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とってもよかった。
ハードカバーの時にも読んだけど
何度読んでも本当に素敵。
過去をたどりつつ、自分を再構築する物語。
幸せな感動があります。
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夢の中の迷路に迷い込んだような荒唐無稽な不思議なお話。
途中から主人公のように理屈で物を考えるのを放棄し、この世界観にどっぷり嵌まると、なんと心地よいことか。
物語は過去へ過去へと遡り、当時味わいきらなかったため膿のように溜まっていた感情を思い出し、知らぬ間に書き換えられていた真実があきらかになっていくにつれ、本来の自分を取り戻す。
それは癒しの旅となる。
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ともかく、先が先がと気になり、読み進めてしまう本である。
自分も巣穴の中に落ちてしまったかのように、読みながら ふっと顔を上げて、自分が今何処にいるのか、いつもより辺りが緑がかって見えはしないかと、目をこすることもしばしば。
やはり、坊との最後のシーンが印象的。
しかし、この主人公も頑固というか、頭が固いというか。
幾らなんでも、亡くなっていない妻を、亡くなった事として扱うのは如何なものか。
自分は、夢の島熱帯植物園くらいしか、植物園には行ったことがないので、どうしても夢の島とイメージが繋がってしまう。
・・・熱帯は違うと思う。
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読み始めは時系列も世界観も分かりにくい地に足が着かない不思議な話だ、と感じていたのだけれど終盤に近付くにつれ全てがつながって行って読んでいてとても楽しく、また読後の余韻が残る本だった。
佐田豊彦という人物を形作っているものを追っていく中で、私自身の「今の自分を形作っているものたち」について思わず考えてしまった。
「過去の自分」、「今の自分」、「未来の自分」。あたりまえだけど、全部つながっているものであって、過去の自分を積み上げて今の自分が積みあがって行って未来の自分となる訳で、たまには過去を振り返ったり、もっと未来を意識して今を生きていきたいなと少し思うようになれた。
なにより、あとがきにもあったけれど、読んだ後にもう一度読み返したくなる本だった。
一度読んだだけでは気付かなかった伏線が散りばめられているんだろうな、きっと読むたびに新しい発見があるのだろうなと。
ぜひまた読みます。
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たくさんの植物が散りばめられた、植物好き的にも美味しい一冊。
珍しく男性が主人公で、漱石ら辺の時代を思い起こすような硬質な文体。
それなのにふわふわと夢を見ているような物語でした。
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雰囲気がなんとなく『家守綺譚』に似ている。
文章がすごく綺麗で、幻想的な世界に引き込まれる。
ラストは清々しいような切ないような気持ちになった。
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まさに夢の中を漂う展開。
主人公は、つらつらと場面に流され姿を変え、そしてまた戻る。
なんともとらえどころのない不思議な物語で、それでも最後はきちんとおさまる。
心がほんのりと温かくなるような読了感でした。
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うーん、よかった。最初は???って感じだったんだけど。最後の方はもう最高だった。
乳歯が抜けない、というのは、あれかな。心に抜けない棘が残ってる、というか、栓が残ってて、それで堰き止めてる感情を膿のように出しちゃわないといけなかったのかなと。 でなきゃ、歩き出せなかったのかなって。
赤ちゃんの泣き声は道彦の助けを求める声だったんだなーとか、最後のセリフとか、もうたまらなくて、主人公・豊彦と、別れのシーンでは一緒になって泣いたわー。
まぁでも、『村田エフェンディ滞土録』の方が好きですなぁ。
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何処となく、『家守綺譚』にも通ずる、古き良き日本の、不思議な世界、といった雰囲気の漂う小説です。
f植物園に転任し、水辺の担当になった主人公の佐田は、妻の千代を若くして亡くし、現在は下宿暮らし。
突然、激しい歯の痛みに襲われ、歯科医院に駆け込みますが、それをきっかけに、次々と、この世の道理を無視した出来事が起こり始めます。
やがて辿る、不思議な道行きは、さながら、兎の巣穴に落ちたアリスのようですが、一方、黄泉から戻るイザナギのようでもあります。
途中で出会う河童のような子供に、名前をつける場面では、思わず涙してしまいました。
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夢と現が混在する暗喩に満ちた物語。過去を巡り記憶が混濁する世界。人が獣の様相を帯び、水が満ち、植物が覆う世界。どう展開していくのだろうかと思っていると、全てが繋がり物語は終息を迎えます。その時の安堵感というか快感はミステリ的悦びに通じますね。なるほど、そこに行き着くのかと感服しました。これは二度三度読むとより味わい深くなるのかも。
恐らくは100年近く前の日本を舞台にした物語な為、言葉遣いや佇まいに独特の美しさがあります。それもまた読んでいて楽しいんですね。
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全体的に幻想小説だと思って読んでたけど、最後に全部繋がって、ああ!となった。
坊に名を与える場面は素晴らしい。
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あぶなっかしい本でした。
だいぶ消耗しました。
異世界なのか現実なのか、よく分からない曖昧性。
でも稲荷とかナマズとか、いわゆる日本が昔から抱えている曖昧な感じがうまく表現されていて、読みながら自分もごぼごぼとその世界に入っていく感じがしました。
読み終わった後もスッキリしないし、自分の世界が揺らぐけど、まぁたまにはこういうのも良いんじゃないかと感じる本です。
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前半は物語の輪郭が掴めず読み進めるのに苦戦しました。
言葉が結構難しかったり、文章が調子悪かったりと・・・。
けれど、それも含め(半透明の綺麗ではあるけれど)ドロッとした世界観が上手く出てるのかなと感じました。
後半はテンポも回復し、すうっと入って来たような気がします。
独特の世界とリズムがありました。
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植物園の園丁が、自身が勤める植物園の椋のウロに落ちる。虫歯を悪化させた園丁は歯医者に行く。園丁は植物園の整備をするために、植物園に行く。いつもと違う靴を履いて。大人だった園丁がこどもになったり、歯医者の奥方が前世の姿であった犬になったり、あれもこれもが溶け合って、場面が交錯して、人と人が入り混じって、だんだん混乱していく。でも、その混乱にとっぷりつかって最後まで突っ走ってみよう。
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f植物園の園丁である「私」が巣穴に落ちてしまうところから始まる話。そこから、生命や過去へとつながる展開は、著者の別作品にも見られるテーマだなと思いつつ、読んでいる最中、妙な浮遊感と違和感があって、気持ちが良いのやら悪いのやら。けど、少し古い日本の風景や普通のようで普通じゃない「私」の周りの人が気になって、ついつい読んでしまいました。
終盤、「私」が遭遇する出来事に答えが出ていくと、せつないのにどこか心が軽く、読後感は意外にすっきり。しかし、やっぱりどこかもやもやと説明できない所も…。
巣穴の奥が見えない、覗き込むと落ちてしまう。でも覗きたい(覗く必要がある)。生命とは何たるか、過去とは何たるか。誰も答えを出し切れないことを作中で呼びかけているのが、もやもや感の原因なんだろうかな。
個人的には、この分かりにくいもやっとした後味が良いと思うけど、読む人を選びそう。
「家守綺譚」と同様、著者独特の世界観がすごいですが、こちらの方がややとっつきづらいかもです。