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冒頭から頭を殴られた気分。本をせっせと大量に「読んでいる」輩がいるが、彼らは「本をよく読んでいる」とは言えない。 正に、今の自分が、そうであるのではないかと思った.内容的には まあまあ役に立つ本だと思った。
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(まだ何も知らない幼児を除いて)ヒトラーを知らない人は皆無と言って差し支えがないでしょう。
その悪行の数々は世界中に知れ渡っているのですが、ヒトラーとはどの様な人物であったかと言えば、イギリスの歴史家イアン・カーシューの言葉によれば
「ヒトラーの生来の秘密主義、個人関係の希薄さ、非官僚的スタイル、彼がかき立てた極端な追従と憎悪、戦後発表された回想録や彼の取り巻き連によるゴシップ的逸話に基づいて構築された極端な擁護論や歪曲などがあいまって、第三帝国の政治機構から吐き出された膨大な資料の山が存在しているにもかかわらず、このドイツの独裁者の生涯を再構成するための史料は多くの点において極端に ー たとえば、彼の主な敵であるチャーチルやスターリンと比較してさえも遥かに ー 限られていると言える」
とあるように、その実態には不透明さが付きまとっています。
本書は、ヒトラーの1万6千冊以上と言われる蔵書(その2/3以上は読まれていなかったが)の傾向や、現存する蔵書に書き込まれていたアンダーラインや印、コメントなどを丹念に追って、その人生の再構成を目指しているものです。
(と言っても、ヒトラーの人生をその生誕から取り上げている訳ではなく)第一次世界大戦当時からその自殺までの彼の人生を描いており、極めて勤勉だった軍隊時代や「ぺール・ギュント」によって成功した反ユダヤ主義者の劇作家ディートリヒ・エッカートとの出会いにより、学の無い熱烈な愛国者だったがユダヤ人に対しては(裕福な家庭の出に付き物の)「寛容さ」と反ユダヤ主義の中間地点にいたにすぎなかったヒトラーが強烈な反ユダヤ主義者に変貌したことに始まり、
大学教授オットー・ディッケルとの間で行われたナチ党指導者の地位をめぐる競争時に激しく刺激された知的面におけるコンプレックスが、彼の一晩に一冊は読むと言う熱心な読書癖の原因となったことなどが紹介されています。
また、その蔵書の中には7千冊以上とも言われる軍事関連本があり、第二次世界大戦においては(将軍たちによって再び知的コンプレックスを激しく刺激された)ヒトラーはそれらの書物から得た知識によって彼らに対抗し、あるいは好んで読んでいた書物の内容に引きずられたかの様に自らの誤った判断を後付けで正当化する自己欺瞞の虜となって行く様が描かれています。
加えて、ベルリンが激しく破壊され敗北間際となった時には、かつて(ヒトラー同様に)破滅の瀬戸際にたつも、辛うじて生き残ったフリードリヒ大王について書かれた書物を好んで読んでいた所、(敵の指導者の死去によって辛うじて生き長らえた大王のごとく)ルーズベルト大統領が突然の死去を遂げた際、激しく歓喜するもその3日後には奇跡が再現しない事を悟り、最期の誕生日を祝った後にはそれまで盛んに行なってきたオカルト的な内容の発言が一切なくなったとの記述もあります。
"#当時の出来事は映画「ヒトラー最期の12日間」によって描き出されており、興味をお持ちになられれば見られるのもいいのではないかと思います。"
尚、本書は冒頭、ユダヤ人文芸評論家にして蔵書家のヴァルター・ベンヤミンの「収集者の中に書物が生きているのではない。書物の中に収集者が生きているのだ」との言葉を記載し、巻末ではナチスに追われたベンヤミンがその命とも言える自らの蔵書を捨て、やがては自殺に至ったエピソードが紹介されており、それと同時にヒトラーの蔵書が第二次大戦後に略奪、流出のターゲットとなり、今となっては当時の新聞記事からその全容を間接的に推し量るしかないことが書かれています。
両者の生前と死後の立場の真逆ぶりとその蔵書の行方の類似性。
本書はヒトラーその人と彼が生き、造った悪夢の時代をテーマとしてはいますが、この点が印象に残る内容でもあります。
包括的なヒトラー論としても、また当時のドイツの世情を知ると言う点においても信頼できる内容となっていますので、歴史を振り返ると言う観点に立ち、一読されてみては如何でしょうか。
