紙の本
彼岸境めいたペット霊園で繰り広げられる謎解きと救済
2021/09/21 11:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アントネスト - この投稿者のレビュー一覧を見る
廃園となった遊園地にある、ペット専門の墓所をめぐる物語。
舞台の非現実感が、真相があらわになるにつれ、劇的なまでに変化する短編集。
不思議な静謐さに満ちた寓話めいた話が、愚かであったり、遣る瀬無かったりする人間の営みの物語に転化する瞬間は、ミステリとしても、物語としても読み応えがある。
特にお気に入りは「ヴァルキューリの丘」。ハーメルンの笛吹きを下敷きにしたような物語が、どんでん返しの果てに、どうしようもない人間の業を見せてくれる。現在は文庫化されており、同時に『向こう側の遊園』と改題されているので、ご注意を。
投稿元:
レビューを見る
ミステリというより、ファンタジー寄りかな。
「ブクウスとツォノクワの丘」の回が一番印象的でした。
ハルチカが有名で忘れていたが、こういうのも書かれるのだった。
好きっす。
投稿元:
レビューを見る
廃墟となった遊園地にある秘密の動物霊園と墓守の青年の物語。
人間のエゴや身勝手さを強く感じた。
後からじんわり沁みてくる感じは良いのだけれど、もうちょっと文章が熟れてたらなぁとも思った。
投稿元:
レビューを見る
〈内容〉廃墟となった遊園地、ここは秘密の動物霊園。奇妙な名前の丘にいわくつきのペットが眠る。弔いのためには、依頼者は墓守の青年と交渉し、一番大切なものを差し出さなければならない。ゴールデンレトリーバー、天才インコ、そして……。彼らの“物語”から、青年が解き明かす真実とは。“ハルチカ”シリーズで人気の著者が描く、せつなすぎるミステリー!
投稿元:
レビューを見る
初期のころを髣髴とさせるダークなファンタジ。
最初の一章目でまずその真実にうおっ!とのけぞり、二章目で人間の傲慢さに胸が芯から凍え、三章目でその崇高な想いに瞑目し、四章目で無私の誇りに心が洗われ、そして最期の章の奇跡へと私の心も昇華されていく。
人間と動物、その二つを分け隔てているのはいったいなんだろう。
私たちと彼ら、お互いに求め合い与え合い、分かり合うことはできないのか。
私たちは、どこかで進むべき道を大きく踏み外してしまっているのではないのか。
いろんな想いが胸に浮かんだ。
私もいつか大切な「誰か」を抱えてこの遊園地を目指すかもしれない。
そのとき、代わりに何を差し出すのだろうか
投稿元:
レビューを見る
死にゆく動物とことばが交わせたら。そこに語られるべきものは愛情や献身や感謝を思い浮かべる。けれどこの本は人間の傲慢を書いた物語だった。
初野晴の作風としてはスタンダードでむしろハルチカがイレギュラーだとは思うけれど、根底にあるものは変わらないとも思う。
痛いほどの現実を露わにする、その手法としてのミステリ。
投稿元:
レビューを見る
秘密の動物霊園の物語。
ハルチカシリーズみたいなのも面白いんだけど、やっぱりこういう寓話めいた、ファンタジックな世界観というのがこの作者の真骨頂だと思う。
投稿元:
レビューを見る
この場所はあそこか?と思ったりしたけど日本全国似たようなところあるかも。不思議なはなしだった。最後はうまくまとまってよかった。
投稿元:
レビューを見る
「カマラとアマラの丘 ―ゴールデンレトリーバー」
「ブクウスとツォノクワの丘 ―ビッグフット―」
「シレネッタの丘 ―天才インコ―」
「ヴァルキューリの丘 ―黒い未亡人とクマネズミ―」
「星々の審判」
初野晴さんの作品が大好きで、新作のたびに読んでいる。新しい何かを書いてくれる小説家さんだから。
この『カマラとアマラの丘』も自分の求めてるものを与えてくれた。
舞台は訳ありのペットが埋葬されるという夜の遊園地。そこで墓守をする不思議な青年のもとにやってきた者たちと、動物たちをめぐる出来事が中心となって展開される。
非常に読みやすいが、ここにある物語は安易に「感動した」と言えないような重さを持つものばかり。
人間の勝手な気持ちに搾取され、翻弄される動物たちの姿が描かれているが、その真相においては、単純なミステリにある謎の解明の驚き以上に、人間の傲慢な思いをはるかに超える動物たちの姿に衝撃を受ける。
特に「シレネッタの丘」と「ヴァルキーリの丘」はすごいことになっている。
「シレネッタの丘」
既視感を覚えるほどミステリによくあるような一家の殺人事件と密室の状況が刑事の口から語られるのを読んでると、異和感を強く感じる。
しかし真相で完全に自分を飛び越えられた感覚。強烈かつ、沁みる。
「ヴァルキーリの丘」
衝撃度ではこれが一番。利権絡みの醜い争いに、わかり合うことなどできないような少年たちの行動、そして動物たちが絡んだ恐ろしい推測。
とことんまで俗悪にまみれさせた上で語られる真相。
「シレネッタの丘」同様、心にどすんとくる物語になっている。
あと思ったのは、犯人当て小説レベルにミステリとしてガチガチのものとは、そもそも前提というかルールみたいなのが異なっていることか。
それぞれ「動物」というブラックボックス(この言い方もモノ扱いかも知れないが)がミステリとして見たときも根幹にあり、そうした既定不可能な生物を扱っているから生じてしまう空間がこの作品で描かれている。
動物に思考はあるのか? 魂はあるのか?
