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2012年刊。インフレターゲット論者の経済学者と、貧困・労働問題社会運動家との対談。とはいえ、雨宮氏の質問に飯田氏が経済学的視点で解説する色合い濃し。新自由主義的立場と思っていた飯田氏がベーシックインカム論者とは知らなかった。のみならず再配分制度(年金・地方交付税)の組替えによる若年層(特に都市部)支援、累進の程度を強める課税(富裕層増税)の採用など少々驚き。あるいは生活保護の不正受給問題の過剰反応についても飯田氏は言及している。貧困問題解消・軽減のための経済学的視座を得るにはなかなかよい本と思う。
なお、①強めの累進課税が景気乱高下を回避する効果。②日本の国民経済はほぼクローズドシステムで、国内での節約行動は、ある仕事を奪う結果となる点。③労働者の経験値増大や機械化に伴う不可避的な効率性アップへの対処は経済成長しかない、との主張。また、④所得再分配も、北欧ほどでなくとも、せめて米英なみの有効性なければ、政策的な失敗(つまり日本は米英未満。負荷額が所得に影響されない健康保険・国民年金が大きい)旨の指摘も。