紙の本
マニアックのように見えて、意外に間口は広い本格ミステリ大賞受賞作
2020/08/30 11:55
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投稿者:アントネスト - この投稿者のレビュー一覧を見る
斬新な密室トリックと、それを解決する鮮やかな推理を演出することだけに傾注した短編集。無駄を一切廃したミステリといえるでしょう。
そういう意味でとてもマニアックな本なのですが、シンプルにトリックや推理にだけこだわった結果、マニアでもない人にも楽しめる人は楽しめる一冊になったのではないか、というのは贔屓の引き倒しでしょうか?
収録作は粒ぞろいの五編ですが「少年と少女の密室」が特にお気に入りです。一、二時間なら兎も角、幾日もこの謎が解かれずにいるのは無理があるかとも思いますが、無理を承知でトリックを凝らし、物語を組み立てた作者の心意気は非常に好ましかったです。
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綾辻行人&有栖川有栖のTVドラマ「安楽椅子探偵」を彷彿とさせる名探偵が誕生した!多少の御都合主義があるものの、クオリティの高い密室パズラーである事は間違いなし!ベストは「理由ありの密室」です!
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秀作揃いで面白い。
密室物が5篇。警察には密室蒐集家なる噂があった。事件に密室が絡むと密室蒐集家が現場に現れ、その謎を解くというもの。
時代は戦前から現代までと幅広く、時代毎に密室を構成する要素が様々で面白い。
話を聞いただけで謎を解いてしまうという設定上、短編でしかあり得ないが謎そのものはロジカルに解決され小気味良い。
しかし考えてみると、携帯電話があるせいでミステリは書きにくいだろうなと感じた。
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密室もの5篇を収録した短編集。「何故密室だったのか?」を追求するロジックの美しさや、そこから生まれる事件の構図の反転っぷりが素晴らしい。謎解き要素以外を排除し、徹底的に密室にこだわるその姿勢に脱帽。
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評判になっている中で読んだためか、やや拍子ぬけ、ではあった。密室蒐集家の論理はとても美しいのだが、なぜ推理の段階でその解が正しいと言えるのか、という説得力がもうひとつだった。物語の雰囲気づくりは、とてもうまい。
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周囲の評判が良かったので初大山作品チャレンジ。短編集のせいか、なんだか犯人当て小説のキモの部分だけ取り出した話を読んだ印象に近い読後感。せっかくなんだからもうちょっと、小説の中に「あそび」が欲しかったと言いましょうか。本筋とは関係ない部分かもしれないでしょうが、もうちょっと物語を「盛って」もらって、伏線を包み隠すような作者ならではの色が欲しかった。
密室の謎を解くための「情報」と、その「解決」しか詰め込まれていないので、読んでる最中、ネタが見え見えのものがチラホラ…密室蒐集家の推理もたまに飛躍があるような? まぁ、期待値高めで挑んでしまったせいもあるでしょうが、全体的にはフツーだなぁって印象でした。
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収録作
「柳の園」
「少年と少女の密室」
「死者はなぜ落ちる」
「理由ありの密室」
「佳也子の屋根に雪ふりつむ」
どこから読んでも犯人当て小説らしい書き方をした、珠玉の犯人当て小説集。大山さんの文章を初めて読んだけれど、自分はここまで純粋な犯人当て小説をいくつも書く作家という存在を珍しく感じた。
久しぶりに、こういう真っ向からのパズル小説だったけど、頭を切り替えてとても楽しんで読めた。
どれも考えたら思いつきそうな推理をガンガン提示→どれも否定→不可能性の演出、というのが(見た感じ)丁寧になされていて、凄いかと。
「少年と少女の密室」、「理由ありの密室」が良かった。
犯人当ての参考文献があるなら指定したい。
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エアミスの新刊ラッシュに乗り。
【評価】
パズラーもの。
「パズラー=文章題の長いやつ」というあまりよくない印象を持っていたが、通読してみて、パズラー小説にもそれなりの意義があることがわかった。
密室があり謎があり、これらが解かれ犯人と、からくり(トリック)、動機が明らかになる。基本的にはこの繰り返しである。物語的展開にそれほど注力されておらず、キャラ造形もそれほど作り込まれてはいない。その点ではわたしのように「ミステリと物語の融合」を求める人間からすると相性は悪い。やはり「文章題」の雰囲気が強い。
しかし、とにかくも「小説」という形態を取ることで、トリックと密室を成立させる、というのが、パズラーと文章題の違いなのかな、と推定する。
本書でも、特に http://ow.ly/eZvCw という小説作法を巧く利用している。
もうひとつ、http://ow.ly/eZvvaも、トリックの辻褄をあわせることに資している。(連作のうち、http://ow.ly/eZvy7 は特にそう感じた)
ミステリをミステリたらしめるための材料は、けっして密室やトリック等「内部部品」だけではないのだな、と感じさせてくれた。
小説としての観点から評価するとすれば、密室蒐集家以外の人物たちのつながりも(うっすらではあるが)描いてくれたことに、連作短編集という体裁をうまく使っているなと感じた。
時代の流れもあいまって、なんとなくしんみりさせる。
しかし全体的には http://ow.ly/eZvIX や、http://ow.ly/eZvL3 が目立ち、推理としては少々粗いのではないか、と思わせる箇所も多々ある。
破綻はなく伏線も仕込んであるところはあるので、不自然さはあまり鼻につかないものの、どうしてもhttp://ow.ly/eZvNx 的なものを感じた。
