だと思った。
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当然ノンフィクションなので、史実とは違う部分もあるのだろうが面白く読めた。
まさに歴史の影に女あり。
全く知らなかった政子の妹の物語が一番面白かったかな。
北条というと、とかく陰湿な権謀術数を駆使してライバルを葬ってきたイメージしかないが、武家政権を確立し、時代を安定させる為には必要な一族であったのだろう。そんな事を感じさせる物語でもあった。
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永井路子氏の歴史小説は女性にスポットを当てているから面白い。鎌倉時代の女性の壮絶で、かつしたたかな生きざまが垣間見えた。
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鎌倉という地で覇権を目指したそれぞれの野望を、それぞれの視点から読み解く展開に、これまで感じたことのない歴史の面白みを垣間見る。もちろん説話なので読み物としての面白みもエッセンスとして加わっている。著者の言葉を借りるなら「一台の馬車につけられた数頭の馬が、思い思いの方向に車を引っ張ろうとするように、一人一人が主役のつもりでひしめきあい傷つけあううちに、いつの間にか流れがかえられてゆく」。いつの時代も新しいことへの挑戦は人を感動させる。歴史の描き方の新しい試み。面白さの理由がここにある。
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鎌倉幕府創設時代のキーパーソンを主人公にした4作。ただし、その4作が折り重なって命の炎を燃やし尽くした彼らの縁を表している。
強い女北条政子が意外に脆く、執権北条義時が物事の盛衰をしっかり観ていることが、教科書的な歴史観では窺い知れないところか。
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伊東潤先生のおすすめ本の一冊。「北条政子」とあわせて読むと、鎌倉時代が身近に感じられます。鎌倉歴史散歩のおともにもなりそうです。
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ほとんど歴史学者の永井路子先生
一年間鎌倉時代の勉強をしたから読めました
でも、同じ状況を4人の主人公の物語でなぞれるので初心者に優しい小説です!
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司馬遼太郎氏が推していた作家として認識して拝読。他作品で読む機会の少ない鎌倉、源家三代の物語。異なる人物夫々を主人公として同時代を読むことで、武士の時代の始まりの鎌倉の土地のパノラマが広がるようです。
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いい時期に読むことが出来ました。
「鎌倉殿の13人」で阿野全成最期が放送されたこの時期に読めて良かったです。
なるほど、阿野全成と若狭局のイメージは、これまでこのようなイメージだったのか。と思いました。
私はてっきり北条政子が主役の作品だと思っていたので、"脇役"だったのは意外でした。あと人物造形も。
「北条政子」の方でもこのキャラでいくのかな。それを楽しみに、「北条政子」も読んでみたいですね。
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2020年5月30日読了。
平家滅亡に貢献した義経が逆に討伐されたり、頼朝の妻の北条政子の異様な存在感、その後の北条家により代々続いた執権政治等、個人的には疑問も多い鎌倉時代。本書は、その歴史舞台の渦中にいた実在する4人の話で構成されており、彼らの思惑や行動が裏目に出て結果として周りの人間を傷つけることも、歴史の流れの1つとして華麗に描かれている。
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阿野全成、梶原景時、北条保子、北条義時をメインとして鎌倉の勃興・動乱期を描く。あとがきにもあるように、それぞれが独立した短編ではなく、全てが「歴史」という大きな流れの中で繋がり1つの物語。
鎌倉府を興した源氏と頂点を極めた北条氏という点で3篇はそれぞれで分かりやすく繋がっている一方で、景時を描いた『黒雪賦』だけが少し異質に感じていた。が、4篇目の『覇樹』を読んでこの作品の意義が分かった。景時と義時はどちらも頼朝、時政の意図する所を先んじて行うという意味で似た行動を取っていった。その中で「誰か」の意図を越えていったのが義時であり、「誰か」の下に居続けたのが景時であるように感じた。
また、北条保子という存在が非常に物語を魅力的にしている。彼女の「お喋り」は一つの政治の道具であり、武器である。それにより男達の人生を翻弄していく。そして「仲良し」の北条政子との姉妹関係にも深い影を与えていく。弱気な政子という側面も新鮮で面白かった。
それでもベスト作品は北条義時を描いた『覇樹』である。影のように掴もうとしてもスルリと抜け出してしまう。この観点で全ての歴史的事件が語れるのが非常に面白い。