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人は知識や情報、ものの考え方を学ぼうとして、時には楽しみのために本を読む。その時本は単なる情報源や楽しみの道具を超えてその人の人格や思想、そして運命にまで介入する。
本書はアドルフ・ヒトラーというひとりの人間の運命に数々の本がどのように関わったかが主題であるが、「ヒトラーの蔵書」であるが故のその後の数奇な運命があとがきに記され、人と本との宿命的な出会いと別れの物語のようなたたずまいを思わせる。
本書を読みながら深夜までひとり鉛筆を片手に、まさに食い入るように本を読むヒトラーの姿を想像すると、なぜか痛々しく切ない感覚をおぼえてしまう。
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『彼にとって、蔵書とピエリアの泉、つまり知識とインスピレーションの隠喩的源泉であった。彼はその泉から大いに汲み上げて自らの知的コンプレックスを和らげ狂信的野望を育んだ。彼は貪るように本を読んだ。少なくとも一晩に一冊、ときにはそれ以上の本..』φ(.. ) 読書の闇に関する本かな?2013年02月04日
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ヒトラーが本好きと聞いて興味をもって購入。彼の読書への熱意は尊敬するが、選ぶ本がちょっとねえ…
ヒトラーが偉くなるにつれてだんだん異常になってきたように感じられて、読むの疲れた。
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エッカートは史上最も有名な反ユダヤ主義者としてのヒトラーのおぜん立てをした。
ヒトラーは学歴がないことを強く意識していたので、すごく読書、勉強した。
フィヒテは断固たる反ユダヤ主義者でもあった。
ドイツ至上主義者だった。彼はユダヤ人は永久に国家の中の国家であり、ゆえに統一ドイツを脅かす存在であると信じていた。
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ヒトラーの蔵書、読んだ形跡、書き込みなどからヒトラーの人物を探る1冊。
ヒトラーの読書は、自分の思考の根拠を求めたり補強をするための読書。
読んだ量には敬服するけど、彼の読書は未知との出会いや学問の為ではない読書、自分の世界に耽溺するための読書だったのだなと思います。
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ヒトラーの本というと、極端な讃美か極端な批判(憎悪を込めた)が多いイメージがあって、2冊くらいしか持ってない。
そのうちの一冊がこれ。
ヒトラーの読書に焦点を当てているので、賛美もなければ批判もない(若干あるか)
たくさんの本を読んでいるんだけれど、自分が求めている本をたくさんの本の中から選んでいるだけで、そのほかの情報を生かしていない印象があった。
文中にもあるのだけれど、どんな分野も総合的に体系化したような蔵書がないというところが、地味に自分にも跳ね返ってきて、反省。
好きな本や、参考にしたい分野の本を読むことはいいことだけれど、自分の意見とは違う情報を目にした時、それをどう自分の血肉にするが、その技術はきっと読書だけでは培われないのだろう…。
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2012(底本2010)年刊。◆「その本棚を見れば、その為人が判る」。よく耳にする格言だが、本書はその意味で面白い。これほど食指の動かされない書ばかり読んでいるのは兎も角、サイエンス本は「優生学」関連本以外皆無。軍事「戦術」本への偏頗に加え、傾倒したオカルト本からポーランド侵攻を決定。部下の直言を無視し仏戦線での部隊の戦術展開を自らの読破歴ある「書籍」をもとに強要。◆サイエンス本や反対派の関連書の未読が、人の判断能力を如何ほど減殺するか。本書からでも良く判りそう(勿論、思索を鍛える哲学書もほぼ皆無)。
本書はヒトラー蔵書やそれへの書き込みから彼の人物像を時代毎に分け解説。もっとも、ユダヤ虐殺・インテリへのルサンチマンを除き、本書からは独ソ不可侵条約締結、独ソ開戦など重要な岐路におけるヒトラーの決断の在り様とその経緯、読破書籍による影響は明確には見えてこない。ただこの切り口は面白いので、他の政治家(子ブッシュ、オバマ、鄧小平や周恩来、安倍晋三他国内歴代総理、スターリン等)のも見たい。褒めておだてれば実現可能(嘘)。PS.米の詳細分析に驚く一方、ソが接収したヒトラー蔵書の情報開示ない点も興味深い。
