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京極夏彦は初めて。いい。すごく、いい。
うわぁあぁあ!!!いたい、いたいぃぃ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃ!!!とかずっと思いながら読んでた。軽快な語り口と、自分には身に覚えがありそうな言い訳の積み重ね、それを断罪する一言。目を背けたい。でも目を離せない。そんな感じ。
第五章くらい終わる頃には「物語では語られない『それでも生きる理由』がキーなんじゃないかな。」とか感想が浮かんでしたり顔してたんですけど、最終章ではそれすらあざ笑うかのような物語の結論で。作者の底知れなさに恐れ入る。
いやー揺さぶられた。楽しい読書体験でした。
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世に起こる出来事は、複雑にみえて実は単純なのかも知れません。単純なものを複雑にしているのは、人間の心の有りようだったりするわけです。だからといって、ものごとを単純に考えれば心が軽くなるかというと、そうでもないわけで、人間は自らの愚かさ故に迷ったり、苦しんだり、悶絶したりしながら生きていかなければなりません。そうであるなら、いっそ〝死ねばいいのに〟と言われても、それがそう簡単なことでもなくて、この小説に登場する被害者のように、〝死ねばいいのに〟と言われて、〝はい〟と微笑みながら死んでいけるのは、実はとても幸福なのかもしれません。主人公は無学で教養もなく、社会的常識に欠け、礼儀知らずで、言葉の使い方さえ知らない青年です。アルバイトもろくに勤まりません。無職でその日暮し。一般的には社会不適合者とみられても仕方のない人物です。けれど彼は、人が複雑にしたものを、単純明快な形に置き換えて理解します。人の語る言葉の虚飾を剥ぎ取り、ものごとの本質を捉える純粋な思考回路を持っているのです。彼の有する善悪の基準は、社会に適合した一般人より、ずっと明瞭です。現にあまりに素直な彼の問に、明確な答えを出せる人物はいませんでした。彼はただ、教養を身につけるに相応しい環境で、生きてこなかっただけなのかも知れません。が、そんな彼でさえ、最後の最後のところで、純粋を通り越した理解不能な出来事に遭遇し、怖くなってしまったのでしょう。この世の中は、ものごとを素直に受け入れるだけではすまされない、神仏の慈悲すら拒まれてしまうほど、不可解なものなのかも知れません。いずれにしても人間は、愚かで罪深い生きものなのですから、この世という地獄に生きて、常日頃の行いを償わなければならないようになっているのかも・・・ですネ。
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最初から説教くささが鼻についたが、途中からそれを超えて被害者とケンヤに興味が湧いてきて、最後へ向けて尻上がりに引き込まれて行った。事件の真相も秀逸
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自宅マンションで何者かによって殺された鹿島亜佐美のことを関係者に聞いて回る主人公
自分の思いをぐだぐだと連ねる関係者
論理ともいえない論理をつみ重ねて追い詰める主人公
そして主人公が発する「死ねばいいのに」が関係者の憑きものを落としてゆく。
時代は現代だし、主人公は無職の柄が悪い若者なのだけど、京極堂
5人目。 のどんでん返しは予想範囲内だが、
6人目。 の犯行理由は想定外。
「死ねばいいのに」がさらに重みを増す。
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久しぶりの京極作品で、タイトルからして憑き物落としはないだろうと思っていたら、やっぱり憑き物落としだった。
殺された女性について聞いて回る青年が、女性のことではなく、自分たちの言葉理喋る人達を憑き物をおとして行く。ほほぅとなっとくできる話で落として行く場合もあれば、それはちょっと強引という場合もあって、どちらも楽しめる。今作の場合は、凝り固まった価値観にとらわれた人々の開放という感じ。
本全体としては、1人目で盛り上がり、2人目から少しずつテンションが落ちるものに、最後できっちり面白かったと思わせる。ここら辺は京極夏彦。さすが。
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亡くなった知り合いの女性について、ひとりの男が6人の男女に聞いて回る様子を、その6人の視点から描いた話。女性のことを聞いているのにも関わらず最終的には必ず自分のことを話し出す彼らに、男は冷静に言い放つ―――「死ねばいいのに」、と。
面白かったです。自分を馬鹿で屑だと表すケンヤの言葉が、ほかの誰の言葉より深いのが印象的。