個人的には「理由ありの密室」が一番GOOD。
トリックの仕掛け方、構成としてもまとまっており、
なによりWHYが少々凝っているのがたまらない。
(ところでわたしは中盤あたりで出てくるとある”別解”を、冒頭で思いついて、「これでかつる!」と浮かれていました。まんまとはまりました。残念)
総合評価を通してみると、わたしはホワイダニットに一番惹かれるのかなあ。
【感想】
ミステリとしての出来栄えはともかく、歴史を追ってどこからともなく現れる神出鬼没の名探偵(?)、密室蒐集家、というキャラクタはけっこう気にいった。
助手との掛け合い等まったくないので(ていうかいない)、少々物足りないが、造形がかっこいいのでイラストにも向いていそうだ。文庫になったあかつきには、ぜひだれか(バチ官の文庫表紙描いてる方とかイチオシ)にカッコイイ密室蒐集家の表紙を付けてほしいぞ。
数十年の時を越えて現れるという設定で、なんとなく今敏監督の「千年女優」を彷彿。
そうすると千鶴が千代子、ということになりますかね。
密室蒐集家が、「鍵の君」……あらら、ぴったりじゃないですか笑
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面白くはあったけど、余りにもあっさりと探偵役の「密室蒐集家」が謎を解いてしまうので、こちらが考える余裕がない。短編のパズル小説集としては秀逸なのかも知れないけど、私はちょっと物足りなさを感じました。
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贅肉を削ぎ落とした端正な密室ミステリが5篇。
警察内部で半ば都市伝説のように囁かれる「密室蒐集家」の存在。
一九三七年から二〇〇一年まで、時代を超えて密室殺人のもとに現れては自動的に解決してゆく謎の男。
『柳の園』一九三七年
『少年と少女の密室』一九五三年
『死者はなぜ落ちる』一九六五年
『理由ありの密室』一九八五年
『佳也子の屋根に雪ふりつむ』二〇〇一年
それぞれの時代背景を活かした密室の謎やトリックも良いのだが、「密室蒐集家」による推理の糸口と解決にいたるまでの過程、犯人特定へのロジックが抜群に面白かった。「密室もの」で密室それ自体よりも周辺から攻めていくのが新鮮。
さまざまな種類の密室が登場するが、そのなかでも『理由ありの密室』は変わり種だと思う。「密室蒐集家」が語る「密室講義」は興味深かったが、さらに加えられた「新説」にはニヤリとした。
『少年と少女の密室』が★★★★★
物語のムードも好きだが、いろいろな合わせ技でやられた。
謎と推理もさることながら、電光石火の犯人指名に驚いた。
純粋なミステリという感じだったが無味乾燥になり過ぎず、謎の探偵の存在が不思議な雰囲気を醸し出している。
面白くて一気読みしてしまった。
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非常に洗練された美しい密室短編集でした。
密室殺人が起きると、どこからともなく現れる密室蒐集家。華麗に密室を解いてはいつの間にか姿を消している。
こんなに短い文章の中で、きちんと情報が提示されて破綻なく論理を展開するって美しいな。
無駄がない。洗練されている。
小説としてストーリーがもう少し面白ければ、ため息ものでした。
でも素敵でした。
「少年と少女の密室」が個人的には一番美しいと思っている。
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目撃された殺人と消えた犯人、
そして目の前を落下する女、
鍵を飲み込んだ被害者に雪の足跡・・・
警察を悩ます密室が出現すると現れるという<密室蒐集家>。
時空を超え、いつの間にか現れ消える「彼」の前に開かない「扉」はない。
「柳の園 一九三七年」「少年と少女の密室 一九五三年」「死者はなぜ落ちる 一九六五年」「理由ありの密室 一九八五年」「佳也子の屋根に雪ふりつむ 二〇〇一年」の5編収録。
この中で「佳也子」だけ既読で、初めて読んだ時にはこの彼の存在がまず納得できず。
あとトリックの肝である部分の偶然に萎えてしまったのでした。
しかし今回、この5編を並べて読んでみると、彼の存在はすとんと納得。
偶然に頼る部分は納得できないものの、犯人当てに特化した作品たちにはいっそ清々しささえ感じてしまいました。
だから逆に、ミステリに人間臭さや物語性を求める方には不向き。
ベストは「少年と少女」の盲点を突いた密室。
もしくは「理由あり」の密室談義。
あ~、美しかった。堪能しました。
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【収録作品】栁の園 一九三七年/少年と少女の密室 一九五三年/死者はなぜ落ちる 一九六五年/理由(ワケ)ありの密室 一九八五年/佳也子の屋根に雪ふりつむ 二〇〇一年
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密室ミステリーというのは、
最近少なくなってきたように思っていたので
こんなガチガチの密室ミステリー集が2012年に出てきたことに
何となしの意外感と作者の気概を感じた。
アルカトラズ幻想のときの島田荘司氏の
インタビューで21世紀本格ミステリーの話をしていて
ヴァン・ダインと密室ミステリーの話をしていたので
余計にそう思えた。
※島田荘司『アルカトラズ幻想』インタビュー④
http://www.nicovideo.jp/watch/1350368289
ただの邪推に近い思い込みですが、
「密室蒐集家」というのは
密室ミステリーを愛してやまない亡霊であり、
それは時代を超越し、いつの時代も存在する
普遍的存在なんだという作者の宣言のようにも感じました。
事件が起こる1937年などの年代は
作者にとって思い入れの深い密室ミステリーが
刊行された年代なのでしょうかね。
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もう出尽くした感のある密室も、見せ方、読ませ方によっては、「まだまだ面白い」を実践した好短編集。大トリックはないけれど、ロジックはどれも心地よい。
ただ偶然がちょっと多いかな、タクシーの運転手は謎すぎる。