公開情報や著作から為政者の政策・志向・思考を推理し、今後の政策を予想する。外交の基本・要諦らしいが、仮にヒトラーの読破歴ある書籍を知らなくとも、「我が闘争」からその前提なる著作・著者を知ることはそれほど難しいことではなさげ。さらには、彼が白人・北欧の人種のみ人間と看做していた点も予想しえた可能性もある。独裁者であり、複雑に思考を巡らせていたわけではないヒトラーに対してなら、かかる地道かつ知的な分析がなされれば、日独同盟が如何に脆弱な基盤にしか成り立ちえないことも知り得たのではないか、という疑問も。
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☆☆☆☆『ヒトラーの秘密図書館』(ティモシー・ライバック)
『本をせっせと大量に「読んでいる」輩がいるが、彼らは「本を読んでいる」とは言えない。まことに、彼らは大量の「知識」を所有しているが、彼らの脳には、自分が取り入れたい知識を系統立てて記憶に留める能力がないのだ。書物の中から自分にとって価値のあるものと無価値なものを選り分ける技術が彼らには欠けている。一つのものを永遠に記憶し、そしてできることならその他のものには目も向けることさえしないでおく技術が彼らには欠けているのだ。(アドルフ・ヒットラー)『我が闘争』
「創造的表現は我々の住むこの世界を豊かにし啓発するのみならず、ある世代を次の世代に結びつける文化的接着剤の役割を果たす。」(ヴァルター・ベンヤミン)
『ミネルヴァの梟は黄昏を待ってようやくその翼を広げる』(ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル)ーーーある事象の哲学的研究はその事象が完結して初めて可能になる。
【反ユダヤ思想との邂逅】
「世界の王になる」という彼の考えを、文字どおりに「権力への意志」と受け取るべきではない。その背後には、いくら罪を犯しても最後には赦されるという霊的な信念が隠されているのだ。
☆デイトリッヒ・エッカートはヒトラーのパトロンであり、メンター(師匠)であった。
☆カール・マイル大尉
オットー・ディッケル
「ドイツ労働者党」
ドラクスラー
『ペール・ギュント』
「我らが民族に永続的な影響を残したものは、数多の戦いではない、数多の平和条約や戦争の結果も重要ではない。そんなものは跡形もなく消えてしまった。重要なのは、諸民族の移動によってもたらされる民族分布の変化だ。これこそ、世界の顔を変えた力だ」
ヘンリエッテ・フォン・シーラハ
『ヒトラーは読書というプロセスを、自分が元々抱いている観念という「モザイク」を完成させるための『石」を集めるプロセスにたとえている。まず、目次や索引を調べ、それから「使える」情報を探して章を読む、と彼は述べている。時には、あらかじめ何を探すべきかを決めるために、まず結論を集める先に読むこともある。読書する際には、自分の個人的必要や一般的な知識のために有益な情報を「瞬時に」見分ける技術を磨く必要がある、と彼はいう。
「このような方法で得た知識が、あれやこれやの問題に関してすでに自分の頭の中になんらかの形で存在している観念とと正しく統合されると、それは修正的あるいは補完的な働きをする。すなわち、自分が元から抱いていた観念の正しさを感じ、あるいは明快さを高める働きをする」「人生において検討ないし解答を求める問題が現れた場合、この読書法を守っていれば、頭の中に規範として存在している観念を記憶がただちに取り出し、こうした問題に関して数十年にわたって集められた個々の項目すべてをそこから導きだし、問題が明確なになるかあるいは解答が得られるまでそれらの検討と再考を知性に促すのである。」
マルガレーテ・ミトルシュラッサー(家政婦)
ヘルベルト・デーリング(ベルクホーフの管理人)
エヴァ・ブラウン(妻)
アンニ・プライム(ベルクホーフでのメイド)
トラウドル・ユンゲ(最後まで存命だった秘書)
アルフレート・ローゼンベルク 『20世紀の神話』の著者
ゲッペルス
ゲーリング
ヘス
ノイラート
マルティン・ボルマン
フーダル(司教)
ミヒャエル・ファウルハーバー(枢機卿)
*ヒットラーユーゲント
*カギ十字
*ひかりのカテドラル
『人間の知性は決して第一の原動力ではなく、むしろ肉体と魂との相互作用の結果なのである。』(マクシミリアン・リーデル 『世界の法則』より)
パウラ(弟?)
