紙の本
伊藤野枝のいきざまの物凄さよ
2012/08/13 11:30
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投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
えげつないタイトルだが、激烈な生涯を完走した伊藤野枝、辻潤、大杉栄、荒畑寒村などの革命家、詩人、芸術家などの生と死の火花を活写している全力疾走エッセイだ。
葉山の日陰茶屋で新参者の野枝に出しぬかれた神近市子が、嫉妬に狂って刃物で大杉の首を刺した有名な事件も、結局は一世一代の色男、大杉栄の3つのフリーラブ行動方針の余滴であったことが本書を読んで呑み込めた。
「春3月縊り殺され花に舞う」と詠んだこの大正の世之介は、ポスト大逆事件の革命運動の後退に焦れて女体狩に遁走し、1)お互いに経済上独立する 2)同棲しないで別居生活をする 3)お互いの自由(性的を含め)を尊重する、の3大マニュフェストを掲げて本妻の保子と対抗馬の市子に臨むのだが、意外や意外、大穴の伊藤野枝と相思相愛の仲になり、この清濁併せ呑む世紀の燃ゆる恋は大正12年9月の関東大震災における甘粕大尉らによる惨殺によって幕を閉じるのである。
それにしても伊藤野枝のいきざまの物凄さよ。平塚らいちょうから譲り受けた「青踏」をなんとか発行しながら辻潤との間に2児、栄との間に5児をもうけている。たった28年の短い生涯の間に7人の子をたてつづけに産みながら、それこそ男をこやしに、女性として、人間としてあっけらかんと成長を遂げて行ったのである。
本書でもっとも感動的なのは著者と歴史上の人物たちとの出会いで、とりわけ栄と野枝の長女魔子との哀切な対話、そして幸徳秋水に恋人管野須賀子を奪われた荒畑寒村との邂逅は、読者の胸を打たずにはいないだろう。
いずれにしても著者がいうように、この本は、ある日突然電撃のごとく落下してその人を直撃し、「常識や倫理観、貞操をこっぱみじんにしてしまう恋の怪力」を知らない人には無縁の書物であろう。
それが恋青天の霹靂我らを直撃す 蝶人
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幸徳秋水だの、青踏だの、固有名詞は学校の歴史の教科書でならったものの、何のことだかさっぱり身についていなかったので、とっても新鮮に読み進めました。
甘粕大尉・満州関連本には必ずでてくる、伊藤野枝・大杉栄両氏についても、いろいろ知ることができたし、100年前の数々の事件が妙に鮮明で、つい今しがた報道される昨今の事件より、ぎらぎらしていて、時代は変わっているようで、実は同じなのかも。。?とか思ってしまう。
それにしても、伊藤野枝は同じ九州女として、ちょっと羨ましくもある「生」のパワーを持ってるなぁ・・・・・
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瀬戸内さんがこれまで取材、執筆してきた女性たちから、
"烈しい生と美しい死”をテーマにまとめられたもの。
伊藤野枝はじめ、平塚らいてう、岡本かの子など、
時代を彩った女たちは、まさしく烈しい生を生きていた。
わずか二十数年で亡くなった伊藤野枝は、
その寿命を悟っていたのかと思うほど精一杯で、
3人の男を巡り歩き、子供を多く生み、
「青鞜」に、社会運動に精魂を注いだ。
寂聴によって語られる彼女を読むと、
おそらく背筋の伸びた、はっきりと物を言う女性
だったんだろうなと思う。
妻のある大杉栄との愛えさえも、
なんの憚りも無く自信に満ちた堂々たるものだった。
きっとそれだけ自分に自信を持てる生き方をして
いたんだな。
なんてことのない「日常」の大切さは頭では分かっているが、
その「日常」が続く先にあるものが見えていないと、
それはなんの意味もない。と感じてしまう。
進みたいという道があるものの、現実を見て先延ばしにしてしまう。
そんな私自身の現在のもやもやに、熱々の石を投じられた気分だ。
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昔の方が 自由奔放な恋愛をしていたと実感した。というか、何事にも 真剣に取り組んでいた結果だと思う。
寂聴さんの語り口が さらっとしていて 読みやすかった。
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作家の軌跡がよくわかる。
なぜ寂聴さんは「岡本かの子」や「伊藤野枝」に惹かれるのか。
女の生き方の変化にドキドキする。
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2011年は「青鞜」発刊100年目だったという。そのことにマスコミはほとんど触れなかったと著者は言う。初めと終わりに第一線で活躍するキャリアウーマンとくったくのない若い女性たちの章を設けつつ、100年前の青春の声を800字で新聞連載した「この道」の書籍化。
取りあげられた人物たちの強い個性と、それを活写する筆力に強く惹かれた。
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今から百年前、女性がまだ男性の属物として扱われていた時代に、奔放に生きた女性たちについて綴っている。彼女たちの生き方は、今でも圧倒されるほど烈しい。まさに時代を生きたという表現がピッタリだと思った。
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久しぶりに、寝る間も惜しんで読みたいと思った。私が知りたいことを調べていると、だいたい寂聴さんが既に本にしている。この本も、伊藤野枝の生き方を知りたくて調べていたらあった。知りたかったことがほぼほぼ書いてある、ありがたい本。伊藤野枝や、「青鞜」に携わった女性たち、岡本太郎の母親・岡本かの子(この人についても寂聴さんの著書あり)、大逆事件で幸徳秋水と殺された管野スガ、等々、明治のぶっ飛び女たちの生き方が書かれている。主に恋愛周り。遺族や、恋人、子孫など、実際の関係者たちに会って取材しているのもとてもよかった。これも長生きな寂聴さんしかできないこと。もう亡くなってしまっている方がほとんどなので、とても羨ましいと思った。
「明治の女性たちの生き方」が書かれているが、明治維新だの女性解放運動だの、教科書みたいなことでなく、もっと人間らしい、ひとりの女の烈しい生き方が描かれている。今も昔も人間の業は深いものである。
やりたいことやって死ねるっていいな、と思う。
どうして、こういう人間らしい一面を、学校で教えないのかと思う。そしたら、もっともっと日本史が楽しくなると思うのに。日本史は人間が紡いできたものなのだから、もっと人間らしさを出してもいいんじゃなかろうか。
この本の登場人物と寂聴さんで、恋のから騒ぎをやったらすごく面白いと思う。