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この本が出版された時、日経新聞書評欄にこの本が紹介されていて、訳者編者の皆様のご苦労ご尽力が語られていたので、当時は本を読む時間など皆無でしたが、このように志と苦労を持って出版された本、しかもチベット文学、これは読むことができなくても一冊買って貢献すべきとすぐ注文した。時を経て自分の中に、現実逃避と久しぶりのチベットブーム到来で、ついに読むことができた。分厚い、硬い表紙の本で装丁も美しいが重苦しい感じがして値段相応の、とっつきにくさであったが、いざ開いてみると短編と詩のアンソロジーで、後半は様々な解説、トンドゥプジャの生涯など解説もたっぷり収録されていて、チベット文学初心者は、まずは資料編や解説から読むべし。基礎的なチベット文学現状理解の上、いよいよトンドゥプジャ作品に取り掛かるとより話の運びやどんな地域、時代、背景のら物語なのかもわかりやすい。ユニークな物語、共産党やその政策を礼賛するような言葉を入れながらも、またチベットの古い習慣や考えへの現代的な苛立ちもみせながらも、チベット人としての、チベットへの強い執着、自由と自主への熱い思いがあちこちに感じられ、最後は自死してしまったこの文学者の繊細さ、強さ、無念、などを感じる。装飾的な文章というかチベットの話し言葉や書き言葉の特徴なのか、独特のことわざのオンパレードで、ことわざ解説も丁寧で、異なる言語感覚を持つ人たちなのかな、と面白い。