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『あのな、あんたの話どんだけ聞いたって、アサミのことなんか何にも判らねぇよ。毎日毎日顔合わせてて、何度も寝ててよ、それなのにあんた、アサミのこと何も知らねーんじゃねえのか。本気で愛してたとか気味悪いことばっかほざくけどさ、それって全部あんたのことじゃん ー アサミが何を考えてたのか、どんな想いで過ごしてたのか、何をしたかったのか、あんたの話からはまるで判らんねぇ。何も伝わらねーよ。』
『ならさ、辞めちゃえばいいじゃん。そんなクソみたいな会社。別れちゃえばいいじゃん。そんなクソみたいな嫁。何でそうしない訳? 面倒臭え訳?』
『だから、世の中というのはーそう簡単なものじゃないんだよ。難しいんだよ。色色あるんだよ。そんな、正論だからといって罷り通ると思ったら大間違いなんだ』
『俺、別に正論とか言ってねぇよ。あんたの方が偉くて賢いんだから、あんたの言うのが正論なんじゃねえの?』
『お、お前みたいな人間に解るかよ。私の苦労が。嫌でも辞められないんだよ。辛くても別れられないんだよ。辛くて辛くてやってられないけど、もう限界だけど、それでも止められないんだ馬鹿野郎』
『何で?』
『だから、お前なんかに解らないって言ってるだろうが』
『ならさ ー 死ねばいいのに。』
『それでもどうしようもねぇことなんかねえよ。世の中にさ、ホンキでどうもならねーことなんかねーもんよ。会社辞めねぇのは、あんたが辞めたくねぇからだし、離婚しねぇのはしたくねぇからだよ。』
『あんたの欲求の捌け口になったってだけじゃねえの。本気だとか愛してるとか言って自分誤魔化してんじゃねーよ。どの口が言ってんだよ。あんた、自分の思い通りにならねぇ欲求不満をアサミの股ぐらに注いでただけじゃねえか。カッコつけてんじゃねえよ。』
『いや、別に嘘は吐いてないすけど』
『疾しいとこでもあるの』
『疾しくない人なんて居るんすか』
『あんたさ、慥かに、世の中馬鹿ばっかりと俺も思うさ。でも馬鹿は馬鹿なりに苦労してるし、馬鹿だから楽だなんてことねーし。辛えのは一緒だって。で、あんたは馬鹿じゃねーのかもしんない。だからってその馬鹿見下げてさ、見下げるのは構わねーけど、そうやって線引いてさ、それって好きで身動き取れなくしてるだけじゃん。全部あんたが好きでしてることだろうが。好きに生きてて文句言うなよ。』
『邪魔だからって、殺しちゃう訳にもいかないでしょ。不思議よね。産む前に殺すのは殺人じゃないのに、産んじゃったら殺人なのよ』
『男運が悪いのよ ー 三回も結婚したけど、みんな駄目だったんだもの。』
『運じゃねーじゃん ー あんたが好きでくっついて、あんたが嫌ンなって別れてるだけじゃん。選んだの自分じゃん。捨てたんだか捨てられたんだか知らねーけど、別れたのもあんたじゃん。全部あんたの意思じゃねえの?』
『大変だ大変だってーそりゃそうだろうけど、そのくらいの大変な奴なんてゴロゴロ居るっておばさん。みんな大変なんだよ。あんたが特別なんてことねーからさ ー 考えてみれば親が子供育てるのって当たり前じ���ん。育てるのに苦労すんのも当たり前じゃん ー 当たり前のことしてて大変だ辛い辛い言うんじゃねーよ。あんたのしたことは特別なことじゃねえって。』
『不幸は全部他人の所為かよ。あんたの不幸は、全部何もかも、丸ごと ー あんたの所為だよ』
『産みたくなかったのよッ』
『なら作るんじゃねーよ』
『妊娠ちゃったのよッ』
『デキちゃったんじゃなくて作ったんだよ。あんたと男が、何も考えねーで腰振って作ったんじゃねえかよ。そこんとこ忘れてんのかよ。ホンット馬鹿じゃねえの?』
『男運が悪いとか駄目男の彼氏自慢するような女居るけどさ、そういう女って、結局自身過剰で傲慢なのに、それをひた隠しにしてるような、低能ナルシストばっかだぜ。ダメ男自慢ってのはさ、結局モテ自慢なんだよな。余裕こいてるんだよ。余裕こいた馬鹿女が自分の馬鹿棚に上げて男馬鹿にして笑ってんだよ。ナメてるよな。』
『我慢した我慢したって、我慢ってのは最後までしなくちゃ無意味なんじゃね? 途中でやめるのは我慢って言わねーから。だから、あんた、我慢も苦労もしてねーよ。』
