投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
生きること自体に思想は不要だが、その外側にある死と向き合う際に人は哲学的に為らざるを得ない。10代の頃の同級生の自殺と20代の時の友人の自殺、2つの死について初老の男性が追憶する所から始まる本書はそれ故に時間と記憶を主題とする思弁的な小説として進んでいくが、終盤でそれこそが語り手の歪曲なのだということを思い知らされた。「あなたはまだわかってない。」そう、哲学的であるというのは時に生の現実から目を背ける為に取り違えられる。その盲目さを自覚した時に残されていた終わりの感覚は、痛みと後悔を伴う苦いものであった。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
うーん、年輪を感じる。読み返すと更におもしろさが湧き出てくるような小説。おもしろかった。サスペンスとしても読める。
年を取ってもう一度読んでみたい。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
結論がよく分からず??
イギリス版「こころ」といった感じ。
元妻をもっと大事にした方がいいんじゃない?
全く共感できません。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
自問自答モノローグ。自分のことも、恋人のことも、友人のことも、他人のことも、分かったようで、全然わかっていない、ということかしらん。自分の過去の記憶は自分の都合の良い想像上の物語。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
良い小説を読み終わると、しばらくはその余韻に浸っていたくて他に何も読みたくなくなる。私にとって、これはそうした小説の一つだ。
この物語の語り手に近い年輩に至ったいまこの物語に出会ったことに少なからぬ運命的なものを感じてしまう。
迫り来る老い、自分に都合よく書き換えた過去の記憶、選ばなかった人生への悔恨。
私も自身の記憶を都合よく書き換えているに違いない。
それと気付かず、他人の人生を狂わせているかもしれない。
この先、この語り手に起こったようなことが私にも起こるだろうか?
語り手同様に早々に野心をあきらめ無難な人生を送ってきた私には、あまり有難くないことではあるが、同じような後悔を味わってみたいような気もする。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
「歴史とは不完全な記憶が文書の不備と出会ったときに生まれる確信である。」
この物語は、途中で自殺した秀才エイドリアンのこのテーゼを裏付けていく流れで進んで行く。
一番の語り手であり、エイドリアンの親友でもあった「私」は、大学で歴史を学び、平和主義で平穏な人生を望み、それを自らの選択により作り上げてきたと考えていた。
それを振り返る時期にさしかかったあかつき、ひとつの連絡と、いくつかの文書が手元に舞い込んでくる。
その記録と、自分の記憶が出会った瞬間、彼は自身がどのような歴史を刻んできたのかをはじめて確信する。「私」は、自分の不完全な記憶に隠されてきた劣等感、傲慢さ、屈辱、憎悪、自惚れ、自己欺瞞がいかなるものだったのか、ばかのように最後まで気付かなかった。
その文書がなければ「私」は平和的に人生を終えていただろう。
そしてさらなるどんでん返し...
歴史は、大いなる混沌。
たったの184pですが、重いお話でした。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
訳の土屋政男さんが、いいんだな。生とか死、友情とか愛とか、もう、すべてを、すべてのエグい部分を盛り込んだ感じ。2011年ブッカー賞。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
齢60歳を越えた主人公。ある日届く手紙。忘れていた学生時代の記憶。自殺した友、別れた恋人と家族。記憶を紐解くうちに現れる真実。老年に達した人が対峙する、戻れない過去と記憶の物語。ラストはかなり苦い。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
記憶と悔恨の物語。次の一節が胸にしみた。
「人は若くて感受性の強いときにかぎり、やたらと傷つくことをする。一方、血液の流れが弱まりはじめ、感覚が鈍り、まとう鎧が強化され、痛みに堪える方法が身についてから、やっと用心深く歩きはじめる」
若い頃は、自分や周囲の人を、つまり世界を、軽々しく扱って畏れることがなかった。愚かであることは若者の特権かもしれない。年をとって自分の愚かさをごまかすのがうまくなっただけという気もするが。
クレストブックスは全くどの本も美しい。全部買って並べておきたくなる。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
読了後、薄ら寒いものを感じた。知らず知らずのうち何気ない一言で人を傷つけてしまうこともあるし、ましてやその逆で傷つくこともある。
年を重ねるごとに昔友人知人に話したことは適切だったのかとふと思った。
それにしても、若干哲学書を読んでいるような気分に陥ったが、ストーリーの構成はよかった。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
全てが主人公の前に明らかになったとき、エイドリアンの晩年を想像せずにいられない。
彼は幸せだったと思います、という彼女の言葉。そう確信するからこその500ポンドの遺産。
誰かを誰かから奪うということには、様々な方法がある。
どんでん返し後の自分の心が揺れる。良い小説。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
とても「イタい」小説。主人公自身が。
そして、自分の身につまされる、という意味でも。
年老いたトニーが過去を振り返り語り始める物語が、現在の彼に思わぬ形でつながっていく――。
一人称の語りを読み進めるうちに、記憶というものの持つあやうさが徐々に浮き彫りになっていきます。
人間の持つ「業」のようなもの、人生が問いかけてくるものについて考えさせられてしまいます。
読んだ後の気持ちがなんともいえない。・・・苦い、苦過ぎる。
でもきちんと受け止めるべき何か、のある小説です。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
うーむ、何だか。身につまされるようなお話ではあるかもしれない。まぁ、誰しも「若さゆえの過ち」は認めたくないものです。歴史だけじゃなくて、人の記憶が作り出す自分の思い出も都合の良いようにねつ造されているものなのかもしれない。しかし主人公の性格・行動には共感できん。ダメダメな奴だ。翻訳が流れるような日本語になっていて読みやすかったのは良かった。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
初老を迎え、青春の失恋、結婚、離婚、それなりの棘はあっても
つつがない人生の締めくくりに入ろうとしている男性のもとに
突然とどく、遺産受け取りの知らせ。それは40年前に別れたきりの
気難しい恋人の母親からのものだった…。
歴史が記憶の積み重ねだとしたら、そこには誰の記憶がどのような
形で残るのだろう。誰の主観で、立場で、記憶されるのかで
出来事の様相はまったく異なる。
「あなたはまったくわかっていない。なにもわかっていない」と
元の恋人に繰り返し告げられるのは、なぜ。
圧巻のどんでん返し。
読み終えたとたんに伏線を捜すため、ページをもう一度繰ることに
なるのは必至である。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
やはり歳をとったせいか,老年小説(そんなジャンルがあるかしならないが)がとても気になる.というわけで,ブクログでこの本を見つけてさっそく読んでみた.
うまい.巧みにいくつも張られた伏線,それを回収していく手際のあざやかさ,アフォリズムの多用.精巧なプランのもとで書いている感じ.ちょっと人工的な感じさえする.
さて,なんとも,寂しさの漂う話である.それなりにまっとうに生きてきたつもりが,老年になって大きな負債を抱え込んでいるのに気付く感じ.そんなこと今になって言われてもなぁ.若い頃のことはどうしようもないよ.