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経済学の役割について個々のトピックをあげて、経済学の歴史的アプローチの背景を解説している。概論的なトピックではあるが、著者のこれまでの著作と同じく、深い理解のもと経済史的な観点からよくまとまっており、経済学の復習には良いと考える。
トピック:税と国債(国家のファイナンス)、中央銀行の役割、インフレ、不確実性、貧困、所得格差、知識、分配と交換、中間組織、幸福。
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経済学に出来ることそして出来ないことについて書いた本。
やや雑多ですが新書にしてはボリュームがあり読み応えもなかなか。
出来ないことをはっきりさせた上で経済学の担う役割を示している点は、
ものごとを混同して考える人の多い昨今において有意義だと思います。
経済学の扱っている範囲の広さも分かりますしね。
とりわけ価値の問題と実効性の問題が興味深かったです。
経済学の外郭についての本であり中心についての本ではないので、
入門書くらいの知識はあった方が良いかもしれません。
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題名のとおり「経済学という分野に何ができるのか」そのような問いに対して、筆者なりの回答をだしている。かなり抽象度の高い話なため、一読では一体何を言っているのか、よくわからないところが多い。それはすべて読者の責だが、各章同士の連関は強くないので、関心がある章を引っ張って読むのもよし。第9章の「中間組織の役割」では、現代の経済学が個人と国家(政府)という二元的な対立図式で社会制度を考えているところが経済学の見落としであるいう。個人と国家の間には、消費者団体や労働組合、経営者団体などの「結社」が存在し、それが現在の経済システムを構築しているという。このように、個人と国家という図式は、社会制度を考える上で、便宜的に分類しただけであり、そのように単純化することで精緻な理論を組み立てつつ、一方で理論の限界をもっていたのが経済学であるという。
この本を読み、経済学が何をターゲットに研究してきたのか、その貢献度と限界、未来を俯瞰することができるのではないか。ことさら、経済至上主義への批判から経済学への批判へと行きがちな現代において冷静にその是非を考えるには一読の価値があると思う。
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大胆なタイトルに惹かれて手にした本。著者は労働経済学の碩学で、帯にも「経済学の基本的な論理を解説」とあるので、多分安心して読めるだろうと。網羅的で細かく章立てされているが、「税と国債」とか「中央銀行の責任」といった重い内容が15ページそこそこに圧縮されているので、満腹感がすごい。
最も印象に残ったのが、第4章「不確実性と投資」。予測不可能な未来に賭けるのが投資や起業であって、利潤はそのチャレンジに対する報酬であるという考え方。そして、計画経済が失敗して自由主義が豊かな社会を実現したように、リスクに賭けるという姿勢が、人や社会を発展させ、豊かにするという考え方。
この考えを自分に落とし込むと、公私ともにリスクを取っていないと痛感。だから、発展しないし、豊かになっていないんだろうなあと・・・
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ナイトの疑問。完全競争下でなぜ利潤が発生するのか?(完全競争なら多くの企業が参入し、利潤は低下するはずだから)
不確実性に果敢 に企業家が賭けるさらこそ、利潤は持続的に存在しうる、とのこと。
マイケル・ポーターの5フォースが、いかに不完全競争状態を作り出し、自社に有利な状況(究極は独占?)を作り出すかということに、注目していたことを思い出す。
企業の現場では、利益を出すために売値を上げるか、経費を削るしかない!という議論をしているが、少し視野が広がる感じがする。
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財政の破綻懸念、ユーロ危機、貧困問題等々、我々を取り巻く様々な経済事象について考えるとき自ずと本著のタイトルそのままの疑念が浮かんでくる。そうした現実的な諸問題に対する経済学の効用と限界、そして政治・社会とのしがらみを図表や数式を一切用いずにプラグマティックに解説し、「経世済民」という言葉を頭に刻んでくれる好著。
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経済学に何ができるか、というよりは経済学者の猪木氏は何を考えているか、の色彩が濃い