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月並みながら、誰が何が一番狂っているのか?という問いかけに満ちていて、ちょっと後ろ暗い気持ちになるような。
主人公何やかんやでちょっと賢すぎませんか。
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久しぶりの京極さん
学のないケンヤが殺されたアサミの関係者を辿り、彼女の話を聞いていく。。。
どの人の話も自分の不平不満ばかり。
でも自分にもあてはまりそう不平不満なだけになんだか身につまされる思いです。
ケンヤは自分は学がないとは言いますが、結構賢い。
6人目の弁護士さんの最後の言葉で話が引き締まった気がします。
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屁理屈をこねて、自分の不幸を嘆く人たちに、屁理屈で諭すという構成の小説。京極堂のつきもの落としと似ている。
タイトルほど、暗い内容ではない。
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「死にたくなんかねーよ」
噓を重ねるほどに、真実に近づいていく。
京極夏彦が紡ぐ究極の謎(ミステリー)
死んだ女のことを教えてくれないか。
無礼で頭が悪いということを認識している若者・渡来健也は、
三箇月前に殺害された女性の周辺を訊いて回る。
「一人目。」――女性の派遣先の上司、
「二人目。」――女性の隣人、
「三人目。」――女性の愛人、
「四人目。」――女性の母親、
「五人目。」――女性の事件を担当した警察官、
というようにそれぞれの章で一人称が変化しながらも、彼らは問われる。
「彼女はどんな人間だったのか」
会話を主としてすすむ物語で、当初はほとんど彼らの回答がもっともだとも思うのだが、
青年の妙な語り口に矛盾をつかれ、人々は皆、心の昏がりを見透かされてしまう。
何故か窮地に陥ってしまう彼らが逆に問う。
「ならばどうすればいいのか?」
「ならさ」
――死ねばいいのに。
「五人目。」の最後で衝撃的な展開を見せる本作は、誰もかれも自分自身の檻から逃れられないことを暗示しているかのようにも感じられた。
ミステリ:☆☆☆☆
ストーリー:☆☆☆☆☆
人物:☆☆☆☆☆
読みやすさ:☆☆☆☆☆
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ずっと気になってたタイトル。作家に疎い私でも京極さんの名前は把握してたし、凄い文才のある作家だって事も感じてた。でも如何せん書店の陳列棚に鎮座する文庫本でも圧倒される分厚さに尻込みしちゃってなかなか手に取る事が出来なかった御方。このボリュームならばと・・・。
本作は会話が中心からか、いや、中断する時間が惜しい位に引き込まれて飲みの誘いを断ってでも読書を優先したのは初かも。
読了して暫く放心した。改めて京極夏彦スゴい…。後味は決して良くはない。でも何を伝えたいのかとか上手く言えないけど感じるものがあった。
食わず嫌いせず、京極堂の住む世界も見てみたいと思う。
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会話が面白いからすぐ読み切れる。
今もそんなに悪くないなって思える本
今より良くなりたいと願うのは良いけど
何を願うかに囚われると理想ばかり高くなる
本気で叶えたいなら、徹底的に実行しないと
登場人物のように愚痴だらけになったり矛盾したりする。
「まぁ人間そんなもんかも」と思うのも、
「こうならないように頑張る」と思うのもあり。
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何気に初•京極さん!
水戸黄門が覇気のない若者になって、「この桜吹雪が目に入らぬか」が「死ねばいいのに」に変わっちゃったみたいな。
そんな気ないのに相手の懐にズンズン入って強制的に救済していっちゃうような。
そんな短編集。
うう、面白い…
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ミステリ、かなぁ?
話している間にだんだん取り繕ってる化けの皮がはがされていくパターンは同じだし、普通に考えればアサミさん殺した犯人はすぐわかるんだが、読んでいる間はすごく面白くて止まらなかった。
でも再読したいとは思わないな。京極作品では珍しいかも。
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「京極夏彦」というだけで手に取りました。はい。
まぁ1人の人であっても付き合い方は三者三様、十人十色なわけで。
それを特殊なシチュエーションに落とし込んで一編の物語に仕上げる筆力は流石というべき。
何が言いたいかというと、彼以外の作家ではこう巧い作品にはならんだろう、ということと、題材の難しさ故に彼の筆力をもってしてもここまでであろう、ということである。