カギ十字や光のカテドラルといったナチスの儀式は、ヒトラーの演説に聖書風の隠喩がよく登場するのとおなじく、登用された偽物だった。神への彼の祈りは。「騒音と怒りに満ちた」偽りの霊的なレトリックに過ぎなかった。あの激烈な演説を締めくくる「アーメン」とおなじく、無意味なレトリックに過ぎなかった。
空っぽになったヒトラーのスピリチュアル・らいふに残ったものは、幼少期にできあがった心の構造だった。かつては「荘厳な儀式」の陶酔させるような印象で満たされていたそれを、ヒトラーは生涯をかけて何か意味あるものでもう一度満たそうとした。彼が探していたのは信仰そのものではなく、もっと基本的な人間的衝動、つまり、この世界を動かし形作っている人知をら超えた力の存在を信じたい、理解したい、説明したいという欲求だった。
『人間には、我々が神と呼ぶ力を理解する直感的な能力が備わっている。信仰すべきだと考えられているものを信仰しないと罰を与える、と脅かすことによって、教会は人間のこの内なる能力を利用したいのだ。』(ヒトラー)
『科学に充分深く分け入った人間は、奇跡から奇跡へと渡り歩き続け、とどまるところを知らない。
人間を動物から区別するもの、つまり人類の卓越性をおそらく最も顕著に証明するものは、創造的な力の存在を人間が理解していることだ。
望遠鏡、あるいは顕微鏡を覗いてみるだけでいい。そうすれば、人間にはこうした法則を理解する能力が備わっていることがわかるだろう』
『自分が人生において戦いと努力と苦悩によって肉体的に創造することに成功したものを、わたしは自分の不死なる細胞によって十億倍にして返す。私が自分自身と呼ぶ、この生命の小さな火花が大地の有機的財産へと帰っていくように、私の霊的な自我は宇宙に帰属している。それはゆっくりと上に上がって行くにつれて新しい形を見出し、ついには世界の集合的な魂との融合を果たすだろう。そして、自分が星に滋養を与えられる機会を喜ぶだろう』
『我々の肉体は位置的・動的な世界エネルギーの集積であり、動植物やクリスタルといった多種族を超えて事物の始まりにまで達している。我々の肉体の中に、最初の星の誕生から始まる世界の全歴史が眠っている。我々の肉体を通して、永遠から永遠へと宇宙のエネルギーが流れる。そして、このエネルギーが、我々の存在という水車場を動かすのだ。』
『自分で自分の命を絶ったとしても、肉体も魂も自然に還るだけのことだ』
マクシ��リアン・リーデル『世界の法則』の著者
ザルツブルク→ベルヒテスガーデン→オーバーザルツベルク→ベルクホーフ→山荘ケールシュタインハウス(ウンタースベルク山を望む)
アンニ・ヴィンター(ミュンヘンの家政婦)
アルベルト・ボルマン(官邸の事務員)
マルティン・ボルマン(上の兄)
1931年9月ヒトラーの姪ゲリがミュンヘンのアパートで自殺。
レーデルは父と子と聖霊の「三位一体」に代えて肉体と精神と霊魂の三者からなる統一体を奉じる「新宗教」の基礎を確立した。伝統的な五感ー視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚は肉体的知覚にしか関係しておらず、物質的世界との交流腹可能にするが、他人との関係や人知を超えた宇宙の力との関係は可能にするが、他人との関係や人知を超えた宇宙との関係の根底にあるもっと深遠な動力学に対しては我々を盲目にしてしまう。
『我々にはせいぜい、生の性質を決定する法則について学ぶか、あるいはせめて、この知識を適用して自然の法則にをら利用するかしかない。打が、なぜこうした法則に力があるのか、我々には決してわからないだろう。この世における我々の位置からは、他のレベルを見ることはできない。だから、人間は、万能の力という不可思議な概念を発明し、その力を崇拝するのだ』
シェルテルは、過去の偉大な文化は、『想像力」を持った個人によって念じ出された偉大な思想なしには存在し得なかった。と述べている。五感によって知覚し得る現実に「縛られることのない」個人、ある世界をそうぞすることができ、個性の力でその世界を念じ出せる個人的が過去の偉大な文化を創造したのだ、と。シェルテルはこうした創造的天才のことを「真にエクトロピー的(エントロピーの反義語)な存在と呼び、世界の進路を形成することのできるデモーニッシュなせいしつを持った力だと述べている。