単純に切り捨てられないミステリの新しい方向性のひとつがここにあるのかもしれない。
そして翻ってみれば、「普通」のミステリで対象とする人間たちも、突きつめれば「ブラックボックス」だ。
本作は思った以上に、ミステリの根源に踏み込んでる気がしてきた。
投稿元:
レビューを見る
廃園した遊園地にある秘密の動物園墓地を管理する青年と様々な動物と人の話
4編+続編1編
動物と人の綺麗ごとだけではすまないシビアな話が多いですが、
最後には少しだけ希望が見える終わり方の話が多いので
読んでいて辛い感じはしませんでした。
特にヴァルキューリの丘の話が好きです。
誰でも汚い印象を感じる動物ですが、彼らの最後の場面を想像し、
また最初の言葉を読むと本気で泣けます。
森野さんがなぜ管理人になったのか知りたかったです。
投稿元:
レビューを見る
【収録作品】カマラとアマラの丘-ゴールデンレトリーバー-/ブクウスとツォノクワの丘-ビッグフット-/シレネッタの丘-天才インコ-/ヴァルキューリの丘-黒い未亡人とクマネズミ-/星々の審判
投稿元:
レビューを見る
廃墟となった遊園地を舞台に描かれた、幻想的で物悲しくて少し温かな物語。さまざまな動物が弔われるその場所で明かされる、それぞれの物語の真実。
たかが動物、されど動物。彼らが人間と同じような心を持っていないとは、誰が言い切れるのか。言葉が通じなくて理解ができなくても、決して分かり合えない存在ではないのかもしれません。
お気に入りは「ブクウスとツォノクワの丘」。まさかビッグフットとは……! あまりに異様な物語の真相は、一番哀しいものでした。
投稿元:
レビューを見る
秘密の動物霊園。弔いのためには、依頼者は墓守の青年と交渉し、一番大切なものを差し出さなければならない。
5話あって3話と5話がリンクしているのに少々感動。
全体的に動物と人間のつながりの哲学?みたいで自分には難しかった。
投稿元:
レビューを見る
動物好きさんにオススメ。
訳ありの動物達を花葬してくれるという、廃墟になった遊園地には不思議な墓守が。
動物と人間の心の通い合いを軸に、人間の身勝手さや醜さを見せつけられ、何度も手を止めてしまい、サクサクとは読めなかったけど、
最後にはふんわりとした気持ちにさせてもらいました。
動物の命を預かるという行為について改めて考えさせられ、うちのネコ様達は果たして幸せだったのかと考えてしまう。
過保護でウザい飼い主のもとで、それでもまあ幸せだったと思いたいけど。
ジャンルはミステリ?
ファンタジー要素もあるけど、かの世界観は好きです。
叙述トリックに、やられたー!とちょっと嬉しくなる(笑)
投稿元:
レビューを見る
秘密の動物霊園の墓守青年と彼を訪れてくる人たちの物語り。連作短編5編。とても切ないミステリーなのですが、ちょっとした仕掛けもあって驚かされます。シリーズ化して欲しいな、大変だろうけど。