恐れて慌てていないだけ・・・
2012/10/21 21:17
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Fukusuke55 - この投稿者のレビュー一覧を見る
わかりやすい大人向け教科書を読むようで、あっという間に読了したのですが、振り返ってみると背筋がゾクっとくるようなそら恐ろしさを覚えます。
著者である柴山さんは、日本の「ニューケインジアン」のおひとりと言えるのでしょうか?
中野剛士さんや藤井聡さん、佐伯啓思センセイと論調を同じくし、「反」新自由主義経済学者であられることは間違いないです。
- 第一次世界大戦に突入した時の「第一次グローバル化」と現状が酷似しており、今は「恐れ慌てて」いないだけであり、静かに恐慌が進んでいることは間違いない
- 繰り返すグローバル化の行きつく先にあるものは、生活が不安定になった労働者の不満を抑え、そのためには「政府を大きく」せざると得ない
- グローバル化が行き詰ると、世界中でネガティブインパクトとして急反転する経済。とりわけ、急速に台頭してくる新興国にとっては、その打撃が圧倒的に大きい。弱い鎖から切れていく・・・。
輸出依存度を高めている日本も、同様に「脆弱」体質になっている
- 「国家資本主義」・・・リーマンショック以降、アメリカは政府の経済介入が増え、そのコントロールが強まっている。大きくて潰せなかったGM、AIGへの対応が示すとおり
- リーマンショック前のグローバル・インバランスに戻すよりも、それぞれ内部に多様な産業を抱えた各国の、ゆるやかな共存=アダム・スミスの「諸国民の富」という理念を問い直すべき時
⇒著者のキーメッセージ
- 世界経済の政治的トリレンマ 「グローバル化」、「民主政治」、「国家主権」・・・論理的にふたつしか選択できない(ダニ・ロドリック著「グローバリゼーション・パラドックス-民主主義と世界経済の未来」)
⇒著者は、「国家主権」と「民主政治」を選択し、「グローバル化」を犠牲にするという選択肢を採らざるを得ない・・・と明言しています。グローバリズムではなく「国際主義」をと。
これは本書のクライマックスとも言えるかな
- 「投資の社会化」を考える。物的資本には限らない。社会関係資本=共同体に存在する、目に見えない規範や互酬のネットワークを、一種の「資本」と捉え、その維持と拡大のプロセスに注目する。
要は、共同体における人間関係。貨幣換算できない投資のリターン。
国家には何世代にもわたって蓄積された「国民資本」が存在している。
やはり、そら恐ろしい・・・。
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柴山先生の授業聞いてるみたいな内容。
「市場経済」の視点から見れば規制を取り払って市場に任せた方が効率的かもしれない。しかし「資本主義」の視点から見れば市場への一任は効率性と引き換えに不確実性を極端に大きくしてしまう。
資本主義では将来に対する期待や予測によって投資や消費が行われるため、本質的に不確実性が大きい。その不確実性が時折引き起こす経済ショックから国民の生活を守るためには国家による規制が不可欠となる。しかしグローバル化は国家間の緊張を増長すると同時に国内の格差を拡大し対立を激化させることで健全な民主政治を破壊してしまう。
これからの経済のあり方は単純に二つに分けると、①さらにグローバル化を押し進め、過酷な弱肉強食の世界で効率性を重視した競争を繰り返す「グローバル経済路線」と、②社会の公正と安定、健全な民主政治の実現のためにグローバル化や効率性追求とはほどほどに距離を置く「国民経済路線」が考えられるが、今の日本は間違いなく大好評絶賛グローバル経済路線驀進中!
ほんまにそれでええんかい?みたいな話です。
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柴山さんは難しいことをとてもわかりやすく解説してくれる人なのですが、あまりにわかりやすいため「議論が薄っぺらい」とかいう人がいるのに、私は胸を痛めています。そんなことはないと私は思います。
「経済の専門家」として発言することを避け、あくまでも政治・経済・社会を織り交ぜて総合的に議論を展開しようとするのは、お師匠譲りだと思います。
<扱われているテーマ>
一連の経済危機は、グローバル化が足りないから起きたのではなく、グローバル化が進んだために起きている。にもかかわらず、グローバル化を進めるべきかどうかという議論についてのマスコミや有識者の意見には、「No」という論調はほとんどない。本書ではリスクシナリオとしてのグローバル化について論じている。
考えねばならない点が3点ある
①現在の経済危機は単なる景気循環の一局面として捉えられているが本当にそうか?
②グローバル化は過去何度も起きてきたが、歴史に触れて考える必要があるのではないか?
③単なる経済危機として扱われているが、国内政治へのインパクトをきちんと取り上げるべきではないか?
