紙の本
さまざまな人、さまざまな人生が集まる場所、デパート。
2012/10/11 09:17
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投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
今どきの若者は、デパートで買い物をするのは少々カッコ悪いのだそうだ。百貨店で買い物をするよりも、拘りの専門店に行って買い物をするのが当然なんだそうだ。休日をデパートで過ごす事が、何にも代えがたい「ヨロコビ」であり「自慢」であり「誇り」ですらあった昭和生まれの私には、少々寂しい思いがしたりもする。デパートにはあらゆるものが豊富にそろい、光り輝いていた。そこにはそう、明るい生活、未来、人生が詰まっていたのだ。それがいつの頃からだろう、デパート不振が言われるようになったのは。
夜のデパートが舞台となる本作品。色んな人が、それぞれの人生、それぞれの不幸を背負ってデパートの闇に紛れ込んでくる。でもそれは、デパート業界その物の闇や不遇を表してもいるように感じる。そこで絡み合う人生、交差する不幸。でもそこからまた生まれてくる、光と未来。そんな作品。
闇の中から仄明るい光を見つけ出すというテーマは、現代社会そのままを表しているようで読んでいて色んな意味でぐっとくる。正直、闇の中のでうごめく人々をドラマチックに描くのは相当難しいと思われた。何せ表情や服装は闇にまぎれ、みな声を潜めてやりとりするわけだから、中々にキャラクタを立てるのが難しい。それから結構アクション的な要素もあったりするので、暗いデパートの中を登場人物達が縦横無尽に走り回ったりする。その位置関係なんかを読む側に分かりやすく描写したりするのにも、相当苦労されたのではないかと思う。しかしそこはさすがの真保さん、抜群の文章力で物語に引き込んでくれた。
とある夜に、たまたま同じデパートに潜んだ人たちが。なんと終盤、一本の糸で繋がっていく。そして見えてきた、共通の、悪い奴。ハラハラドキドキのエンディングは、綺麗にまとめられていて好感。人間関係には少々力技過ぎる感じもあったけど、まぁこれくらいやってくれた方が逆にスッキリだったかも。
秋の夜長に、ぜひオススメの一冊。
紙の本
深夜のデパートで巻き起こる複雑な事件
2020/07/24 14:26
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投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
さまざまな事情&目的で、閉店後の老舗デパートに忍び込んだ人たちが巻き起こす大騒動。久しぶりに読んだ真保裕一作品(しかも、かなり古い本だった)だもんで、この作家ってこんなだっけ?個人的な印象だと、テロリストが出てきたり、外交官が活躍したりと、何かと大掛かりな社会派小説書いてる作家のイメージ。が、数ページ読めば、やっぱり、舞台は百貨店の一夜と小さいけれど、なかなか大掛かりで深く、けっきょく他の作品同様夢中になりました。
紙の本
ありえない設定だけどハマりました
2018/05/24 00:13
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投稿者:しんごろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜかデパートの閉店後に訳ありの人たちが侵入し、あーだこーだして警備員と社長が奮戦する話!そして登場人物は多いし、なぜ、閉店後にこんなに侵入者が潜んでるのというツッコミはなしにして、面白かったです(^^)侵入した人たちが、それぞれにデパートに思い入れや思惑もあり、読んでると、なるほどこういう伏線があったのねと感心し、読み終える終盤にまた新しい登場人物が出てくるわで、それでいて忙しくないお話でした(^^)細かく章を刻んでる構成もいいですね!きっとまた再読します(^^;)
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「デパートを発明した夫婦」のレビューに『屋号に籠められたブランドへの誇りが作り出す消費と非日常の世界、私らの子どもの頃はそれがデパートだった』と書いたのだけど、今やそう足を運ばなくなっても、ささやかな思い出の上に立ったデパートに対する思いというのは、何となくあるよね。1961年生まれの作者も、多分同じかと、という訳で、題名に惹かれて買ってみた。
舞台は日本橋にある老舗・鈴膳デパート。100周年記念のイベント最終日、それぞれに事情を抱えた人たちが、それぞれ閉店後の店内にひっそり潜り込む。
仕事も家族も失って自殺を考える中年男性、高級商品を盗もうと企む女性店員、家出した少年少女のカップル、訳ありの元警察官、宝飾部門の男性マネージャー。そこに鈴膳デパートを心から愛するベテラン警備員、配下の若手警備員、創業家出身の頼りない社長も加わって、右往左往の一夜が更ける…。
お話の展開としてはなかなか面白い。多くの人の物語を切り貼りしながら話を収斂させていく技巧はそれなりに読ませる。
ただ残念ながら、それぞれのエピソードは平凡で、登場人物も共感出来るような人がおらず、最後のまとめ方もキレイ過ぎ。
落ち目のデパートに対する愛情は感じなくも無かったけれど、デパートでなければならなかった程にはその舞台を活かせておらずで、全体的には、退屈せずには読めたけど、イマイチ物足りないっていう感じ。
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終盤の54章が唐突なのだが、これがまたホロリとされる。
単なるハートウォーミングな物語ではなく、どちらかといえばビターなのかもしれないが、それでも登場人物がみんなリスタートできたのがよかった。
もしドラマ化されるのなら、テーマソングは是非、馬場俊英の『スタートライン』でお願いしたい。