『どうにも出来ねーどうにも出来ねーって。そんなことそうある訳ねーって。必ずどうにかなるのに、どうにもしないだけだって ー 厭なら辞めりゃいいじゃん。辞めたくねーなら変えりゃいいじゃん。変わらねーなら妥協しろよ。妥協したくねーなら戦えよ。何だって出来るじゃん。』
『みんなぐずぐず不平ばっか言って、自分が世界一不幸だみてえなことばっか言って、それでもみんな死ぬとは言わねーの。そんな我慢出来ねえ程不幸なら、死ねばいいじゃんて思うって』
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他の誰でもなく、自分が暴かれていく感覚に頁を捲る手が止まらない。
彼女だけは過ぎるほど素直に生きていて「菩薩」のようではあるけれど
彼女だけが与える恐怖がある
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衝撃のタイトル。文庫化ということで即購入。
確か京極夏彦さん初の電子書籍というアオリにこのタイトルで、出た時はたまげたもんです。
最後の最後、健也の告白というか語りでズドンと衝撃を受けた幕引きでした。
健也との会話で、内面がボロボロと露見していく。人の嫌な部分を見る思い。狂言回しになんだか騙されたような気になりながらも、巻き込まれ引き込まれ、語りに落ちてしまう。最後の最後は憑物落としになっているのかな。
死んでもいいや、現状で死にたい、と思えるくらい幸せな状況って、何なんでしょうね。私も現状に大いなる不満はないけどねえ、亜佐美のようにはなかなかなか。
にしても、なんだか珍しく生きることへのエールというか、説教というか、なんだか読者たちの人生へのメッセージがあるように感じましたね。タイトルほど内容は暗く重たくはなかったですし。
仕事してだいぶ経ちますが、失敗して怒られても、「なーにタマ(命)までは取られないよ」と思えれば、何とかなるもんですよね。死ぬほどでもないと思えれば幸せなもんです。
ま、このように読書を満喫できるってこと自体、幸せなのでしょう、わが人生。
表紙のオブジェ、菩薩なのね??特に関連も解説もなかったけど・・・救済のお話だったと思えばさもあらん、か。菩薩らしからぬ造形にお見受けしましたがね。
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自分自身が、周りの目、世間体などの他人基準に生きすぎていると感じた。
もっと自分基準で生きていいのでは、と思うようになった。
確かに『死ねばいいのに』は10代の頃、とても軽い言葉だった。解説を読み、どの年代でもそうだったのかなと思った。
ケンヤの言葉使いはちょっと年齢的に不自然だと感じるところがあった。
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そこそこ面白かったが、5人目、6人目はちょっと強引な感じがした。前半はケンヤの鋭いツッコミが痛快だったが、自分のことをバカだのどうしようもない人間だの言う割にイマドキの子(といっても24歳らしいが)が使いそうにない難しい言葉を使ったり、相手を畳みかけるような喋りはどうなんだろう?3人目あたりで「もしかしてケンヤは見習い天使とか死神的なオチ?」とか思ったりしたのだが人間でしたね。まぁ、動機もなく、「死にたい」と言われて殺してしまうところなんかは、ある意味、天使的かもだけど。
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「死ねばいいのに」はタイトルにもインパクトがあったが、内容もこれまでに読んだことのない作風で新鮮だった。ケンヤが無礼な態度で様々な人に阿佐美の話を聞いて回っている姿にも目が止まるが、むしろケンヤがなぜその行動をとったのかを知った時、京極夏彦さんの物語構成力の高さに驚かされました。会話が主体の文章なので、テンポよく進んでいける点も爽快だった。
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一人の女性の死を巡る、その人を取り巻く人間たちの人生の話。世の中の理屈というか、本音も建て前もない純粋な理屈の話。面白かったです!!