☆☆☆*『ヨーロッパ人は『去勢されて」「柔弱になり」、ものごとの進路を決定する意思を失ってしまった。『善悪の彼岸』にある「エクトロピー的な」力が必要だと説いている。その力は現代社会によって課された制約を打破し、新しい世界を生み出すだろう。そして現代社会はその新しい世界に抵抗することはできないだろう。こうした力はときに「敵対的」、あるいは「邪悪」とさえ受け止められることがあるだろう。「エクトロピー的な」力にとって、「現実」か「非現実」か、「真実」か「偽り」か、「正しい」か「間違っている」かといった問題は存在しない。この完全に非理性的、非道徳的、非個人的な力が我々を破壊し尽くしたとき初めて、我々はこの価値を理解するのだ。☆☆☆
*デモーニッシュ
フランツ・ハルダー(陸軍参謀総長)
アルトゥール・カンネンベルク(ヒトラーの個人的な使用人だが、ヒトラーの信頼は厚い)
フェルゼンネスト
ヴィルヘルム・カイテル(陸軍元帥)
*ディレッタント
「暗い直感に駆り立てられた意思」
ヘルマン・ギースラー(建築家)ヒットラーに様々なプロジェクトを任されていた。
*剽窃
シュペーア
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蔵書数1万6千冊。私ではない。かのアドルフ・ヒトラーである。
その蔵書の一部がアメリカ議会図書館の片隅に眠っていた。
著者は保管されていたヒトラーの蔵書と、ページの所々に
残された書き込み、手紙や記録などを照合しながら、歴史
に名を留める独裁者が如何にして誕生したかを追っている。
1万6千冊と聞いてびっくりしたのだが、どうやらヒトラーも
全部読んだ訳ではないらしい。読むより積読本の方が多い
だなんて、自分のことを言われているようで耳が痛いよ。
「若いころ、私には十分な教育を受けるために必要な資金も
機会もありませんでした。だから毎晩本を1冊ないし、2冊
読みました。ベッドに入るのがひどく遅くなった晩もそうでした」
無学だったことへの学歴コンプレックスがヒトラーを読書へと
向かわせた。そうして、本に書いてあることに感化されやすい
性質が後の独裁者としてのヒトラーを誕生させた。
これが独学を続けることの怖さなのか。軍事関連本から得た
知識を武器に、自分は将校たちよりも優れた才能を持ってい
ると勘違いしちゃうんだよな。
本から得ることの大きさは否定しない。学ぶことも多い。だが、
それだけを信じることに危うさってあるな。
尚、知識欲に燃える若きヒトラーも晩年はオカルト本に嵌って
いくのが少々哀しい。
読書遍歴からヒトラー像を読み解くという本書の試みは面白い。
ヒトラーに限らず、読書好きなら他人の本棚に興味があるもの
だものね。
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ヒトラーの読んでいた(持っていた)本の本という題材が面白かった。教科書的なヒトラーしか知らなかったが、当初はアメリカを礼賛していた事や、キリスト教徒と対立していた事など知らなかったヒトラーの側面や、オカルト的な物に走り、そしてそれを信じなくなった過程で自死した事などが興味深かった。
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アメリカ議会図書館など世界中に散らばり遺された1300冊近くあるヒトラーの蔵書を通して、ヒトラーの人物像に迫った本。
第一次世界大戦で伝令兵を務めた頃から最期の時まで、ヒトラーがどのように「導かれていった」のかを、ヒトラーの読書歴を中心に読み解いています。
人は読んできた本で形作られることを、ヒトラーの人生を通して理解できます。
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ユダヤ人絶滅計画の原点は、アメリカ人科学者の書にあった。人種偏見の少ない家庭に育った彼は、いかにして「導かれ」ていったのか?戦争に明け暮れた総統が、ドイツ軍参謀たちよりも頼りにしていた書とは?米議会図書館ほか世界中に散らばり遺された一三〇〇冊に及ぶ蔵書から人間ヒトラーを炙り出す。
目次
1 芸術家の夢の名残―マックス・オスボルン『ベルリン』
2 反ユダヤ思想との邂逅―ディートリヒ・エッカート『戯曲ペール・ギュント』
3 封印された『我が闘争』第三巻―アドルフ・ヒトラー『我が闘争』第三巻
4 ユダヤ人絶滅計画の原点―マディソン・グラント『偉大な人種の消滅』
5 総統の座右の思想書―ポール・ド・ラガルド『ドイツ論』
6 ヴァチカンのナチス分断工作の書―アロイス・フーダル『国家社会主義の基礎』
7 オカルト本にのめりこむ―マクシミリアン・リーデル『世界の法則』
8 参謀は、将軍よりも軍事年鑑―フーゴ・ロクス『シュリーフェン』
9 老冒険家との親密な交友―スヴェン・ヘディン『大陸の戦争におけるアメリカ』
10 奇跡は起きなかった―トマス・カーライル『フリードリヒ大王』