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真保 裕一の小説で、このタイトル?というのが正直な印象で購入した。氏の小説タイトルはディック・フランシスの競馬シリーズのような漢字二文字タイトルが多く(たしか、氏自身も認めていた)、内容も社会派サスペンスという印象を持っていた。しかし、この「デパートへ行こう!」はまるで三谷幸喜の映画を見ているような舞台設定、ストーリー展開で肩すかしをくらった感じだ。登場人物の一人一人の言葉が多少説教じみたというか教訓じみた感じがして、高校生がそんなこと考えて話すかよ、、、といったしらけた感も拭えない。結局は「デパート」を主役として映画化、舞台化した作品の方が小説より良さげに思う。
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解説にあるとおり、途中から加速的に引き込まれていった。わかりやすさは若者向けなのかもしれないが、こういうテンポ良い展開の小説を読むと楽しいと知る。多くの登場人物視点でころころと切り替わるも、戸惑いはまったくなく読みやすかったのもよかった。
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真保裕一でもこういう作品を書くんだ。というのが第一印象。内容はさすが真保裕一という感じで、幾つもの伏線が最後に見事に一本の太い幹になっている。特に終盤に登場する半田良作のサイドストーリーが、涙腺を刺激する駄目押しとなっている。
確かにかつてデパートは子供にとって夢の場所だった。オシャレをして出掛け、上層階のレストランで小さな国旗が立てられたお子様ランチやホットケーキを食べるのが楽しくて仕方なかった。食券というのも新鮮だったし、その食券をウェイトレスのお姉さんが器用に片手で半券をちぎるのを真似たりもした。レストランの眼下には開通したばかりの新幹線が行き交い、屋上に上がれば遊園地まであった。
この様な昭和30〜40年代に掛けてのデパートに対する愛情をふんだんに感じる作品でもある。その後老舗百貨店の凋落もいくつかニュースになったことも思い起こさせる。
きっと作者自身もデパートに輝きを取り戻して欲しいと思っているに違いない。
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デパートを舞台に、複数の登場人物がつながる。現実味はないし、動機も弱い、ありいない行動をとったりもして、しかも文章が長い。でも、最後まで読んじゃいました。登場人物それぞれの立場が違い過ぎて、違和感があったのですが、それがまた良かったんだと思います。最後の良作さんのエピソード、不釣り合いだし唐突でしたが、またそれが効果を倍にして泣けました。
最初はなかなか読み込むのに時間がかかりましたが、後半はさくさく読み進めました。
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2012.8.18読了。エンタメ小説としてなら、テレビの2時間スペシャルドラマ感覚くらいで楽しめるかな、と。
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とある日の閉店後のデパートに、それぞれの事情を抱えた人々が集まり、いつしか全員を巻き込んだ大騒ぎへと発展する。
そうそう、子どものころのデパートって、他の商業施設なんかと違って賑やかで楽しくそれでいて格調があって毅然として・・・というイメージがあり、デパートに行くというのは買い物だけでなくレジャーも兼ねていたような気がします。
主役の一人である社長さん。
あなた良いヒトだ!
老舗の看板を背負ってガンバルのだ!
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老舗デパートで起こったちょっとしたドタバタコメディー的な物語だった。
復讐のために夜のデパートに潜り込んだ女性従業員。
行く先もなく、母親との思い出が詰まったデパートに入ったホームレス。
ヤクザに追われ、デパートに逃げ込んだヤクザ者。
駆け落ち同然で家を飛び出した10代のカップル。
デパートの警備にあたる生き字引きと呼ばれるベテラン警備員と新米警備員。
贈賄容疑の責任で取締役を辞任に追い込まれているデパートの取締役。
悪巧みを企む宝石コーナーの責任者の男。
閉店をし、誰もいないはずのデパートでそれぞれの事情が交差していく。
夜のデパートは、真っ暗で絶対怖いと思うのだが、みんな構わず真っ暗なデパートを歩き回る。すごい。
前半はそれぞれのストーリーがあり、中盤でそれぞれが出会い、疑心暗鬼状態。後半で、みんな実はどこかで関係していたってかんじだで面白かった。
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これって許可とかとっているんだろうか。名前こそ変えているけれども、
紛れもなく会社というか店舗の特定ができてしまう。いくらフィクションとはいえ、結構好き勝手書いているなと。
若干のフォローはありますが。
伏線からの繫がりがしっかりしていて、話自体はうまくできていると思います。
素直に入り込めなかったのは、この世界に浸かりつつあるからなのか。
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なかなか面白い。
てんやわんやの夜のデパート!
その中に個々のバックグラウンドがあって…
最後に一気につながっていく感じが心地よい。
素晴らしい。
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新刊が出たころから、注目していた作品。文庫化され、すぐさま購入。深夜のデパートに集まるわけありの人々の群像劇。この作品は、安売りという現実だけを追い求めるスーパーや専門店、対して来てくれた人に夢を与える場所であり、存在だったデパートへの、そしてそれが可能だった時代へのレクイエムとも言えるか。稀代のストーリーテラーである著者は、このデパートを舞台に、「大人のおとぎ話」に仕立て上げ、ハッピーエンドからそれぞれの未来に希望を抱かせる幸福な再出発へと導き、読者である我々に対しても、人生の時間を噛みしめさせる余韻を与えてくれる。