以上3点を丁寧に解説している・・・のだと思う(まだ読み途中)
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経済の本でありながら、いまの日中関係の緊張を深いところで理解するためには必須の一冊。20世紀初頭の第一次グローバル化の帰結(世界恐慌・世界大戦)と同じ結末を現代の第二次グローバル化も、もたらすというのが著者の主張。たぶん、この著者の危惧するところが、次々とあたっていくのではないか。そうならないよう軌道修正するためにも、みんがが早くこの本を読むべき。
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日本の経済事情に限定せず、資本主義とグローバル化の向かう先を論じる。
経済面からだけでなく政治面や人間の感情も交えて分析している点がとても良い。
グローバル化は決して歴史の必然ではなく、不況の今こそ経済のあり方を考え直す必要がある。
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グローバル化は大きな政府に帰結する、ということと、グローバル化は直線的に起こるわけではないこと、資本主義は本質的に国家資本主義である、ということをつまみ食いしました。ちっともグローバルでない市井の人は、何をすればいいんだろう。
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資本主義経済の不安定性、それを何とか安定させるため政府機能が肥大化せざるを得ないこと、などが前半では大変分かりやすく説明されています。で、そのことをどのように評価するか、また、どのように克服するか、資本主義経済に代替するどの様な社会を構想するか、という後半部分になると、著者の価値観による説明になっていると感じます。その価値観を全面否定する気はないのですが、現代日本の問題は、著者のような価値観を持つ者とそれと正反対の価値観を持つ者とが併存しており、両者が併存して生きていける社会を構築していくのか、一つの価値観による社会を構築していく方法が果たして存在するのか、という点が最大の課題だと思うのですが。という訳で、とりあえずポランニーを読んでみます!
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グローバル化について、いい勉強になる本。関係ないけど、本書でも引用されてるし、シュンペーター読まにゃいかんかな。
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■グローバル経済
A.グローバル化は決して一直線に拡大していくプロセスではありませんし、歴史の揺るがざる必然というわけでもありません。
グローバル化はその過程で国家の対立をむしろ高めてしまう。
歴史を振り返れば明らかなように、グローバル化は歴史上、何度も起きては崩れてきました。
B.将来に向かっての次の一歩は、政治的扇動とか時期尚早の実験によって生ずるのではなく、思想から生じるに違いない。
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非常にわかり易く丁寧に書かれた本でお勧めなのですが、
日本の現在の官僚主導の立法&行政システムで公共投資やら
大きな政府やらに向かうと、危険が更に増幅されます。
もう、根っこの原因を取り除く時間がなさそうなので、
絶望の未来になりそうです。
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当然と思って疑ってないことをひっくり返してくれるような、そんな嬉しい本に時々出会いますが、この本はまさにそれに当てはまります。
このデフレで内需の成長が望めない中、またこの円高の環境下で、日本が生き残って行くには、海外に出て行くしかない。グローバル化は当然の流れであるとみんな思っているし、僕もそう思っていましたが…
グローバル化が進むということは、国と国との間の利害関係が明確に発生し、それが軋轢を生むという事。
この風潮は第一次世界対戦前の世界といっしょだそうです。
昨今の中国との関係もまた違った視点で見れるようになります。
名著だとおもいます。再読して、もう一度今までの視点を整理したい。
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国家資本主義と、自由資本主義。
保護主義と、国家思想の対立。
国家主権 民主政治 グローバル化 のバランス。
資本主義の本質は、借金返済。
投資での発展。
深化するグローバル化→製造力の流出→国内、地方の疲弊→内需縮小。
恩恵を受ける者とそうでない者の格差も生み出す。
海外依存の高さによる、世界的恐慌での日本の反動ダメージの増加。
グローバル化終焉のサイクルは不可避。 過去二回は世界大戦での終焉。 今回は静かに終焉を迎えられるのか?
その後にどう対応するか?
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グローバル化は必然的に経済の不安定化をもたらし、対応していくためには大きな政府が必要、もしくは、グローバル化は行き詰まり、保護主義など脱グローバル化を惹起すると説く。また、この不安定な世の中では、投資の社会化が課題とのこと。これといって新しいことが書かれているわけではないので、初心者向けかな。
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グローバル化の進展によって効率化圧力が高まり、格差が拡大することによって社会が不安定化することから、これを安定化させるために福祉の充実が求められる。したがって、グローバル化を求めるなら「小さな政府」ではなくむしろ「大きな政府」を指向しなければならないとする作者の立論は、これまでの「常識」からすると非常に意外だったが、かなりの説得力を感じた。
経済学で主流の計量分析ではなく、歴史パターンの分析による論の展開というのも、新しい視点を与えてくれていい。
短いながら好著。
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今のグローバル化の流れはどこまで進むのだろう、と漠然と感じていた疑問に対し、グローバル化はずっと続くのではなく、別のシナリオもあり得るのだ、ということをとても分かりやすく説明されていて、腑に落ちました。