一般向けの新書に有りがちな、素人騙しの一部学説をコンセンサスにしたてあげてない所は評価できるし、スミスやナイト、ピグーといった歴々からの引用も硬派でいい
ただし内容が中央銀行、TPP、貧困などといった最近の話題にその面子を絡めてるので、想定読者層をどこにおいているのかは疑問である
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「「文法」に当たるのが経済学であり,読む,話す,書くといった実際の言語の「使用」「運用」にかかわるのが経済対策」とあります。これは確かにと思いました。どの分野でも,基本となる議論の枠組みがあります。経済学に限らず、理論はあくまで現実をデフォルメしたものなので、それを現実にそのまま当てはめて、役に立たないと批判するのは間違いなのです。
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20130311~0516 経済理論、思想史的な記述と現実の経済事情や経済史に関する記述がうまく融合されている感じ。難しいけど読みやすいですw
著者のバランス感覚が優れているのが良く分かります。
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「第2章 中央銀行の責任」 にて、ハイエクの貨幣発行自由化論が扱われているが、南北戦争までの四半世紀の米国は、フリーバンキングの実験場と化した結果、銀行倒産が続出し失敗に終わったことは興味深い。
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新書としては、超第一級の名著。これだけ丁寧に経済学を解説し、なおかつ文章が練り込まれており、経済学の限界を素直に認めながら、その可能性を探っている。
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税と国債 徴税能力
中央銀行の責任 ハイエクの貨幣発行自由化論
インフレーションの不安 富の強制移転 自己実現的という罠
不確実性と投資 有限責任の不思議
貧困と失業の罠
なぜ所得格差が問題なのか 豊富な情報はやる気をそぐ
知識は公共財か
消費の外部性 倫理は習慣である
中間組織の役割 結社
分配の正義と交換の正義
経済的厚生と幸福 効用と福祉
経済学に何ができるか
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数年前に流行った政治哲学のように、問題に対して経済学なりの解答を出そうとしている本だと思う。もちろん理論と実践が異なることも指摘している。
内容は下記の通りだが、処方箋を出すと言うよりも考え方を紹介してる方が強く、簡単に説明することよりもその裏にある単純化の問題を指摘している。
第1部 自由と責任
・税と国債
・中央銀行の責任
・インフレーションの不安
第2部 平等と偶然
・不確実性と投資
・貧困と失業の罠
・なぜ所得格差が問題なのか
・知識は公共財か
・消費の外部性
第3部 中庸と幸福
・中間組織の役割
・分配の正義と交換の正義
・経済的厚生と幸福
・経済学に何ができるか
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経済思想の歴史的な変遷を追いつつ、「経済学に何ができるか」というテーマについて理論と現実の対比によって明快に論点を提示している。
かなり高尚な内容だが、非常に平易で読みやすい。おすすめ。
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経済理論と経済政策を峻別し、理論を現実に単純に当てはめようとしないことが重要である。経済政策は経済問題だけでなく、多分に政治的な要素から決められるからだ。また、経済学は社会の経済問題に一刀両断に答えられるものではない。むしろ明快な主張には用心すべきであると解く。
経済理論はもちろん重要であるし、学ぶべき順序もある。また、経済学は万事を経済変数で説明する(経済還元主義に基づく)学問ではない。経済還元主義と経済学的なアプローチは全く異なるものだ。人間の持つ理性、情念、倫理観といったものに目を向けるとともに、自由市場は尊重しつつ、市場の有効性について批判的に再吟味することが重要である。
現代社会の最大の問題点は、価値の相克であり、倫理の問題である。そして、社会問題の解決には、価値観についての合意が重要となる。経済学は、価値選択以前の問題について、理論的に分析することはできるが、価値自体を決めることはできない。その意味では、経済学の視点だけでは強い主張は行えないし、また、そのような主張をしない品性が求められる。