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我が身を振り返ったね。
最初に登場する菩薩の絵、人形。
つまり彼女は菩薩だと。
昔「奇跡の海」という映画があってあれは超名作なのに
日本人にはちょっと難しかったから知る人ぞ知るだろうけれども、
この小説の彼女がその映画の主人公にダブるんだよね。
でもこの小説の彼女は菩薩でもさ
殺人をさせてしまうわけだから、そこはどうなんだろう
そのあたりの破たんがどうも論理的にううむ。
でもおもしろかったな。
京極さんやっぱりすごい。
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言葉は悪いが正直すぎるくらい正直な健也の前に建前やプライドをバリバリと引き剥がされていく人たち。
唯一、亜佐美だけが驚くほどに素直だった。世間一般からすれば惨め過ぎる人生なのに、それでも自分は十分幸せだったと。だから健也の「死ねばいいのに」ということばにも、幸せなうちに死にたいと。
健也が亜佐美に『協力』してしまったのは、許否されると思った究極の選択に、亜佐美があっけなく同意したことに動揺し、コントロールが効かなくなったからだろう。
でも本当に亜佐美は幸せだっただろうか。虐待され続けた故に、それに合わせることに慣れてしまったからではないか。最期の時の笑顔も。
健也のこの後は書かれていない。情状酌量はされたとして、彼は幸せに生きられただろうか。
健也が「幸せとは何か」を考えられなかったことも、この事件の引き金だったかもしれない。
つい頭にくると軽々しく言ってしまう「死ねばいいのに」。
その言葉を発っしてしまう時、「今渡しは幸せじゃない」という悲しみが入っているとしたら、とても辛くはないだろうか。
自分の失態がたいしたことでなくても、この言葉を向けられれば、心は痛みを感じる。
じっとこらえて、発話者の怒りや被った状況に共感をもって考えられる人であるよう、この物語を教訓としたい。
「死」という言葉に惹かれれて、この本を手に取った。
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題名も衝撃的だか、内容も衝撃的。
人それぞれ、受け取り方も違うし、感じ方も考え方も違う。
そして、この題名を見て面白そうと本を手に取った自分は、言葉の重みを量れていないと感じた。
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タイトルにびびりながら、また、このタイトルが作中で繰り返されることにも、若干びくびくしながら読了。この人の作品は、ひっそり後引く感じがなんとも言えないのです・・・
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評価よかったから読んだけど…うん。ラストも全然衝撃的じゃないし、特に心動かされることもなかったし…なんだったんだろう。
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受け止めようのない感じで読み終わる 死ねばいいのにという言葉は まだ死にたくないと答えてくれるだろうという安心感とか信頼関係の中で成り立つのか?
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すらすら読める。なんかこう、身につまされる思いもあるし、登場人物に対してイライラしたりもするのだけども、ケンヤが憑き物を落とすように相手を言い負かすのは、すっきりすることもあれば、極論すぎるだろと思うこともあり。結末も楽しめたし、やっぱり京極さん好きだ。
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「死ねばいいのに」
渡来が、殺された鹿島の関係者に鹿島の話を聞いてまわる。
渡来はすっとぼけててだらしない口調なのに、会話が終わる頃には、鹿島の関係者は大事なことに気付いたようになっている。
どこかしら京極堂の憑物落としのように感じられた。
登場人物のどれもが言う不平、不満は、ともすれば自分の口からついて出そうな不平、不満ばかりだ。読了して渡来に憑物を落とされた。